2012/06/03 00:00

ゴルゴス & jun1 INTERVIEW

ダンス・ミュージックとしての機能性を求め、ビートの強度を高めてエレクトロニクスを導入するバンド。より豊かな景色を見せるため、言葉以上に音で物語るために楽曲を構築するアーティスト。多くのインスト・バンドが何らかの必然性や目的を持って音を放つことに対し、psybavaの音楽は、より純粋なものに聴こえる。あくまでメンバーの感覚で「ぐっとくる」ところを共有したような、素直なサウンド。決して独りよがりな裏切りをせず、欲しいところでちゃんと盛り上げてくれる展開。主張し過ぎないが、細やかな拘りを持った音色や位相。クサ過ぎるぐらいに大げさなメロディや時にベタなリズムも、楽曲のポピュラリティに華を添える。

昼の野外でビールの乾杯ラッシュを起こすことも出来れば、深夜のクラブでテキーラ・ショットの乱打戦もイケる。それでいて、早朝の芝生に寝転がるBGMとしても通用するバンド、psybava。本人たちが意図しているかは分からないが、彼らの音楽やステージの最大の魅力は愛嬌にあるように思う。朴訥とした話しぶりのメンバー最年少&老け顔ギタリスト・ゴルゴス氏と、psybavaのマネージャー兼レーベル・オーナー兼コワモテ・jun1氏を迎えて大阪で行われた今回のインタビュー。歌詞が無いだけに、よりダイレクトに、生活やキャラクターの滲み出るインストゥルメンタル・ミュージック。彼らの愛嬌の源泉を感じていただければ幸いだ。

インタビュー&文 : 藤森大河

500枚限定のCD音源を1ヶ月限定で配信開始!

psybava / spectrum
ダブの要素を取り入れたジャム・バンドとして活動し始め、トランペットやプログラミングを加えて音楽性の幅を広げたpsybavaが、500枚限定で発売したCD音源をついに配信開始!! 独りよがりでも、寄り添いすぎるわけでもなく、純粋に音楽を楽しむ姿勢が垣間見えるインストゥルメンタル・ミュージック。

【収録曲】
1.pre-victoria / 2.victroia(reprise) / 3.puzzle / 4.pray

【販売期間】
配信日から1ヶ月間

聴いた人を驚かせるというか、え? こう来る? みたいな音楽を作っていきたい

——では、まず自己紹介からお願いします。

ゴルゴス : psybavaでギターを弾いております、ゴルゴスです。

——ゴルゴス?

ゴルゴス : 本名はヨシダリュウノスケなんですけど、高校生の頃、黒板に「吉田・ゴルゴス・ガルシア・シンノスケ」と書かれていて、そこから、なぜかゴルゴスとかゴルさんと呼ばれ始めました。
jun1 : psybavaのマネージャー兼レーベル・オーナーのjun1です。宜しくお願いします。

——そもそも、psybavaの結成は?

ゴルゴス : 確か2005年らしいっすね。僕も途中から加入したのであまり詳しくは知らないんですが。作ったのはベースのスミダ(トモヨシ)さんで、オリジナル・メンバーで残っているのはスミダさんだけっすね。僕は、元々psybavaのトランペットだった人が働いていた古着屋の常連で、誘ってもらったんです。

左から、ゴルゴス、jun1

——jun1さんが関わり始めたのは?

jun1 : 3年前ぐらいに、同じイベントのクルーだったスミダに誘われてです。それまで3年近くやっていた別バンドのマネージャーをやめた直後だったので結構悩んだけど、ライヴを見てこれはもっと広めなアカンと思って、一緒にやってます。

——なるほど。ゴルゴスさんは元々、弾き語りをやっていたとのことですが、psybavaの曲は全てインストですよね?

ゴルゴス : そうですねぇ、スミダさんが言葉に意味を持たせたり、メッセージを伝えたりしたくない、とか言ってたような気がしますね。
jun1 : まあ、基本的に伝えたいことっていうのは無いんでね。思想的なものとか。

——psybavaっていうバンド名や曲名も何か意味があるというよりは、記号的なものですか?

jun1 : psybavaっていうのは、元々いたキーボードが、ファミレスで、ポテトフライかなんかに付いてたケチャップで「サイババ」って落書きをしていて、それええやんってなって。その後たまたまスミダがネットで拾ったサティヤ・サイ・ババ氏の画像のファイル名が「psybava.jpeg」だったそうなんです。
ゴルゴス : だから意味は全然ないっすね。ノリで名付けていることが多いです。

——psybavaの曲はメロディやリフが立っているから、リズムとかベース・ラインじゃなくて、ギターから作っているような感じがしました。曲はどうやって作っていますか?

