2026/05/03 19:00

そもそも僕らは自由だった──笹川真生が『CULTURE DRUG ORCHESTRA』で発する警告とは?

前作からわずか1年、笹川真生が通算4作目となるアルバム『CULTURE DRUG ORCHESTRA』をリリースする。ほぼ全編を一発録りで仕上げた本作は、アルバム全体に独特の推進力と生々しさをもたらしている。レディオヘッドを起点にしたというサイケデリックなタイトル曲「CULTURE DRUG ORCHESTRA」、声優・平塚紗依を唯一のゲストに迎えたマジカルかつサイバーパンクな「懐古主義わたし」、ミニマルな音像の奥に自身の死生観を忍ばせた「ゆうひ」、ライブ体験を通じて身体性を獲得していったというダンサブルな「脳ない」まで、本作には彼自身の現在地がさまざまな角度から刻まれている。カルチャーとの距離、引用とオリジナリティ、身体と精神。散漫になりかねない主題を抱え込みながらも、不思議な統一感を宿した『CULTURE DRUG ORCHESTRA』について、本人に話を聞いた。

さまざまなカルチャーへのオマージュが詰め込まれた一枚

対談はこちら
『CULTURE DRUG ORCHESTRA』ができるまで──対談:笹川真生 × エンジニア・池田洋

INTERVIEW:笹川真生

インタビュー・文:黒田隆憲
写真:Kana Tarumi

「カルチャーに気をつけろ」

──まずはアルバム制作のきっかけから教えてもらえますか?

笹川:僕はスタッフとGoogleカレンダーを共有しているんですけど、そこに「アルバムリリース」と書いてあったんですよ。何も聞いてなかったんですけど、今年に入ってから「真生くん、音源出すけど大丈夫?」みたいに言われて(笑)、「いや、出すんですか?」みたいな(笑)。そこから急に制作モードに入りました。それがリリースの1カ月くらい前ですね。

──その時点で、ある程度曲のストックはあったんですか?

笹川:1曲もなかったです。

──そこから1カ月で曲を書いて、アルバム完成まで持っていったと。

笹川:そういうことになりますね。

──アルバム用には何曲くらい作ったんですか?

笹川:13曲です。実際は15曲くらい作ったんですけど、ほぼそのままアルバムに入っていますね。

──そんな短期間だと、これまでとは曲作りの方法も違いましたか?

笹川:かなり変わりましたね。レコーディングは大体セルフでやっていて、前作『STRANGE POP』のときも制作期間が短かったので、歌も楽器も3テイク以内に収めるようにしていたんですけど、今回はほとんど全部が一発録りでした。そうせざるを得なかったというか。もともと僕は、あまり時間をかけて録りたいタイプではないんですよ。その日できないことは、その日どれだけ頑張ってもできないと思っているので。

“脱皮”したと語る前作

──なるほど。アルバムタイトルはどのようにつけたのですか?

笹川:曲を作る前に、まずタイトルを考えたんです。前作が『STRANGE POP』だったので、最初はその雰囲気を踏襲して『MAD WAVE』みたいなタイトルにしようかなと思っていたんですけど、いざ作り始めてみるとそういうモードではなくて。何がいいかなと考えていたら、降ってきたのが『CULTURE DRUG ORCHESTRA』という言葉でした。なので、意味は特にないんですよね。作っていく中で、なんとなく「こういうことなのかな」と意味が見えてきた、という感じです。

──どんな意味が見えてきたのでしょうか。

笹川:「カルチャーに気をつけろ」ですね。最近、ちょっとどうかしてるんじゃないか、と思うことが多くて。

──どうかしている、というのは?

笹川:単純に、数が多すぎるじゃないですか。音楽に限っても「一億総DTMer時代」みたいな感じで、誰でもその日から作り始められるし、世界に向けて発信することもすごく簡単になっている。そのハードルが下がったことで、もともとプロとしてやっていた人たちのハードルも下がっている気がしています。

そんななかで、自分で見つけたと思っているものが、本当に自分で見つけたものなのか、与えられているだけなんじゃないか、と感じることがすごく増えてきました。他人の評価を気にしていると、やっぱりバイアスがかかるじゃないですか。「いいと言われているからいい」とか、「売れているから聴く」とか。それで喜んでいるのだとしたら、まさしくドラッグだな、みたいなことを、曲を作りながら感じていました。だから、この曲はカルチャーに対する警告みたいなものですね。

──たしかに、あらゆるコンテンツがソーシャルメディアなどで共有されるなか、自分で選んでいるつもりでも、「失敗したくない」という気持ちが働いてしまうことは多い気がします。

笹川:朝起きた瞬間から、あらゆるものがアルゴリズムでカスタマイズされていますからね。もちろん、自戒を込めて言っていますし、自分もアルゴリズムの中にいることを自覚したうえで、心から好きだと思った気持ちを大事にしましょう、と。逆に嫌いだと思ったなら、それはそれでいいじゃないですか。「みんなが好きだと言っているから、逆に好きだと言えない」みたいなのもよくないと思っていて。

──それはただの逆張りになってしまいますからね。

笹川:そうなんですよ。みんなと同じように、自分も好きであるとしても、それが本当なら素晴らしいことなので。

笹川真生 - Dokujoutai (Live「ひかりのそこ 第5層」at 東京キネマ倶楽部)
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この記事の筆者
菅家 拓真 (Kanke Takuma)

レコーディングを少し齧りました。 脳みそみたいな音楽が好きです

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