2012/12/13 00:00

2010年代最注目のバンド、下山(GEZAN)。2枚目となる新作は、彼らの核心とも言える"LIVE"に焦点を当てたDVD付きの2枚組。OTOTOYでは、大阪在住期の阿鼻叫喚爆音と熱狂のライヴ音源を配信開始するとともに、マヒトゥ・ザ・ピーポーとカルロス・尾崎・サンタナへのインタビューをお届けする。2012年に大阪から東京に突如拠点を移し、都内16ヶ所16日間連続ライヴや16人限定マンツーマン・ライヴなど、常に聴き手の想像を越えてくる下山。そんな彼らの一言一言を聞き漏らすな!!


下山 / LIVE 2012・大阪 / 侵蝕の赤い十六日・東京

【配信価格】
mp3 : 単曲 200円 / アルバム 1,500円

【Track List】
1. 月面の爪 / 2. となりのベジタリアン / 3. 三島と口紅 / 4. 甲虫の和解 / 5. live in Stockholm / 6. 共振 / 7. 大きく勃起した派手な? マークとマー君 / 8. 三島と口べにー / 9. 三島と口紅(Ver.2)

INTERVIEW : マヒトゥ・ザ・ピーポー

2012年、恐るべき好奇心と強靭な肉体をもって、フル・スロットルで駆け抜けたバンドがいる。前回、3月にリリースされたファースト・フル・アルバム『かつて うた といわれたそれ』のインタビューで、関西アンダーグラウンド・シーンの急先鋒と目された下山。が、7月のフジロック・ルーキーアゴーゴー出演を機に、突如東京に拠点を移し、われわれの期待を心地よく裏切ってくれた。8月~9月には都内16ヶ所16日間連続ライヴ「侵蝕の赤い十六日」を敢行、最終日には渋谷WWWでギターウルフとメルツバウと対バンし、エモーショナルな演奏で爆音の限界を見せつけくれた。10月には映画『夜が終わる場所』の公開記念イベントで、映画館でもパフォーマンス。非常階段と遠藤ミチロウ率いるノータリンズとのガチンコ3マン「世代交代2012 臓物の大三角形」も好評で、その名はじわじわと広がっていく。11月には東高円寺UFO CLUBを貸し切り、16人限定マンツーマン・ライヴ「侵蝕の赤い十六人斬り」を行うなど、月単位で怒涛の快進撃は続く。

そんなアグレッシブな流れのなか、2012年の総決算とも言えるドキュメントDVD『侵蝕の赤い十六日・東京』と、ライヴ・アルバム『LIVE 2012・大阪』の2枚組が、この度リリースされる。都内16ヶ所16日間連続ライヴの悲喜こもごもをぎゅうぎゅうにおさめたDVD。大阪時代の音の粒がギラギラにはじけるアルバム。それぞれの「瞬間」がぎっしり詰まった、気合いの入った作品だ。今回OTOTOYでは、前回に引き続きフロント・マンのマヒトゥ・ザ・ピーポー(文句&極紅スタイル)に突撃! 途中、カルロス・尾崎・サンタナ(B’z)が乱入して全裸トークに花を咲かすも、上京後の心境やDVDとアルバムについてもきっちり聞いた。ときに感情的につっぱね、聴き手を試すような高圧的な態度をとる彼らにそれでも魅了されていくのは、その大きな音楽への愛情と強い意志、それゆえ起きる摩擦に共感し、期待せざるをえないからだ。キワモノと思われがちな下山だが、ひとたびライヴを見れば、それは大きな間違いだとわかる。彼らのライヴで、そしてDVDとアルバムで、そのパッションに触れてほしい。

取材・文 : 福アニー
ライヴ写真 : 松本亮太
写真 : カルロス・尾崎・サンタナ

癌のなかに飛び込んで刺し違えなきゃ時間が足りないと思った

——以前サイゾーウーマンで、「東京にはなにもない」という東京出身の雑誌編集者と、「東京は希望」という地方出身の小説家の対談が話題になったんだよ。8月に上京して4ヶ月、いまの心境はどう? 東京にはなにかあると思う?

