そこのけそこのけSEBASTIAN Xが通る!

さあ、早く再生ボタンを押してくれ。出来ればこの記事に目を通す前に、まずまっさらな状態でこの作品と向かい合ってもらいたい。それが面倒なら、とりあえずタイトル・トラックだけでも結構。そこでもし胸の高鳴りを感じたのなら、もう躊躇する必要はない。SEBASTIAN X初の流通作品『ワンダフル・ワールド』は、身も心も弾む、賑やかで爽快なポップ・アルバムに仕上がった。きっとあなたにとってのかけがえのない1枚に加わるはずだ。
と言っておきながら、実は僕自身、最初はこのあまりに衒いのない言葉と演奏で埋め尽くされた作品をどう捉えてよいのかわからなかった。「果たしてこのご時世に、こういう言葉が偽りなく出てくるものなの? 」「作品の流れにもしっかりストーリーがあるし、もしかしてかなりの戦略家集団? 」しかしそんないやらしい予想は見事に大外れ。この手数多めで四方八方に飛び交っていくようなアンサンブルは、彼ら4人のばらけたキャラクターそのものだし、ヴォーカルの永原真夏は、曲のリリックそのままの、いつも頭の中を言葉が駆け巡っているような、どこか落着きのない、聡明な女の子。そう、この作品は彼女達の姿そのものだ。それがこんなにも勇壮で、力強い楽曲になってるんだから、そりゃ胸に来ないわけがない。そうだ、そもそも音楽って誰のためでもない、自分自身のために作るものだよな。それが聴き手の心を捉えるって、よく考えるとけっこう奇跡的な事かもしれない。あぁ、なんで最初から素直になれなかったんだろう。多分僕には彼女達が眩し過ぎたのかもしれない。

インタビュー&文 : 渡辺裕也

→「ツアー・スターピープル」のフリー・ダウンロードはこちら (期間 : 11/5〜11/12)

※アルバムの全曲配信は11/6より開始します。


INTERVIEW

—結成してからはまだ1年半くらいなんですよね?

永原真夏(以下永原) : このバンドはまだそれくらいなんですけど、この4人で一緒にバンド活動をやるようになってからは、もう4、5年は経っていますね。SEBASTIAN Xを結成する前は、この4人プラス何人かでやっていたんです。
飯田裕(以下飯田) : この二人(永原と工藤)の付き合いが一番長いですね。

—二人はいつからの付き合いなんですか?

工藤歩里(以下工藤) : 高1の時からです。
永原 : 高校2年生の文化祭の時に、私から彼女をバンドに誘ったんです。

—元々はハードコアをやっていたと聞いているんですけど。

永原 : SEBASTIAN Xを結成する前にやっていたバンドでは、確かにすごく激しい音楽をやってましたね。その高校の頃にやっていたバンドは、私と工藤のツイン・ヴォーカルだったんです。そんな感じで音楽性が二転三転していって、今の形に落ち着いた感じですね。

—ハードコアは今でも好き?

永原 : 好きです。GAUZEとかFUTURESとか。今でも大好き。

—じゃあ、当時はあまりメロディを追わずに、叫んでる感じだったんですか?

永原 : 演奏とか歌よりも、「とりあえず物販のテーブルの上に乗るぞ! 」みたいなノリでした(笑)。でもだんだん飽きてきちゃって、もっと本格的に音楽に取り組んでみたくなったんです。
飯田 : 僕はあまり音楽聴かないんですよ。
工藤 : 私も聴かないなぁ。
飯田 : だから、ハードコアをやっていたというのも、周りからハードコアとして見られていたからそうだったというだけで、僕は特にハードコアが好きでやっていたわけではないんです。
工藤 : だからその辺は真夏の持ってきたものが大きかったのかな。
永原 : みんな、私が面白いと思うものについてきてくれる人達なんです。私が「激しいのやりたい! 」と言うと、「面白そう! 」と付き合ってくれるような感じですね。

—ギター・レスという編成は意識的に組んだものなんですか?

