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2019/06/06 18:00

 

〈第8回パンダ音楽祭〉アーティスト&お客さんに愛されるフェスの光景―OTOTOYライヴレポ

 

これ以上ない好天に恵まれた5月11日(土)上野恩賜公園野外ステージにて〈第8回パンダ音楽祭〉が行われた。

毎年楽しみにしている固定ファンも多い〈パンダ音楽祭〉だけに、今年もチケットは発売1時間余りでソールドアウト。最高気温予想28℃という真夏のような暑さの中、開場と同時に客席はあっという間に埋まって行った。

オープニングでは、パンダキャップを被りウクレレを手にして、MCを務めるフリーアナウンサー加納有沙が「みなさんの日頃のおこないが良いおかげですごく良い天気になりました!」と挨拶。「パンダ音楽祭のテーマ」をウクレレ弾き語りで歌い上げ、会場は早くもサビの大合唱。さらに会場の屋根に舞い降りたカラスも「カァーカァー」と合いの手を入れる不思議なセッションも見られるなど、パンダ音楽祭ならではの一体感でスタート。

●崎山蒼志
賑やかな祭囃子のSEに乗って大歓声の中登場した崎山は、すぐにギターを弾き出して1曲目「夏至」を歌い出した。パーカッシブにギターを鳴らしながらリズムを取り歌う姿に会場中から固唾を飲んだような視線が注がれる。どんなアーティストなのだろう?という思いで観ていた初見の人が多かったのかもしれない。激しくギターをかき鳴らして曲は「旅の中で」へ。徐々に激しさを増して行くストロークで、首を振りながら歌う独特のアクションを見せる。「はじめまして、静岡県から来ました崎山蒼志です」との挨拶から、「サントリー 天然水GREEN TEA」のプロモーション企画『徒然なるTRIBUTE』に参加した際に書き下ろした曲「柔らかな心地」を歌う。ジャングルビートのリズムとは裏腹な爽やかさを感じるメロディと、独特の鼻にかかったような歌い方が印象的だった。「上野って初めて来たんですけど、いいところですね……」と朴訥なMCに拍手喝采。観客が静かに聴き入った「国」から、次が最後の曲であることが告げられると、一斉に「え~!」と終わりを惜しむ声がかけられる中、「五月雨」を歌い上げた。ギターとヴォーカルの節回し、言葉との絶妙なズレが彼の独特の響きを持つ音楽を構築していて、余韻がいつまでも耳に残った。

●ギターパンダ
加納に手を引かれて、ギターパンダが登場。「みなさま、イエ~!いやいや、こちらこそイエ~!」と、パンダ音楽祭ではお馴染みのコール&レスポンスで観客を掴むとすかさず「自己紹介のうた」で、「見た目はパンダだがじつは中身は人間」であることを早々にカミングアウト。中身の山川のりをの出身地、住所まで自己紹介する徹底ぶり。「好きな音楽はロックンロール!」に大歓声だ。どことなくパンダヘッドが以前のものより新しくなっているような? ライヴ定番曲「うたをうたおう」でアツいスピリットを聴かせてみせたが、あまりの暑さに、熱中症になってしまう可能性がある、とのことで“子供と夢見る乙女の夢をぶち壊す”パンダの正体コーナーへ。パンダの大きな頭から、小さいパンダが続々登場して、首から下を脱ぐとスーパーロックスターのおじさん・山川のりをが登場してカルピス・プレスリーとなってさらにステージを展開。アカペラで歌出したミディアムテンポのバラード「本当は何もないのかもしれない」は、アコーディオン弾き語り奏者・ゴトウイズミのカバー。MCはひたすらユーモア満点ながら、ひとたび曲を歌い出すと、さすがの歌唱力と心の琴線に触れる曲調でグッとくるのがギターパンダの素敵なところだ。会場内は子どもたちが走り回っている等、牧歌的な雰囲気で楽しんでいる。「とばせロック」で盛り上がると、「あと一曲歌ったら帰ろうと思います」「え~!?」「ろくすけ!(永六輔)というオリジナル・コール&レスポンスから、最後は〈生きてりゃ色々あるけれど〉と歌う「いろいろ」で締めくくった。パンダ音楽祭の象徴の一人だけに、定番の流れと楽曲の素晴らしさで今回も盛り上げてくれた。

