2012/09/09 00:00

2005年、J・マスキス、ル―・バーロウ、マーフのオリジナル・メンバーで奇跡の再結成を果たしたDinosaur Jr.が、3年ぶり通算10作目となるアルバムを完成させました。兼ねてからレコーディングの模様がメンバー自身のツイッターで発表されていた本作。濃厚なダイナソー・サウンドが炸裂しています。リー・ラナルド(ソニック・ユース)ソロ作やレッド・クロスの15年ぶりの復活作発表など、オルタナ界隈が活気付く中、遂に本命バンドが動き出します!

USオルタナの金字塔、3年振りのニュー・アルバム

Dinosaur Jr. / I Bet On Sky
【Track List】
1. Don’t Pretend You Didn’t Know / 2. Watch The Corners / 3. Almost Fare / 4. Stick A Toe In / 5. Rude / 6. I Know It Oh So Well / 7. Pierce The Morning Rain / 8. What Was That / 9. Recognition / 10. See It On Your Side / 11. Black Betty

【販売形式】WAV / mp3

【販売価格】1,500円(WAV / mp3ともに)

グランジの生き証人、期待に違わぬ「いつも通り」の新作

ダイナソーJr.の新作。それは、「どうせいつも通りなんだろ」という逆説的な「期待」に他ならない。

たとえ1曲目の「Don't Pretend You Didn't Know」でメロトロン(!)がフィーチャーされていたとしても、たとえ昨年のJ・マスキスのソロ作(純然たるソロ作としては初作)が素晴らしく歌心溢れるアコースティック作品であったとしても、今作は聴き進めれば聴き進めるほどいつものダイナソーである。Jは、ザ・バンドのリチャード・マニュエルのようなほのかに哀しみを含んだ声でボソボソと弱々しく歌いながら、ビッグ・マフで歪ませたギターをブイブイ鳴らしている。ブリッジ・ミュートでザクザクと8分を刻みながら、盛大にギター・ソロをキメまくる様は、一歩間違えればもはや絶滅危惧種となったハード・ロックそのものである。そういった相変わらずさを求めるファン心理は、決して「諦め」であるはずもなく、「ひょろい歌声と轟音ギター」という珍妙なコンビネーションはダイナソーをダイナソーたらしめる欠かせない要素であり、それは水戸黄門的な大いなるマンネリズムによるカタルシスをもたらすのである。

さらに、今作には現在のダイナソーJr.がグッド・コンディションにあることを示す曲も収められている。それは、アルバム中盤、ルー・バーロウ作のストレートなロックンロール曲「Rude」と、それに続くJ作の「I Know It Oh So Well」である。「Rude」は、アルバム全体の中で、さらにはダイナソーJr.の歴史の中でもかなり浮いた印象があるほど快活な曲だ。Aメロの後半で、これまたブイブイと歪ませたリッケンバッカーと思われるルーのベースが、興に乗って思わず歌い出してしまうほどである。そして、この曲に続く「I Know It Oh So Well」では、Jが負けじとブルース進行の爽快なロック・チューンで応戦。しかも曲の後半では、ストーンズばりの伝統的なギター・バッキング&ソロさえも披露してしまう(そういえば新作のインタビュー映像では「ベロTシャツ」を着た姿も…)。

自らのルーツを躊躇いもなく無邪気に取り入れるだけの余裕があるということは、バンドの状態もかなり良好なものに違いない。11月にZepp DiverCity Tokyoで開催される”Hostess Club Weekender”で、四半世紀変わらぬJのゆるキャラっぷりを目撃せよ!(text by 青野慧志郎)

LIVE INFORMATION

Hostess Club Weekender
2012年11月3日(土) & 4日(日)@Zepp DiverCity Tokyo
DINOSAUR JR / THURSTON MOORE / FUCKED UP / ...AND YOU WILL KNOW US BY THE TRAIL OF DEAD / LOCAL NATIVES / POP ETC / THE WAR ON DRUGS / CLOCK OPERA / DEAP VALLY …and more
Ticket : ADV 1Day 7,900円、2Days Pass 13,900円(税込/各日1ドリンク別)

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PROFILE

Dinosaur Jr.
米マサチューセッツ州出身、J・マスキス(G,Vo)、ルー・バーロウ(B)、マーフ(Dr)の3人組バンド。1985年にデビュー。1989年『バグ』発表後ルーが脱退。1991年の『グリーン・マインド』が世界的に大ヒットしニルヴァーナ等と共にシーンを牽引。その後マーフが脱退。バンド解散の1997年までに通算7枚のアルバムを発表。しかし、2005年にオリジナル・メンバーで再結成し、その後2007年に再結成アルバム『ビヨンド』を発表、2009年には9作目『ファーム』を発表し話題となる。 2012年9月、通算10枚目となる新作を発表。

この記事の筆者
青野 慧志郎

■ yoji & his ghost band @YojiGhostBand / No Eyes @no_eyes / Ghostlight @ghostlight_jp / 折坂悠太 @madon36 サポート (Gt, F.Mand, Cl, Banjo, Key) ■ 音楽評論文執筆 ■ インフラエンジニア

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[レヴュー] Dinosaur Jr.

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