2013/06/04 00:00

6月1日土曜日、くもり。キセルの2人がかねてからの念願だった、日比谷野外大音楽堂でのワンマン・ライヴを行いました。ほんとうに、あまりにもよかったので、急遽ライヴ・レポートを掲載することに!! 背の高いビルと、青々とした木々に囲まれた野音のステージ。時間が経つにつれて暗くなっていく空。そして、キセルのやわらかい音楽。あの日の、あの空間に生まれた絶妙なマッチングを、撮りたての写真と詳細レポートでお届けします。会場に行った人も、音漏れを楽しんでいた人も、行けなかった人も、あなたにとってキセルが”特別”であることに、改めて気づかされるのではないでしょうか。そして、会場限定で販売された、“お風呂でキセル”こと『KICELLEP in みなと湯』も、OTOTOYでは異なる楽曲が収録された高音質バージョンを好評配信中。

左から 友晴、豪文、(サポート・メンバーの)曽我大穂

会場限定版CDと収録曲が異なる超高音質音源を配信中


キセル / KICELL EP in みなと湯(5.6MHz DSD+HQD ver.)
【配信形態】
DSD 5.6MHz+HQD(24bit/48kHzのwav) まとめ購入のみ 800円
※銭湯での録音風景の写真をまとめた歌詞入りブックレット付き

【Track List】
1. 春 (作詞 : 辻村豪文 作曲 : 辻村豪文)
2. 夕焼け (作詞 : 吉野弘 作曲 : 高田渡)
3. 庭の木 (作詞 : 辻村豪文 作曲 : 辻村友晴)

Recorded & Mixed by 奥田泰次(studio MSR)
Recorded at 横浜 みなと湯
Mixed at studio MSR
みなと湯

Mastered by 木村健太郎
Mastered at kimken studio
Clarity operator 大澤康祐(G-ROKS)

All photos by 雨宮透貴
Logo Design by ステンスキ

Produced by OTOTOY & カクバリズム
OTOTOY 飯田仁一郎、櫻井希、梶山春菜子
カクバリズム 角張渉、藤田塁、宮奥咲

Special Thanks to 物井家

Supported by KORG INC.


>>DSDの聴き方はこちら

※本パッケージには楽曲のDSFファイルとDPPファイル、全曲のHQD(24bit/48kHzのwav)トラック、ブックレット(PDFファイル)が同梱されております。DSDの再生環境がない場合も、HQD(24bit/48kHzのwav)の高音質でお聴きいただけます。

※5.6MHz DSDの音源は、ご使用の再生環境によっては再生できない可能性もありますので、ご購入の前にご確認ください。
※DSD DISCでお聴きになる場合は、DSD(2.8MHz)にダウン・コンバートしてご使用ください。

※ダウンロードしたファイルに不備や不明点がありましたら、info(at)ototoy.jpまでお問い合わせください。

LIVE REPORT : みんなにとって特別な日「野音でキセル」

2013年6月1日(土)、キセルが日比谷野外音楽堂で待望のワンマン・ライヴ「野音でキセル」を行った。「会場の半分ぐらいを想定していた」という彼らの予想を鮮やかに裏切り、2500枚のチケットはソールド・アウト。多くの立ち見客、音漏れを聴く人々も日比谷公園に集まった。いつもどおりのゆるかさで、いつもどおりのすばらしい演奏をしたキセル。そこに野音という場所と、今日ここに集まった多くの人の特別な気持ちが、今日という日に魔法をかけて、本当に特別な日になった。

いまにも雨が降りそうな曇り空のなか、空の色とは似合わない浮かれた空気が、ビルと緑に囲まれた日比谷野外大音楽堂に溢れていた。開演前にはキセルが所属するカクバリズムの社長、角張渉のDJによってピクシーズやシャギー・オーティスが流れていて、お祭りのようなふわふわとした空気が漂い、会場をあたためている。ビールを片手にわいわいと話したり、会場特典の『KICELL BOOK』を読んだり、思い思いに過ごしては、誰もがなんとなく顔をほころばせていた。

まだ陽も落ちはじめていない午後5時半すぎ、キセルの2人と、今日のサポート・メンバーである、エマーソン北村(Key)、北山ゆう子(lake)(Dr)、野村卓史(グッドラックヘイワ)(Key)、曽我大穂(CINEMA dub MONKS)(Flute, Steel pan, etc)が歓声に迎えられて登場。はじまりは「夏が来る」。音が鳴ると野音という場所の特別さがよくわかった。屋外には違いないのに、広がっていくというよりは、木々に囲まれたすり鉢型の会場内に音がたまって響いていく、不思議な場所。北山ゆう子の力強いドラムが身体に響き、はじまりの高揚感が駆け巡る。