●カネコアヤノ
時刻は15時過ぎ、太陽が高くなり気温も上昇している中、ステージに上がったカネコアヤノ。登場するや否や、サウンドチェックの歌声で観客を圧倒した。ゆったりと歌う「ジェットコースター」「朝になって夢からさめて」が少しまったりとしてきた客席に心地よく広がって行く。「楽屋の廊下で練習していたら、弦が切れちゃって。そうしたら、崎山君が弦をくれました。崎山君の弦を背負って歌います」と、思わぬコラボを告白してドッと客席を沸かせた。中盤から徐々に熱量を上げたライヴ。ド迫力の歌唱となった「アーケード」をはじめ叫ぶようなヴォーカルが強烈だ。全身を揺らして歌の世界に没頭したステージングに、飲んだり食べたりしながら眺めていた観客たちも惹きつけられてじっと歌う姿を凝視している。「愛のままを」でライヴを終えると、大きな拍手が会場中を包み込む中、ステージを降りていった。

●眉村ちあき
開演前に、「撮影OK」とのアナウンスがあり、「ただし、迷惑をかける人はブロックします、と眉村さんが言っていました」とのアナウンスで笑いに包まれた。パンダならぬヒョウ柄の衣装でステージに登場すると「弾き語りを中心にやってと言われたけど、トラックメーカーなのでトラックを中心にやります」と言いつつ、始まったのは、モーツァルト歌劇「魔笛」第2幕「夜の女王のアリア」。見事としか言いようのない歌唱力に、大歓声を受けてスタートとなった。「弾き語りトラックメーカーアイドル、眉村ちあきです、よろしく!」と、改めてクールなトラックに乗せて「東京留守番電話ップ」で会場中を巻き込んでいく。「ほめられてる!」ではステージ前に集まっている子どもたちを見ながら「柵を越えないように我慢してるのかな?偉いね~!」とほめたかと思えば、客席を見渡して「子ども、じじいもばばあもいっぱい!」と爆笑させる。「奇跡・神の子・天才犬」のコール&レスポンスの後、ワイヤレスのハンドマイクを持ったまま客席に突入!歌いながら隅々まで歩いて行くと、スキンヘッズのお客さんの頭上にペットボトルを乗せてみたり、水を口に含んで頭に吹きつけてみたりとやりたい放題。さらに「おい、祭りだー!全員立てー!」、客席に立ち上がると、「メソ・ポタ・ミア」を歌いながら、数人に神輿のごとく担がれて仰向けのまま上から下まで客席を練り歩くという、パンダ音楽祭史上に残るパフォーマンス。そのサービス精神と遊び心で目一杯盛り上げた後、ステージに戻って平然とギターを持って「ブラボー」を歌い出したところに、とんでもない大物ぶりを感じさせた。観客を掌に乗せるめちゃくちゃ面白いステージングと、「ピッコロ虫」に代表される楽曲のクオリティ、抜群の歌唱力で、さらなるファンを獲得したであろう最高のライヴだった。

●奇妙礼太郎
おもむろにリズミカルなシャッフルを弾き出した奇妙礼太郎。「行くあてなし」で、ブルージーなヴォーカルで歓声を集める。さらに弾むストロークでの「エロい関係」へ。どこか、昭和のドラマの主題歌のようにも聴こえる、ドラマティックな歌に酔わされる。また、フルアコースティックのギターの音色が乾いたジャキジャキとした音を出していて、奇妙のヴォーカルと絶妙なコンビネーションとなっていた。チューニングしながらペグを上下して音を上げ下げして曲のように聴かせるだけで歓声が起こる。リラックスした様子でザ・ビートルズ「Till There Was You」を歌うと、手拍子に合わせて「カエルのうた」や「どんぐりころころ」を歌い出して大合唱になるなど、会場全体がリラックスモード。その流れで歌い出した「プカプカ」の歌い出しに大歓声が起こった。どっしりとした弾き語りアレンジの「ダンスミュージックフォーミー」は、円熟味すら感じさせた。「尾崎豊の「ダンスホール」という曲がとても好きなので、歌ってもいいですか?」と、拍手を受けながら歌い出した「ダンスホール」は、奇妙らしいリズム、歌いまわしでアレンジされたもの。日が落ちかけたステージに照明が入り、ムード満点。エンディングは再び「行くあてなし」で大合唱となった。

