BATTLESプロデューサーを迎え、肉感的なバンド・アンサンブルへ帰結したLITE会心作、ハイレゾ配信!

LITEの3年5ヶ月ぶりのフル・アルバム『Cubic』、会心作です。

国内外問わずボーダーレスに活動する4人はここ数年では海外でのフェスティバルにも数多く出演し、2015年にイギリスのブリストルで開催された「ArcTanGent Festival」では各国を代表するポストロック・バンドが集まるなかヘッドライナーを務めるなど、もはや国外での評価のほうが高まりつつあるなか、本作は日本では自主レーベル〈I Want The Moon〉、アメリカ、ヨーロッパではブレイド、エネミーズ、そして日本のtoeなど、注目のエモ、ポストロック、ハードコア・バンドをリリースしているアメリカの優良インディー・レーベル〈Topshelf Records〉からリリースされた。

その内容は今作に先駆け10月にリリースされたmouse on the keysとのスプリットEPにも収録されたLITEらしいマスロック・ナンバー「Else」をはじめ、SOIL&"PIMP"SESSIONSのタブゾンビがトランペットで参加する「D」、元Z、THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUTの根本潤がヴォーカルで参加するアバンギャルドなロック・ナンバー「Zero」を含む全10曲が収録。

レコーディングはレッドブルが世界中で運営するレコーディング・スタジオ"Red Bull Studios Tokyo"で敢行、エンジニアは前作同様エンジニアに三浦カオルを迎えた。そして今作を世界標準に引き上げた重要なファクターのひとつがBATTLESのプロデューサー/エンジニアのキース・ソウザによるミックスと、彼と親交が深いヘバ・カドリーのマスタリングである。

その制作過程や内容についてギターの武田信幸とベースの井澤惇に伺った話をもとに掘り下げていくなかで、本作の魅力をお伝えする。

LITE / Cubic

【Track List】
01. Else
02. Balloon
03. Warp
04. Square
05. Inside the Silence
06. Angled
07. D
08. Prism
09. Black Box
10. Zero

【配信形態 / 価格】
[左]24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 250円(税込) / アルバム 2,200円(税込)
[右]16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 200円(税込) / アルバム 1,800円(税込)


LITE -『Cubic』Teaser


INTERVIEW : LITE

まずはすこしだけ時間を遡ってみよう。思えば、2015年は「ポストロック」にまつわる話題をなにかと耳にしていたような気がする。つまりそれは、toemouse on the keyste'といった、00年代のシーンを牽引してきたバンドの新作リリースが相次いだこと。あるいは、金子厚武氏の監修による『ポストロック・ディスク・ガイド』の刊行などにも寄るわけだが、結果としてそうした動きは、ここ日本におけるポストロック、あるいはインストゥルメンタル・ロックをとりまく状況の変化を、改めて浮き上がらせるものでもあった。

さて、ここからが本題。上記したバンドと並んで、国内ポストロック・シーンを先導してきた4人=LITEは、恐らくそうした状況の変化にもっとも自覚的なバンドだったのではないだろうか。アメリカやヨーロッパ、アジアを自らツアーしてまわるだけでなく、そうしたなかで交流を深めた海外のバンドを、幾度も国内に招聘してきた彼らは、その活動を通してつかんだ実感をこう語っている(以下、発言は筆者のインタヴューによるもの)。

武田信幸 (G / 以下、武田) : ひとつのジャンルで絞ってみると、「意外と世界って狭いな」と感じるんです。というのも、海外では僕らと同世代のバンドが、今のシーンを育てているんですよ。たとえば、それはアメリカのTera Melosであったり、もう解散しちゃいましたけど、アイルランドのAdebisi Shankなんかがそうで、彼らのようなバンドがいてくれたおかげで、僕らも海外のバンドと同じ目線で、現地のシーンと向き合える。オーディエンスもすごくフラットに接してくれるし、若い人もどんどん増えているから、うまく世代がひと回りしたようにも感じていて。

