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2025/02/04 12:00

 

【ライヴレポート】真心ブラザーズ、〈目黒フォーク村〉で仲野太賀、アイナ・ジ・エンド、曽我部恵一と共に聴かせた 素晴らしき歌と笑いの数々

 

真心ブラザーズが主催するライヴイベント〈目黒フォーク村〉が2025年1月30日(木)めぐろパーシモンホールで開催。旅人(ゲスト)として出演した仲野太賀、アイナ・ジ・エンド曽我部恵一と共に、愉快な歌とトークで会場に詰め掛けた大勢の人々を楽しませた。

〈目黒フォーク村〉は、真心ブラザーズをホストに、旅人となるゲストを ”愉快なフォーク村” に招いて繰り広げられるアコースティック・ライヴのイベント。これまでも、「神戸フォーク村」「六本木フォーク村」というように開催地をタイトルに冠しており、今回は東急東横線 都立大学駅から徒歩7分の目黒区八雲の大きな会場、めぐろパーシモンホールでの開催により〈目黒フォーク村〉として “開村”された。

客席は上階までギッシリ埋まっており、それぞれのファンが集結している雰囲気だ。定刻の19時になると真心の2人、YO-KING(Vo.Gt)と桜井秀俊(Gt. Vo)がステージに登場。すぐにアコースティックギターを持つと、YO-KINGがカウントを取ってストローク、桜井が単音フレーズを弾いて、〈初恋の人に出会った時のような〉とほがらかに歌い始めた。曲は、吉田拓郎「わしらのフォーク村」の替え歌で「目黒フォーク村」。曲中、桜井が「2016年、北海道は石狩平野でフェスの企画として始まったこのライヴ、2023神戸、2024六本木、そして今年は目黒にやってまいりました!」との口上を聴かせて拍手喝采。曲を終えると、ステージ前に並んだ花壇に触れ、「神戸のときに導入して3回目です」(桜井)「評判悪いんだけど続けてる(笑)。続けることが大事だから。造花ですから、嫌でも枯れませんから」(YO-KING)とトークで和ませて、デビュー曲「うみ」へ。緩やかでメロディアスなおなじみの曲に、お客さんは全員着席したままじっくりと聴き入っている。降り注ぐ日差しのようなライティングの下、いぶし銀のハーモニーを重ねる真心、本日も絶好調。

2016年のフェスで、いろんなアーティストを呼んでカバーをやってもらって評判が良かったので、独立したライヴとしてやるようになったと、このイベントの成り立ちを説明した桜井が、「仲野太賀さん、アイナ・ジ・エンドさん、曽我部恵一さん、今回は初めて全員年下ということで」と明かすと、YO-KINGはすかさず「アイナ・ジ・エンドさんに対抗してサクライ・ザ・ファーストとか」と桜井に改名を提案(?)。そんなリラックスした雰囲気のためか、YO-KINGがいきなり出だしを間違ってしまうハプニングもありつつ、披露されたのはニューアルバム『SQUEEZE and RELEASE』からの「オレは音楽」。2人のギターが小気味よく絡み合い、YO-KINGのギターソロを経て〈NO CHUU CHOO NO CHUU CHOO〉とクセになるコーラスを繰り返し、終盤でさらに白熱した歌と演奏を聴かせた。

「最初の旅人を呼びたいと思います!仲野太賀君!」と呼び込まれて勢いよく入ってきた仲野は「人がいっぱいいる!」と客席を見上げる。舞台は何度かやっているという仲野。桜井に「歌のみの出演というのは?」と尋ねられると、「菅田将暉の結婚式以来ですね(笑)。お客さんがいる状況っていうのは初めてです」と緊張気味に告白した。そんな仲野が自ら選曲したという1曲目は、ザ・ハイロウズ「日曜日よりの使者」。YO-KINGは、「来年から、“日曜日よりの使者”ですから!大河の太賀なんだから。本物の日曜日よりの使者!」と、2026 年の大河ドラマ「豊臣兄弟!」で主演・豊臣秀長役を演じることが決定していることに触れて客席を沸かせると、「リハのときに思いついたんだけど、これ本番で言おうと思って我慢してた」と明かして笑わせた。その流れのまま、歌い出した仲野の見事な歌唱にどよめく客席。太くてよく通る聴いていてとても心地良い歌声だ。〈流れ星が たどり着いたのは 悲しみが沈む 西の空〉と歌うパートは桜井と2人で歌い、後からYO-KINGが高音のハモリをつける。

