2017/12/20 00:00

何もかもを肯定する美しい破壊衝動――緻密に再構築されたworld's end girlfriendの完結する世界

world's end girlfriendによる6年ぶりのアルバム『LAST WALTZ』、wegの音としか形容のしようのない、圧倒的な世界観を繰り広げていたが、このたび、収録楽曲をさまざまなアーティストがリミックスしたリミックス・アルバム『LAST WALTZ REMIX』をリリース。主宰レーベルのアーティストなど、多彩な顔ぶれのリミキサーたちが、その世界観をさらに拡張している。OTOTOYでは本作品をレヴューとともにハイレゾ配信でお届けしよう。

豪華クリエイター陣によるリミックス・アルバム!!
world's end girlfriend / LAST WALTZ REMIX

【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/48kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
単曲 173円(税込) / アルバム価格 1,728円(税込)
※AACのみ単曲 162円(税込) / アルバム 1,620円(税込)

【収録曲】
01. matryoshka REMIX / Plein Soleil
02. Kazuki Koga REMIX / Crystal Chrysalis
03. Satanicpornocultshop REMIX / Flowers of Romance
04. arai tasuku REMIX / LAST WALTZ
05. CRZKNY REMIX / LAST WALTZ
06. SPEAK LAW REMIX / Plein Soleil
07. FilFla REMIX / LAST BLINK
08. Serph REMIX / Angel Ache
09. KASHIWA Daisuke REMIX / Radioactive Spell Wave
10. Go-qualia REMIX / Girl
11. Vampillia REMIX / Girl
12. 2994898 REMIX / Plein Soleil


オリジナルアルバムも好評配信中!!
world's end girlfriend / LAST WALTZ

【配信形態】
WAV、ALAC、FLAC(24bit/48kHz) / AAC
>>>ハイレゾとは?

【配信価格】
単曲 216円(税込) / アルバム 2,160円(税込)
※AACのみ単曲 162円(税込) / アルバム 1,620円(税込)

【Track List】
01. LAST WALTZ
02. Plein Soleil
03. Angel Ache
04. Flowers of Romance
05. Void
06. Crystal Chrysalis
07. in Silence / in Siren
08. Radioactive Spell Wave
09. Girl
10. LAST BLINK
11. NEW KIDS(ボーナストラック)

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【REVIEW】world's end girlfriend 『LAST WALTZ』

「Plein Soleil」を聴くと、今までのちいさな罪を懺悔したいような気持にかられる。抒情的なコーラスワークは胸を締め付け、厳しくも優しい風を吹き込むのだ。必死になって記憶を手繰り寄せ、ごめんなさい、と呟くと、ふっと赦されたような感情が舞い込んでくる。 それはWEGの音楽が内包する優しい暴力性によるものであろう。

このリミックス・アルバムは、WEGが出した『LAST WALTZ』という回答の、緻密な再構築だ。「Plein Soleil」を冒頭と最後に配置し、その優しくも厳しい残酷な美しさを提示した中に、散りばめられた曲の数々。それらは一見様々なジャンルに散らばっているようでいて、WEGの音楽が我々にもたらすノンバーバルなものの一つの解釈として同一線上に広がっているように思えてならない。

world's end girlfriend / matryoshka REMIX/Plein Soleil
world's end girlfriend / matryoshka REMIX/Plein Soleil

YouTubeにも事前投稿されたmatryoshka Remixの「Plein Soleil」では、静謐なピアノの音が導入剤となって、楽曲が持つ魔力が心のさらに深みへと入り込んでいく。そうしてその美しくも厳しい破壊を目の当たりにしたと思えば、続く「Crystal Chrysalis」で暴力的なまでのノイズを降らせる。衝動的な一面はやがて美しく昇華され、鮮やかに幕を閉じる。実験的な積み重ねを追っていけば、arai taskuによる「LAST WALTZ」のメタル的なリアレンジは激しく荘厳で、まるで怒れる神のような静かな魅力を秘めているのだ。

そしてやはり、特筆すべきは「LAST BLINK」のリアレンジであろう。昨年発売のオリジナル盤ではアルバムのラストを美しく締めくくる役割を担っていたこの曲は、FilFlaによってアレンジを加えられ、より聖歌的で壮大な一大抒情詩となっている。揺らめく光と、懐かしい記憶と、情景が浮かぶような音の洪水。まるで廃教会の窓辺から差し込む光のように、この楽曲はアルバムを分断し、それまでの暗さや厳しさを纏ったトラックとの差を際立たせる。喩えるならば、荘厳と高潔の対比。 このリミックス・アルバムはリミックスでありながら、入念に考え抜かれた新譜と言っても過言ではない。

world's end girlfriend/ Plein Soleil
world's end girlfriend/ Plein Soleil

今、世界は少しずつ平穏を失くしている気がする。誰しもがきっと心のどこかで、何となく予期していることだろう。いつ戦争が始まってもおかしくないという状況を、どこかで感じ取っている。それが本当になるかはわからない。日本はおそらく隔離された国だ。単一民族によって整備され、守られた普通の生活。少なくとも多数派ではない。WEGは『LAST WALTZ』のインタヴューで死について触れた。