「タワー」を終えるとひときわ大きな歓声が上がり、それに応えるように兄・豪文が「ありがとう」と告げ、弟・友晴が客席に向けて笑顔で大きく手を振る。「みんながやめてっていうくらいやるかもしれないです」という言葉に大きな拍手が上がって、友晴がメイン・ヴォーカルの「サマタイム」へ。曽我大穂のスティール・パンと、客席から飛んでいくたくさんのシャボン玉が、景色をやわらかに色付けていった。

「(速いテンポのものなので)早めにやっておきたいと思います」と告げてから演奏された「ねの字」は、やわらかな空気から一変、妖しいリズムにギターが光る。このころから客席の後ろのほうで踊る人がではじめて、2人が想像していただろう、野音らしい自由なムードがいっそう漂う。

「青空に」がおわり、一息ついたところで、サポート・メンバーがステージからおり、”2人のコーナー”がはじまった。2人になって広がった音の隙間から、風に揺れる木々の葉音が聞こえる。音と空気が溶けていくようで、あらためてキセルと野音の相性の良さを感じる。

長いMCがはじまると、何度も何度も友晴が客席に手を振るので「選挙中みたいになってるけど」と豪文がつっこみつつ、ゆるいMCが続いていった。ビールを買い足したり、物販を見たり、立ち上がる人々もいたけれど、全然いやではない。そのゆるさも、キセルの音楽が生み出す会場の雰囲気によるものだろう。

豪文「何度も野音の夢を見て。遅刻して行ったら終わりかけてて… 」
友晴「誰が進めてたの(笑)。」
豪文「エマさんがきて、『いやー良い感じだよ!』とか言われて(笑)。」

野音の話にはじまり、2人の会話が噛み合わなくなってくると、客席から「仲良くー!」と声があがり、笑いが広がる。「電話するとだいたいケンカになるから、Skypeを導入しようって話になってるんですよね。顔が見えてたほうがいいからって」などといつまでも終わらないMCを断ち切って、はじまったのは、人気曲の「君の犬」。明るい曲ではないけれど、かなしみにそっと隣り合う声に、誰もがじっと耳を澄ませる。

そしてライヴは後半へ… というところで、友晴がまさかのトイレ退場(笑)。「繋ぎます」という豪文の言葉に大きな歓声があがり、「いや、そんな一発芸とかできないですよ」と言いながら、1曲歌うことに。「なにがいいですか?」という言葉に、客席から「高田渡! 」という声があがる。やることになったのは、キセルのライヴではおなじみのカヴァー曲、高田渡の「おなじみの短い手紙」。「じゃあやるか」というところで、友晴が欽ちゃん走りで帰ってきたが、そのまま演奏され、思いがけないサプライズとなった。

「この曲やりたいと思ってたからすごいね」「計算してトイレに行きました」そんなやりとりを交わしているうちに、あたりはすっかりと夜へと変わっていた。のんびりとした雰囲気がなりを潜め、特別な場所として、ステージが眩しく輝きはじめる。そして再びメンバーが呼び込まれ演奏されたのは「砂漠に咲いた花」。慈しみを歌う、やわらかな2人の歌声にこれまで以上にステージに惹き付けられていく。そこに重ねて、個人的に今日1番の演奏だと感じた「ハナレバナレ」。全体の照明が暗く落とされ、橙色の細長いライトがそれぞれの手元をやさしく照らし、シンプルでやわらかなバンド・サウンドと溶け合っていく。やがてステージのバックには、オイルアートのような色彩が映し出され、色を濃くしていってはぼやけてにじみ、うつくしく、陶酔的な光景をそこにつくりあげた。

豪文「ありがとうしか言えないんですけど、今日は本当にありがとうございます。来年もやりたいですけどね。毎年来てね、ほんまに。」
友晴「いろんな人に恩返しができてるような気がしてうれしいです。ありがとうございます。」

2人が感謝の言葉を告げ、「ギンヤンマ」がはじまると、思わず腰を上げた人も多く、大きな歓声があがる。最後に野音の予告映像でも使われていた「今日のすべて」を演奏して笑顔で去っていった。

