前作『HYPER GIRL –向こう側の女の子-』で、軽やかに、そして年齢相応の痛みを伴ってデビューした16歳の女性ラッパー、daokoが新作『UTUTU EP』をリリースする。Pigeondustをプロデュースに迎えた表題曲+新曲、さらに所属レーベル<LOW HIGH WHO?>楽曲のカヴァー、リミックスを加えた全10曲を収録。
daoko / UTUTU EP
【配信価格】
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 1,365円
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1,200円
【Track List】
01. Ututu (Pro. Pigeondust)
02. 蛇の心臓 (Pro. Paranel)
03. ぐちぐち (Pro. Ghost Cheek)
04. 真夏のサイダー (Pro. DJ6月)
05. L&H (COASARU Remix)
06. Ututu (Reatmo Remix)
07. Ututu (waniwave remix)
08. 蛇の心臓 Instrumental (Pro. Paranel)
09. Ututu Instrumental (Pro. Pigeondust)
10. Ututu acapella
daoko / HYPER GIRL -向こう側の女の子-
【配信価格】
WAV 単曲 200円 / アルバム購入 1,500円
mp3 単曲 150円 / アルバム購入 1,500円
【Track List】
01. 向こう側の女の子
02. パレードへようこそ (Produced by もしゃすけ)
03. again (Produced by tukimi)
04. 最近 (Produced by COASARU)
05. みらいよそうズ feat. 狐火 (Produced by DJ 6月)
06. キラキラ (Produced by Yuji Otani)
07. 脳内DISCO (Produced by DJ 6月)
08. COLORS feat. 空也MC, Paranel (Produced by COASARU)
09. Fog (Produced by 観音クリエイション)
10. L&H (Produced by COASARU)
11. Now Loading (Produced by SUNNOVA)
12. bUd (Produced by Yuji Otani)
13. Ranunculus (Produced by 観音クリエイション)
ファンタジーとリアルの境い目を鮮やかに描く
m-floとのコラボレーション「IRONY」で俄然注目を集める女子高生ラッパーは、本EPでも切っ先を鈍らせることなくファンタジーとリアルの境い目を鮮やかに描く。〈おとなになれるならいますぐになりたいよ〉と願いながら〈暗くなる世界にひとり取り残された〉10代の独白にピアノの儚げな旋律が相俟う「Ututu」と、〈ふたりで飲んだサイダーは甘く爽やかに喉を駆けた〉と無垢なボーイ・ミーツ・ガールを歌う「真夏のサイダー」(トラックは前作収録の「みらいよそうズ」や「脳内DISCO」で見事なマッチングを見せたDJ6月が担当)の2曲の飛距離は、そのまま思春期の刹那的な感情の振れ幅に置き換えることができるだろう。「蛇の心臓」、「ぐちぐち」はそれぞれParanel(注1)、Jinmenusagi(注2)による楽曲のリコンストラクト。前者の叙情に寄った楽曲に対して、日本語ラップの文脈により近い手法で作られた後者の好対照な魅力も捨てがたい。収録されているリミックス楽曲――Reatomo、waniwave(注3)、そして前述したParanelの別名義であり<LHW?>を主宰するCOASARU(注4)の3者によるリミックス楽曲も三様で当レーベルの独自性に直結した出来栄えだ。