マヒトゥ・ザ・ピーポー(文句&極紅スタイル、以下マヒト) : 東京タワーがあるよね。赤くそそり立つあれは、盛りのついた犬の勃起だよ。岡本太郎の言う「爆発」前夜とも言える。メンズノンノ的なおしゃれ系東京スカイツリーには出せない匂いがある。なにかをはかるときに、新しさや高さのようなステータスだけではかるのは現代病だよ。対して大阪の通天閣は泣けるよね。うたがある。デザインやフォルムもどんくさいし、めっちゃ低いのに、揺るぎない存在感と自信にあふれてる。その姿の裏側に、大阪の限りない演歌を感じる。それだけで「ニューシネマパラダイス」の13倍のリットル数の涙が出る。塔も音楽も、みんなね、プロフィールを大事にしすぎなの。ことばとか数字とか、ほんとに大切じゃないから。この世から一番消えてなくなればいいものだと思ってるよ。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

——東京タワーもそうだけど、下山は赤にこだわってるよね。それはなぜ?

マヒト : ほら、見て見て(ズボンをめくり膝の擦り傷を見せる)。血が流れてるじゃない。東京タワーはいいよね、夜空に向かって季節とともに、毎日欠かさず真っ赤に勃起してる。震災があろうと政権が変わろうと小学生が春を売っていようと。ある意味、東京タワーの存在自体が、中指を立ててるように見える下山の「山」っていう字と共鳴しているな。流行の東京スカイツリーにないがしろにされているかなしみに、自分の臓物がプルプル共振しちゃうんです。その時代との焦燥感にもヒリヒリするし、こっからかまそうよと固く共闘関係を結びたくなる唯一のシンパだね。あ、あと歩行者信号のあの赤いおじさんの絵もそうかもしれないな。僕はあれをRed Fatherと呼んでるんだけど、彼はもう還暦で年金暮らし、本当は若者のようになにかに情熱を燃やしたり、いきり立つという必然はないんだよ。けれど、彼の血液は沸騰していまにも走り出しそうに青になるのを待ってるわけ。青信号は青春の色ね。ああ、泣けるよね。青春を爆発させるんだよ。すべてのあきらめたサラリーマンの手本になるべき人間が、信号機という身近なところにいるのに気づくことなく、ただただ信号待ちに貧乏ゆすりをかます渋谷交差点のネクタイたちの感性をノイズで焼き尽くしたい。下山の音楽は、はなから赤いから、ひとりひとりの血の中に受容体としてすでにあると思うんだよ。ほんとは反応できるし、もっと言えばとっくに細胞は下山を知っているんだよ。

——いま、ローカル・シーンを盛り立てるという地域の固有名を押し出した流れと、インターネット・レーベルが顕著であるように地域など関係ないという流れの二極化が進んでいると思うんだ。そんななかで、そもそもなぜ大阪にケリをつけて、東京に来たの?

マヒト : 嗅覚としか言いようがないけど、癌のなかに飛び込んで刺し違えなきゃ、時間が足りないと思ったんだろうね。僕は、老いや死臭に速度をあおられている。

——昔から東京に対してのコンプレックスと憧れが、ないまぜになってるのかな?

マヒト : 僕はそれこそどこに行っても、場所に対してコンプレックスがあるよ。なぜだか、よそ者だという確信に近い感覚にずっとつきまとわれてるから。引っ越しが多くて土地に定着する癖が根付いていないっていうのはあるのかな。自分のことばや故郷、かえる場所がない。自分の故郷はうたのなかにつくっていくしかない。音楽はその点とても都合がいいよ、場所になっていくからね。僕たちが動いたことで広がる波紋は、たとえ小さくても大事にしたいと思う。

——場所と歴史と固有名という話で言えば、映画『二十四時間の情事』で、「私はヌヴェール、あなたはヒロシマ」というセリフがある。そう誰かに言われる / 自分で言い切れる場所がないってこと?

マヒト : うん。でもどうしても場所っていうのは壊れるから。朝になったら住んでる景色がまったく違ってることはよくあるし、ヒビが入って割れてたり、色がにじんでたりね…… ただはじめから壊れることだけがわかっているから、やっぱりね、壊れてもいいの。音は消えるのと同じ。だからこそ音のうえに生きてるって思うし、そこでだったらちゃんと呼吸ができる。子宮にいたときと同じような感覚で、呼吸を取り戻せる。

——でも東京はかなり呼吸しにくい場所なんじゃないの。

マヒト : ずっと息は止めてるよ。高校生の頃に覚えた光合成で神々しい光から順番に食べていくの。

——ライヴをしていることが、窒息に歯止めをかけているのかもしれないね。そういえば前回のインタビューで、「関西でシンパシーを感じる同世代のバンドはまったくいない」と言ってたけど、東京に来たいま、大阪に思うところはある?

