新感覚ドリーム・ポップ! 期待の男女デュオがデビュー
Purity Ring / Shrines
モントリオールを拠点に活動する男女デュオ、ピュリティ・リングのファースト・アルバム。Pitchforkで「Best New Track」の獲得や、Dirty Projectorsの前座、更には「FUJI ROCK FESTIVAL 2012」出演など、耳の早いリスナーからは既に話題沸騰中の彼ら。90年代R＆B、ドリーム・ポップ、モダン・ヒップホップなどの要素を混ぜ合わせたドリーミーなサウンド。そして、光に溶けるような歌声。今年要注目の彼らの、瑞々しい11曲。
【価格】
mp3 単曲 : 200円 / アルバム : 1500円
WAV 単曲 : 200円 / アルバム : 1500円
まどろむサウンド、光に溶ける歌声
今年の始めに、Tyme. × Tujiko（その名の通り、トラックメイカー、作曲家のTyme.＝ヤマダタツヤと、ソロ・アーティストであるTujiko Norikoが組んだユニット）の新譜を聴いてぶっ飛んだ。これ以上ないというくらいに音数が詰め込まれたトラックの上に、さらに歌が乗っている。だからといって、歌の印象がぼやけてしまっているわけでは決してない。歌の存在が邪魔になってしまうギリギリのラインでポップ・ミュージックの形を保っているこのアルバムに、僕は深く感動したのだ。
そして同時にこうも考えた。このような音楽を作るには、経験が必要なのではないか。それこそ、Tyme.やTujiko Norikoのように作曲のキャリアを積んで、音の配置を知り尽くした人間でないと、このバランスは保てないだろうと。音を足すのは簡単だが、抜くのは難しい、というのはミュージシャンの間でよく言われることだが、それでも、これだけ音を足すことは新人のミュージシャンにはできないだろうと思っていた。
しかし、Purity RingはTyme. × Tujikoと同じことを21歳と24歳の若さでやってしまっていた。何故こんなことができるのだろう。確かに、デスクトップで音楽が作れるようになったことで、ミックスまで含めた個々のミュージシャンの作曲スキルはあがっているのかもしれない。だが、そういった誰にでも通用するような理屈では説明出来ない完成度がこのデビュー・アルバムにはある。今、最も創造的なミュージシャンを輩出しているレーベルの1つ、4ADからリリースされるこのアルバムは、彼らに秘められたポテンシャルを十二分に示している。
さらにもう1つ、言葉では伝わりにくいので、YouTubeの映像を見てもらうのが早いのだが、彼らは叩くと発光して音がでる、見たこともない打楽器(というか装置)を使って、ライヴを行うことでも話題を呼んでいる。ネットで情報を拾っただけだが、この不可思議な、しかしとても魅力的な楽器は、どうやら自分達で作ったようだ。彼らの創造性は、音の外側、つまりライヴ・パフォーマンスにまでも及んでいる。
もし、あなたがこのアルバムを一聴して、彼らの音楽性が気に入らなかったとしても、Purity Ringというこの若いユニットの名前は覚えておくべきだ。前述したように制作環境の発達によって音楽制作が容易になった現在、名前が知られていなくても、才能ある若いミュージシャンはまだまだいるだろう。しかし、その中でも、彼らは、ずば抜けた才能とアイディアを持ったユニットである、と、この時点で言い切ってしまってよい。彼らはこれからも僕たちをわくわくさせてくれるはずだ。（text by 上野山純平）
RECOMMEND
GYU(HQD Ver.) / Tyme. × Tujiko
アルバムごとに進化していく、フランス在住の女性音響/エクスペリメンタル・ポップ・ミュージシャン、ツジコ・ノリコのオリジナルな歌世界にヤマダタツヤ aka Tyme.(MAS)の緻密で豪快なビート感が注ぎ込まれた圧倒的アルバムが完成。Tyme.の不可思議な派手さのあるトラックと、Tujiko Norikoのいつになくポップなメロディが重なり合った、暗くも明るい、踊りながらの年末/年始ムード。「階段から転げ落ちる」ツジコと「ハートをギュンギュンいわせる」Tyme. の強力なコンビネーションにカラダが動き、ハートが “ギュー”となってしまう傑作アルバム。
Daniel Land & The Modern Painters / The Space Between Us
マンチェスターの叙情派シューゲイズ・バンド、エンジニアズのメンバー、ダニエル・ランド率いるザ・モダン・ペインターズ。ブライアン・イーノやコクトー・ツインズらの影響を受けたドリーミーな世界観。メランコリックなサウンドに重なる、美しくも儚い歌声。シューゲイズの総本山、英国のClub AC30よりリリースされる新作に未発表曲3曲を加えて配信中。
きのこ帝国 / 渦になる
きのこ帝国が結成されたのは、2007年。同じ大学に通っていた、佐藤(Gt,Vo)、あーちゃん(Gt)、谷口滋昭(Ba)、西村”コン”(Dr)の4人から成る。結成の翌年からライヴ活動を開始し、以降ライヴ・ハウス・シーンで特別な存在感を放ち続けている。これまで2枚の自主制作アルバムをリリースし、本作『渦になる』が初の全国流通盤となる。
PROFILE
Purity Ring
カナダはハリファックス/モントリオールを拠点に活動する男女デュオ。ゴブル・ゴブル（現ボーン・ゴールド）のドラムとボーカルとしてツアー三昧の日々を送る中、R&Bやヒップホップをこよなく愛するコリンが曲作りを開始し、ミーガンにボーカルを依頼。11年1月にインターネットで発表するや否やたちまち世界中から賞賛の嵐が! 英老舗レーベル「4AD」と契約し、世界デビューを果たす。