1曲目から大盛り上がりとなると、「すごく気持ち良いです!」と仲野は清々しい笑顔を見せた。「本当にすごく良い声だよね」(YO-KING)「すごく素直なストレートな感じで気持ち良いですね」(桜井)と真心の2人も称賛。仲野は今回のイベントに自分が出演することに「なんで?」と思ったお客さんも多かったと思うが、自分自身でも「なんで?」と思ったという。「今日その答えがわかったと思います」との桜井の言葉に納得の拍手が沸き起こった。続いては、「大好きな曲」として仲野が選んだ「サヨナラCOLOR」(SUPER BUTTER DOG/ハナレグミ)。桜井のギターに合わせて歌い、YO-KINGがブルースハープをかぶせていく。素朴で伸びやかな歌声が胸にスッと入ってくる。2番ではYO-KINGがハーモニーを付ける。普段の真心でのハモりとは違う、仲野の低音を包み込むようなYO-KINGの歌声もまた見事で、その素晴らしさに拍手が鳴りやまず。

「素晴らしい!すごいよね!?こんな天才と一緒に歌えるなんて」と自らを指しながら、褒めているのか自慢しているのかわからない発言のYO-KINGに対して、「ありがとうございます!」とピュアに応える仲野に場内爆笑となった。コラボの最後に歌われたのは、YO-KING書き下ろし曲「その先の先の世界」。旅サークル「MIDNIGHT PIZZA CLUB」を結成している旅好きな仲野に贈られた曲のようだ。歌い出すと間違えたようですぐにストップ。「ごめんなさい!」としゃがみ込む仲野の、なんだかかわいらしい姿に桜井は思わず「ずるいよ~!」とひと言。再開すると、6/8拍子のストロークに合わせたオールディーズ調のロッカバラードをYO-KINGと共に歌い、最後は「ありがとうございました!」と、全力疾走でステージを後にした。

真っ白なドレス姿で、ステージにアイナ・ジ・エンドが登場すると、客席からファンの「アイナー!」という大声援が飛ぶ。桜井が「今回の選曲で、みなさんの知らないアイナさんを見られると思います」と、曲紹介をせずにギターを弾き始めると、アイナとYO-KINGが歌い出したのは、なんと「崖の上のポニョ」(藤岡藤巻と大橋のぞみ)。スタンドマイクに向かいアイナが振りをしながら〈ポーニョ ポーニョ ポニョ さかなの子〉とあどけないニュアンスの声で歌うと、YO-KINGはその姿を横目でチラ見して振りを真似ながら歌っている。〈パークパクチュッギュッ! パークパクチュッギュッ!〉と繰り返す箇所は2人でバッチリ振りを決めて、振り合わせするお客さんも。まさかの1曲目に大いに盛り上がった。

選曲理由についてアイナが、「YO-KINGさんの声に合いそうだなってずっと思っていたんです。念願だったんで、嬉しいです」と伝えると、「こちらこそ、まさかポニョでデュエットできるとは」とYO-KING。さらに「ギターもすごくむずかしそうですよね」とのアイナの言葉に、「久石譲先生のオーケストラを1人でやったので」と胸を張る桜井に拍手。桜井が「次の曲も宮崎駿つながり」と紹介するとアイナは、「やっぱりお2人は森の奥から出てきたような、ちょっとジブリの世界があるから。どうしても宮崎駿さんから抜け出せなくて、この曲も連れてこようかなと思いました」と独特な視点での真心評から、「ひこうき雲」(荒井由実)を歌唱した。抑揚の効いた表現力で、アイナの歌声の魅力が存分に発揮されたこの曲では、終盤の一瞬のシャウトが鳥肌ものだった。歌い終わると「幸せですー!」と呟くアイナ。「こちらこそですよ、震えました」とYO-KING。桜井も「リハでもすごかったけど、本番も。あんたすごい人だ!」と感嘆の声を上げた。

YO-KINGがステージ裏で「緊張しない」と言っていたこともあり、「今日は過去いちリラックスしてます」というアイナに対して、YO-KINGは「俺はポニョで過去いち緊張したけど」と意外な心境を明かすなど、ほっこりするやり取りから最後に披露されたのは真心のライブアンセム「サマーヌード」。アイナは1番を歌い、2番でYO-KINGが〈目を伏せて〉と歌うと手で目を隠すアクションを見せるなど、曲の世界に没入しながら表現する。桜井のギターもひと際激しく弦を震わせて、ラストのサビは3人のハーモニーを重ねて、アコースティックながらスケールの大きなパフォーマンスとなった。