ゴルゴス : あぁ、そうですね。ギターのリフから作ることが多いですね。今まではトランペットがいたからそれがメイン・メロディになっていたんですけど、去年抜けて、今の4人だとギターがメインにならざるを得なくて。メロディは凄く意識していますね。

——3人とか4人ぐらいのバンドでトランペットの存在って、凄く重要じゃないですか。

jun1 : すごく言われましたね、抜ける時は。psybavaといったらトランペットのいるインスト・バンドだっていうイメージもあったみたいで。まあでも、仕事の都合でしょうがなかったので。
ゴルゴス : 今は、豆腐屋になりましたね。

——じゃあ、今もラッパは吹いてるわけですね(笑)。

jun1 : そうそう(笑)。

——今回のアルバムに入ってるのは、トランペットがいる頃からあった曲ですか?

ゴルゴス : そうっすね。全部、ありましたね。
jun1 : だからまあ、鍵盤とかギターがトランペットのパートを弾いたり、アレンジを変えたりっていうことはやりました。
ゴルゴス : まあ、とにかく、面白い音楽をやっていきたいっていうだけですけどね。

——コンセプトがガチッとあるというわけではなく、自分たちが面白がれるような音楽を作ろうっていう感じですか?

ゴルゴス : そうです。でも、まだ全然未完成というか。未完成なんて言ったら何でCD出してんねんって話ですけど、絶対コレ! みたいなものはまだ見つけられてないと思いますね。個人的には、聴いた人を驚かせるというか、え? こう来る? みたいな音楽を作っていきたいです。ブラック・ミュージックとかでよくある、何してんねん? みたいな、笑えるぐらいの何がくるか分からないような感覚を、僕らなりに表現出来たらなぁって思いはあります。だから、曲にも決めてない部分があって、そこで何が起こるか分からないような、バンド・マジックみたいなものが出るところは残してあるっていうか。

——何かしらの反応が起こるような余白を作っているような?

ゴルゴス : そうですね。何かしら起こしてやろうっていう。同じライヴをしたくないんですよね。

——ライヴの時は、踊らせるぞ! みたいなムードがあると思うんですけど、それは意識的に踊らせようとしているんですか?

Jun1 : そうですね。踊らせたいってのはありますね。聴かせたいというより。ステージとフロアの境界とかいらんくて、踊ったらええやろ、みたいな。実際、ゴルゴスがフロアに降りてギターを弾いたりとかもよくありますしね。

——気持ち良さそうにギターを弾きますよね。

ゴルゴス : 有難うございます(笑)。ギター・ソロの時は自分のことをブルース・マンだと思って弾いてるんでね(笑)。

このインタビューを見て、入れてくれって言ってきてくれる人がいたら有難い

——psybavaは、どういう音楽を聴いてきた人たちなんですか?

jun1 : リーダーでベースのスミダはNATSUMENの影響がかなり大きかったみたいっですね。でも、ALLMAN BROTHERS BANDとかPHISHとか、ジャム・バンド的なバンドもすごく好きみたいやけど。
ゴルゴス : 共通して好きなのはその辺ですね。

——なるほど。ALLMAN BROTHERS BANDはpsybavaのギターの歌いっぷりに共通するところがありますね。

jun1 : 聴く人を選ぶようなものにはしたくないんです。まあ、メンバーは、中高生の頃に、普通のJ-POPとかJ-ROCKみたいな音楽を好きだったし。
ゴルゴス : 僕はL'Arc-en-Cielが好きでしたね。まあ、結構みんな、歌が好きなのかもしれないです。アンビエントなものも好きなんですけど、そればっかりになっちゃってもつまんないし。やっぱり歌とかメロディが好きなんでしょうね。
jun1 : みんなが楽しめるようなものにしようとすると、メロディも重視していかざるを得ないというか。psybavaはインストのバンドなのに、色んなジャンルのイベントに呼んでもらえるんですよ。歌モノとかヒップ・ホップとか。踊れるインスト・バンドばっかり集めました、みたいな、閉鎖的なイベントって結構多いじゃないですか。

