2022/01/18 19:00

OTOTOY各スタッフがそれぞれ選んだ2021年の10作品

今年もやってきましたOTOTOYスタッフによる個人チャート。いろいろ大変だった2021年、なにを聴いてOTOTOYを作っていたのか? 今年は新人、藤田に加えてインターン、そしてコントリビューター枠としていろいろと関わっているライター陣の方にも書いてもらいました。

■OTOTOYスタッフ■

梶野有希

編集部


■️チャートに関するコメント■
いますごく勢いのあるKroi、PEOPLE 1をはじめ、大好きな邦ロックを中心に。神はサイコロを振らない「徒夢の中で」は、持ち前の淡いメロディーラインが最大限に活きた至極のバラード。それから音楽業界を目指すキッカケとなったHalf time Oldの新作。ヴォーカルはもちろん、年々サウンドメイクが洗練されていっているバランスのいい楽器隊にも注目してほしいです。彼らは昨年はじめてZeppでツアーファイナルを迎えたということで、ますますの大躍進を願うばかり。2022年は好きなバンドがより多くの人に届く年になるよう、私も頑張ります!

■ベストライヴ(配信含む)■
RADWIMPS〈FOREVER IN THE DAZE TOUR 2021-2022〉

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(アニメ)『宇宙よりも遠い場所』
観測隊員として南極へと向かい、行方不明になった母を追いかけ、ひとりの女子高校生が南極を目指すことからストーリーが始まります。何かをやってみたいと思いながら何もできずにいた主人公がその強い想いに共鳴し、周囲を巻き込みながら、はるか遠い南極を目指す、その姿がとても眩しくて最高にカッコいいです。彼女たちを応援する者とそうでない者、それぞれの想いが交差しながらも少しづつ確実に南極へと歩み寄る1歩1歩に勇気をもらいました。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
23歳にして、「健康第一」がどれだけ大切かめちゃくちゃ痛感しました。無意識的に心身ともに健やかでいることって案外難しいようです。まずは食生活から整えていこうかと。昨年のスタッフズ・チョイスに書いた通り、このお仕事をはじめとし、趣味を含めて2021年は好きなこととたくさん向き合うことができたし、その分結果に繋がってくれたかなと思っています。2022年は健康を第一に、好きなものにたくさんの愛情を持って接していきたいです。

西田 健

編集 / 九州男児

■2021年の10作品◾️


■️チャートに関するコメント■
毎年のことながら、年間ベストは何を入れようか、何を外そうかを考えるのが本当に悩む。自分のなかで「これを入れたらこういう風に見られるんじゃないか」という一種の自意識過剰さが出てしまうからだ。実際、個人の年間ベストなんて、気にしている人はそんなにいないと思う。しかし、突然「見ましたよ!」と言われてしまうこともある。自分が思っているより、人は他人のことなど見ていないし、自分が思っているより、人は他人のことをことを見ている。これは表裏一体なのだ。そんなことをウダウダ考えていたが、テレビにでていたジャニーズの新星グループ、なにわ男子に完全に魂を抜かれてしまった。マジで全員キラキラしていて眩しい。年明けのカウントダウン特番での、道枝駿佑さんの堂々とした王子様たる佇まいは、本当にすごかった。2022年は、もっとどっぷり浸かっていきたい。

■ベストライヴ(配信含む)■
2021年の後半は、やっと大きな会場でもライヴができるようになったのが良かった。神宿がぴあアリーナMMで行った7周年ライヴにはこれまでのストーリーを感じてグッときたし、乃木坂46の東京ドーム公演で聴いた楽曲 “きっかけ” には涙が止まらなくなった。また、電音部の初ライヴにゲネから参加させていただいたのも、貴重な経験だった。なかでも2日目に披露された “Distortion” の衝撃は忘れられない。しかし、僕のなかでの2021年のベストライヴは、めろん畑a go goの渋谷CLUB QUATTRO公演だ。コロナ禍で抱いてた様々なアイドルやアーティストの情念が爆発していた夜だった。

