2017/07/14 12:47

【REVIEW】さらなる夢見心地のアーバン・サウンド──PAELLASのミニ・アルバム

United ArrowsやPeach Johnなどの有名ブランド、セレクトショップJackpotへのCM起用など、その都会的で洋楽ライクなR&Bサウンドでメジャー・シーンに着々とその名を浸透させつつあるPAELLASから、待望のミニ・アルバムが到着! 先行リリースとなった「Shooting Star」をはじめ、彼らの技量の幅広さを感じさせるトラック群。日本語楽曲など、まさに今後の更なる躍進を確信させるような1枚となった。レヴューと合わせてお楽しみください。

待望のミニアルバム!
PAELLAS / D.R.E.A.M.

【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV / AAC

【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム価格 1,234円(税込)

【収録曲】
01. Together
02. Shooting Star
03. Lying
04. MOTN
05. Fade
06. Eyes On Me

【REVIEW】PAELLAS『D.R.E.A.M.』

勢いに乗るPAELLASがミニ・アルバムをリリースした。その名も『D.R.E.A.M.』。"夢"というそのままの意味で捉えるべきか、点で区切れているということは、何らかの略称のダブル・ミーニングなのか。いずれにせよ夢の中でも流してほしいようなトラック揃いであることは間違いない。

今回のミニ・アルバムは一言で言うなら”いいとこ取り”という言葉が相応しいと思う。前作「Pressure」では音楽性をハウスからインディR&Bに照準を合わせ、洗練された魅力を押し出したが、今回はさらにジャンルを越境した音作りが行われている。ポップさの中には「こう来るか」という驚きが織り込まれており、前作リリース時のインタヴューで阿南が言った「違和感を残したい」という意思が反映されているように感じる。

改めて思ったのはPAELLASというバンドの守備範囲の広さだった。本当に多彩なサウンドに満ちたアルバムになっていると思う。先行リリースで話題を呼んだ「Shooting Star」は、ダフトパンクを彷彿とさせるイントロのフレーズに、MATTONのハイトーン・ヴォーカルが絶妙で気持ちいい。例えるならば夜のドライブ。メロウな音を鳴らしてみたら、次は電流のような間奏で酔わせてみたり。緻密に織りなされた音で、聴く者をグルーヴの海へと誘い出す。

PAELLAS/Shooting Star
PAELLAS/Shooting Star

「Lying」は、ダブの雰囲気をまとっている。かと思えば「MOTN」は正統派のハウス・トラック。気持ちよく刻まれるビートに思わず踊りだしたくなる。最後に収録されている「Eyes On Me」はもっと癖があって、シューゲイズ・ポップの要素も取り入れてきた。歌も、それまでの5曲とはまるで違う。

でもそれを1枚にまとめて出しちゃうんだから凄いと思った。次のトラックに移るたびに「えっ、次はこんな感じで来るの⁉」と良い意味で期待が裏切られ続ける。そして一見するとバラバラに感じる楽曲群も、アルバムとして通して聴くとスッと耳に馴染み、ちゃんと気持ちいい部分を突いてくれる。改めてすごいバランス感覚だ。

いまやR&Bライクな音楽は確実に「お洒落なサウンド」として受け入れられている。ただそんな中で、このアルバムは「一筋縄じゃ行かない」とちょっと中指を立てているようにも思えた。ひとつひとつのトラックはPAELLASが培ってきた高い音楽性とアーバンライクなスタイルゆえに"聴きやすくてなんかお洒落なもの"として受容することもできるが、やっぱり少しだけひねくれているというか、綺麗なだけにとどまらない魅力がある。おそらくそこで残る違和感のようなものが、阿南の言葉を借りるなら「ちょっといびつな感じ」なのだと思う。そういう部分を残したがるところが痺れるし、単なる流行りの切り取りで終わることはないと期待を抱かせてくれる。

ちゃんとポップで受け入れられるものを作っておいた上で、自分たちの興味を存分に押し広げたようなアルバム。これがライヴでどのように披露されるのかが楽しみだ。(Text by 阿部文香)

RECOMMEND

PAELLAS / Pressure(24bit/48kHz)

インディR&Bへと、その方向性の舵を切った2016年発表のフル・アルバム。

>>この作品の特集ページはこちら

DATS / Application

yahyelのメンバーも在籍する高橋幸宏や砂原良徳も絶賛した、DATS待望のデビュー・アルバム。

D.A.N. / D.A.N.(24bit/88.2kHz)

いまやシーンを席巻するD.A.N.のデビュー盤。R&Bやエレクトロニカ、テクノ、ポストロックなどさまざまなサウンドが溶け込んだ唯一無二の音。

LIVE SCHEDULE

“D.R.E.A.M.” Release Tour

2017年9月8日(金)
@東心斎橋CONPASS
w/ iri
時間:OPEN 19:00/START 19:30
2017年9月16日(土)
@東京 渋谷 WWW
w/ ROTH BART BARON
時間:OPEN 18:00/START 18:30
2017年10月4日(水)
@愛知 名古屋ell.SIZE
w/ Kan Sano
時間:OPEN 19:00/START 19:30
2017年10月6日(金)
@福岡 Kieth Flack
w/ the perfect me
時間:OPEN 19:00/START 19:30

>>more live information

PROFILE

PAELLAS

Vo : MATTON、Gt : Satoshi Anan、Ba : bissi、Sp : msd.、Dr : Ryosuke Takahashi

あらゆるジャンルの要素を独自のセンスで解釈し生み出すサウンドは、セクシュアルかつロマンチック。都会に漂うメランコリックな情景やその儚さを想起させるライヴ・パフォーマンスも支持され、あらゆるシーンや時代を超えた存在になる可能性を秘めている。これまでにUnited ArrowsやPeach John、新宿のセレクトショップJackpotのCM等に楽曲を提供しファッション業界からも注目を集めている。

 

>>PAELLAS アーティスト・ページ

>>PAELLAS オフィシャルTwitter

この記事の筆者
阿部 文香

1996年生まれの大学生。駒澤 零(こまさわ れん)って名前で絵も描いてます。Twitterは@ren_ren0824。

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[レヴュー] 9wes Music Group

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