2017/10/12 00:00

【REVIEW】『23区』以降のメロウ・グルーヴ──bonobos、ニュー・シングルをリリース

メンバーの大幅な更新を経て昨年リリースされたアルバム『23区』で、その表現をネオ・ソウル〜R&Bのグルーヴへとシフトさせたbonobos。その長いキャリアのなかで大きな転換となったアルバムから1年、ここに新たなシングル『FOLK CITY FOLK .ep』を発表した。先行ですでにリリースされている、彼らの代表曲「THANK YOU FOR THE MUSIC」のリアレンジ・ヴァージョンも含む6曲は、まさに彼らの『23区』以降の現在の勢いを感じさせるものだ。端的にいえば『23区』でバンドが獲得した表現をさらに一歩推し進めた作品となっている。OTOTOYでは本作を、DSD、そしてハイレゾ版にて配信中。そしてレヴューにてその内容を紹介します。


bonobos / FOLK CITY FOLK .ep
【配信形態 / 価格】
【左パッケージ】
DSD(5.6MHz) + MP3データ付き
シングルまとめ購入のみ 1,800円(税込)

【右パッケージ】
24bit/96kHz WAV / FLAC / ALAC
AAC
単曲購入 300円 / シングルまとめ購入 1,800円(税込)

【Track List】
01. POETRY & FLOWERS
02. Heavy Weather Flamingos
03. THANK YOU FOR THE MUSIC(Nui!)
04. 永遠式
05. Gospel In Terminal
06. In rainbow, I'm a rainbow too

変化を希望するバンドから、新たな立脚点へ

文 : 峯大貴


bonobosの結成15年を超える、そのキャリアは“今いる場所からの脱却”がつねにどこかにあった。レゲエ・ダブをルーツとしたデビュー当初のポスト・フィッシュマンズというイメージからの脱却や、2005年のヒット曲「THANK YOU FOR THE MUSIC」のアンセム化に対しライヴで演奏しない時代が続いたり。しかし度重なるメンバー・チェンジも経て、そんな変化の振り子のグルーヴを持続させることこそが創作の源泉となっていたかのようにも思える。その時々の注目する音楽を研究し方法論を抜き出して取り入れる。そこに揺るぎないフロントマン蔡忠浩(Vo,G)が作るメロディとハイトーンでやわらかい歌声や森本夏子(Ba)の複雑なプロダクションに一本筋を通すベースラインなどで咀嚼した結果、取り入れた音楽とまるで別の世界に着地するような感覚がbonobosサウンドたらしめていた。 そんな中2015年に小池龍平(G)、田中佑司(Key)、梅本浩亘(Dr)が加入し、ネオソウルや現行ジャズシーンのリズムを抱擁した前作『23区』を5人編成で発表。また今年に入り日比谷野外音楽堂で6年ぶりのワンマン公演、その映像作品化のクラウドファンディングも達成。そんなバンド史上最も勢いある中での発表となる6曲入りの本作は、初めて“今いる場所をここに刻もう!”というモチベーションで作られたおそらく初の作品だと思えた。それぞれの楽曲が非常にマッチョなのだ。

『23区』で獲得したサウンドをさらに進めたシングル


「Heavy Weather Flamingos」ではホセ・ジェイムズやロバート・グラスパーらを思わせる『23区』以降のムードからさらに一歩踏み込んだジャズ・グルーヴ、めまぐるしくテンポが変化しぐらぐらする心地はさながら1本足で立つフラミンゴのよう。またホーンが装飾する「Gospel In Terminal」は普遍性をもったメロディとリズムに、ルート音を無視し崩壊寸前まで浮ついたコード進行がねっとり寄りかかる立て付けはキャッチーなポップ・ミュージックとしての響きの臨界点に挑戦した新たな代表曲の誕生だ。一方で8月に先行配信された「THANK YOU FOR THE MUSIC」のリアレンジもここで収録されている。以前は「We Will Rock You」を思わせるリズムを主体として蔡忠浩が音楽への愛をピースフルに歌う構成であったが、ネオソウルの揺らぎを加えたメロウな仕上がりで再びエバーグリーンな輝きを放っている。5人編成になった当初からライヴでは披露されてきたが、2015年当時にリリースしていたらおそらくディアンジェロやcero『Obscure Ride』との共振で評価されていただろう。そんな時流から半拍ずらし、じっくり練り上げられたこのタイミングでの発表にはやはり今ここで句読点を打つ意味を感じる。

特定のシーンやイメージなどを避けながら振り子を常に揺らしてきた彼らだが、本作を経た今、もうどんな場所にいってもbonobosのいるところこそが音楽の神殿なのだ。そう言いたくなるような頼もしさに溢れている。

RECOMMEND


bonobos / 23区(DSD 5.6MHz/1bit)

現在の音楽性へとシフトしたバンドの帰路となった作品。こちらはDSD、24bit/48kHzヴァージョンも配信中


Emerald / Pavlov City

端正なメロディとシルキーなグルーヴがゆったりと浸透していく、アーバンな魅力に溢れたEmeraldの新作。


Thundercat / Drunk(24bit/44.1kHz)

来日ライヴ、フェスでもそのライヴも大きな評価を受けた、フライング・ロータスの右腕にして、〈ブレインフィーダー〉いちの歌心。


The Jack Moves / The Jack Moves

モダン・ヴィンテージ・ソウル界期待の新星ザ・ジャック・ムーヴス。シルキー&メロウなグルーヴにやられます。


WONK / Castor

WONK、2枚同時リリースの2nd。こちらはメロウでソウルフルな彼らの魅力が凝縮したポップ・サイドなアルバム。

PROFILE

bonobos

レゲェ・ダブ、エレクトロニカ、サンバにカリプソと様々なリズムを呑み込みながらフォークへと向かう、多彩なアレンジと卓越した演奏能力にボーカル蔡の心に触れる歌声が混ざりあう、天下無双のハイブリッド未来音楽集団! 蔡忠浩(V,G)森本夏子(B)小池龍平(G)田中佑司(Key)梅本浩亘(D)の4メンズ&ウーメンでお届けします。

>>bonobos Official Site

この記事の筆者
峯 大貴

1991年生まれ、音楽ライター兼新宿勤務会社員兼大阪人。京都のカルチャーを発信するウェブマガジンアンテナ在籍。CDジャーナル、OTOTOY、Mikikiなどで執筆。過去執筆履歴などはnoteにまとめております。
Twitter:@mine_cism

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[レヴュー] bonobos

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