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
2021年のお笑いは空気階段の年だった。彼らのライフワークとも言えるラジオ番組「空気階段の踊り場」の1時間拡大。そして、なんといってもキングオブコント優勝。今年の大会はこれまでと比べてもレベルが高くて全組おもしろかったし、好きなネタが多かった。そのなかでも彼らのおもしろさはダントツだった。しかし、彼らのコントの真骨頂は、単独ライヴにあると思う。2月に行われた公演「anna」は、最初のネタから最後まで素晴らしかった。そして、ラジオ好きにはたまらない作品だったと思う。本当に愛を感じるライヴだった。かたまりのギャグ「サイコゥ! サイコゥ! サイコゥ!」は今年も絶対に流行らないとは思うが、頑張って使っていってほしい。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年は、入社2年目である。OTOTOY2年生。後輩も入ってきた。インタヴューもレヴューもライヴレポートも、配信イベントもいろんなことをやってきた。2022年は、さらに大きな転機になることになる。今から本当にワクワクしかしていない。マジで健康には気をつけて、バリバリにやっていきたい。あと、たまには九州に帰るぞ。

高木理太

配信部 / 編集部

■2021年の10作品◾️

(順不同)

■️チャートに関するコメント■
年明け早々にリリースされたAaron Frazerから、年末のSilk Sonicのアルバム・リリースで綺麗に締まったというか、ヴィンテージなサウンドをどのように2021年に鳴らすかが年間ベストの選盤基準になった気がします。傾向的には昨年とほぼ変わらない感じというか、30歳が近付いてきて自分の気持ちいいゾーンがどこなのかようやく掴めてきたのかもしれません。国内は文句なしにGofishの新作がベストでした。キャリアを重ねてきたなかで、まだまだすごいものが生み出せることのカッコよさ。緊急事態宣言下、WWWでのワンマンのアンコールで披露された新曲、あれがレコード化されたら2022年のベストはこの曲かなぁ。

■ベストライヴ(配信含む)■
〈DEATHRO OTOTOY BUDO-KAN ONLINE ~up”d”ates digital release special〉

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(映画)『fOUL』
完全にバンド “休憩” 以降後追いの僕は色々ヒストリーを知りたかったんですが、そんな期待がいい意味で裏切られた大画面、爆音、お腹いっぱいになるまで濃密なfOULのライヴが映し出された100分間! 惜しむべくはこの映画を見ることが出来た新たなリスナーが過去作品を辿るのが難しくなっている現状(泣)。監督の大石さんとバンドから谷口さんにお話を聞けたのも嬉しかった! 舞台挨拶で聞けた、休憩再開のその時を今かと待ってます!

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年の大きな変化は住まいの拠点が東京の西から東に移ったことでしょうか。引っ越し以降に東側の銭湯、サウナの層の分厚さにやられて色々と巡ったのも今年のハイライトですね。飲み屋に関しては昨年はほぼ緊急事態宣言下だったのもあり、あまりディグれなかったのでこちらは今年の課題ですかね。東京に出てきて10年が経ちましたが、ひとつの節目を終えたというか2022年からはまた新たな景色を探す10年が始まりそうな気がしています。

藤田琴音

配信部 / 編集部

■2021年の10作品◾️

(順不同)

■️チャートに関するコメント■
10作品の中でもbutohesのEPは本当にドハマりして上半期はほとんどこれだけ聴いていました。OTOTOYのESでもbutohesについて書かせていただいたくらい好きなので、一刻も早く生でライヴが観たいバンドです。また、これまでの自分の趣味からは少し離れたジャンルにも手を広げた年になりました。San HoloのようなチルっぽいフューチャートラップやWaterparksやShameのような海外アーティストにハマるなんて5年前の私が知ったらびっくりするだろうな……としみじみ考えたりしています。挫・人間やtricotの安定感、WurtsやPEOPLE1のフレッシュさもかなりヒットした1年でした。