井澤惇 (B / 以下、井澤) : どうやら今、あっちでは世代交代が行われているみたいで。それこそ、この前の自主企画“SPECTRUM Vol.8”に呼んだMyletsのヘンリーは、TTNGにもサポート・ギターとして参加していた人なんですけど、彼なんて「高校の頃にTTNGとLITEを聴いてた」と言ってましたからね(笑)。

「僕らがやってきたような音楽に日本語詞が乗っかると、海外ではどう受け入れられるのか」ってことが、すごく気になってきて

武田信幸

そんなLITEの最新作『Cubic』は、当然ながらその音楽的な標準を国際レヴェルに定めた作品となっている。しかし、同時にそこからは、国内ポストロック・シーンに向けられた彼らなりの思いも見出せるだろう。それを端的に物語っている曲が“Warp”だ。これは、本来はインスト・バンドである彼らがヴォーカル・トラックを採用しているのもさることながら、そこで歌われているのが日本語詞という、明らかにバンドが新境地へと踏み込んだ1曲。この曲が生まれた背景を、武田と井澤はこう説明する。

武田 : “Warp”については、もちろん英語詞でやることも可能だったし、むしろ「そのほうがフィットするのかもしれないな」と思ったこともあって。でも、それこそ僕ら英語は海外標準ではないし、かといって、たとえばそれをネイティヴのひとに変換してもらったとしても、それは自分の言葉にはならないので、あえてここは日本語でいこうと。そうしたら「僕らがやってきたような音楽に日本語詞が乗っかると、海外ではどう受け入れられるのか」ってことが、すごく気になってきて。で、もしそれが海外でもごく普通に受け入れられるようであれば、日本と海外の垣根をなくす、ひとつのきっかけにもなれるのかもしれないなって。ちょっとおこがましい話なのかもしれないけど、今はそういう展望をもっているんです。

井澤 : 僕にとっては、「自分たちがまだやってないことをやる」ってことが重要なんです。たとえ、それが既存のやり方だとしても、まだこのバンドで試していないのだとしたら、それは僕らにとっての「新しさ」だと思うから。で、“Warp”に関しては、僕らリズム隊がつくったデモを彼(武田)に渡したら、それが歌入りで返ってきて。そういうやり取りって、僕らにとってはこの13年間で初めてのことなんです。それに歌詞や声質って、そのバンド特有のものでもあるから、ここから先に歩んでいける道が、またひとつ増えたような気もしてて。

「どの曲もライヴ上で再現できる」ということを意識しながら作ったんです。実際、海外ではそういう楽曲のほうが反応は良かったりする

井澤惇

新しいことに挑戦するのが、このバンドの一貫したモティヴェーション──彼らはそう断言する。ちなみに、『Cubic』は前作『Installation』以来、およそ3年5ヶ月ぶりのスタジオ・アルバム。これまでのキャリアをとおして、コンスタントに作品を放ってきたLITEにとって、これは過去最長の制作期間となる。

井澤 : とはいえ、活動が止まっていたわけではなくて。ここ最近は海外での活動も多くなったので、どう考えてもプラス1年はツアーの時間が必要だったんです。それに、また新しいアルバムをつくるとなった以上は、絶対に『Installation』よりもいいものにしたかったから。そのためには、やっぱりそれなりの時間がかかりましたね。

武田 : じつは『Installation』を出した後、すぐに次作を見据えた曲作りは始めていたんですよ。それこそネタもけっこう集まってたんですけど、一瞬、方向性を見失った時期があって。要は、「これじゃ進化してないな」と思ったんです。

『Installation』を経て、彼らが求めた進化とは一体どういうものだったのか。そこで『Cubic』に耳を傾けてみると、そこでは近作において存在感を放っていた、シンセサイザーによるサウンドが鳴りを潜めていることに気がつく。むしろ、ここで際立っているのは、彼らの身体から繰り出されるギターとベース、ドラムの音に特化した、とにかく肉感的なバンド・アンサンブルだ。


