編集部が注目する今週のリリース作品
アイドル&ダンス・ミュージック&九州文化
アイドルとダンスミュージック、そこに九州の伝承文化のエッセンスを加え、唯一無二の音楽性を確立させた、ばってん少女隊の最新作。とにかく耳から離れないメロディーと、エッジーなビートが交錯する、強力な1枚だ。(西田)
テクノの名匠、デヴィッド・ホルムスがサウンドを手がける
分断の時代に灯された連帯のためのダンス・グルーヴ。ゴスペル・ハウス~フィリー・ディスコを軸にしたサウンドを手がけたのは、アイルランドのテクノの名匠、デヴィッド・ホルムス(現在はサントラを多く手がけている)。アンチ・ファシズム、アンチ・ネオリベラリズムなボビーらしい歌詞も最高な"Love Insurrection"や"Innocent money"をはじめ、リズムには適度にラフな質感を残しつつ、ゴスペル・コーラス、ストリングス、ホーンなどを現代的な意匠の分離がありながらも暖かな質感にミックス、ドラマチックに展開、ロックにおける新たなディスコの援用に。懐古ではあるかもしれないが、なにがいま必要なのか? それを気付かさせてくれるベテランたちの気概を感じる1枚。アルバムはジャケットの主でもある、ボビーの亡き父、2022年に没したメンバー、マーティン・ダフィー、そしてマーク・スチュワートに捧げられている。UKハウスOGたちによるリミックスも最高。(河村祐介)
布施明、アルバム25タイトルが配信開始
配信になく、ちょうど中古で買おうか迷っていたところに配信がやってきました(嬉)。水谷公生、柳田ヒロ、チト河内ら70年代の日本の音楽シーンにおける重要人物たちによるプロジェクトに、ヴォーカルとして布施明が加わる形でリリースされた作品。ジャズ、プログレ、ハード・ロッキンな要素と布施明の強烈なヴォーカリゼーション混じり合う怪作。1000円とちょっとで購入出来るので気になった方はポチッとすべき。今度のアーカイ奉行でもピックします。(高木)
田中ヤコブ、2枚組AL
田中ヤコブ(家主)の2枚組フル・アルバム。ゲスト・ミュージシャンやエンジニアを迎えたSide A、対するSide Bでは演奏から録音まで一人で作り上げたというのだから驚きを隠せない。本当に多才であり変態。1970年代のパワー・ポップの雰囲気を感じながらも、シニカルで愚痴っぽくて延々とぐるぐるしてしまう歌詞にヒリヒリというかシリシリ。長い目(耳)で聴き込みたい。(石川)
バンド帯化のダブ・ミックス
12月にレコードリリースが決まっている帯化のアルバム『御池塘自治 / On Chitou Jichi』収録曲を〈造園計画〉レーベル・メイトの揚がリミックス。チリーンとなる金具の音がダブ乱れ打ちの合間に響いて気持ちいい。しっかりイーヴンに打つところもありつつ、ブレイク後のラストはダブステップのステップ抜きみたいな。つまりポスト・ダブステップ的な音像でもある。これ素晴らしいです。(津田)
キタニタツヤ&なとりのコラボSG
シンガーソングライター・キタニタツヤと音楽クリエイター・なとりがお互いの制作曲をアレンジしあったコラボ・シングルが発売! 爽やかなメロディに反してじっとりとした歌詞が印象的な表題曲はアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 京都動乱』オープニング・テーマ。(藤田)
宮城県石巻市発のシネマティック・バンド
宮城県石巻市発のシネマティック・バンド、u named(radica)の最新アルバム『最愛の行方』のリード曲。弓で弾くコントラバスのような、アンビエント感のある壮大で綺麗なベースが印象的。ベースと複雑なギターが編みだす靄の中で、凶暴に吠えるように鳴るピッキングハーモニクスが最高にかっこいいです。(菅家)
SACOYANSの3rdAL
先行の「サモトラケのニケ」配信のときにここに書いたことに満ちている。つまり、めちゃくちゃうるさくて、ぜんぜんうるさくない。すごく歪んでいるのに、すごくクリア。キラキラの絶妙な半歩手前に留まり、ギターの綺羅びやかなストロークやアルペジオが際立つ、全9曲。1st・2ndから引き継がれるSACOYANの歌詞と歌メロの卓抜さ、唯一無二のSACOYANのヴォーカルの魅力、ギターの喧しさと綺羅びやかさ、メロディアスでパワフルなベースとドラムはそのままに、もともとのSACOYANの魅力だったザラつきや不安定さが、だからこそ軽やかで清々しい。リード曲が「サモトラケのニケ」であるように、理想としての美、勝利の誇り、不完全の肯定、SACOYANSの3rdはそんなアルバムになったと思う。(高田)