■ベストライヴ(配信含む)■
〈キチオン36TONIGHT!LIVE to LIVE〉BYEE the ROUND / 時速36km / O.A. the FIXER
2021年に行った数少ないライヴの内の一つ。BYEE the ROUNDのいつまでも色褪せない鋭さと熱量に痺れました。

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(DVD) ロングコートダディ『じごくトニック』
2021年M-1グランプリファイナリストであるロングコートダディの初映像作品です。2021年7月に行われた東阪単独ライヴツアー『じごくトニック』の大阪公演が収録されているDVDで、彼ららしいちょっと変な世界観とどこか暖かい気持ちになれる優しいコントを堪能することができました。2022年はぜひ生の公演に足を運びたいと思っています。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年、私にとってまさに激動の年でした。卒業論文として「若者はなぜディグるのか」をテーマにインタビュー調査を行ったり、学祭でのバンド演奏(4年なので卒業ライヴでした)に向けた練習があったり、インターンシップがあったり…とまあまあ忙しいのを言い訳に、春以降全くうまくいっていなかった就職活動を見てみぬふりしてきたのですが、12月に晴れてOTOTOYへの就職が決まり、天にも昇るような気持ちで年明けを迎えることができました。3月まではアルバイトとして、4月以降は正社員としてOTOTOYの一員になります。早く仕事を覚えられるように頑張ります……音楽たくさん聴いたり劇場に行ったり、好きなことも満喫したい!

東原春菜

編集部アルバイト

■2021年の10作品◾️

(順不同)

■️チャートに関するコメント■
A_oが正体不明のとき「BLUE SOULS」をCMではじめて耳にしたのですが、清掃員(BiSHファンの総称)でもある私は作業していた手が止まったほどアイナ・ジ・エンドの声に反応してしまいましたね。それと、2021年に水曜日のカンパネラはコムアイが脱退し詩羽が加入する出来事があり、水カンのライヴを駆け回っていた私にとってビックニュースのひとつでした。そして2021年、私は台湾バンドのThe Dinosaur's Skinにドハマりしました! 普段海外の音楽を聴かない私でしたが、The Dinosaur's Skinのビジュアルとバンド名に惹かれて曲を聴いてみるとドタイプの曲で、久しぶりに自分のストライクゾーンに入ったバンドを見つけて胸がざわつきました。

■ベストライヴ(配信含む)■
4s4ki〈TOUR 2021 “HYPER NEW-PUNK LAND” in 東京〉

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(NETLIX)『イカゲーム』
2021年といえば『イカゲーム』でしょう。子どもも遊べる単純なゲームだからこそゲームの内容をスッと理解でき、一気見をあまりしない私でも2日で見終わったほどスリリングな世界に引きずりこまれました。また、実際に「だるまさんがころんだ」や「型抜き」を全力で遊んだのも2021年の思い出になりました。あと、映像以外で言うと “笛” と “太鼓” だけであんなにも耳に残るフレーズを奏でられることに関心しましたね。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年は、あっという間の年でした。もう、なにをしていたのか記憶が薄れるほど、せかせかと動いていました。とは言っても2021年、WACKからASPが誕生しOTOTOYで特集記事の掲載が決定したことが私にとって大きかった出来事です。というのも、BiSHが好きで2017年にOTOTOYのインターンとして働き、それからなんやかんやあったものの2021年にまさか私がWACKグループの記事を担当することになると思っていなかったからです。この想いも含めて今後もASPを追っていきたいです。

津田結衣

編集部アルバイト

■2021年の10作品◾️

  • Dean Blunt『BLACK METAL2』
  • bar italia『bedhead』
  • Black Country, New Road『For the first time』
  • SPIRIT OF THE BEEHIVE『ENTERTAINMENT, DEATH』
  • Anika『Change』
  • N0V3L『NON​-​FICTION』
  • Lolina『Fast Fashion』
  • Grouper『Shade』
  • 冥丁『古風 II』
  • Tirzah『Colourgrade』


