アイドル・グループへの詞の提供、映画音楽家としての活動で国際的にも高い評価を受けるなど幅広い才能を発揮している入江陽が、シンガー・ソングライターとしての待望の1stアルバムをリリース! シュールな世界観、予測できない展開でイメージを繋ぎ合わせ、曲ごとの音風景を描き出す。『水』というタイトルの通り、変幻自在に姿を変えて聴くものの心に染みわたる一枚。今作にはリミックスとして、1980年代初頭に活躍、昨年復活を遂げた伝説的なバンドEP-4の首謀者佐藤薫、複数のバンドを扇動し音楽人生が20年を越えたいまも精力的に活動する大島輝之といった一筋縄ではいかない面々も参加。奇才の製作した楽曲がさらに奇才の手にかかり、どんな変貌を遂げるのかも聴きどころだ。さらに通常11曲入りのところを、OTOTOY限定ボーナス・トラックとして12曲目の「週末」を収録。気が付いたらこの『水』に全身を侵食されているかも?

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入江陽 / 水
【価格】
WAV 単曲 250円 / アルバム購入 1800円
mp3 単曲 200円 / アルバム購入 1500円

【Track List】
1. めきしこ
2. 卒業
3. 砂遊び
4. イタリア
5. 地震
6. 川
7. 地震 [カメラ=万年筆 REMIX]
8. 砂遊び [大島輝之+大谷能生 REMIX]
9. 卒業 [Another Version]
10. 川 ~2013年宇宙の旅、宇宙交信曲~ [DJぷりぷりREMIX]
11. めきしこ [佐藤薫 (EP-4) REMIX]
12. 週末 [OTOTOY限定ボーナス・トラック]


代表レパートリーとも言える6曲とリミックスなどで構成されたデビュー・アルバム。タイトルに冠した「水」は、ユングによると“無意識”の象徴。ヒップ・ホップ以降のソウル感を感じさせる歌と共にどこかシュールでいびつな心象風景が立ち現れるさまは、確かに無意識の海へ潜っているかのようだ。そういう意味では、「病んだ現代を歌でカウンセリングする」というコピーは、言い得て妙。聴く/効く、カウンセリングといったところか。ポップでありながらも、聴くごとに海の深みにハマッていくような危険な魅力がたまらない。佐藤薫(EP-4)、カメラ=万年筆、DJぷりぷり、大島輝之+大谷能生などリミックス陣の顔ぶれは多種多彩だが、最近の彼の志向からすれば納得の人選。その振れ幅の大きさ(=自由さ)が、入江陽という若き才能の未来を暗示しているかのようだ。

INTERVIEW : 入江陽

インタヴュー & 文 : 小暮秀夫

無頼派のジャズマン兼小説家みたいのになるって思い込んでいた痛い奴で(笑)

ーーもともと医者志望だったんですか?

父親が精神科医だったので、なんとなく精神科医には興味があったんですよ。でも、もともとは文系大学を卒業して無頼派のジャズマン兼小説家みたいのになるって思い込んでいた痛い奴で(笑)。親もそういう僕を察したのか、現役で医学部に入ればバンドとかもいっぱいできるし、みたいなことを言ってきまして(笑)。だったら自分も早くバンドをやりたいから、みたいな感じで医学部に入ったんです。音楽をやりたいなら音大に行けばよかったのに。それを騙し騙し国家試験まで通った後で限界が来ましたね。

ーーそれで自分の気持ちに正直に、音楽の道へ本格的に進もうと。医者を辞める時にシンガーソングライターとしてのいまのヴィジョンは見えていたんですか?

見えなかったですね。映画音楽の仕事がその時に来たのもすごい重要で。年上の友人というか、仲良くしていただいてるかたが仕事を僕に振ってくれたんですよ。それがサトウトシキ監督の『青二才』という映画で。サトウ監督と会った時も「このあいだは医者って言ってましたけど、辞めました」って言って、自分の話ばっかするやばい病気の奴が音楽をやることになってしまった、みたいな空気になってましたね(笑)。でも辞めたらすぐに音楽療法とか色々な話が来るようになって。

ーー大学時代からシンガーソングライター志向はあったんですか?