——多いですね。しょうもないですよね。

jun1 : しょうもないですよ、ホンマ。しかもそういうのって、やる前から結果が見えてるじゃないですか。こういうメンツが集まってこういう感じになるんだろうなっていう。そういうものには興味がないんですよ。
ゴルゴス : 結果が見えてるのはめっちゃイヤですねぇ。予定調和とか。
jun1 : まあ、ウチはメッセージみたいなものはなくて、その日、その時、その場が楽しくなればイイっていうのがあるんで。

——こうやってパッケージになった音源って、リリースされた後も自分で聴いたりします?

ゴルゴス : うーん、恥ずかしながら結構聴きますね(笑)。もう自分じゃよく分からなくなってます。イイねって言われてから聴くとイイなぁって思ったり、あんましって言われてから聴くとあんましだなぁって思ったり。

——自分でも、もっとイケるなっていう思いがある?

ゴルゴス : そうですねぇ。めっちゃ正直な話、やっぱりトランペットが急に抜けて、メロディとして立つ楽器がギターとシンセになったことで、弱くなったというか。可能性はいっぱいあると思うんですけど、トランペットみたいな、単音でのバーンっていうアタリが衰えてるって感じがしますね。勿論、今の編成じゃないと出来ないこともいっぱいあるんですけど、現時点で出せる単音での説得力みたいなところは、トランペットに比べるとちょっと弱いと思ってます。

——それは、そもそもトランペットがいる時に作った曲だからってこともありますよね。

ゴルゴス : まあ、そうなんですけどね。でも、じゃあトランペットが入るまで待つっていうのは違うし、現時点でやれることをやっていかないととは思ってるんです。

——でも、今後、ホーンを入れるっていうことになる可能性もある?

ゴルゴス : 本当は、入れたいです(笑)。入れたいんですけど、そんなに都合良く、いい感じの人がいないというか。トランペットとかサックスやってる人って、ジャズとかファンクとか、そういうルーツ的なものをやりたい人が多いと思うんですよ。なかなか、新しいものをやろうっていう人が見つからないというか。これからよう分からん何かを作るっていうものに賛同してくれるホーンのプレイヤーがいたらイイんですけどねぇ。うん、正直、メンバーは増やしたいです。

——ゴルゴスさんの頭の中では、その曲に対して理想の音が鳴ってる感じですか?

ゴルゴス : そんなにハッキリとでは無いですけど、ありますね。やっぱり、ホーンとパーカッションは欲しいです。

——これって載せていいですか?

ゴルゴス : 全然イイっすよ。このインタビューを見て、入れてくれって言ってきてくれる人がいたら有難いですし。

——じゃあ、募集しましょう。

ゴルゴス: 応募があったらイイなぁ。

——まあ、じゃあ、psybavaは、今の4人でやることに固執しているわけじゃなくて、理想の音で理想の曲を作りたいっていう感じなんですね。

ゴルゴス : そうっすねぇ。勿論、4人でやるってのも大事ですけど、メンバーとか楽器が増えることで、よりイイ曲が出来るのであれば、そうしたいですね。

正直なところ、音楽だけで生活出来るようになりたい

——jun1さんは、psybavaがどうなって欲しいというか、どういう風にしたいですか?

jun1 : 丁度この前、メンバーとも話してたんですけど、俺は、とにかく色んな人に聴いて欲しいんですよ。売れる売れないは関係なくて。例えば、これから先、4人が音楽だけで食っていくっていうのは、難しいと思うんですよ。まあ、やりたくないこともやりながら、いわゆる売れるような方向に持っていくことは出来なくはないと思うんですけどね。4つ打ちにして、歌入れて、みたいな。でも、そうすることによって、メンバーがやりたくないことが混じってきてしまうのであれば、やらないです。

——あくまでメンバーがやりたいことをやるのが優先と。

jun1 : そうです。だから別で仕事をしながらも、自分らのやりたい音楽を一生やり続けて欲しいっていうのが、スタッフという立場からpsybavaに持っている思いですね。