●曽我部恵一
ミスター・パンダ音楽祭、曽我部恵一が今年もトリを務める。アコースティック・ギターの音は太く、誰よりも暖かい音だ。ステージに上がってすぐに歌い出したのは、「baby blue」。「恋におちたら」と続く、ゆったりと、丁寧に歌うオープンニングだったが、突然、激しくパワーコードを8ビートで刻みながら歌いだした「天使は」でムードは一変。後半でシャウトすると、立ち上がって両腕を突き上げる者もいた。続いて「キラキラ!」が飛び出して手拍子が巻き起こる。お客さんも徐々に立ち上がってステージ前に人が集まってきた。
MCでは、まだまだ暑い一日を指して「パンダ音楽祭史上、一番天気良いらしいよ」とひと言。「娘が高校で軽音に入っていて、カネコアヤノさんの曲をカバーしているらしくて。ご本人に言いました」とのMCにどよめきに似た声が上がる。続いて18年前に子どもが生まれたときに作ったという「おとなになんかならないで」を歌い上げた。〈心がどうしようもないとき あなたの心が壊れてしまいそうなとき 音楽は流れているかい?〉(「満員電車は走る」)そんな問いかけが、薄暗くなってきて会場に広がって行き、皆静まり返って、歌う曽我部の姿を見つめている。機関車のような迫力で激しくギターをかき鳴らしながらシャウトした曽我部に、この日一番の大歓声が飛ぶ。まさに名演と呼ぶに相応しい熱唱だった。
「恋をしている女の子の歌を。恋をしてますか、みんな?」と呼びかけて「シモーヌ」へ。途中、ギターの弦を切った。ほぼ毎回、パンダ音楽祭では弦を切っているのがおなじみというぐらい、激しいストロークが熱い。歌いながらブチっと弦を引きちぎるアクションも。歌い終わると「弦がなくなってきた(笑)。でもまだ4本ある」と苦笑いしつつチューニングしてそのまま歌う曽我部。「STARS」では、ギターを置いてマイクを手にステージ前に出て、ステージ周辺に集まった観客と共にアカペラで合唱した。すぐにアンコールに応えると、再び弦の切れたギターを手に「ありがとう、パンダ音楽祭!」と歌い出したのは、「青春狂走曲」。観客の多くが席を立ちステージ前に集っての大合唱となった。王道のセットリストで聴かせた今年の曽我部恵一ライヴ。最後、ギターにはほとんど弦が残されていなかった。

気温の高さをものともせず、熱演を見せたくれたアーティストたちと目一杯音楽を楽しむお客さんたちで、今年も大団円となった〈第8回パンダ音楽祭〉。それぞれのギターの音色も歌声もまったく違う、個性的なアクトによる弾き語りフェスとしてお客さんにもアーティストにも愛されていることがよくわかる一日だった。

撮影:勝永裕介(@yuusuke_DdL)
取材・文:岡本貴之

〈第8回パンダ音楽祭〉
2019年5月11日(土)上野恩賜公園野外ステージ
出演:曽我部恵一奇妙礼太郎ギターパンダ眉村ちあき/崎山蒼志/カネコアヤノ
司会:加納有沙

〈セットリスト〉
●崎山蒼志
1. 夏至
2. 旅の中で
3. 柔らかな心地
4. 烈走
5. 泡みたく輝いて
6. 国
7. 五月雨

●ギターパンダ
1. 自己紹介のうた
2. うたをうたおう(子供と夢見る乙女の夢をぶち壊すコーナー)
3. 恋愛重症
4. 本当は何もないのかもしれない
5. とばせロック
6. いろいろ

●カネコアヤノ
0. セゾン(サウンドチェック)
1. カウボーイ
2. ジェットコースター
3. 朝になって夢からさめて
4. わかりやすい愛 丈夫なからだ
5. 春
6. さよーならあなた
7. アーケード
8. 愛のままを

●眉村ちあき
1. 夜の女王のアリア
2. 東京留守番電話ップ
3. ほめられてる!
4. ピッコロ虫
5. 奇跡・神の子・天才犬
6. メソ・ポタ・ミア
7. ブラボー
8. 即興~Teeth of Peace
9. おじさん

●奇妙礼太郎
1. 行くあてなし
2. エロい関係
3. 東京23区
4. Till There Was You〜かえるのうた〜どんぐりころころ〜プカプカ
5. タイドプール
6. ダンスミュージックフォーミー
7. 君はセクシー
8. 水面の輪舞曲
9. ダンスホール

●曽我部恵一
1. baby blue
2. 恋におちたら
3. 天使
4. キラキラ!
5. おとなになんかならないで
6. 満員電車は走る
7. セツナ
8. シモーヌ
9. LOVE-SICK
10. STARS
アンコール
青春狂走曲

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