美しくて、透明感のある音楽だけを作りたい――サニーデイ・サービス ハイレゾ配信&インタヴュー

サニーデイ・サービス 左から田中貴、曽我部恵一、丸山晴茂

こういう作品がずっと聴きたかった――なんてことを2016年の現在、まさかサニーデイ・サービスの新作にむかって言うことになろうとは。そんな幾許かのとまどいを感じながらも、この『DANCE TO YOU』というアルバムに自分はいま、ただただ魅了されてしまっている。

少なくとも筆者にとって、サニーデイ・サービスは90年代という時代背景と分かち難く結びついたバンドであった。特にそれが解散に向かいだした頃の活動後期に関して言えば、00年以降に数々のアクチュアルな作品を生み出していくソロ・アーティスト=曽我部恵一が覚醒するまでのモラトリアムのように捉えていた、というのが正直なところ。つまりはそれだけ曽我部のソロ・ワークが刺激的だったということであって、再結成後のサニーデイについては、あくまでも曽我部のアウトプットのひとつとして見ているところもあった。

しかし、それはもう撤回させてもらいたい。なぜなら『DANCE TO YOU』という作品は、間違いなくサニーデイ・サービスというバンドにしか作り得ないレコードであり、それは曽我部のソロ・キャリアとはあきらかに一線を画したものだからだ。それでいて、この作品のほとんどは曽我部恵一の手によるものでもあり… いや、ちょっと前振りが長くなってしまいそうなのでこのへんにしておこう。代表作『東京』からちょうど20年。そしてバンドの復活から8年目にして、再びまっさらな地平に立ったサニーデイ・サービス。そのあらたなマスター・ピース『DANCE TO YOU』について、曽我部恵一に語ってもらった。

インタヴュー&文 : 渡辺裕也
写真 : 関口佳代

バンド史上もっとも長い制作期間を費やした、10作目。ハイレゾ配信も!

サニーデイ・サービス / DANCE TO YOU

【配信形態 / 価格】
【左パッケージ(24bit/48kHzハイレゾ)】 ALAC / FLAC / WAV / AAC
価格 まとめ購入 1,800円(税込)/ 単曲 200円(税込)

【右パッケージ(16bit/44.1kHz)】 ALAC / FLAC / WAV / AAC / MP3
価格 まとめ購入 1,800円(税込)/ 単曲 200円(税込)

【トラック・リスト】
1. I’m a boy
2. 冒険
3. 青空ロンリー
4. パンチドランク・ラブソング
5. 苺畑でつかまえて
6. 血を流そう
7. セツナ
8. 桜 super love
9. ベン・ワットを聴いてた

アルバム1枚がすべて左右しちゃうっていう考え方は、今でも変わってない

曽我部恵一

──活動再開してからのサニーデイって、作品もライヴもすごくゆるやかな感じでしたよね。でも、それがどこかで明らかにギアが替わったというか。

曽我部 : そうですね。(再結成してから)最初の2作は、いわばウォーミング・アップで、今ようやくエンジンがかかったというか。でも、今回のアルバムにしたって、最初はもっと楽につくろうと思ってたんですよ。バンドの関係性もよかったし、この3人が今できることをすごく自然なやり方で録れたらいいなって。でも、なんか全然できなかった。それで結局は一年半くらいかかっちゃって。

──再結成当初、曽我部さんは「サニーデイで演奏すると、どうしてもサニーデイの音になっちゃう」とおっしゃってて。今作を聴くと、そのときとはまた違ったモードなのかな、とも思ったんですが。

曽我部 : うん。今回はその「俺らがやるとこうなっちゃうんだよね」みたいなものはぜんぶ排除してやりたかった。だから、ファーストですよね。いつもそう思ってるんですよ。ファースト・アルバムみたいなものをつくりたいなって。

――それはソロとしても実践されてきましたよね。たとえば、曽我部恵一BANDはそうだったと思うんですが。

曽我部 : そうそう。そうやってそのつど形態なんかを変えれば、ファーストっぽいものはたしかにつくれるんですよ。でも、今やりたいのはそういうことではなくて、とにかくサニーデイのあらたな1枚目を作りたかった。それは今回もそうだし、次にまた作るとしても、そういうものにしたい。でも、それがなかなか出来ないんですよね。どうしてもキャリアを感じさせる何かが出てくる。それがイヤでね。なんとかして、過去はすべてなかったことにしたかったというか。

――なるほど。一方で、今年は『東京』のリリース20周年を記念した再現ライヴもありました。それこそ、あれはバンドのキャリアを振り返る試みでもあったと思うのですが。

曽我部 : 再現ライヴについては、あのアルバムが好きだと言ってくれる昔のファンに、今の自分たちが会いにいくっていう感覚でした。ただ、いわゆる同窓会的な感じって、個人的にはあまり好きじゃなくて。もちろん、それもそれでいいとは思ってるけど、やるならもっと意味のあるものにしたいなと。

――実際にはいかがでしたか。

曽我部 : やってよかったな、とは思ってます。ただ、それが今後どういうふうにフィードバックされていくのかは、まだこれからかな。あと僕、ブライアン・ウィルソンがやった『Pet Sounds』の再現ライヴに行ってるんですよ。あれを見たときに、すごくいいもんだなと思えたので、その経験は大きかった。

――ブライアン・ウィルソンの再現ライヴは、いわゆる同窓会的なものとは違っていたということ?

