ブルックリンのインディ・ロック・バンド、Dirty Projectorsによる、通算6枚目のスタジオ・アルバム『Swing Lo Magellan』が完成! 本作は、バンド・リーダーのDave Longstrethが、ニューヨークの市街地から4時間ほど北西にあるデラウェアの民家に籠って書いた70以上の楽曲を、最終的に12曲にまで絞り込んだという意欲作。「今作は歌のアルバム、楽曲のアルバムになっている」というデイヴの発言通り、前作『Bitte Orca』とは違った側面の見れる作品になっています。まずは、本作からの楽曲「Gun Has No Trigger」のPVをご覧ください。そしてアルバムを聴いて、Dirty Projectorsの底知れぬ才能を感じてみてください。
ブルックリン周辺を代表するバンド・Dirty Projectorsによる歌のアルバム!
Dirty Projectors / Swing Lo Magellan
【Track List】
01. Offspring Are Blank / 02. About to Die / 03. Gun Has No Trigger / 04. Swing Lo Magellan / 05. Just From Chevron / 06. Dance For You / 07. Maybe That Was It / 08. Impregnable Question / 09. See What She Seeing / 10. The Socialites / 11. Unto Caesar / 12. Irresponsible Tune
【販売形式】WAV / mp3
【販売価格】1,500円(WAV / mp3ともに)
生の象徴である歌を蒸留・濃縮した力強い作品
いっさいフィルのないエイト・ビートを黙々と刻むドラム。他に楽器はベースのみという極度に削ぎ落されたアンサンブル。それはロックというより、重心を低くしてグルーヴするヒップ・ホップのようだ。Dirty Projectorsの待望の新作『Swing Lo Magellan』からのリード・シングル「Gun Has No Trigger」は、ドラムによって発揮されるロック的ダイナミズムがすっかり取り払われており、そのサウンドの変貌ぶりに肩すかしを食らった『Bitte Orca』中毒リスナーも多かったのではないだろうか(そう、私のことだ)。彼らのトレードマークともなった、子供の遊び声のように無邪気な三声女性コーラスは健在(ただしエンジェル・デラドゥーリアンは不参加)であるが、フロントマン=デイヴ・ロングストレスはひたすら歌に徹している。この曲が象徴するように、『Swing Lo Magellan』は歌のアルバムなのである。
鳥のさえずりが聞こえてきそうな「Just From Chevron」ののどかさや、「Dance For You」での愛おしくなるような優しさ。『Bitte Orca』での目くるめくエキゾチック・ロック・サウンドや、それ以前の作品の難解さはすっかり消え失せ、そこにはいつになく親しげに弾き語るデイヴが座っている。遂に果たした大ブレイクとツアーに明け暮れた狂乱の日々から逃れるかのように、ホーム・グラウンドであるブルックリンから遠く離れた山に籠り、一年という歳月をゆっくりと堪能しながら本作は制作された。その過程では70曲もの曲を書いたというが、収録された曲の多くは、仲間内でキャンプ・ファイアーでも囲みながら楽しんでいるかのような空気感だ。こぢんまりとしたアンサンブルが醸し出す雰囲気は、先進的な音楽家集団であると同時に、愛すべき雑食系音楽愛好家たちでもあるブルックリンというコミュニティを象徴するかのようだ。
一方で、本作は非常にヴァラエティに富んだ作品でもある。ハードコア・パンクへの憧憬が炸裂する「Offspring Are Blank」や、福岡のブルース・ロック・バンド、folk enoughのように直感的な小節感覚で危なっかしいグルーヴを生み出す「Maybe That Was It」などは相変わらずの奇天烈っぷりで、一筋縄ではいかせない。しかし、やはり全体を俯瞰すれば、極めてミニマムに徹した楽曲が目立つ。
そもそも、YouTubeで検索してみればわかるが、彼らはアコースティック・セットでのパフォーマンスも非常に多いバンドである。『Bitte Orca』のExpanded Editionで追加されたのはアコースティック・ライヴの音源であるし、ビョークとの共演作も基本的に生音主体である。そうした生音での演奏は、アンプにより増幅された爆音の影で見えにくくなっている芯の強さを、むしろ際立たせているように感じる。Nirvanaの『MTV Unplugged In New York』が、轟音ギターを取り払ったことによりむしろ楽曲と歌の圧倒的な強度を証明したように、音楽の核が確立されてさえいれば、演奏のフォーマットなど何ら問題とはならないのである。「人間の身体から出てくるものの方が圧倒的にパワーを感じる」とのデイヴの発言もあるように、歌にフォーカスをあてた本作の意図は、そこにあるのではないだろうか。『Swing Lo Magellan』は、人間の生の象徴である歌を蒸留・濃縮した力強い作品なのである。(text by 青野 慧志郎)
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LIVE INFORMATION
DIRTY PROJECTORS JAPAN TOUR 2012
2012年10月9日(火)@渋谷 O-EAST
2012年10月10日(水)@名古屋 CLUB QUATTRO
2012年10月11日 (木)@梅田 CLUB QUATTRO
PROFILE
Dirty Projectors
米ニューヨークはブルックリン出身の6人組バンド。2002年にデヴィッド・ロングストレス(Vo, G)が中心となりバンドを結成。幾度のメンバーチェンジを経 て、現在はデイヴに加えてナット・ボールドウィン(B)、アンバー・コフマン (G, Vo)、ブライアン・マックーマー(Ds)、ヘイリー・デックル(Vo)、エ ンジェル・デラドゥーリアン(Vo)の6人編成となる(本作では休養中のエンジェルを除く5人編成になっている)。今までに現在までに5枚のスタジオ・アルバムを発表。英DOMINO移籍後初めて発表した2009年の5作目『ビッテ・オルカ』 が年間ベスト・アルバムを総なめにし、本格的ブレイクを果たす。2011年、 ビョークとのチャリティー・コラボ作品『マウント・ウィッテンバーグ・オルカ』が待望の初CD化され、大きな話題となる。