2012/06/14 00:00

知ってる人も知らない人も、まずは1曲、フリー・ダウンロード。

とにかく、まずは聴いて欲しい。出来れば、以下の文章を読む前に。

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いい曲を歌う、いいアーティスト。

どんこう / パンドーラ
生楽器にこだわり、長い時間と月日を費やしてゆっくりとしたためられた逸品。2007年の活動開始から現在までの集大成。70年代の良質なポップスやSSW系の音楽に影響を受けつつアコースティックの可能性を独自の観点で追求した本作は、温かくも、どこか寂しい。

豪華ゲスト多数参加
鵜川知宏(FRISCO) / 山本将(PASTAFASTA) / 勝原大策(かせきさいだぁ&ハグトーンズ、カジヒデキなど) / 遠藤達郎(ビイドロ) / ゆうなり / 植村祐介(ululutoie)なども参加

【価格】
mp3 / WAV 単曲200円 / アルバム1000円

あぁ、いい曲だなぁと思った。

「いい声」「いいメロディ」「いい曲」といった言葉は、レビューに於いてNGとされている。原稿には、どこが「いい曲」なのか、なぜ「いいメロディ」なのか、いかにして「いい曲」が生まれたのかを独自の表現や取材を基に、広く(時に限定的に)伝えることが求められる。多くの場合は、その対象を知らなくとも、レビューを読むことで興味が沸くようなものである必要がある。であるならば、少しでも多くの人に引っ掛かってもらえるようなインパクトのあるキャッチや、売りを端的に伝えるコピー、名の知られたミュージシャンや作品を引き合いに出すといった手段を用いることが一般的だろう。

どんこうというアーティスト本人から、OTOTOYに連絡があった。手作りのWordの資料を見てみる。「ボーカル&アコースティック・ギターくまがいたつやのソロ・プロジェクト / 1980年生まれ / 70年代の良質なポップスやSSW系の音楽に影響を受けた」とある。スタッフに彼の存在を知る者はおらず、過度な期待をすることなく、手焼きしたであろうCD-Rを、小さなスピーカーで聴いた。あぁ、いい曲だなぁと思った。CDウォークマンに入れて、帰り道、イヤフォンで聴いた。やっぱり、あぁ、いい曲だなぁと思った。

どんこうは、いい曲を歌ういいアーティストだ。サウンドに特別目新しいところはないが、音色や位相など、凄く丁寧に作られている。口ずさめるようなメロディは、どこか懐かしい。コード進行や展開に斬新なものはないが、普遍的な良さを持ち合わせている。裏切ることもなければ、大げさ過ぎることもない。挙げようと思えば、共通項のあるアーティストを沢山挙げることも出来る。「丁寧」「普遍的」といったキーワードから、料理や工芸品なんかの例えも使いやすい。今作でいえば、多彩なゲストを引き合いに出すことで興味を惹くことも出来なくはないだろう。ただ、それをすることでちょっとした先入観、いや、期待感を持って欲しくない。恐らく、まだ多くの人が知らないであろう、決して派手ではないアーティストに、情報ではなく、音から先に出会って欲しい。本音を言えば、この原稿すら読んで欲しくない。

これで結ぶのは、あまりに無責任かもしれない。かといって、「生活に寄り添うような~ 」「日常こそが素晴らしい」「平熱の~ 」なんていう、レビューあるあるを使うことも憚られる。それを使った瞬間に、ある種のイメージを押し付けてしまうことになる。あ、もういいや。原稿を確認し、このページを作る編集部の方々にリライトを言い渡されても、書き直さない。どんこうは、いい曲を歌ういいアーティストで、『パンドーラ』はいいアルバム。それだけ。うん、それだけでいいと思います。(text by 藤森大河)

RECOMMEND

冗談の王様 / ビイドロ

『パンドーラ』には、遠藤達郎(ドラム)が参加。どんこうにも通じる叙情的なメロディーに絡み合うギター・サウンドが心地よい。USインディ直系サウンドでありながらも、ビイドロ独特の和のテイストが所々に散りばめられたオリジナリティ溢れる大傑作。

>>>ビイドロの大喜利大会はこちら

ウミネコサウンズ / 夕焼け

くるりが主催するNOISE McCARTNEY RECORDSよりソロ・アルバムをリリースした古里おさむを中心としたソロ・ユニット。06~08年はウミネコサンライズ名義で活動を行い、現在は、コテイスイ(HiGE)、ヤマジカズヒデ(dip)、須藤俊明(Ba)と共にuminecosounds名義のバンドとして活動。心ゆさぶるメロディーと歌声、サイケやUSインディーを通過したロック・サウンドは高く評価されている。

>>>『夕焼け』のレビューはこちら

平賀さち枝 / 23歳

デビュー・アルバム『さっちゃん』から1年で届けられた平賀さち枝のミニ・アルバム。録音には、ショピンやグッドラックヘイワのメンバーらが参加。色鮮やかでポップでありながら、どこか寂しさを湛えたメロディはどんこうに通じるところも。

>>>平賀さち枝の特集はこちら

LIVE SCHEDULE

2012/6/16(土) 池袋ベムスター
2012/7/7(土) 阿佐ヶ谷Next Sunday(レコ発イベント)どんこう&THE BAND
2012/8/11(土) 下北沢モナレコード

PROFILE

どんこう
ボーカル&アコースティック・ギターくまがいたつやのソロ・プロジェクト。
1980年7月生まれ。2007年夏からソロ活動を始め、都内のライヴ・ハウス、バー、カフェ、ギャラリー、野外などで活動中。
2008年11月にはPIAZZO RECORDSのコンピレーション・アルバム『V.A continuous chorus』に参加し、「妄想旅行」という曲でペダル・スチール・ギターやスチールパンなどをふんだんに盛り込んだ激ユル曲で異色を放つ。その後、自身のレーベル「YOWABI RECORDS」を立ち上げ、1atアルバム『パンドーラ』をリリース。

>>どんこう HP

この記事の筆者

[レヴュー] どんこう

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