大学の高学年の頃はインスト志向が強くて、オーボエ吹いたりピアノで現代音楽作ったり、てなことやってて。歌ものも自分で作った曲を人に歌ってもらったりはしてましたけど、自分では時々歌うぐらいで。前から知ってる山田光君(ライブラリアンズ)とかは、自分がこんなにメインで歌うとは思ってなかったみたいですね。


イタリア(MV)

ーー入江陽アンサンブルという名義で活動を開始したのはいつ頃からですか?

入江陽アンサンブルはメンバー不定で、本格的にライブをやり始めたのは、医者を辞めた頃からですね。去年の10月に初めてモナレコードに出演して。

ーーそしてセルフ・レーベルからライヴ・アルバムを2枚リリースした後、今回の『水』でデビューを飾ると。ライヴ・スペースとして独自のカラーを持つ試聴室が主宰するレーベル、VACATIONからのリリースになった経緯は?

それは(試聴室のオーナーである)根津悟さんに声をかけていただいたからですね。イベントスペースと人って、(カラーや波長が)合う/合わないがある気がしていて。試聴室ってベテランの方からの信頼もすごく厚いのに、新しい人達も出入りしてるじゃないですか。かつ、閉鎖的じゃないうえにお山の大将っぽい人がいないっていう。そういうところが魅力的な気がして。ライブハウスとかって、自家中毒化しやすくないですか? でも試聴室の方々って、みんなどこか冷めていて、いいと思っていてもいい意味で懐疑的で。そこがすごく信頼できるというか。

ーー入江君はその時聴いてる音楽の影響がダイレクトに反映されるタイプではないですよね?

そうですね。全然よく分からない感じで出てきますね。

ーーちなみに、最近はどんなのを聴いているんですか?

最近はカニエ・ウェストの新作『イーザス』がすごいかっこよくて。ビートと声しかないんですよ。

ーーヒップホップはもともと好きだったんですか?

好きですね。ベタですけど、THE BLUE HARBとかをきっかけにハマッて。ヒップホップは詩人の側面というよりは、リズムのゆらぎが好きなんですよね。井上陽水や忌野清志郎の歌い方もそうだと思うんですけど、拍がズレていく感じがあって。そんなにカッチリ歌わないじゃないですか。そこが面白い。海外のヒップホップも、歌詞の意味を読まないでリズムを聴いてるというか。

ーーそのへんが自分の音に今後反映されていく可能性は?

反映させていきたいですね。黒人のリズムに無理やり日本語を乗せると、新鮮な響きになる気がしていて。

独りよがりじゃない形で現実とリンクする曲が作りたい

ーー井上陽水、忌野清志郎という名前が出ましたけど、かなり影響を受けていると思いますか?

忌野清志郎はずっとファンなので、亡くなった時は本当にショックでした。でも、意識して歌うってことはしてませんでしたけど。井上陽水はですね、色川武大っていう作家がいるじゃないですか? 阿佐田哲也という名前でも有名な。僕、あの人に憧れがすごい強いんですけど、エッセイ集『阿佐田哲也の怪しい交流録』に出てくるんですよね。伊集院静の小説『いねむり先生』(色川武大との交流を綴った伊集院静の自伝的長篇)にもIさんという形で出てきたりして。僕、タモリとか山下洋輔とかそのへんの文化人の人脈に憧れがあるんで、それで井上陽水を聴いたら歌詞がすごいおもしろくてひかれましたね。なにも考えてないのか、すごく考えてるのかわからない感じとか。あと、声がいいからすべて許される感じというか。

ーー意味不明な歌詞でもあの声で歌えば…

素敵、ってなるじゃないですか。あれはすごいズルいですよね(笑)。逆って、起きえないじゃないですか。井上陽水は曲も好きなんですけど、YouTubeなどにアップされている動画がおもしろいんですよ。糸井重里がせっかくいい質問投げてるのに、はぐらかし続けるんです。「どんな時に曲作るんですか?」って言われても、「レコーディングの前になったら急いで作る」みたいな。そうなんでしょうけど、少なくとも最初はそうじゃなかったろ、みたいな。