アイナがステージを後にすると、「しびれたー」と言う桜井に、「なんか、俺が「サマーヌード」歌うときの伴奏と違ったよね?」とのYO-KINGの指摘が入り、「ちゃんといつもやってますよ!?」と返す桜井に対して、「いや、なんか顔をちょっと作ってた」とYO-KING。「だって妖精のようだったから」とアイナを称える桜井だが、「桜井だって妖精みたいなもんじゃない。妖精対妖精」とYO-KING。軽妙なやり取りにお客さんは笑いっぱなしだ。そんな流れから、「次の人は“熟成された妖精”です」と桜井が曽我部恵一を呼び込んだ。「今、うちの息子が音楽を聴いていて、何が一番好きなの?って訊いたら“真心ブラザーズ”って言ってました。すごく好きなんですよ」と、高校1年生の息子が真心ファンであることを2人に伝えると、サニーデイ・サービス「青春狂走曲」からスタート。3人がアコギを弾きながら歌うゆったりとしたリズムの力強い1曲は、まさに“フォーク村”そのものといった雰囲気だ。「青春狂走曲」はテレビ番組をパロディしたモノクロのMVが作られているが、実際に演奏していないのにどうやったら良いかわからなかったという曽我部に、YO-KINGは「だってデビューまでライヴしかしてこなかったのに、急に(MVで)演技しろって言われても無理だよね」と同時期にデビューしてキャリアを重ねて来た2組ならではのトークを聴かせた。

YO-KINGが「この曲を歌う曽我部君を聴いてみたい」と選曲したのは、はっぴいえんどのアルバム『風街ろまん』1曲目を飾る「抱きしめたい」。曽我部は「東京に出てきてバンドを始めたすぐ後に聴いて、次の日からバンドのサウンドが変わった。“これやろう”って」と曲への思いを語った。アコースティックならではのどっしりとした演奏で、オリジナルに匹敵する躍動感を聴かせる3人。照明の演出も相まってサイケデリックなムードを醸し出す中、曽我部が激しく咆哮する迫力に圧倒された。歌い終わると曽我部は、「大滝(詠一)さんの曲って、シンプルなコードなんだけど、コード進行が映画を観てるような気がします」と評した。

次の曲として、RCサクセションの「スローバラード」が告げられると大きな拍手が起きた。「車中泊が好き」という曽我部は、「この曲に僕の車中泊のイメージが詰まっているんです。ブルースだし、どこにでもいけるし、でも居場所が決まってないさみしさもあるし、自由さと心もとなさが一緒にあるような曲で憧れでした」と思い入れを語った。冒頭から曽我部がものすごい声量で伸びやかに歌うと、〈カーラジオから スローバラード〉からはYO-KINGが歌い継ぎ、〈悪い予感のかけらもないさ〉は2人で声を合わせ、〈あの娘のねごとを聞いたよ ほんとさ 確かに聞いたんだ〉はYO-KINGが歌うなど、細部にわたり歌い分けた。歌い終わるとYO-KINGがブルースハープを吹き、曽我部が激しくギターをかき鳴らしやがてアルペジオへ移行して、桜井がイントロのテーマフレーズを弾きながら3人の音が1つになってエンディングへと向かう。曲への愛情と魂がしっかりと宿った、たまらない名演だった。

ここからは再び真心の2人のライヴへ。ギターのダウンストロークで息を合わせて「突風」からスタート。ソリッドな演奏と緊張感のあるメロディ、そしてシニカルな歌詞。1999年にシングルリリースされたこの曲が歌うしなやかで強い人生観は、普遍的に今も胸を鷲掴みにする。桜井が流れるような旋律を奏でてYO-KINGが歌い出した「流れ星」は、「別れの歌三部作」の1曲。悲しみが雪のようにしんしんと降り積もる失恋曲が、胸を締め付ける。

「素晴らしい旅人のみなさんに、刺激を受けました。今年もバッチバチに活動していきますので、よろしくお願いします!」そんなYO-KINGの頼もしい言葉から飛び出した曲は、「明日はどっちだ!」。自然に沸き起こった手拍子が広がり、サビで客席も明るく照らされて、YO-KINGのシャウトに合わせてステージに向けてオーディエンスの手が伸びる。間奏では桜井が花壇の前まで出てロックンロールなソロを聴かせた。

アンコールでは、2人がお揃いのイベントTシャツ姿でステージに上がり、弾き語りライヴ・ツアー『真心道中歌栗毛 2025』の開催を発表した。そしてゲストの3人を呼び込むと同じくTシャツを着て登場して、それぞれが今日の感想をひと言。

「こんな素敵なステージに立たせていただいて、本当に胸がいっぱいです。ありがとうございました!」(仲野)

「あらためて、真心ブラザーズはマインドから、生き様からカッコイイからずっとカッコイイんだなって。本当に今日は幸せでした。こんな大人になりたいです!ありがとうございました!」(アイナ)

「息子に自慢をしたいんですけど、今海外にいるので帰ってきたら自慢します。めっちゃ楽しい1日でした。ありがとうございました!」(曽我部)