——やりたいことをやっていて、多くの人に聴かれることを目指す、と。

jun1 : そうです。それがベストです。僕は、そんなに多くの利益が上がらなくていいんです。レーベルの立場でこんなん言うのもアレですけど(笑)。ただ、普段の生活のお金をバンドに突っ込まないでいいようにはしてあげたい。活動にかかる費用は、音楽活動で得たお金で回せるような。スタジオ代とかも含め。だから、ライヴをやって赤字になるようなことは避けたいんです。勿論、出たいイベントとかだったら交通費がかかろうが赤字になろうがやる時もありますけど、最低限、トントンになるような形にしようとは思ってます。

——分かります。まずは、そこですよね。

jun1 : そうなんですよ。生活の全てを音楽に捧げてるような人らからしたら、何甘いこと言ってんねんって話かもしれないんですけど、psybavaはそういうスタンスで良いと思ってますね。無理して契約して東京に行って、2年ぐらいで契約切れてどうしよう、みたいな状況は絶対避けたい。

ゴルゴス

——そうなると、jun1さんのモチベーションはどこにあるんですか? psybavaが好きっていうのは勿論あると思うんですけど。

jun1 : 僕は元々、マネージャーをやりたいわけでもレーベルをやりたいわけでもなかったんですよ。元々はイベントをやっているんですけど、それも、フラットな場を作りたかったというか。それこそ、EXILEとかAKB48とかいるじゃないですか? あの人らは、エンターテインメントとしてすごく完成されているものだと思うし、アレを好きになって、音源買ったりライヴに行く人がいるってことは理解出来るんです。ただ、もし同じ舞台で、どっちも知らない人がAKB48とpsybavaのライヴを観たら、AKB48が必ずしも一人勝ちしないと思うんですよね。

——知らないだけなんじゃないか、と。

jun1 : そう、そこなんですよ。知らないだけやと思うんですよ。だからイベントをやって、フラットな場を作って、知らせたい。資金力とかコネとかプロモーションとかで敵わないからって、そこで諦めたら、一部の人だけの音楽になってまうでしょ? それは、僕は我慢ならないんです。そこが、僕のモチベーションかもしれないです。儲かるに越したことはないんですけど、儲かったお金で自分の好きな物を買うとかってことはなくて。それをまた活動資金に回して、上手く回転していったらええな、ぐらいのもんで。

——なるほど。ゴルゴスさんは、どうですか? 今のはjun1さんの考えですが、ゴルゴスさんはpsybavaでどうしていきたいのか。

ゴルゴス : 正直なところ、音楽だけで生活出来るようになりたいです。良いギターも良いアンプも車も欲しいですよ(笑)。
一同 : 笑。

——ドンペリも?

ゴルゴス : ドンペリも飲みたいですよ(笑)。まあでも、あんまりそこばっかり考えないで、まずは、自分たちのコレだ! っていうような音楽を作っていけたらなぁとは思ってますけど。面白くて、予想がつかへんようなものを作りたいっていう。まあ、結局はそれなんですけどね。あと、まだ東京や名古屋には行ったことあるんですけど、まだ行った事の無い九州、北海道、沖縄とか奄美大島とか、それこそ世界中の色んなところでやりたいです。音楽をやりに色んなところにいけたら、すごく幸せです。

——旅芸人みたいな。

ゴルゴス : まさにそんな感じですね。でもまあ、音楽で食えなくてもバンドを続けて、色んなところに行けて、色んな人に会えて、色んな体験が出来たら、それでええなぁって最近は思ってます。僕は。

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PROFILE

2005年に川西(兵庫)にて結成。幾度かのメンバー・チェンジを繰り返し、現在はBa.スミダトモヨシ/Gt.ゴルゴス/Dr.聖夜goodvibes/Key. Hirotaka Shirotsubaki以上の4人で活動中。縦横無尽の全方位型インストゥルメンタル・パーティー・バンド。2010秋、2011春には都市型野外フェス渚音楽祭大阪会場に連続出演、2011年にはMaNHATTANとの2マンを梅田シャングリラにて成功させる。そしていよいよ2012年4月には、待望の新譜『spectrum』をリリース。いろんな人・モノを巻き込み最終的にはみんなを笑顔にします。

psybava official HP

この記事の筆者

[インタヴュー] psybava

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