マヒト : 大阪が愛おしくなったね。距離ができたからこそ感じてるのかもしれないし、嫌いな現状はなにも変わってないだろうけど、確かにそこで鳴らしていたんだと、そこが自分にとってのひとつの場所になってたんだなあって。そう実感するまでは、大阪という名前のただのことばでしかなかったから。

いまの自分にとって服を着ることのほうが挑戦で、革命的な行為なんよ

(取材中、いきなりカルロス・尾崎・サンタナ(B’z、以下カルロス)が乱入してくる)

カルロス : 今日、俺の取材って聞いて来たんやけど。なんか質問ある?

写真左、カルロス・尾崎・サンタナ

——ええ! いきなりすぎるでしょ…… 下山のライヴといえば、カルロスくんが全裸で演奏するというのも見ものだと思うんだけど、きっかけはなんだったの?

カルロス : 引田天功のステージをビデオで見てて、踊る引田天功の横で全裸でチョッパー・ベースかましてる年老いた俺が映ったわけよ。アナログ画面にな。予知ビデオやと思ったね。これがすべてや。

——全裸の初お披露目は覚えてる?

マヒト : 尾崎は初スタジオが全裸だったよ。火影(※大阪のライヴ・ハウス)では全員全裸で出たこともある。風が冷たかったな。

——地域によって、はじめた当初といまによって、全裸に対するリアクションの違いはある?

カルロス : やっぱ地域によって多少の差は出てくるな。たとえばタージマハルでライヴしたときなんかは、みんなターバンで自らのサツマイモを巻いてて、それはそれはすさまじい歓喜の渦ができとった。偉いやつから「TEN-NOH!!!! 」という賞賛の声までもらったんやで。

——「俺よりいい一物持ってやがる」とやきもちを焼かれたり、「全裸なんですけど」と通報されたりしかねないリスクもあると思うんだけど、全裸特有の苦悩はある?

カルロス : やっぱ全裸ってシャーマン的なところがあるから、降りてきすぎちゃうんだよね。カルロス・ザ・ジャッカルっていう有名なベネズエラ人の国際テロリストが憑依しすぎて、俺のゴーストを乗っ取られそうになったことは何度もある。でもいままで全裸になることでカルロス・ザ・ジャッカルの勢いを使ってきたけど、最近は俺が大きくなりすぎて、もう必要ないと。つまり俺が強くなりすぎて、カルロス・ザ・ジャッカルを倒してん。

——つまり全裸の必然性もなくなってきたわけだ。どうしてカルロス・ザ・ジャッカルよりカルロスくんが強くなったんだろう?

カルロス : そりゃライヴやろ。下山っていう土壌にもまれて。これからは全裸のネクスト・ステージ、精神的全裸をめざす。それはイーグル計画(※詳細教えてくれず。みんなで育てていってほしいとのこと)とも近いよね。

——とはいえ、全裸でも服を着ているときでも、音の出方に違いはないように思うんだけど…。

カルロス : ほんとに音の出方に違いはないと思っとう? じゃあインタビュアーさん、いまここで服を脱いでみてよ。それでもし声色を変えずに同じようにインタビューができるのであれば、あなたの感性は象の足の裏の皮膚よりも分厚いということになるな。でもここで完全に宣言させてもらうけど、もう今後は脱ぎません!

——ええ!? いきなりなぜ?

カルロス : 逆になぜずっと服を着るのかと思ってたんや。生まれたときやセックスするとき、おそらく死ぬときも、俺にとって大切な節目はいつも全裸やったし、カナブンもピカチュウもETも服を着てないやろ。ただなあ、あまりに慣れてしまってんな。つまりいまの自分にとって服を着ることのほうが挑戦で、革命的な行為なんよ。
マヒト : 確かに、カルロスがはじめて服を着てステージに立つのを見たとき、生まれたての小鹿が足をガクガクさせながら立ち上がるのを見守っているような、神聖な母性のような気持ちが見えたもんな。挑戦は人それぞれだからね。

