リファレンスはくるりの“ばらの花”
──パノラマというテーマを軸に広げていくと決めた上で、どのように制作を進めていったんでしょうか。
Sou:まずは、コンセプトを、各クリエイターさんにはお伝えして。ただ、楽曲の具体的な内容については基本的にお任せしていました。その代わり、サウンド面に関しては「こういう方向性が好きです」といったニュアンスは共有していて。そういうやり取りの中で、「君の羽」の制作も始まりました。
KBSNK:最初は、「自分はボーカロイド曲もあまり通ってきていないし、そんな自分で大丈夫かな?」って思いましたね。アルバムの中で、自分はどういうピースになればいいんだろうって、結構迷っていて。でも最初にSouさんとお話ししたときに、「僕がKBSNKさんの曲に寄せていくので、界隈感やシーンはあまり気にしないでいいですよ」と言っていただいて。
そこからはシンプルに、Souくんの声と自分の曲でどんな化学反応が起こせるか、ということだけを考えて。むしろあえて、Souさんの既存曲をあまり聴きすぎずに作ってみました。
──Souさんは、リファレンスとして具体的に何か伝えていたんですか?
Sou:Spotifyのプレイリストを送りましたね。TEMPLIMEの曲や、全然関係ないアーティストさんの曲もたくさん入れていました。曲同士の関連性があまりないものもあったので、難しかったかもしれないですけど。
僕、言語化して伝えるのがあまり得意じゃなくて。音楽も聴いて「心がギュッてなる感じ」みたいな感覚でしか説明できないんです。なので、その感覚になる曲をとにかく詰め込んで、「伝われ…!」って思いながら送りました。
KBSNK:めっちゃ伝わりましたよ。くるりの「ばらの花」や、Galileo Galileiの「青い栞」も入っていて。自分ももともと好きで聴いていたし。実は、「Escapism」のリファレンスの中にも「ばらの花」が入っていたんですよ。そこからの方向性はバッチリでしたね。
普段はワンコーラス作って、相手の反応を確認することが多いんですけど、今回は作り切って送りましたね(笑)。ダメだったら作り直そうという気持ちではあったので。「OKです」と言っていただけたのでよかったです。
Sou:デモが届いたときは、いい意味で裏切られました。僕の送ったリファレンスを解釈して出来上がったものが、「そういう方向で来るんだ!」って。
最初のデモは、アコースティック・ギターが全体を引っ張っていて、サビでバンド・インする構成でした。少しインディー・ロック感のあるチルな雰囲気で。しかも仮歌込みで世界観が完成していて。すごく独創的だったんです。いわゆる、上手いというよりかは、ニュアンス重視のアーティスティックな歌い方で。
だからこそボーカルの再現が本当に難しくて。すぐにはOKを出せなかったです。でも歌いやすい形に変えるのも違うなと思って。キーを試したり、自分で仮歌を録ってみたりして、いけるかもしれないと思えたタイミングでお願いしました。あの仮歌をさらに自分なりに解釈して歌うことが、面白い挑戦になるなと思えたんです。
KBSNK:自分で仮歌を入れるとどうしても癖が出ちゃうんですよね。他の方への提供曲でも毎回ちょっと申し訳ないなって思うくらいで。自然とそうなっちゃう。
Sou:それがめっちゃいいんですよ。
──Souさんらしさを添えるという点では、どんなところを意識しましたか?
Sou:アーティスティックな歌い方をそのままやりすぎると、普段僕を聴いてくれている人からすると「なんだこれ?」ってなるかもしれないと思って。仮歌を意識しつつも、録っては一度置いて、客観的に聴き直して、また録り直して…を繰り返しました。
KBSNK:そんなに悩ませていたなんて......。すみません(笑)。
Sou:いやいや(笑)。でも、ボーカロイドの「歌ってみた」文化でやってきたことが、こういうときにすごく力になっているなって思いました。ボーカロイド曲は、データだから成立しているフレーズも多くて。人間が歌うことを想定していない速さの曲もあるんですよ。そういう曲を無理やり歌う文化でもあるので(笑)。
既存の歌やデモを再解釈して、その良さを取り込みつつ自分の表現と混ぜる技術は、歌ってみたをやってきたからこそ身についたものだと思います。今回はそれを発揮できたんじゃないかなって。
──「君の羽」はシューゲイザー的な雰囲気もあって、音楽的要素が一段と増したというか。これまでのSouさんのイメージとはまた違いますよね。
KBSNK:最初は「Escapism」のイメージで作っていました。そこに、少しシューゲイザーっぽい轟音パートがあったらいいかもと思って、後半に掻き鳴らすような盛り上がりを入れようと。
ポスト・ロックやシューゲイザ──が得意で、ギターが上手い友達の、ゆきょんにデモをこっそり聴かせたら、依頼する前に「あの、こんなのどうですか......」って送られてきて(笑)。それがめっちゃ良かったので、正式にお願いして弾いてもらいました(笑)。本人曰く、kurayamisakaを意識して弾いてくれたみたいです。ミックスも、雪国も担当されているKensei Ogataさんにお願いして、インディーロックやシューゲイザーの血を入れれたかなとおもいます。
Sou:そんな裏話があったんですか(笑)。リファレンスにも、シューゲイザーの文脈を感じる曲はわりと入れていたので、流れとしては自然だったと思います。
KBSNK:「Terminal」では編曲にも関わっていますよね。どのあたりまでやられたんですか?
Sou:higmaさんには、最初に僕が打ち込んだリズムパターンを、ほぼそのまま使ってもらっていて。冒頭のキーボードの音も、もともと僕が打ち込んでいたものなんです。間奏の裏で鳴っているボーカルチョップ的な音や、少しグラニュラーっぽい質感のサウンドも、デモの段階で自分なりに作って入れていたんですけど、そのまま活かしてもらっています。
KBSNK:すごい。完全にDTMerですね。
Sou:それから、「Terminal」でずっと鳴っているリードっぽいシンセの音は、higmaさんが僕の声をサンプリングして作ったものなんです。「すげー」ってなりました。
KBSNK:あの“テレ、テレレ”みたいなやつですか?
Sou:そうですね(笑)。今回はわりとサウンド面でも自分のイメージがそのまま反映された形で完成したので、純度の高い曲になったと思います。


















































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