永原 : メンバーを誘う時に、ギターで一緒にやりたいと思う人がいなかったんです。人で選んだ結果、こういう編成になったというだけですね。
飯田 : でも、確か当時「私、ギターの音が嫌いなんだよ」って言ってたよ(笑)。
永原 : (笑)。確かに当時はあまりギターという楽器に興味がいかなかったのはあります。どのバンドにも必ずっていうほどいるから。私、未だにバンドの基本がわからないから「なんでギターがいないの? 」と言われると、むしろ「なんでみんないるの? 」って訊き返したくなっちゃう。ギター・レスの編成は、これまで自分がやってきた中では至って自然な事だったから。
飯田 : 前にギタリストがいるバンドをやっていた頃よりは、僕とありり(工藤)は自由に演奏できるようになりましたね。
工藤 : その頃は自分のやる事が限られちゃって、ただ人差し指だけを連打しているような演奏になってましたね(笑)。だからこの4人だけになって、「もうこれでガンガン弾けるぞ! 」と(笑)。

—たまが好きだと聞きました。偶然なんだけど、最近別の人にインタビューした時もたまの話が出たんですよ。今、若い世代では再びたまが熱いの?

永原 : ライヴをやるといつも「たまが好きなんですか? 」と聞かれてたんです(笑)。でも、聴いたことなかったんですよね。で、いざ聴いてみたら、最高だった(笑)。「エイリアンズ」の歌詞にある<オゾンのダンス>という言葉は、「みんながそんなに私達をたまっぽいというなら、自分達で最初から言っちゃおう」という勢いで入れてみたんです。私の場合は、たまというよりも、キーボードの柳原幼一郎さんが好きになりました。音楽がどうこうというよりも、趣味の世界が近いなと思って。歌詞にもそれがよく表れているんですよね。だからみんなもその辺に共通点を見てるのかなと思いました。

—音楽を趣味でやっている、という感覚はありますか?

永原 : 「ここだけは絶対に趣味でやる」というところと、「ここは趣味では通らない」というところがやっぱりあると思います。曲作りに関しては全面的に趣味とセンスですけど、ライヴに関しては、そこに人が集まっている以上は、ただ遊んでやる訳にはいきませんから。

—ステージに立つ者としてのプロ意識ですね。

永原 : (笑)。言ってしまえばそうですね。

—今回出来上がった作品を改めて聴いてみて、どうでしたか?

永原 : 始めは何も考えずに曲を入れていっただけなんですけど、曲順を決めて並べて聴いてみたら、「ちゃんと"行って帰ってくる"感じになったなぁ」と思いました。<君に会いにいこうよ>(「ツアー・スターピープル」)という言葉で始まって、徐々に夜が近づいていって、「食卓の賛歌」で終わる。自然とこうなった感じなんです。
沖山良太(以下沖山) : 収録曲を決めた段階ではまったくこうなるとは予想してませんでしたね。曲順を決めて改めて見たら、ちゃんと流れが出来ていたんです。

—歌詞に曖昧な表現がないですよね。言葉の肉づけが少なくて、迷いなくスパっと言い切っている印象があります。

永原 : どんな年齢の人にも伝わる言葉を選ぶようにしています。小学生の時から音楽は聴いていたんですけど、意味がわからないと感じたものが圧倒的に多かったんですよね。まあ、私のレヴェルが低かったという可能性も大ですけど(笑)。それ以来、出来る限り簡潔な言葉で人と話せた方がいいなと思ってきましたね。同世代の友達と話す時と、おばあちゃんと話す時では使う言葉も違うし。あと、言葉に変な重みも持たせたくない。

—近い年齢の人同士だと、その世代特有の言葉も出てくるじゃないですか。そういうのも極力避けるようにしてる?

永原 : そうですね。単純な話、「おっはー! 」って言うよりは「おはよう」って言った方が誰にでもわかるから。もちろん相手が「おっはー! 」って言ってきたら、私も「おっはー! 」で返しますけど(笑)。

—(笑)。ライヴもかなりの数をこなしていますね。

永原 : この前、沖縄でライヴをやってきたんですけど、そこは私にとって大きな分岐点になりました。沖縄では、他の地域以上に「東京のバンドだ」という目で見られたんですよね。他のバンドも、みんなMCで「東京からバンドが来ている」って言うんですよ。“東京のバンド”という大きな括りで自分達が見られるという事が今までなかったし、誰も私達の事を知っている人がいなかったから、「今まで通りのライヴをやっていたら、伝わるものも伝わらなくなってしまう。ここで本領を発揮しないと! 」と思って。そこで、自分の歌についても気付かされた部分がたくさんありましたね。どれも根本的なところなんだけど、そこを沖縄でのライヴで改めて気付かされました。

—実は、僕もSEBASTIAN Xを最初に聴いた印象が「東京の人達がやってるバンドっぽいな」と思ったんです。西の地方っぽいアッパーな感じでもないし、北国っぽい寒さも感じない。すごく自然にごちゃまぜ感があるところが東京のバンドっぽいなと。