LITE - D

武田 : いま思うと、『Installation』はラップトップ上で完結させたようなところが結構あったんですけど、そういう楽曲をライヴでやるときって、どうしても音環境に左右されてしまうんですよね。それこそ日本の会場は音響システムが整っているから、表現したいことがだいだい100パーセントやれるんだけど、アメリカだと、場所によってはなかなか再現できなかったりする。だから、今回のアルバムではバンドの音に落とし込んだものをレコーディングしてみたかったし、そういう楽曲のほうが、もっとお客さんと直接的につながれるんじゃないかな、と。歌もそのひとつですね。もし今後、お客さんも一緒に歌ってくれるような瞬間があるのだとしたら、やっぱりそれは新しい可能性だと思うし。だからといって、「これからは歌がメインになる」「シンセはもう使わない」ってわけではないんですけどね(笑)。

井澤 : 2011年に出した『For all the innocence』は、思いっきりシンセサイザーを突っ込んだアルバムで、それこそ純粋なところに立ち返って、とにかくやりたい放題にやったんですよ。で、そうした結果を踏まえて、『Installation』ではシンセの音をなるべく削ってみたんですけど、それでもやっぱり課題は残って。だから、今回に関しては、「どの曲もライヴ上で再現できる」ということを意識しながら作ったんです。実際、海外ではそういう楽曲のほうが反応は良かったりする。逆に日本だと、音源上で派手に聴こえる曲のほうが好まれたりもするので、その違いはすごく面白いですね。

CMY(三原色)で分解できて、またそれを重ねると別の形で成り立つ、なんかそれって、僕らの音楽みたいだなと思った

4人のバンド・アンサンブルにこだわった『Cubic』からは、ある種の原点回帰も見出せるだろう。ただ、その一方で作曲のプロセスはこれまで以上に多岐にわたっているようだ。

井澤 : 僕らの曲作りって、ラップトップ上で脳内のイメージを広げていくこともあれば、バンド4人でのセッションしていくことも当然あるんですけど、今回はそのふたつがバランスよく混ざりあってるんじゃないかな。つまり、1曲ごとに作曲方法が違うんです。それこそメンバー全員がスタジオに揃ってるんだけど、楽器はほぼ弾かずに、8時間ひたすらパソコンと向き合ってることもあったし。でも、それをみんなでやったのはすごく面白かった。

武田 : うん、すごくよかった。やっぱりバンドである以上は、メンバー全員の意見を反映させたいんですよ。だから、ラップトップ上での作業にしても、一人だけでやるよりは、みんなで集まってやるほうが、個々のキャラクターがより生々しく表れるんじゃないかなって。曲展開をパソコンで組み上げていくなかで、必要なフレーズが出てきたら、その場でライン録りしてみるっていう作業。それを今はリアルタイムでやれちゃうんだから、ITってホントすごいですよね(笑)。

「4つのしっかりとした柱を立てて、そこからひとつの土台を組んでいくようなイメージ」。制作時に意識していたものを武田はそう表現する。それぞれのパートが絡み合っていく『Cubic』の音像は、それこそ幾何学模様を連想させるほどに丁寧なデザインが施されているが、同時にそのパートの連なりから生まれる和音の響きやグルーヴは、ひたすらに情緒的だ。

『Cubic』ジャケット・アートワーク

武田 : 直線的で音数も少なく、デザインとして成り立っているものをここで表現するためには、どういうアートワークがいいかなと。それで見つけたのが、この写真だったんです(※写真家・Yuji Hanadaの作品「C/M/Y」から使用)。これ、3枚のフィルムを重ねたものらしくて。写真を特別な薬品で剥がすとCMY(三原色)で3枚に分解できて、またそれを重ねると別の形で成り立つっていう。なんかそれって、僕らの音楽みたいだなと思ったんですよね。