■️チャートに関するコメント■
〈npr〉が “The Post-Brexit New Wave” というタームを与えた、サウスロンドンを中心にしたポストパンクシーンが一つの最盛期を迎えた昨年。ジャズもポスト・ハードコアも清濁混ぜ込みカオスを生み出す、刺激的なロックアルバムが次々とリリースされて全く飽きることもなかった。が、やはりバンドのライヴに行くこと自体が少なかったこともあり、日常的に聴いたのはDean Blunt周辺のbar italiaやTirzahなどコラージュ感のある作品だったように思う。そして、軒並みのクラブの閉鎖から必然的に生み出されたであろうサイケデリック(瞑想の側面における)やアンビエントの要素は昨年の自分にとっても必要なものだった。

■ベストライヴ(配信含む)■
NO Punks not DEAD–叫びのリズム / Crirythme

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(映画)『MONOS 猿と呼ばれし者たち』
すごいとは聞いていたけど、神秘性とリアリティが同士に押し寄せては、錯乱を起こす映画で圧巻。感触までもが伝わってきそうな映像に、空瓶の笛やティンパニなどを使ったMica Leviによるミニマルな劇伴が合わさって生まれる没入感、そして作品の核となるゲリラ部隊に所属するローティーンの、普遍的な葛藤や恋愛の隣には、暴力と残忍さが。モチーフは実際に2016年まで続いたコロンビアでの内戦であり、キャストの多くがコロンビアの子どもや元兵士であることからか、物語として消費することなど到底叶わない。ラストの息遣いがまだ耳に残っている。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
自粛期間の頭から昨年末まであった、存在していたが通り過ぎられてきた社会問題にそれぞれがどのように接していくか?というシビアな態度が “プリミティブ” らしきものに吸収されていってしまった感じを覚えた一年でした。自分がそこにしっかり加担した覚えもある。暴力や差別構造における問題が、自分が遊びに行くような場所でいくつか起こっていたはずなんだけど、何もなかったかのように後付けの理由を述べながらこのまままた通り過ぎていく…のは勘弁。

平石結香莉

OTOTOYインターン生

■2021年の10作品◾️

(順不同)

■️チャートに関するコメント■
コロナの影響をダイレクトに感じられる、不安や内省が色濃く現れた作品が多かった2020年に比べて、2021年は山も谷も全てひっくるめて、それでも音楽をやっていくというアーティストの覚悟が感じられる作品(特にアルバム)との出会いが多かったように感じます。個人的にもそういう音楽に支えられた1年でした。 思い返せば、2021年上半期にはStill Woozy、そして下半期にはQの音楽をよくヘビロテしていたように思います。どちらのアーティストも、メロウで繊細な風景の中に70年代の影響が感じられる、懐かしくも新しいサウンドで、特にコロナ以降、そういう音楽に心が動かされることが多かったです。忙しなく変化する環境の中で、心落ち着く音楽を求めていたのかな。

■ベストライヴ(配信含む)■
薬師丸ひろ子 - Woman “Wの悲劇”より /『第72回NHK紅白歌合戦』

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(YouTubeチャンネル)『河江肖剰の古代エジプト』
エジプト考古学者の河江肖剰さんが、古代エジプトに関しての知見を学術的、かつわかりやすく解説した、まさに大学の講義を受けているようなチャンネルです。物理的にも時代的にも縁遠い古代エジプトを少し身近に感じることができ、こんな良質な教養コンテンツを無料を享受できるなんて、素敵な時代に生まれたものだなぁなんて思います。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
コロナの影響により2020年の3月末に帰国して以来、2021年は6月ごろまで実家のある京都に滞在、その後OTOTOYでのインターンのために上京、8月末にまた渡米するなど、ドタバタの1年でした。環境が変わっただけ新しい出会いがあり、そしてこれまで支えてきてくれた人たちのありがたさを身に染みて感じた年でした。大きな怪我も病気もなく無事に1年を過ごせて感謝です!