桜井はイベントを振り返り、「毎回、建付けは一緒なんだけど、来て下さる旅人の方で全然内容が違って、しかもやってみないとわからないので。いつかは夢としては、“村祭り”をやりたいですね」と今後の夢と展望を語った。

最後に歌われたのは「空にまいあがれ」。YO-KINGに始まり、サビは全員で合唱。2番は仲野が歌い出して、間奏のYO-KINGのハープから、アイナが〈大したことなどないのさ〉から〈僕はここにいるよ〉までのパートを歌い、3番は曽我部が歌い出す。ゲストの3人それぞれの歌声と真心を合わせた5人の合唱で聴ける、じつに豪華な「空にまいあがれ」となった。「ありがとうございましたー!」(YO-KING)「また会いましょう!緞帳よろしく!」(桜井)とスタッフに合図を送ると、ステージの幕が左右から閉じて行く。その間、仲野はなぜか全力でコマネチ!それを見たアイナも並んでコマネチポーズをキメる中、終演となった。まさしく真心ブラザーズだからこその、この空気感。終始歌の楽しさと笑いに溢れ、しばらく余韻に浸れる本当にスペシャルな一夜限りのイベントだった。

PHOTO:石川雄斗
取材・文:岡本貴之

ライヴ情報
〈真心ブラザーズ『目黒フォーク村』〉
2025年1月30日(木)めぐろパーシモンホール(東京都目黒区)
出演:真心ブラザーズ
旅人(ゲスト):アイナ・ジ・エンド / 曽我部恵一 / 仲野太賀
〈セットリスト〉
1. 目黒フォーク村
2. うみ
3. オレは音楽
4. 日曜日よりの使者 (with 仲野太賀)
5. さよならCOLOR (with 仲野太賀)
6. その先の先の世界 (with 仲野太賀)
7. 崖の上のポニョ (with アイナ・ジ・エンド)
8. ひこうき雲 (with アイナ・ジ・エンド)
9. サマーヌード (with アイナ・ジ・エンド)
10. 青春狂走曲(with 曽我部恵一)
11. 抱きしめたい (with 曽我部恵一)
12. スローバラード (with 曽我部恵一)
13. 突風
14. 流れ星
15. 明日はどっちだ!
EN1. 空にまいあがれ(全員)

ライヴ情報
真心ブラザーズ 10人編成バンド・ライヴ『熟成』
2025年4月20日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA
開場16:45 / 開演17:30

ツアー情報
〈弾き語りライブ・ツアー『真心道中歌栗毛 2025』〉
2025年5月5日(月・祝)
群馬・高崎シティギャラリー コアホール
開場16:00 / 開演16:30

2025年5月9日(金)
愛知・名古屋市千種文化小劇場
開場18:30 / 開演19:00

2025年5月10日(土)
京都・金剛能楽堂
開場16:00 / 開演16:30

2025年5月17日(土)
島根・松江フォーゲルパーク センターハウス
開場18:00 / 開演18:30

2025年5月18日(日)
広島・出雲大社広島分祠 神楽殿
開場17:00 / 開演17:30

2025年5月30日(金)
高知・蛸蔵
開場18:30 / 開演19:00

2025年5月31日(土)
香川・栗林公園 商工奨励館
開場14:30 / 開演15:00

2025年6月7日(土)
北海道・小樽GOLDSTONE
開場17:30 / 開演18:00

2025年6月8日(日)
北海道・旭川 島田音楽堂
開場16:00 / 開演16:30

2025年6月14日(土)
宮城・青葉山公園 仙臺緑彩館 交流体験ホール
開場15:00 / 開演15:30

2025年6月21日(土)
秋田・あきた芸術劇場ミルハス ホールA
開場16:30 / 開演17:00

2025年6月22日(日)
青森・ねぶたの家 ワ・ラッセ イベントホール
開場16:00 / 開演16:30

2025年6月28日(土)
大分・芝居の湯
開場17:00 / 開演17:30

2025年6月29日(日)
熊本・キャバレーニュー白馬
開場16:00 / 開演16:30

2025年7月5日(土)
兵庫・湊川神社 神能殿
開場14:30 / 開演15:00

2025年7月6日(日)
静岡・起雲閣 音楽サロン
開場16:00 / 開演16:30

2025年7月10日(木)
東京・浅草公会堂
開場17:45 / 開演18:30

2025年7月20日(日)
沖縄・桜坂劇場 ホールA
開場15:30 / 開演16:00

会員サイト【P.D.C】にて最速先行予約受付中
期間限定となりますので、是非この機会をご利用下さい!
https://www.sma-ticket.jp/artist/magokorobros
※受付期間:1月31日(金)18:00~2月9日(日)23:59

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