オリジナル・アルバム『LAST WALTZ』リリース時のインタヴュー

死を体感できる人はいまこの国にどれくらいいるのだろうか。現代日本では、死は映像に切り取られ、描かれることを拒絶する。先日あるドキュメンタリー映画を観た。僧侶の一生を追った物語だった。あまりにも自然に画面に映された彼の死体に、私はひどく動揺した。小さい頃に祖父を失くした経験もあるし、グロテスクな紛争の動画も淡々と観れるのに、ほんのさっきまでスクリーンで普通に話していた人が死体として登場することにひどく狼狽した。そして、それを映せてしまうことに驚いた。「規制されなかったの?」と無意識に考えてしまった。刺激の強いものばかり見るのがいいこととは言わない。しかし我々は余りにも守られることに慣れ過ぎてしまっているのではないのだろうか。 当たり前に訪れることからも、逃げるように目を背けることができてしまう。まるでメディアにおけるフィルター・バブルのように。WEGがリリース時に「人間もいつか死ぬとは分かっているけど、普段はそれが見えていないんです」と語ったアルバムが2017年の今、リミックスという形で再び我々の前へ顕現することに、なんら関係がないとは思えない。

ひとつの実を結んだ一種メタフォリカルな終焉に対し、与えられた新たな形態。このリミックス・アルバムそのものが、一種の再生であり、死であり、終焉であるのだ。(Text by 阿部文香)

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LIVE INFORMATION

『LAST WALTZ』のリリース・パーティー「LAST WALTZ IN TOKYO」が2018年1月19日に開催

2016年11月にリリースされworld's end girlfriend 6年ぶりのアルバムとなった『LAST WALTZ』のリリース・パーティー「LAST WALTZ IN TOKYO」が2018年1月19日に〈リキッドルーム〉にて開催決定!
ツイン・ギター、バイオリン、チェロ、ベース、ドラム、PCというバンド編成にVJと照明が合わさり、静寂と轟音、生音とプログラミング、旋律とノイズ、喜怒哀楽の境界を自由に行き来するwegの音世界をライブという場で描く激しくも美しい集大成的ライヴとなる模様。ゲスト・プレーヤーとしてweg主宰の〈Virgin Babylon Records〉から、2017年にsione名義でアルバム『ode』をリリースし、普遍的歌声を聴かせた湯川潮音と、downyのギタリストであり、こちらも〈Virgin Babylon Records〉から、2017年にソロ・アルバム『Lost in Forest』をリリースし、アーティストとしても圧倒的ギターを聴かせる青木裕の参加も決定。また、ライブ会場にはフラワーアーティスト ahi.相壁琢人による巨大押し花の展示も行われる。特別チケットは数量限定販売、一般チケットは10月14日より各プレイガイドにて販売開始。
入場者特典として、world's end girlfriend、matryoshka、Vampillia、Have a Nice Day!などの音源が収録された Virgin Babylon Records レーベルサンプラー音源のダウンロードコードが無料配布される。

world's end girlfriend「LAST WALTZ IN TOKYO」


2018年1月19日(木)
@LIQUIDROOM
Act : world's end girlfriend
Guest : 湯川潮音, 青木裕(from downy)
Open : 19:00 / Start : 20:00
Price : ¥3900

先行特別チケットは9月26日より数量限定にて発売。
<*特別チケットは予定枚数終了しました。
一般前売りチケットは各プレイガイドにて10月14日より発売。
ぴあ(345-983)、ローソン(L:75606)、e+(pre:10/3-9)
(問)SMASH 03-3444-6751 http://smash-jpn.com http://smash-jpn.com
TICKET INFO
一般発売:10月14日(土)
ぴあ(345-983)、ローソン(L:75606)、e+(pre:10/3-9)
CREDIT 主催:SMASH 企画制作:Virgin Babylon Records

PROFILE

world's end girlfriend

1975年11月1日 長崎県、かつて多くの隠れキリシタン達が潜伏した島「五島列島」に生まれ、10歳の時聴いたベートーヴェンに衝撃を受け音楽/作曲をはじめる。2000年デビュー。その後多くのアルバム作品、リミックス作品を発表。2002年、2005年にはバルセロナで行われる『Sonar Festival』に出演。2004年にはアジア・ツアー。2005年にはEUツアー。2007年にはUSツアーを行う。2008年にはイギリスで開催された『All Tomorrow's Parties』に出演。2009年カンヌ映画祭でも絶賛され世界中で公開された映画「空気人形」の音楽を担当。前作『Hurtbreak Wonderland』(2007年作)は現在も売れ続ける異例のセールスを記録し,ライブやweb上でも圧倒的世界観を提示しつづけている。2010年7月14日、matryoshka、about tess、夢中夢、Ryoma Maeda(aka milch of source)という濃厚なラインナップを率いてVirgin Babylon Recordsを設立。

>>world’s end girlfriend オフィシャル・サイト

この記事の筆者
阿部 文香

1996年生まれの大学生。駒澤 零(こまさわ れん)って名前で絵も描いてます。Twitterは@ren_ren0824。

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