河村祐介

編集長

■2021年の10作品◾️

  1. D.A.N.『NO MOON』
  2. 西内徹『西内徹&Yamande』
  3. 食品まつり a.k.a foodman『YASURAGI LAND』
  4. Sons Of Kemet『Black To The Future』
  5. Bob Marley & The Wailers / The Capitol Session '73 (Live)
  6. KODAMA AND THE DUB STATION BAND『もうがまんできない / STRAIGHT TO DUB (DUB VERSION)』
  7. V.A.『TRANSONIC RECORDS FROM 1994 TO 1995』
  8. 石橋英子『Drive My Car Original Soundtrack』
  9. Nala Sinephro『Space 1.8』
  10. Chelsea Carmichael『The River Doesn’t Like Strangers』


■️チャートに関するコメント■
すばらしいコンピ『TRANSONIC RECORDS FROM 1994 TO 1995』のリイシュー含めて、もっとこの国のテクノの名盤が再発・さらなる再評価されないかなという。エレクトロニック・ダンス系はele-kingを参照ということで、その他、OTOTOY配信作品で固め気味に。

■ベストライヴ(配信含む)■
〈3月24日 LIQUIDROOM presents cero × D.A.N.〉

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
小説 : 酉島伝法『るん(笑)』
うっすらと逃避願望も携えたサイバーパンクな管理社会モノよりも、いまの日本のディストピアと言えばこれでしょうという、科学の否定と信仰と絆の同調圧力が日本社会を覆う、お茶の間がよく似合う、この社会のスピったモードを増幅させたディストピア小説。不快感と隣り合わせの現実の拡張感で、読んでいると目眩とともに気分が悪くなるが、コロナ禍の情況を見ていると……。マンガは『望郷太郎』、ノンフィクションものだと『監視資本主義』『麻薬と人間 100年の物語』あたりがダントツした。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
ああ、これが厄年なのね、的な動きもありつつなんとかやれてますという。2022年はひたすら新しいことを知りたいし、新しい音楽を聴きたいというのを、ぼんやりとではあるけどいつも以上におもってみたり。カチッとした総括もできないまま2020年がズルっと間延びしたまま2022年に、という2年殺し感もありつつの年明けというかなんというか。

高田敏弘

OTOTOY取締役

■2021年の10作品◾️


■️チャートに関するコメント■
今年はアルバムを邦楽・洋楽5作品ずつ選びました(曲・アーティストについては大晦日に書いた別の記事があるので、よろしければそちらも)。「ニューノーマル」なんて言いますが、「新しい働きかた」を皆がすぐにできるようになったのは、突然それが生まれたのではなく、そうした働きかたを以前からしていた人たちが知識と経験を積み上げていたからです。たとえば在宅勤務、ネットワーク・ベースのコミュニケーション、リモート・ミーティングなど。そういう人たちが今回は “先駆的な存在” になりました。音楽の制作も同じです。宅録、ベッドルーム志向、内向的な表現…… 2020年より前から、ずっとそうして音楽を作ってきたアーティストたちがいます。2021年は、そんな彼・彼女らが示してくれた、“そうしてきた強さ” に敬意を表す年でした。

■ベストライヴ(配信含む)■
〈SACOYANS 2nd Album “Gasoline Rainbow” Release Tour〉@秋葉原CLUB GOODMAN
SACOYANSのワンマン。1stと2ndの収録曲すべてと新曲とスマパンのカバーを演った濃密で美しいライヴ。SACOYANSへの想いはこちらのインタヴューに込めました。

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
「mRNAワクチン」
前回は「私はソフトウェア・エンジニアでもあるので」ということでソフトウェア・プロダクト/サービスとして「Zoom」を選びました。そしてプロダクト/サービスの意味をより広げて昨年を見てみると、「mRNAワクチン」以外考えられないんですよね。でもこれを “一作” と言ってよいのか。悩ましい。ちなみにmRNAワクチンも突然生まれたものではありません。30年余、多くの人々が挑み、進み、あるいは敗退してきた歴史があり、その上に作られたものです。なので、作品として、良しとするか。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年年頭は「去年は変な年でしたね」で済んだのかもしれませんが、今年年頭も「去年も……」だと、そろそろこっちが普通、でしょうか。新しい普通とは、それ以前における先駆や不可思議や異常です。ならば先に不可思議や異常を体験しちゃったほうが良くないですか? ということで、“変” を楽観で味わい、楽しみ、想像できない未来に運良く先駆者たれるよう、これからも積極的に遊んでいようと思いました。今年もよろしくお願いいたします。