——とにかくカルロスくんの全裸は、聴き手が下山にかかわる際のひとつのフックになってるよね。

カルロス : フックよりムックになりたい。

——船長よりポンキッキになりたいわけだ…… 前回のインタビューで、マヒトくんが「カルロスが全裸で演奏するとか俺にとっては昨日の天気よりどうでもいいけど、それでフィルターかかっちゃう人もいて、そのワンクッションがあるだけで『こう思ってたけど実際はこうだった』ってドキュメントが生まれえるから、そっちのほうがおもしろい」と言っていたけど、下山はドキュメントという言葉をよく使っているよね。

マヒト : 英語はそれしか使わない約束してるから。

——誰とですか(笑)? たとえば「ドキュメント灰野敬二」とかは、ドキュメンタリー映画ではない感じがするよね。ドキュメンタリーではなくドキュメント。

マヒト : マヒトの「ト」っていうのが一番大きな理由だけどね。「タリー」のほうが、介護というか、寄り添うニュアンスがあるじゃない。ほんまの表現はね、寄りそわすことだと思ってるから。理解ではなく、勝手に赤い異物を解釈してみてよと、常日頃から首のないお地蔵さんにおしっこかけながら拝んで、阿佐ヶ谷を散歩してます。

東京ってそんな生易しいもんじゃないんだよね

——話は戻って。2012年下半期から、フジロック・ルーキー・ア・ゴーゴー出演、東京上陸、都内16ヶ所16日間連続ライヴ、16人限定マンツーマン・ライヴなどなど、どんだけ怒涛の展開なんだと純粋に驚いたんだけど…… ようやく動きはじめた、なにかの予兆をひしひしと感じさせる半年だったんじゃない?

マヒト : 予兆の蝶の鱗粉はいい匂いがするから。甘い香りのほうに誘われてタンポポの綿毛のようにふわふわとね、触ったらただれる毒性の強いタンポン。おはようございます。

——よくわからないなあ(笑)。2009年から活動をはじめて、2012年はどういう立ち位置の年だった?

マヒト : 色んな肌の色の人参がめまぐるしい速度で動いた。快速の東京じゃあどう考えたって遅いわけ。下山は超特急東京だからね。まわりで関われた人たちやその出会うタイミングにも強烈な引力や速度を感じた。自分で流れを追いかけたら間違うから、今後もちゃんとそういう流れのなかに溺れるというか、蝶々の羽音に鼓膜を預けてビルの隙間から彗星まで飛んでいきたいな。

——そんな流れのなかで、ドキュメントDVD『侵蝕の赤い十六日・東京』と、ライヴ・アルバム『LIVE 2012・大阪』の2枚組を発売すると。今回、なぜそのようなかたちになったんだろう? ファースト・フル・アルバム『かつて うた といわれたそれ』と対になっていると考えていいいのかな?

マヒト : 2012年を振り返ったときに、自分たちが大阪から東京に出てきたっていう大きなドキュメントがあって、それをアルバムとDVDでかたちにしておきたかったってことだよね。『東京と大阪 またいだ下山』をね。ひとつのおわりと、それによってはじまったことと。

——まさに2012年の総決算だね。どういう気持ちで、急速な勢いで変化していったこの1年にピリオドを打とうと思ったんだろう?

マヒト : そうね、自分たちがいた季節のようなものを、単純に記録したいと思ったんだよね。DVDで言えば、なにを言ってるとか、なにをしてるとかよりも、もっと風景としておさめたかった。単純に東京の景色のなかに下山がいるってことが、自分にとってドキドキする絵だったし。東京なんかいつまでいるかわかんない、なにもかも全然わかんないんだよ。だから少なくとも2012年、それなりの意志をもって東京に来たことやその景色のなかに確かにいたということを切り取っておきたかった。それは表現に携わる人間の義務感に近い。2012年に下山を見た人っていうのも、俺の目線で言えばやっぱり選ばれた人だと思うし、すごく特別だよ。確実に変化し、失われていくドキュメントを共有できた。

——DVDにしっかりとおさめられている都内16ヶ所16日間連続ライヴの前と後で、風景は変わって見えた?

