2009/06/02 00:00


VOL.3


前回のコラムで紹介した野外フェス「総決起集会」。その感動と盛り上がりの伏線として実はもうひとつのイベントの存在があった。話は前後してしまうが、今回はこのイベントの話。

09.3.24、その日は、WBCで日本がドラマティックに優勝したその夜。福岡では小さいながらもうひとつのドラマがあった。

「大牟田ナイト」

これほどまでに深く熱く感動できたイベントはない。魂が震えた一夜。


大牟田とは福岡の端の端に位置する小さく寂れた街。ライヴ・ハウスもまともに無いようなその街で最近何やらおかしな波が起こっていた。それはまだ“さざ波”かもしれないが、今現在“凪”の状態とも云える福岡音楽シーンにおいて、その新しい波は確実に“新鮮な興奮”を覚えるものだった。


大牟田を拠点に活動する バンド達に共通する特徴は「ねじくれたPOP感覚」と「ほとばしるロック魂」そしてとにかく「音楽を愛してる」ということ。音楽に飢えていると表現してもいい。飄々としたオリジナリティを保ちながら、常に乾いた音を鳴らし、そしてどん欲に進化を続けている。


その中心的なバンドが「一銭めしや」であり、また精力的に大牟田アンダーグラウンド・シーンを盛り上げている団体「Shock City Omuta」など、年齢的には決して若くはないが未だ性欲ビンビン十代の如き初期衝動と情熱でもってシーンを引っぱる“波”の発生源である!!!

しかし、そんな“波”を感じ始めた昨年の暮れ、ひとつの出来事が我々を襲った。この界隈の新星バンド「ゴールデンブラザーズ」の長男、三隅健(Gu)の突然すぎる死去...。あまりにも悲しい事実を受け止めて「大牟田ナイト」更に大きな意味を帯びる事となった。大牟田復興と福岡の起爆、そして三隅の追悼の意も込めて全ての出演者が燃え上がり、この日に挑んだのだった。それはまさにローカルの逆襲! ともいえる情熱の一夜だった。


イベント当日、平日にもかかわらずたくさんのお客さんが開場と同時に集まってくれた。しかも半分以上は大牟田からのお客さんたち。あちこちで大牟田弁が飛び交っていた。ライヴが始まる前からすでにわいわいとした空間、この熱気、今から始まる祭りへの期待感で誰もが高揚していた。


大牟田ナイト、開始!

まずは電子卓上音楽団。オープニング・アクトで良いからどうしても参加させて欲しい、そう言ってくれた電卓くん。男前である。これから始まるクレイジーな夜を飾るに相応しいオープニング。アンビエントで気持ちのこもった15分間のノイズ・ミュージックは、まるで、亡き三隅健へのレクイエムのようにも感じた。


VooDooの入り口前の階段にぼんくら峠のシゲさんが座ってたので、「入らないんですか? 」って聞くと、「入りたいけど、金がない」とのこと。「金ならツケでいいから入ってくださいよ! 」と言うと「じゃあ中で誰かに自分のCD売りつけてそれで払う」と。シゲさん中でCDを売りさばき、即チケット代を払ってくれた(笑) 金ないのに来てくれたシゲさん! うれしかったです。


「金がない」を理由にみんなライヴ見に来ないけど、「金がない」は理由にならないと思った。お金じゃ買えないものを見るためにお金払うわけでしょ? たかだか1500円、金なんてなんとでもなる。


続いてポプワークス。アサヒ屋食堂という定食屋を2年前に開店と同時にバンド活動は休止状態だった。やはりこのバンド、かっこ良い! 2年のブランクはまるで感じない。「問題の夜」久しぶりに聴いた、この曲聴くとワクワクする。


サブ・ステージでfolk enoughの井上周一。野球のユニフォーム姿(スパイクまで履いてる! )右手にギター、左手にバットを持って登場! この男、本気である(笑)! 「今から素振りします! 3の倍数と3のつく数字のときだけバントします」と言って、素振り始めた!!!


2907831登場。1曲目が大場久美子の「サージェントペパーズ」のカバー!! 意表をつかれて爆笑してもうた。このバンド、こういうユーモア・センスがあるから大好きなんよな〜。抜きどころを知ってる! 熱のこもったクレイジーな演奏のあとのバラードとかね。


そしてゴールデンブラザーズ。1年前に始めてみたときは正直信じられないくらいヘタクソで、でもGERMSみたいでカッコイイなあ、って思った。いろんなことがあって、今夜このステージ立ってる彼らの演奏はものすごい一体感があって、言葉にならんほど輝いとって、魂が音に宿り、炎となって燃え上がるようだった。

健くんの魂は曲として音楽として生き続けてる!


この素晴らしい流れを受けて我々、nontroppoの番である。テンション上がりすぎてオレは覚醒していた。オレはステージから飛び出していてお神輿されていた。井上さんもバット持ってステージ乱入してた様子。お客さんはバターになるほど踊りまくっていた。もうここは楽園だ。

さあ! いよいよ大牟田ナイトは最高潮!! 大トリはもちろん一銭めしやだ!!!!!!!


待ってましたとばかりに唸るような大歓声! 1曲目「ボーイズ・ラブ」から激しく踊り狂い咲く!! ダイブするお客さんまで! 一銭めしやでダイブ?? ちょっと前までは考えられないような状態になってる! 誰もが好き勝手に自分のダンスを踊ってる! その光景は何かが爆発したような、まぶしい光に包まれてた!

まるで爆裂都市だ。

ラスト・ナンバー「トリップカリフォルニア」でまさにトリップ! 半裸のシゲさんとステージ上でもつれあう村里さん、マイクを掴み大絶叫!!!!!! この瞬間、世界中のロックの神様がこの男に降臨した!!!!

興奮でワナワナした。感動して泣きそうなった。でも嬉しさが一番まっ先に込み上げて、何度もワーーーッと叫んだ。


アンコールのあと、あいさつをする村里さん。大牟田のみんなから愛されてるのがよくわかる。一銭めしやとの出会いなくして、この夜は生まれなかった。そして、この日はあえて誰も口に出すことはしなかったけど、ゴールデンブラザーズの三隅健くんへの追悼の気持ち、これも大きなパワーに繋がっていた。



「大牟田ナイト」

忘れかけたロックの原点、
音楽はコミュニケーションであるということ、
かつての福岡が持っていたあの熱気、

全てを思い出させてくれた夜だった。



この熱い夜があって、1ヶ月後の総決起集会へと繋がっていったように思う。

そしてその総決起がまた新しい“波”へと繋がって行っているのは間違いない。「大牟田ナイト」はその貴重な一歩だった。


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VOL.1 総決起集会 エピローグ

VOL.2 総決起集会ファイナル 当日の奇跡を全てレポる

PROFILE

ボギー。ダンス仕様のライブ・バンドとして高評価を得ているnontroppoのボーカル&ギター。ニュー・ウェイヴ、レゲエ、ダブ、ジャズ、プログレ、サンバ、トランス・ミュージック等あらゆる音楽的要素を内包したカラフルで不思議なサウンドに、無国籍なダンス・ビートが絡み、聴く者全てを狂喜の「祭」、もしくはありもしない架空のリゾート地へといざなうちょっぴり危険なトロピカル・アヴァン・ダンス・ミュージックを奏でる。

artist page https://ototoy.jp/them/index.php/ARTIST/1829

blog ”ボギーの悪趣味音楽作法” http://www3.to/yokotin/

[コラム] nontroppo

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