永原 : それは嬉しいです。やっている場所がわかるバンドになろうと思っていたので。

—育った環境や土地柄って、自然と音にも表れるものですよね。SEBASTIAN Xの音楽にも、しっかりとみんなの背景が写し出されていると思います。

永原 : 嬉しい! その話、ちょうどメンバーともしていたところなんですよ。それぞれお父さんやお母さんがいて、育った町があって、「そういう人達がやっているっていうのが音楽で伝わるといいよね」とみんなで話してたんです。
工藤 : 真夏、よかったねぇ。
永原 : よかったぁ(笑)。

—楽曲のアイデアは、基本的には真夏ちゃんが持ってくるんですか?

沖山 : ベーシックはすべて真夏ちゃんが作っています。で、彼女は楽器が出来ないので、何となくの雰囲気を伝えてもらって、それを僕らが自由に解釈して形にしていくんです。

—まずはアカペラで歌うという事ですか?

永原 : はい。その後はイメージを言葉で伝えます。

—それがうまくメンバーに伝わっているんですね。

沖山 : もちろん100パーセント理解出来ているとは思いませんけど、それでも続けていくうちに少しずつわかってきたんですよね。昔は「意味わかんねえよ! 」って言ってましたもん(笑)
永原 : 「意味わかんねえし、気持ち悪いよ! 」ってキレられたこともあって(笑)。もう私、大号泣(笑)。
飯田 : まあ、俺もわかんないなりにやってますね(笑) 。

—楽器はやろうと思わなかったの?

永原 : いろいろと試みてはみたんですけどねぇ。
飯田 : 普通の人がやったと言える程はやってないよ(笑)。
永原 : 本当に向いてなくて。
工藤 : 爪が長いとかそういうところで、まず断念だよね(笑)。
飯田 : でも、楽器に発想が縛られてないからこそ、出てくるものが面白いんですよ。
工藤 : 始めからコードが付いている状態では絶対に出てこないような転調の仕方とかがあるんだよね。
飯田 : 曲作りのスタート地点で、ギターやピアノの色が出てこないというのは、ひとつの強みだと思います。
永原 : 私は思いつきのアイデアをみんなの前に出す訳ですけど、その状態は、例えるなら素っ裸のようなもので。それをお客さんにさらすのは申し訳ないと思っているんです。人に会う時はちゃんと服を着る。で、その服を選んでくれるのが彼ら(笑)。

—でも、3人の服を選ぶセンスもそれぞれ違うでしょ? 3人はどういうチョイスをしてくるんですか?

永原 : まず、彼(飯田)はファッションに興味がない(笑)。機能性重視ですね。暖かさとか、ポケットの多さとか。で、彼女(工藤)は、「そのイヤリング、めっちゃ似合うじゃーん」みたいなノリで(笑)。つまり外見を気にかけてくれます。この二人が機能性と外見を決めてくれたら、後は彼(沖山)が隙間を埋めてくれます。すごく機能性の良いジャケットを着ていても、「肌着くらいは着た方がいいよ」と言って渡してくれるのが彼(沖山)ですね(笑)。
飯田 : (笑)。その例え、わかりやすいな。
工藤 : うん。割と納得(笑)。
沖山 : この機能性担当と外見担当の二人(飯田/工藤)が時に衝突するんですけど、それが見ていて面白いんです。曲によってどちらを優先させるかというのは、毎回大きなポイントになりますね。
工藤 : 曲にコードを付けるのがこの二人どちらかになるので、そこをどちらが担当するかは毎回話し合うところだよね。
飯田 : 彼女(工藤)の「かわいい! 」とか「派手じゃん! 」みたいな感覚は、真夏ちゃんの持っているものとも近い所もあると思うんですけど、俺の感覚は少し真夏ちゃんの感覚とは違うケースも多いから、その辺も面白いところですね。
工藤 : 私からすれば、いいちゃん(飯田)の発想は意外性の連続なんですよね。「確かにそれは便利だな」と(笑)。

—「でもそれってかわいくないじゃん」みたいな時もある?

工藤 : それもありますね(笑)。
永原 : 「確かにあったかいけど、足が短く見えるのはいや! 」みたいなね(笑)

—メロディや演奏に、ちょっと民謡や祭囃子の様なテイストを感じます。その辺りは意図してやっている部分はありますか?

