チル系シンガー、Mel、セカンド・アルバム『LIFE』で綴った、いびつで愛すべき人生

2025/08/08 18:00

いい曲が書けて救われた──

──『LIFE』はMelさんのリアルな感情が出ているのと同時に、作家性も磨かれていると感じました。昨年リリースした“神様の運命論”のアンサーソングとして“神様の空想論”を制作し、“Down”と“Twinkle city”も対の関係とのことで。

Mel：アンサーソングが大好きなんです。そのきっかけはヨルシカさんの『だから僕は音楽を辞めた』と『エルマ』で。

──ヨルシカが2019年にリリースした、物語を軸にしたコンセプト・アルバムですね。音楽を辞めることになった青年・エイミーがスウェーデンを旅しながらエルマへ向けて作った楽曲を収録した『だから僕は音楽を辞めた』と、エイミーの手紙に影響を受けたエルマが手掛けた楽曲を収録した『エルマ』。

Mel：おまけにそれぞれの曲順どおりにアンサーソングを作って、それぞれがしっかりと1枚のアルバムとして成立してるんですよね。それに感銘を受けて自分もやってみようとトライしたんですけど、実際にやってみたら途方もなくて……。それで自分らしいやり方で──アンサーソングに挑戦したものが今回収録されています。でも最初からアンサーソングを作ろうとしていたわけではなかったんですよね。

──そうだったんですか。どのような経緯でできたのでしょう？

Mel：“神様の空想論”はサビを作っていたときに《夜空を飛べたら》《星が綺麗だな》という歌詞が出てきて「誰かを思っている曲だな」と思ったと同時に「そういえば“神様の運命論”にも《ねぇ星が綺麗だって》という歌詞があったな」と気づいて、そこからアンサーソングとして構築していったんです。“Down”と“Twinkle city”は、“Down”を作り終わった後に「この曲のアンサーソング作ってもいいかも？」と思ったんですよね。1枚のアルバムに２曲そういう曲が入ってるのも面白いなって。

Mel 「神様の空想論」Official Music Video

──“Down”と“Twinkle city”は曲順も並んでいて、さらにはMelさんがアレンジを手掛けています。

Mel：ラブソングはキラキラしたものというより、純愛なんだけどいろいろ事情があったもののほうが僕は好きで、それが“Down”なんです。この曲を書き終わって「相手はどう思うんだろう？」とふと思ったので“Twinkle city”を書きました。だから相手もこう思ってくれていたらうれしいなという願望が反映されていますね。どちらも僕がアレンジをしているので色合いも似た２曲になりましたし、アンサーソングとしてはバッチリな組み合わせにできました。

──アルバムのラストは「片手」。Melさんにはレアな冬ソングです。

Mel：僕、北海道の冬が大好きで……あ、雪かきとかは好きじゃないんですけど（笑）、イベントごとやイルミネーションがすごく好きなんです。冬の恋愛はほかの季節よりもドキドキするし、魔法みたいだなと感じていて。ついさっき言ったことと矛盾するんですけど、この曲は込み入った事情がある純愛というよりは、冬の純白な雰囲気を表現したくて、歌詞もいろんな言い方の「愛してる」で構成したんですよね。

──YAJICO GIRLによる透明感のあるイノセントなアレンジも効いています。

Mel：冬らしさもMelらしさもあるアレンジにしていただきました。2番のサビ終わりのCメロにコーラスが入っているんですけど、あのコーラスラインはYAJICO GIRLさんが考えてくださったんです。僕はこれまでコーラスを録ったことがなかったので、合わせた時の一体感や華やかさに感動しましたね。あれだけのクオリティのコーラスを作ったことがなかったので、そこにも注目してもらえたらうれしいです。

──今までの音楽人生のハイライトのようで、さらには新しい挑戦もあって、『LIFE』は充実のアルバムになりましたね。

Mel：かなり満足しています（笑）。でも次回作はもっと自分でアレンジをしたいなと考えているんです。

──『ノンフィクション』は８曲中１曲、『LIFE』は12曲中で「Interlude」含め4曲をMelさんがアレンジしています。今後はもっと増えそうですか？

Mel：次は大半をMelのアレンジで締めてやろうという意気込みで絶賛制作中ですね。今までのデモはギターをボイスメモで録っていたんですけど、最近はデモからアレンジを詰めて作っていて。来年は純度100％のMelの曲を数多く出したいという野望がありますね。あとはライブもたくさんやっていけたらと思っています。『LIFE』を作って「自分結構いい曲書けるじゃん！」と素直に思えたし、それが救いになっているんです。せっかく作ったんだから、しっかり届けていきたいですね。

いい曲が書けて救われた──

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