アンコールの拍手がはじまると、1分も経たずにステージに現れた2人。思わず笑いがこぼれた。「ビューティフル デイ」がはじまると、客席の人々は待っていました! という反応。続けて「ベガ」が演奏され、ついにほとんどの人が立ち上がっては身を揺らして、最後の一瞬を楽しもうとしていた。アンコールを終え、2人が去っても鳴り止まない拍手に応えて、もう一度姿を現して「もう夏になりますが」と言いながら、「春」が演奏された。

〈笑ってサイコロを振りながら 僕らは前へと進むだけ〉

そう歌ってはじまった今日、彼らの演奏やMCを通して、すでにキセルが今日という日の一歩先を見据えて、前へ踏み出していることをひしひしと感じていた。そして最後に、家の中でひっそりと春の訪れを感じるこの曲が演奏されたことで、キセルが望んだ風景がようやく向こうからやってきたような気がしたのだ。今日ここにいる、キセルをずっと応援してきた人と、久しぶりに来た人と、はじめて見た人。それぞれ想いの丈は違うだろう。でもこの瞬間は、誰もが心からキセルが好きだなと感じているだろう空気がぎゅっとつまっていた。そしてここにいる人たちが、あらためて彼らの活動をこれから後押しするだろうという確信を持ったのだ。

ダブル・アンコールが終わっても鳴り止まない拍手に、もう一度サポート・メンバーを含めてステージに立った2人。会場を見渡して、大きく礼をした。思わず手が痛くなるくらい拍手をしていたが、周りを見渡せばそんな人ばかりだった。また来年ここでキセルが見たい。誰もがそう強く思ったはず。ただ、あまりに特別な日だったといえど、また来年まで、と言ってしまわないでほしい。キセルの音楽は、その場の空気を音に溶け込ませ、それぞれの人が抱えている風景を歌に織り込ませては、どこにいても、わたしたちに特別な日をもたらしてくれるに違いないのだから。

text by 梶山春菜子
photo by 三浦知也

<セット・リスト>


1. 夏が来る
2. 方舟
3. タワー
4. サマタイム
5. ねの字
6. エノラ ゲイ
7. 覚めないの
8. 火の鳥
9. 青空に
10 .星のない夜に
11. 君の犬
12. 夜間飛行
13. くちなしの丘
14. 砂漠に咲いた花
15. ハナレバナレ
16. コロンビア
17. 声だけ聞こえる
18. 写真
19. ギンヤンマ
20. 今日のすべて

en1
1. ビューティフル デイ
2. ベガ

en2

LIVE INFORMATION

2013年6月29日(土)@長野県 茅野市民館
『OTOSATA Rock Festival 2013』

2013年8月4日(日)@恵比寿 LIQUIDROOM
『LIQUIDROOM 9th ANNIVERSARY presents「奇妙礼太郎トラベルスイング楽団×キセル」』

2013年8月16、17日(金、土)@北海道 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2013 in EZO』

OTOTOYで配信中のキセルの 過去作品はこちら

8th アルバム『凪』
1. うぶごえ
2. 朝顔
3. 夜の名前
4. 島
5. 遠い友達
6. ひみつ
7. 見上げる亀
8. 星のない夜に
9. 夕凪
10. はなむけ
11. いつまでも


PROFILE

キセル

辻村豪文と辻村友晴による兄弟ユニット。カセットMTR、リズムボックス、サンプラー、ミュージカル ソウ等を使用しつつ、浮遊感あふれる独自のファンタジックな音楽を展開中。これまで4枚のアルバムをスピードスターよりリリース。 2006年12月にカクバリズムに移籍し、『magic hour』、『凪』、『SUKIMA MUSICS』のアルバムと10インチ・レコードやライブ会場限定のEPなど精力的にリリース。どの作品も多くの音楽好きを唸らす名盤となっており、ロングセラーを続けている。 毎年の大型野外フェスへの出演や、フランス・韓国でのライブ、ジェシ・ハリスとの全国ツアー、年末恒例のワンマンライブをリキッドルームや赤坂ブリッツなどで行っている。 また今夏6月1日には2人のかねてからの目標のひとつである日比谷野外大音楽堂でのライブが決定し、盛り上がりを見せている。新作アルバムの完成も待ち遠しい素敵な2人組である。

>>キセル Official HP
>>カクバリズム Official HP

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