2017/09/27 00:00

【REVIEW】バンドの実験性の歴史を内包、そして新たなる質感も備えたホラーズの新作──ハイレゾ配信

リリースから約1週間、UKの『The Gardian』誌では満点のレヴューが掲載されるなど、すでに海外メディアでは大きな話題となっているザ・ホラーズの5thアルバム『V』。作品ごとにさまざまな方向性へと、その音楽性を変え、その登場以来、高い評価を受けてきたUKのバンド。デビューから10周年目の作品となる『V』ではこれまで挑戦してきたさまざまな音楽性を内包し、さらなる新たな一歩へと進み、バンドのポテンシャルそのものがさらに一段高い位置にあることを知らしめた、そんな作品となっている。OTOTOYではハイレゾ配信と、若干お得な、CDと同等音質のデータにて配信中(1500円!)。

ハイレゾ版&お得なCDと同様音質のWAV / FLAC / ALAC版を配信中

The Horrors / V 【左パッケージ : ハイレゾ版】
【右パッケージ : CD音質版】

【Track List】
01. Hologram
02. Press Enter To Exit
03. Machine
04. Ghost
05. Point Of No Reply
06. Weighed Down
07. Gathering
08. World Below
09. It's A Good Life
10. Something To Remember Me By

【配信形態 / 価格】
【左パッケージ : ハイレゾ版】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC
AC
単曲 410円(税込) / アルバムまとめ購入 2,600円(税込)

【右パッケージ : CD音質版】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC
AC
単曲 250円(税込) / アルバムまとめ購入 1,500円(税込)

REVIEW : The Horrors『V』

サイコビリー、サイケデリック・ガレージという出発となった、1stアルバム『Strange House』(2007年)。続く、2ndアルバム『Primary Colours』(2009年)での、轟音鳴り響くシューゲイザー、恍惚を誘うサイケデリックなクラウト・ロック・サウンドへの転向。高揚感を煽りつつ、抒情性をも担保するマッドチェスター的サウンドを鷲掴みにした、3rdアルバムたる『Skying』。そして、シンセサイザーをより前景化させ、ダンサブルなビートへまなざしをむけた4thアルバム『LUMINOUS』(2014年)。これまで、膨大なレコード・アーカイブの森をかき分け、稀代の英国インディー・バンドとして、上記のような音楽的変遷をたどってきたホラーズが、本作で試みたのは、インダストリアル・サウンドによる音楽的表現であったことはもちろん、彼らがこれまで行ってきた音楽的実験の数々の再提示でもあったように思われる。つまり、本作はホラーズというバンドが有する「実験性」と、その「実験の歴史」を内包した、バンドのアイデンティティをまさに体現する1枚となっているのだ。

バンドのアイデンティティを体現する1枚


まず、ホラーズの実験性という面からいえば、本作を特徴づけるのは、肌を突き刺すようなインダストリアル・サウンドであろう。「Hologram」、「MACHINE」という、本アルバムの初めを飾る曲群はまさに、このアルバムがインダストリアルを軸のひとつとした作品であると宣言しているようだ。 さらに、これまでホラーズが試みてきた種々のサウンドが表出していることも本作の大きな特徴だろう。アルバム終盤へ向かう中で見られる、「Point of No Reply」や「Weighed Down」でのたゆたうシンセサイザーと陶酔的なシューゲイジング・ギター、「Gathering」でのマッドチェスター、シューゲイズ・サウンドの混在は、まさにこれまでホラーズが作り上げてきたものだ。そして、ホラーズ、ナンバーワンのダンス・ロック、インディー・ポップ・チューンたる「Something Remember Me By」に至っては、Bloc Party、Foster the Peopleなどをこれまでに手掛けた、本作のプロデューサーであるPaul Epworthの仕事が結晶し、前作でのダンサブルなサウンド志向をさらに純化させた1曲といえるだろう。

これまでの作品、特に1st、2ndアルバムにて明確だった、耽美かつダークな音楽性をインダストリアルという側面で表現しつつ、3rd、4thアルバムで試みたであろう大衆性をも取り込む本作においてホラーズが成し遂げたのは、ホラーズというバンドが構築してきたアイデンティティ、つまりは彼らの音楽的な実験性と、その実験の歴史をより明瞭な形で我々の前に提示することであったといえそうだ。変化をいとわないことは、拠り所となる足場を伴わないことでは決してない。変化それ自体をアイデンティティとし、常にフロンティアを求め前進する。そんなホラーズの姿を真正面から伝える快作が、この「V」なのである。(text by 尾野泰幸)

PROFILE

The Horrors

06年、デビュー前にも関わらずNME誌の表紙を飾るなど超ド級の注目新人UKバンドとしてシーンに登場。09年発表の2作目『プライマリー・カラーズ』が全英25位を獲得。NME誌1位他、国内外の年間ベストを総なめにした。11年の3作目『スカイング』が全英5位を獲得し、モジョ誌2位を獲得。12年2月に開催した第1回Hostess Club Weekenderでヘッドライナーを務める程人気バンドへと成長。14年に4作目となる『ルミナス』をリリース。全英チャート初登場6位を記録。同年のサマーソニックに出演を果たした。17年6月に約3年ぶりとなる新曲「Machine」を公開、5作目となる『V』をリリースした。

The Horrors 日本語アーティスト・ページ
The Horrors アーティスト・ページ

この記事の筆者

[レヴュー] The Horrors

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