カルロス : 曇ったまんま。放射能うんぬんの前に、僕にはその人からあふれる紫色の気のほうがアンモニアみたく鼻をつくよ。東京ってそんな生易しいもんじゃないんだよね。16日間思いっきりムスタングを振り抜いたし、全細胞さんたちも一切手を抜いてない。それでもまだまだここから挑戦していくに値するくらい、東京ってのはとことん狂ってるよね。たかだか16日間で変えきれるものではなかったけど、2012年のひとつの挑戦は映ってるし、その季節とともにいたってことが記録されてるのはすごく大切なことで。頭がおかしくなってきたのか、ほんとにいろんなことをすっかり忘れちゃうから、しっかり刻みつけておきたかった。半分は自分のためです。

少なくとも優しいものや綺麗なものは絶対つくらないよ

——アルバムに関してはどう?

マヒト : 最狂PA奥成さんと鳴らした音はやっぱりいかついよ。耳を破る気で音を研いできた大阪のひとつの記録。音から湯気がたつように伝わるヒステリックなブレスは、大阪の摩擦していた自分の姿のまんまだなあ。斬られてる自分も同時に見えてる。

——自分たちと季節の「瞬間」を、ちゃんとかたちにできたと。

マヒト : 表現者なら、状況がよかろうが悪かろうが、ちゃんとかたちにして提示していくってことはやめちゃいけないと思う。そこでやめてもそのままでいられるやつは、表現やめたらいいよ。やめる準備ができてるから立ち止まれるわけで。別に俺は人のこと否定してるわけじゃなくて、自分もそういう存在になれたら全然やめる。ストップできるくらい幸せになれたら、もう下山いらないと思ったら、全然捨てるよ。義務でやってる音楽じゃないから。

——でもかようにフル・スロットルでエクストリームな表現してたんじゃ、相当しんどいんじゃない?

マヒト : ずっとこうだからわからないなあ。よく高速道路の下でロンドンとパリの空にずっと話しかけてるような人、そういう一見狂ってるように扱われてる人は、本当は狂人じゃないんだよ。健康的な反応なの。東京は狂うべき不安要素がものすごくたくさんあるから、それに反応しないで普通を保ててる人のほうがおかしいわけ。それこそ生きてるってことを忘れてる節があると思うし。僕はそっちの方がよっぽど怖いよ。だから怖がったり焦ったりせず、全部、街や時代のせいにしてダメな人間になっちゃえばいいと思うなあ。最底辺のクズになって、やりたいようにやるんだよ。

——ところでファースト・フル・アルバムも今回も、ミックスからアートワーク、映像編集まで、すべて自分たちでやっているよね。ゆくゆくは自主レーベル「十三月の甲虫」の活動を拡張するとか、もくろみがあるから? 今後コラボレーションしてみたいクリエイターはいる?

マヒト : ビョークと中野ブロードウェイを散歩します。アートワークは単純に人に任せられなかっただけだけどね。いろいろ好きな人がいるから、2013年は動きがあると思う。すでに地下で仕掛けはじめています。
カルロス : 俺は天童よしみとデュエットしたい。

——健闘を祈ります。ファースト・フル・アルバムはエディットに凝ったもの、今回はライヴ感あるものになったけど、次作はどんなムードのものになりそう?

マヒト : 言うわけないでしょう。少なくとも優しいものや綺麗なものは絶対つくらないよ。美しい花って毒があるし、海も気を抜くと飲み込まれちゃうし、太陽だってピョンと飛び込んだら燃えちゃうし、美しいものって危ないでしょ? チャートに飾られた綺麗な花には出せない匂いがあるから。

——音以外でたとえるとしたら、下山でどんなニュアンスを出そうと思ってる? あるいは出てる?

マヒト : 血の匂いはするんじゃない。やっぱり刻まれた空気の粒が生きてるよね。酸素も窒素も嬉しいって顔するよね。空気もやっぱり生きてるってこと忘れがちみたい。こんばんは。

——血の匂いか。下山はキワモノでスカムだって勘違いされやすいけど、ライヴを見れば、全然そんなことないよね。エモーショナルで胸に迫ってくるものがあって、アンダーグラウンド志向でも排他的でもないし、もっとポップに全方向に開いていると思う。

マヒト : 人間対人間だもん。エモーショナルにならざるをえないよ。舌や喉自体がすごく感情的な肉だよね。震えるものはみんな悲しいからだもんね。

——ちなみにマヒトくんはへび年なんだって? 年男として、2013年はどう突き抜けていきたい?