ロック・バンドの生々しい質感や迫力、力強さをいちばん引き出していたのが、キース・ソウザの作品だった

そして、本作の音像を決定付けたのが、BATTLESの作品を手がけたことでも知られる、キース・ソウザのミックス・エンジニアリングだ。

井澤 : エンジニアの候補は何人か挙がったんですけど、いろいろ聴いていくなかで、ロック・バンドの生々しい質感や迫力、力強さをいちばん引き出していたのが、キース・ソウザの作品だったんです。そこでさっそく連絡してみたら、彼がLITEのツアー・スケジュールを確認してくれて、「ファイナル公演がボストンなんだね。だったら、そのタイミングでやろう。3日間スタジオを開けておくから」と。もう運命的なくらいに、お互いのスケジュールが合致したんですよね。マスタリング・エンジニアのヘバ・カドリーは、キースが勧めてくれました。というのも、ミックスがキースに決まった時点で、マスタリングは彼が信頼しているエンジニアに任せたいなと思ったんですよね。自分たちの望んでいる音により近づくためには、絶対にそれが一番いいはずだって。出来上がったアルバムについて、キースは「“グレート”なアルバムだ」と言ってました。「みんなにそう言うんでしょ?」と聞き返したんですけど、「だいたいは“グッド”と言うね」と言ってたので、それならきっといいはずだと(笑)。

ソングライティングはもちろんのこと、エンジニアリングにおいても国際水準であることを貫き、数々のエクスペリメンタルなアプローチをポップな形に昇華した『Cubic』。本作こそ、まさにLITEのキャリア13年間における最高到達点だ。となれば、あとは国内外のシーンがそれをどう受け止めるのか。固唾を呑んで見守りたい。

井澤 : この13年間って、言うならば、エレベーターにいちども乗らず、とにかく一歩ずつ階段を上ってきたようなものだと思ってて。それこそ大きなレコード会社と組んで、そこでバカ売れすることを夢見るひともいるけど、僕らがこのバンドを続けているモチベーションは、そういうものとは違うんです。僕らはこれからも、このバンドが着実に前進している姿を見せていきたいと思っているので。

武田 : 今回のアルバムに関しては、いつもとは違ったハラハラドキドキ感がありますね(笑)。いつも以上に反応が気になるというか。ただ、この作品を作ったことでまた大きな一歩を踏み出せたことは、間違いないと思ってます。

インタヴュー&文 : 渡辺裕也
写真 : 作永裕範

過去配信中の作品

LIVE INFORMATION

LITE “Cubic” Tour 2017
2017年2月2日(木)@梅田Shangri-La
OPEN 19:00 / START 19:30

2017年2月3日(金)@名古屋JAMMIN’
OPEN 19:00 / START 19:30

2017年2月4日(土)@渋谷WWW X
OPEN 18:00 / START 19:00

2017年2月10日(金)@広島4.14
OPEN 18:30 / START 19:00

2017年2月11日(土)@福岡UTERO
OPEN 18:30 / START 19:00

2017年2月12日(日)@高松TOONICE
OPEN 18:30 / START 19:00

2017年2月17日(金)@札幌BESSIE HALL
OPEN 19:00 / START 19:30

ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 (Drink代別)
チケット発売日: 12/3(土)

チケットオフィシャル先行情報
受付サイト : http://lite-web.com/
受付期間 : 2016年11月16日(水)12:00 〜 2016年11月28日(月)23:59

PROFILE

LITE

2003年結成、4人組インスト・ロック・バンド。今までに2枚のフル・アルバムと2枚のEP、1枚のスプリットCDをリリース。独自のプログレッシブで鋭角的なリフやリズムからなる、エモーショナルでスリリングな楽曲は瞬く間に話題となり、また同時にヨーロッパのレーベルからもリリースし、ヨーロッパ、US、アジアツアーなどを成功させるなど国内外で注目を集めている。そして昨年10月に立ち上げた自主レーベル〈I Want The Moon〉より、音響系/ポストロックの巨匠で、TORTOISE, The Sea and CakeのJohn McEntireを迎えて、シカゴのSoma Studioにてレコーディングされた5曲を収録したミニ・アルバム『Illuminate』を2010年7月7日にリリースし、2度目となるFUJI ROCK FESTIVAL'10へ出演など、近年盛り上がりを見せているインストロック・シーンの中でも、最も注目すべき存在のひとつである。

>>LITE オフィシャル・サイト

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インタヴュー

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