ーー核心は言わないわけですね。

でもそういう風にしてることによって、かえって誠実さが伝わってくるというか。安易に自分は平和が好きだとか言うよりは、あああいう井上陽水みたいな人のほうが平和は好きだろうなっていう気はするんですよね。変に決めつけないほうが、自然というか。けっこうそれに影響されているかもしれないですね。

ーー今回は個性陣によるリミックスも収録されていますが、リミックスっていうと曲をダンスフロア向けにするためのものだったりしますよね。でも、ここに収録されているのはどれも通常のリミックスという概念から逸脱したものばかりで。

今回はツッコミみたいな感じですよね。僕に対するツッコミ、あるいは背負い投げみたいな(笑)。


卒業(MV)

ーーリミックスされた音、もしくは今回のリミキサーに対してどのような思いを抱いていますか?

DJぷりぷりさんとの出会いは自分の中で本当に衝撃で、リミックスがユニークで面白いのはもちろん、ものの考え方とかそういった部分でもすごく刺激・勉強になっています。(DJぷりぷりさんのリミックスに参加している)前田エマさんの声もとても強烈で好きです。カメラ=万年筆さんは違うコードを「地震」て曲につけてくれて、感動しましたね。そしてEP-4の佐藤薫さんのは超ドープで。自分は黒人音楽がすごい好きだし、佐藤さんは黒人音楽にすごい詳しいかたじゃないですか。そういうかたにリミックスをやっていただけたのは本当に光栄なことだと思っています。大島輝之さんと大谷能生さんには、神保町試聴室で公開リミックス・イベントという形でリミックスしていただいたのですが、無難な方向に行かずガンガンとリスクを踏んで新しいアイデアを出しながら終電間際まで時間をかけて仕上げてくださいました。その光景を見て、ストイックかつ冒険精神というか、そういったものに本当に感動しました。ぜひ聴いてください!

ーーリミックスというのは解体/再構築という編集の芸術ですよね。入江君自身も編集には興味がありますか?

今回のアルバムは実はかなり切り刻んでいて。あんまりそう聴こえないかもしれないですけど。例えば、小杉岳君のギターを1テイク目と2テイク目で切り貼りしたりとか。テオ・マセロっていうマイルス・デイヴィスのプロデューサーが、マイルスの演奏を録音したテープを勝手に切りまくってつなげてリリースしたやつが名盤になったりしているじゃないですか。それ面白いから、自分でもやっちゃおうかと思って切り刻みまくったんですよ。普通ジャズって、テーマ→アドリブ→テーマじゃないですか。でも(テオ・マセロが編集すると)テーマだと思われてたところが実は違う曲のアドリブだった、みたいなことがよくあるらしいですからね。すごいっすよね、テオ・マセロ。

ーー歌詞は妄想と実体験、どちらに基づいたものですか?

僕はどっちでもないかもしれないですね。けっこう気持ち悪いタイプかもしれない。相手にだけ分かるように書いたりとか、現実とリンクさせていく型ですかね。トラブルにしていくというか(笑)。例えば誰かが僕のアルバムを聴いたら、他の誰にも気づかれないけど、その人にだけ突き刺さる悪意のあるフレーズが入ってるとか。でも悪意だけじゃなくて、例えば親友が聴いたら分かるとか。そういう独りよがりじゃない形で現実とリンクする曲が作りたいです。自分の妄想を書くっていうのもするんですけど、でもどこかに… 例えばその2日前に行った地名を混ぜるとか。意図で作るのは一部分で、偶発性をさりげなく爆弾のように混ぜておく。それがずっと埋まったままの地雷のような形でライブで演奏され続けるって面白くないですか? そういうこと考えてますね。

ーーいわゆるポップ職人と呼ばれるような人は、自分の頭の中にある音を自分のコントロースのもと完璧に具現化しようとします。でも、入江君はそういうタイプではないと。

僕、それは苦手ですね。

ーージョン・ケージは作曲上の意図的選択を排除し、決定を偶然性に委ねるチャンス・オペレーションという手法を考案して実践しました。入江君の曲作りは、意図的なものと偶発性、両方を取り入れたものなわけですね。

そうなんです! 僕、タイトルとかも人に決めてもらったりするんですよね。すっごいいい曲なのに、「あなたが次に言った名詞を曲名に絶対するから、どんな下品な言葉でもいいから言って」って。もしそれがとんでもない言葉だったら、いくらいい曲だったとしても発表できなくなってしまいますよね。でもそういうコントロールできない、天気みたいな感じが面白いなと思っていて。

ーーデビュー・アルバムはアーティストのそれまでの蓄積を全部出したものになりがちですけど、『水』を作り終えてみてそういう感触はありましたか?