BSスカパーの番組『BAZOOKA』内の人気企画『高校生ラップ選手権』が、ある意味で無邪気かつ健全な甲子園的メソッドで若者とヒップホップの関係性をレップする一方、彼女はより音楽的で内省と向き合った対極のラップ表現に挑戦している。これも、スポーツとしてのフリースタイル・バトルでは掬い上げられない、ヒップホップの文学性に基づいた進化の枝葉だろう。日本のアンダーグラウンド・ヒップホップの保守本道を歩むFla$hbacks や、『高校生ラップ選手権』を足掛かりにUSラップの新たな直訳型として頭角を表すdodo(注5)、Youtubeで発表した“Pool”で注目を浴び<Summit>とのディールを果たしたOTOGIBANASHI’S(注6)、そしてニコニコ動画を経由し、ついにはm-floのようなメジャー・アーティストにもフックアップされるdaoko。10代~20代前半のヒップホップのみを切り取るだけでも、もはやおなじ日本語ラップの俎上では語ることのできない多様性を持っている。彼女たちの今後の文学表現に幸多きことを願うばかりだ。(Text by 高橋圭太)
注1 : 2005年にファースト・アルバムNEL HATE「動物達の演奏会」を発表後、2006年にLOW HIGH WHO?プロダクションを設立運営。choriとGeskia!とのユニット「vongaku」のアルバム「球体を言葉に綴るカラス」を2008年にリリース。またビートメイカー名義COASARUとしても活動。まどがらすとのラップ&フォークグループ「雨風食堂」での活動や、画家として、映像作家として、アニメーターとしても活動。
注2 : 2007年ごろからミクスチャー・バンドにてMCとしての活動を開始。ラッパー名義「Jinmenusagi」ビート・メイカー名「Ghost cheek」を使い分けフリー・ダウンロードにてWeb上に数々の作品をリリース。2011年、COASARUのアルバム『別人格コアサル』に客演参加。同年にMINT a.k.a. minchanbabyとユニット「バニーボーイズ」を結成、フリー・ダウンロード曲「ギャルボトムス」を発表。 その後、LOW HIGH WHO?に正式加入。1stアルバム『Self Ghost』をリリース。
注3 : Paranelの別名義。2011年にレーベル術ノ穴よりアルバム『別人格コアサル』をリリース。
注4 : 1986年生まれ、千葉県出身。現在は都心 / インターネットを拠点に活動しているLOW HIGH WHO?所属のラッパー / トラックメイカー。
注5 : 現在18歳のラッパー。昨年発表の新進気鋭のプレイヤーを集めた日本語ラップ・ミックステープ『REV TAPE』で注目を浴びる。その後、『高校生ラップ選手権』への出場や、数々のビートジャックで着々とシーン内外のプロップを集めている。現在はネットレーベル<rev 3.11>にて発表されるデビュー作を鋭意制作中とのこと。
注6 : bim, in-d, PalBedStockの3MC'sから成る日本のラップ・グループ。bimの呼びかけでin-d,PalBedStockは嫌々ながら2012年に結成。グループのコンセプトは「Dis○ey & Rap」という自由でアホらしいものである。愉快犯のようにバラエティに富んだトラックや3人独自のフロウから、まるでオモチャ箱から飛び出してきたかのような曲を生み出す
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V.A / HIGH SCHOOL HIGH! ~高校生RAP!!!
BSスカパーの番組『BAZOOKA』内の人気企画『高校生ラップ選手権』。出場している高校生アーティスト達の楽曲をあつめたコンピレーション・アルバム。高校生のラップと聞いて侮っていては足下すくわれますよ! dodoをはじめ、キレッキレのラップに打ちのめされます。
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PROFILE
daoko
1997年生まれ、東京都出身。「戯言スピーカー(初音ミク / ねこぼーろ作)」のRap ver.を自身でリアレンジ、Youtubeに公開され、当時15歳だった彼女の危うさと儚さで話題を呼んだ。さらに、不可思議 / wonderboy『さよなら、』に収録「世界征服やめた」のコーラスを務め謎の少女として注目を浴びる。2012年にファースト・アルバム『HYPER GIRL -向こう側の女の子-』をリリース。
露出のない彼女の存在感は留まらずメジャー・シーンから、各業界へと広まった。インターネットというベール、ライブ・パフォーマンスという素顔の二面性を持った彼女のスタイルは唯一無二に変わろうとしている。
>>LOW HIGH WHO? PRODUCTION