ナガタミキ

OTOTOYのデザインなどを担当(関連会社digitiminimi所属)

■2021年の10作品◾️

(発売日順)

■️チャートに関するコメント■
2020年に引き続き悶々とする中で、気分を高めてくれた作品たちをチョイスしました。東京事変『音楽』は現代の厳しさが描かれながらも純粋に音を楽しむことを思い出させてくれ、BIGYUKI『Neon Chapter』の鬱屈とした気分を吹き飛ばしてくれるグルーヴからはエネルギーを貰い、Floating PointsがPharoah Sanders、ロンドン交響楽団と作った『Promises』の美しい音にうっとり。コロナ禍で白紙になった15周年アニバーサリーを15+1周年としてリリースしたドイツのレーベルOstgut Tonのコンピ『OSTGUT TON FUNFZEHN + 1』もその存在自体に感動しつつ中身もやっぱり最高でした。

■ベストライヴ(配信含む)■
METAFIVE〈FUJI ROCK FESTIVAL '21〉
緊急事態宣言中のフェス開催かつメンバー6人中4人不在という状況の「緊急事態のMETAFIVE」として魂のこもった素晴らしいステージでした。

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
TVアニメ「オッドタクシー」
可愛い絵柄と裏腹に現代社会の闇を目の当たりにするサスペンス要素、やけにリアリティのある登場人物、YouTubeのオーディオドラマによるメディアミックスな展開など、まさに今までに見たことのない新しいジャンルのアニメ作品。ネタバレになるので詳しく書けませんがやはり最終話で全部持っていかれました(笑)。tampen.jpでも上映会を行った山田遼志氏の手がけたオープニングアニメも小ネタ満載でスキップせずに観たくなります。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2020年の大混乱を乗り越え、制限が緩和されたりと少しずつ良い方向に向かっていることを実感できた年でした。個人的には休日に運動する習慣ができ、心身ともに調子良くなってきたため続けて行きたいと思います。とはいえ引きこもりがちだったので、2022年はもっと気兼ねなく色々なところに遊びに行けるようになりたい。引き続きデザイン面で盛り上げて行くので、本年もOTOTOYともども宜しくお願いいたします!



■OTOTOYコントリビューターズ■

斎井直史

寄稿も満足にできず超たまにOTOTOYに来ては浦島太郎状態の兼業ライター a.k.a 初代インターンシップ(12年前)

■2021年の10作品◾️


■️チャートに関するコメント■
ランキングは個人的な思い出補正も含めて並べたら、ラップが少なくて驚きました。でも、今年はラップを誰かと聴く経験が少なかっただけなんです。いい曲でも、その曲を聴いていた時の思い出がフラッシュバックしないと忘れちゃうんです。あと音楽と同じくらい識者の話を聴くのは楽しくて、もはや音楽の時間を削ってまでPodcastやYouTubeコンテンツを聴いています。

■ベストライヴ(配信含む)■
ZORN〈My Life at 日本武道館〉
オファーも載せるところもないのに、2週間分くらいのプライベート時間を費やして詳細なライヴ・レポを書いたくらいでした!

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(映画)『エターナルズ』
突如現れた町工場を世界的上場企業にまで成長させて消える謎の凄腕コンサルタント、エターナルズ社。現地で神として崇められながら、彼らは隠居生活を送っていた。しかし、とある出来事から徐々に彼らはコンサルなんかではなく、家畜ですらあったと知る。それでも会社の理念に共感する者。疑問を感じる者。どっちも決めきれない者。そんな会社員たちがどうアベンジャーズに絡むのか楽しみです!