今回は仕事辞めたタイミングだったっていうのもあって、別れとか新たな始まりっていうような感じの曲が多い気もしますね。だから実はアルバムの流れ的に入れられなかったというか、『水』だけに、すくいきれなかったものもけっこうあります(笑)。日本語の歌が聴き取れる系のソウルって、音が古臭くなりやすいというか、生活をにじませる歌詞を無骨なギター、ベース、ドラムのトリオで聴かせるみたいのが多いと思うんですよ。それを現代のビートで作っていきたいです。

ーー音楽活動に焦点を絞ってからここに至るまで、道のりは長かったですか?

僕、2012年の10月頃に急に辞めたんですよ。だからお世話になった色んな方々に迷惑をかけてしまい、本当に申し訳なく思っていたんですけど、2013年10月の30日にCDを出すことができて。

ーー辞めた月の1年後にデビュー・アルバムが発売されたわけですね。すごい偶然(笑)!

だから、報われた面もあるなと思っていて。これがあればこの先何があっても、気持ち的になんとかなるんじゃないかなと思っています。

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2011年元日にNHK-FMで放送された『坂本龍一ニューイヤー・スペシャル』のために収録された演奏。大友良英との、オーネット・コールマンをモチーフにしたピアノとギターによる繊細な即興演奏「improvisation inspired by Ornette Coleman」、坂本が立てる物音と大谷能生のラップがゴダール的な空間を織りなす「adaptation 02-yors」、ASA-CHANGのエレクトロニック・ドラムで奏でられる「adaptation 03.1~acrs~adaptation 03.2 thousand knives-acrs」、2人の知性派ミュージシャンが相まみえた菊地成孔との歴史的な記録「adaptation 04-nkrs」、やくしまるえつこの独特な声で「Ballet Mecanique」に新たな息吹を与えた「adaptation 05.1~eyrs~adaptation 05.2 ballet mecanique-eyrs」。5人のアーティストとのセッションを、当日の模様を収めたブックレット(PDF)付きで完全収録。

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LIVE INFORMATION

入江陽アルバム『水』発売記念リサイタル

2013年11月9日(水)@神保町 試聴室

【OPEN / START】 18:30 / 19:00
【チケット】 前売り 2,000円 / 当日 2,500円(+1ドリンク)
【ゲスト】大島輝之、大谷能生

PROFILE

入江陽

1987年生まれ。東京都新宿区出身。シンガー・ソングライター、映画音楽家、作詞家、医師。学生時代より音楽活動を開始。即興音楽からクラシックの室内楽団、パンク・バンドなど、様々なジャンルで活動する。東京慈恵会医科大学卒業後、医師としての研修を中断。音楽の道を志す。

2013年より、映像作家の副島正紀とタッグを組んで制作したミュージック・ビデオをYouTubeで精力的に公開。好評を博す。ライブでは高野寛、不破大輔など様々なジャンルの多彩な顔ぶれと共演を果たす。2013年から、高齢者認知症に対する音楽療法の研究プロジェクトにも参加。アイドル・グループに詞を提供するなど、作詞家としても活動中。

映画音楽家としては、今まで『青二才』(サトウトシキ監督。2013年1月公開) 『Sweet Sickness』(西村晋也監督。2013年4月)『モーニングセット、牛乳、ハル』(サトウトシキ監督。2013年8月)といった劇場公開作の音楽を担当。中でも『Sweet Sickness』は9月27日にオランダのロッテルダムで開催される映画祭「Camera Japan Festival 2013」で上映されるなど、国際的に高い評価を得る。

2013年10月30日、神保町&黄金町のライヴ・スペース、試聴室が主宰するレーベル、VACATIONより1stアルバム『水』をリリース。

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