マヒト : 蛇の手足がないフォルムにたまらなく魅かれる。歩く瞬間の地面とのモジュレーションにたまらなく焦がれる。美輪明宏は蛇、夜回り先生は豚。ちあきなおみは蛇、トイレの神様は豚。友川かずきは蛇、橋下徹は豚。僕は赤蛇だよ。

——2013年の抱負が聞きたかったんだけど…。とにかく、川を逆流する鮭のように、世の流れにあらがいながら今後もいきそうだね。

マヒト : 自分のうたのなかにもあるんだけど、川を逆流するっていうよりはね、そのヒレではばたいて空をぐんぐん飛んでいきたいよね。太陽を近くで見てみたい。川のなかで右往左往するんじゃなくて、魚だって飛べるんだよって。僕は魔法を信じてるから。

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LIVE INFORMATION

下山(GEZAN)ライヴ盤&DVDレコ発ツアー

2012年12月21日@和歌山 OLD TIME
2012年12月23日@神戸Mersey Beat
2012年12月24日@タワーレコード梅田NU茶屋町店
2012年12月25日@京都 METRO
2012年12月27日@高知 カオティックノイズ
2012年12月28日@岡山 ペパーランド
2012年12月29日@心斎橋 HOKAGE

2013年1月6日@名古屋 CLUB ROCK'N ROLL
2013年1月11日@渋谷 o-nest
2013年2月3日@十三 Fandango

PROFILE

マヒトゥ・ザ・ピーポー
下山のメダリスト&文句。あの中村せいように「プルトニウムの肝臓を持つ男」と評され、その尿はカスピ海に溶けていく夕焼けより赤いといわれている。 一度壊れると決して再生することのないと言われている肝臓を、逆再生させるコトによって脳内でひきおこされるフィードバックの吃音は 阿部薫のそれを彷彿させ、2000年代の格差社会にメスを入れた功績がえらい人に認められ、2018年には非国民栄誉賞を受賞するはずである。 自らのパートをGt&文句としているが、それはメレディス・モンクのグラスハープに感動したコトが由来であり、性格はやや悪いが、決して根が悪いやつではないはずである。 一時、三島由紀夫の孫であるという噂が紙面を賑わせたが妹に問い合わせたところ、鳩山友紀夫の間違いであるコトが判明し、2~3分ほど驚愕する。

イーグル・タカされ
下山のギタリスト。イーグルが鷹(タカ)ではなく鷲(ワシ)という意味であることにショックを隠せない24才日本男児。 漢とはなにか? 漢として生まれたのはなぜか? この男の丸い背中がすべてを語っている。 その屈強な姿勢から二十歳になるまで靴をはいたコトがなく、そのためゴツゴツと角ばった足を二つもつ。 そのあまりに衝撃的な造形美にヨーロッパの建築マニアの間からカルト的な人気を持つ。 「脳ある鷹は爪を隠す」というが彼はワシとタカのあいの子である。「イーグル・タカは爪を剥がす」 腹部に凶器を持つ男、彼の名前はイーグル・タカ。

シャーク・安江
下山のドラマ。下山のメンバーの中でもっとも小栗旬に似ていると言われている。 鮫の親子によって育てられた彼は、17才で海を捨て、18才の頃には全身整形に成功し人の姿を手に入れる。 しかし、人間社会に順応できるはずもなく、オホーツク海周辺諸島で相当数の犯罪歴があるコトを後の彼の自伝 「お口にチャックぼくシャーク(甲談社)」で告白している。そのため彼はドラマーとしてより、テロリストとして広く認知されている。 筋肉にやや強めの関心を持っており、時たまホームセンターのダンベルを持ち上げたりして満足している。

カルロス・尾崎・サンタナ
下山のB'ZFUNKDELICのべーシストであったブーツィー・コリンズが、NEW WAVEに対抗して、ULTRA WAVEという 精神性を提唱して、早32年。まったく波風が立たず消えたとされていたこのムーブメントは、極東の島国、日本で密かに息吹をあげはじめていた。 ゛カルロス・尾崎・サンタナ゛その男によってである。彼の出す低音が妊婦の赤ちゃんをいい塩梅にHighにするということで、たまごクラブ系列のママさんの間でバッハと人気を二分している。 普段の彼はヌードモデルで生計を立てているのだが、そこに集まるママさんの数の膨大さに業界では、韓流ブームの次はこの男だとされている。 His name is ゛カルロス・尾崎・サンタナ゛。

下山 official HP

この記事の筆者

[インタヴュー] 下山

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