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
今年は初めて別メディアですがプチ炎上を経験したり、テレビに出れたり、他紙の方にお声がけ頂いて貴重なチャンスを頂いたり色々な経験が出来たのに、振り返るとOTOTOYでレビューを四苦八苦書いてた時期が1番楽しかったんです。睡眠時間を削り、(家に帰ったら寝ちゃうので)仕事が終わったら終電まで電車に残って推敲する毎日は楽ではなかった。だけど、好きな音楽をちゃんとしゃぶり尽くせるって幸せですわ。

岡本貴之

フリーライター OTOTOYニュース現場監督

■2021年の10作品◾️

  1. DURAN『Kaleido Garden』
  2. マハラージャン『僕のスピな人』
  3. AKIRA with THE ROCKSVILLE『L.U.V』
  4. 大柴広己『光失えどその先へ』
  5. PARIS on the City!『擦り切れても骨になるまで』
  6. 筋肉少女帯『君だけが憶えている映画』
  7. 愛はズボーン『TECHNO BLUES (side A / side B)』
  8. 忌野清志郎 “ジグソーパズル”
  9. Chilli Beans.「d a n c i n g a l o n e」
  10. THE FOREVER YOUNG『証』


■️チャートに関するコメント■
多様化、細分化する音楽の中で、ギターの存在感が光る作品を中心に選びました。DURAN『Kaleido Garden』はソロ、バッキング、音、すべてに於いて最高のロックギターが聴けるアルバム。メッセージ性のある楽曲、ボーカルとのバランスも良く繰り返し聴きました。25曲の大ボリュームでありながら、インターミッション的なショートチューンを随所に織り交ぜるなど、直感的なようでいて練りに練った構成で飽きることなく聴ける一枚です。メディア露出が多く話題になったマハラージャン、ニュースコーナーでのコラム連載が80回を越えたAKIRAさんの満を持したアルバム等、若い世代の作品でアップデートされたカッコイイギターの音が聴けたのがうれしい1年でした。

■ベストライヴ(配信含む)■
桑田佳祐 無観客配信ライブ【静かな春の戯れ ~Live in Blue Note Tokyo~】2021年3月7日@ Blue Note Tokyo
桑田佳祐 × Blue Note Tokyoということで想像していた洋楽カバーなどはほとんどなく、浅川マキ、加藤登紀子&長谷川きよしらのカバーをオリジナル曲へとつなげていく、桑田ルーツのプレイリスト的なライヴに震えました。

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(マンガ) 松本大洋『東京ヒゴロ』
(書籍) ヒコロヒー『きれはし』
(書籍)『昭和プロレスマガジン vol.56』
『東京ヒゴロ』は1コマ1コマに引き込まれました。松本大洋の作品が映像化される理由がわかる気がします。ヒコロヒー『きれはし』は斜に構えたあの感じが、文章になると照れ隠し的にかわいらしく感じられました。『昭和プロレスマガジン vol.56』の特集「新日本プロレスクーデター事件」は今さら感を超越する筆者の執念の取材と推察、説得力のある仮説でミステリー小説ばりの興奮の一冊。ライターとして非常に感銘を受けました。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年に生まれた作品、行われたライヴすべてにコロナ禍の影響が自ずと出ていました。この状況をいかに自分なりのエンターテイメントに昇華するか。すべてのアーティストが前年以上にそれを試されていたと思います。筋肉少女帯の大槻ケンヂさんが言っていた「あと何十年かしたら、コロナ禍の時代に作られた “パンデミック・ミュージック” が検証されると思うんです。」という言葉がとても印象的でした。2022年はパンデミックの先を見るのか、もやもやを抱えたまま自分の世界を構築していくのか。紅白でまふまふのパフォーマンスを見た感動を2022年のヒントにして生きていこうと思いました。