飯田 : 特にないけど、賑やかにしたいというのはありますね。
沖山 : 具体的な引用や影響はあまりないんです。あっても大雑把なもので。「アフリカっぽい」とか「東南アジア風」とかそんな感じですね。しかも、そんなにワールド・ミュージックに詳しいわけでもないですから、あくまでイメージの話です。

—メンバーで気に入っている音楽を持ち寄って話したりはしないの?

永原 : しないですねぇ(笑)。

—じゃあ普段はみんなどんな話をしてるの?

永原 : 他愛のない話ばっかりですね(笑)。
工藤 : 普段はあまり音楽の話はしないですね。
沖山 : メンバーの中に音楽を進んで聴かないような人がいるくらいだから、自然とそういう話はなくなりますよね(笑)。
永原 : 私は、みんなでCDを聴いたりするより、一緒にごはんを食べる方が早いと思ってて。その方が意思の疎通を図りやすい。こうやってインタビューとかに答えると、基本的に私がしゃべっている感じになりますよね。でもそれだと私に3人がついてきている、みたいに勘違いされがちなんですけど、実はそうじゃなかったり。
沖山 : もう付き合いが長いので、真夏ちゃんのその時言っている事がどれだけ確信を持って話しているのかもわかっちゃうんですよね。
飯田 : そうだね。適当な事を言ってる時はすぐわかる(笑)。
永原 : 今日は言ってないよ!
飯田 : インタビューで自分の発言が残っちゃうんだから、大変だよ(笑)。
永原 : 今日は全然大丈夫だよ!


2010年のポップ・ミュージック?


はしけ / シャムキャッツ
くるり/はっぴいえんど/サニーデイ・サービス/ユニコーンなど、邦楽史に名を刻むポップ・ミュージックを背景にした秀逸なメロディー・センスと、トーキング・ヘッズやXTC、近年ならばクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーをも匂わすひねくれたサウンドとのコンビネーションは、聴く者の記憶にストーカーのようにまとわりついて離れない。たよりないのに愛しい、ココロにするりと入り込むポケットサイズのポップ・ミュージック。



JAKAMASHI JAZZ / HOSOME
ニュー・ウェーブを経由し、オルタナ、ハードコアやエレクトロニカを一分以内の楽曲に詰め込むハイブリット・ポップ・バンドHOSOME。 ジェットコースターのような鋭利で急転直下な展開に、必殺のメロディ・フレーズを忍ばせたカラフルなサウンドは、病的なまでにポップネスに溢れています。


olympia (Remastered Edition) / thai kick murph
ミヤオヨウの持つ妖精の声とエツミセキの絶妙なコーラスにより生まれるハーモニカルなヴォーカルを武器に、ダンサブルに突き抜けた楽曲から浮遊感のあるエレクトロニカまで、ファジーかつファニーなポップネスを奏でる。そのポップさとは裏腹に激しいライヴ・パフォーマンスは話題を呼んでいます。

LIVE SCHEDULE

SEBASTIAN X & ソンソン弁当箱 - 2デイズショートトリップ

  • 11/13(金)@仙台 PARK SQUARE
  • 11/14(土)@福島 Out Line

1st mini Album『ワンダフル・ワールド』リリース記念 SEBASTIAN X presents「タンタラランvol.3」

  • 11/29(日)@新代田FEVER ※ライブ来場者に特典「平成健全入門3(CD付)」プレゼント!
w / オワリカラ / knock note alien / 東京カランコロン / 笹口騒音ハーモニカ(太平洋不知火楽団)

PROFILE

SEBASTIAN X
前身バンドを経て08年2月結成の男女混成4人組バンド。08年6月初ライヴを行なう。その後ハイペースなライブ活動を展開。08年8月に完全自主制作盤『LIFE VS LIFE』リリース。新世代的な独特の切り口と文学性が魅力の Vo.永原真夏の歌詞とギターレスとは思えない様々な/極端な楽曲の世界観が話題に。かつて同じメンバーでハードコア・バンドをやっていたという経緯も納得の、グッチャグッチャだけどパワフルで唄心が伝わってくる、なんだか凄いことになってるインパクト大のパフォーマンスも相俟って、ライヴ・ハウス・シーンでも一際目立ちまくっている存在に。そして09年11月6日に初の全国流通盤となる『ワンダフル・ワールド』をリリース。

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筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

1983年生まれ。福島県二本松市出身の音楽ライター。twitter ID:@watanabe_yuya

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