熊谷風太

OTOTOYニュース・ライター

■2021年の10作品◾️


■️チャートに関するコメント■
2021年の10作品を選ぶにあたってSpotifyやYoutubeでお気に入りした欄をくまなく振り返ってみたのですが、なんと2021年の新譜の豊作さたるや。入れられなかったのですがlittle simzのアルバムは音楽界隈を圧倒的な完成度で賑わせましたね。個人的にPSG、Original Love “I WISH/愛してます” では信じてきたものの答え合わせを拝めました。サンプリングの文脈を通したトラックで紡がれた楽曲は音楽以上のエネルギーを感じましたし、田島貴男が “愛してます” のフックを歌った部分はファン垂涎でした。

■ベストライヴ(配信含む)■
あろうことか僕はあまりライヴを観る慣習の無い人間なので、2021年は一つも観に行きませんでした。今年はライヴをたくさん観に行くことを目標にしようかなと思いますが、感染者が鰻登りで既に先行き不安です…

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
YouTube「新!王庭チャンネル」企画「もぐら×岡野のくずパチ」
パチンコやスロットを全く打ったことのない僕でも、「くずパチ」は毎週見逃さずハマって見ていました。空気階段の鈴木もぐらとピン芸人の岡野陽一の「クズ芸人」コンビによるパチスロ番組で、お二人のパチスロ観で放たれる格言はまさに人生そのもの。生きる上でのヒントが台の一挙手一投足に集約されているのです。お二人は真剣に台と向き合い、当たった際には台への「ありがとう」を怠たりません。日頃忘れがちな普遍的な幸せへの感謝。連チャンは必ず終わる。だからこそ今の幸せを噛み締めて生きる事が、人生における数字よりも大切な豊かさのトータルで「勝つ」ことに繋がるのではないでしょうか。パチスロを打たない人にもぜひ観てほしい「教育番組」です。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年はOTOTOYに加わらせていただいたことが自分にとって大きな転機になりました。ずっと抽象的にやってみたいなーと思っていた仕事に具体的に関わらせてもらって、自分は何をしたいのかを明確に考える事ができるようになりました。

田代芽生

OTOTOYニュース・ライター

■2021年の10作品◾️


■️チャートに関するコメント■
やっぱり藤井風はすごい。2020年にリリースしたファーストアルバム『HELP EVER HURT NEVER』が2021年もチャートにランクインし続け、CM曲としても話題となった新曲「きらり」も邦楽の中では上位に。岡山弁を交えながら、飛び抜けたセンスで心地よいメロディを歌い上げる彼の才能にはいつも驚かされます。早く新しいアルバムがリリースされないか、本当に待ち遠しいです。また、SNSで話題となったアーティストの人気がチャートから伺えますが、吉祥寺初のバンド “グソクムズ” のランクインも注目です。この忙しない世情、親しみやすい歌詞と穏やかなメロディにはやはり、たくさんの人が魅力を感じているようです。そして、2022年はどんなグッとくる新しい音楽が生まれるのか!楽しみです。

■ベストライヴ(配信含む)■
ドレスコーズ〈志磨遼平 IDIOT TOUR 2020 -TOKYO IDIOT-〉2021年3月31日

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
(映画)『私をくいとめて』
2021年の初めに鑑賞した映画。2017年公開の映画『勝手にふるえてろ』以来2作目のタッグとなった綿矢りさ原作&大九明子監督作品。おひとりさまOLみつ子が交友関係や久しぶりの恋愛を通して自分自身と向き合い、成長していく物語。私には私しかいないと思っていても、誰かが “私” になってくれることで、その誰かと一緒に居られるかもしれない。そう思わせてくれます。人と関わることが苦手な人に少しだけ勇気をくれるような作品です。

■2021年を振り返って、もしくは2022年に向けて■
2021年は昨年に引き続きオンライン授業が続いたり、出掛ける機会が少なかったりと、人との関わりが薄く感じられることもあった1年でした。ですが、長年応援しているオリックスが日本シリーズで激闘を繰り広げたり、お笑い芸人ランジャタイがM-1グランプリ決勝に進出したりなど嬉しい出来事もたくさんあり、フジロックの開催も心の支えとなりました。2022年は、人との繋がりを大切にしながら魅力的な音楽とたくさん出会っていきたいです。

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