曽我部 : うん。もっと淡々とやってた。だから、単純にそれをやるだけなんだなって。「今の解釈で『東京』をやります」みたいなことでもなくてね。誰かのためだとか、自分のためだとか、こういう意味合いでやろうとかでもなくて、とりあえず自然にやればいいんだなってことが、あの再現コンサートを見たときにわかったというか。

──『Pet Sounds』って、曽我部さんにとってはどういう作品なんですか。

曽我部 : 『Pet Sounds』みたいなものをつくりたいなっていう気持ちはずっとあるんですよ。それはサウンド云々というよりも、作り手が作品づくりに100パーセント入り込んじゃってる作品、という意味でね。そういうのって、とにかく迫力あるし、リアリティもあるから、自分もそういうふうにならなきゃって。そういことはいつも思ってるんです。

――これは僕の印象でしかないんですけど、サニーデイが活動してきた90年代って、それこそアーティストが作品主義的に音楽をつくれた時代だったんだろうなと思ってて。ある意味、ただ作りたいものを作ることだけに没頭できた時代というか。

曽我部 : うん。

――でも、今の時代はアーティストにも総合的な考え方を求められるじゃないですか。これには良し悪しあると思うんですけど。

曽我部 : そうですね。今はいろんなことを含めてアーティストの活動だって感じなのかもしれない。でも、やっぱり僕のなかで重要なのはアルバムなんですよね。シングルでもなく、ライヴでもなく、総合的な活動でもなく、アルバム。その1枚がすべて左右しちゃうっていう考え方は、今でも変わってない。まあ、それは僕が古いタイプのミュージシャンってことなのかもしれないけど。

――それは、サニーデイに関してはとくにそうってところもある? というのも、曽我部さんのソロにはその時々の瞬発力を大事にしてきた印象もあるので。

曽我部 : うん。ソロのときは、シングルにせよアルバムにせよ、自分の生きてる記録みたいなところがあるんだけど、サニーデイの場合は、やっぱり単なる記録じゃダメなんでしょうね。だって、これは僕ひとりのものじゃないし、やっぱりバンドとしての作品だから。

サウンドは新しくなくてもいい。大事なのは、どういう気持ちで曲や詞を書けるか


サニーデイ・サービス「セツナ」MV

――そうですね。ただ、今回のアルバムはそのサニーデイの一員である丸山晴茂さんが、体調不良のために一部のみの参加となっていますよね。サニーデイがどうしてもサニーデイの音になる要因のひとつとして、僕は丸山さんのドラムってすごく大きいと思ってて。

曽我部 : うん。サウンド的にはそうだね。

――その彼がバンドからいったん離れるということは、やっぱりサニーデイのアイデンティティが問われることにもなったと思うんです。

曽我部 : そうですよね、本当に。去年の3月くらいからこのアルバムを作り続けていたんですけど、たしか夏頃だったかな。晴茂くんの具合が悪くなっちゃって、レコーディングにも来なくなったんです。それで、とりあえずライヴはサポートでやりつつ、「これからどうしようかな」っていう気持ちはずっとあって。ただ、やめたらもうそこで終わりですからね。だったら、あんまり急かしたり焦らせたりせずに、戻るまで待とうかって。そういうスタンスですね、今は。生きていたら、いつかまたどこかでやれるだろうって。

――なるほど。では、そこで曽我部さんがこのバンドに持ち込む楽曲には、どんな変化が生まれましたか。

曽我部 : そこについては、多分そんなに変わってないんですよ。晴茂くんはこのアルバムで2曲しか叩いてないんですけど、結果的に収録されなかった他の曲に関しては、ほとんど彼が叩いてて。というのも、その時点で10曲以上は録ってたんです。

――ボツにした曲がそんなにあるんだ。

曽我部 : そう。今回は曲も40~50は作っていて、晴茂くんが叩いているものもいっぱいあったから、もっとそれをフィーチャーしてこうっていう考えも少しあったんですけど、まあ、そこはこだわらずにいきたいなと。で、それからはドラムを自分で叩きつつ、また録り始めたっていう。

――ちなみにそのボツにしたアルバムは、どういう作品だったんでしょうか。

曽我部 : これとはまったく別モノですね。なんていうか、フツーにいいアルバム(笑)。

――それは、フツーにサニーデイ・サービスらしいアルバムということ?

曽我部 : そうですね。でも、さっきも話したように、それではファースト・アルバムみたいな新鮮さがないから。それこそ「サニーデイ・サービス10枚目のアルバム」みたいな感じしかしないというか。そういうのはもう、どうでもいいなと思っちゃったんだよね。ライヴだってそう。何百回もやってきた曲をまたステージでやるわけで、それをただ普通にやってもつまらないから。初めて歌う感じでやりたいんですよね、いつも。そこはもう、気持ちだよね。どんな気持ちでステージに立つか。レコーディングに向かう時もそう。

――でも、その気持ちを毎回リセットさせるのって簡単じゃないですよね。

曽我部 : そうですね。過去をなかったことにするのってホント難しい。でも、今回に関していえば、今まで手癖でやれたようなことをぜんぶ忘れてレコーディングに取り組みつつ、かたや『東京』という20年前の作品をライヴで再現するっていう、そういう真逆のことが並行してあったのは、すごくよかった。その再現ライヴにしたって、20年前のアルバムを再現することへの違和感とか疑問、期待なんかもいっぱいあるなかでステージに上がってますからね。つまり大事なのは、そこでドキドキワクワクしながらステージに上がれてるかってことだから。

――それは、サウンド的な新しいトライアルがあるかどうかでもなく?

曽我部 : サウンドは新しくなくても全然いいんですよ。それよりも大事なのは、どういう気持ちで曲や詞を書けるかってこと。そういえば、レッチリのあたらしいやつもそんな感じだったね。「意識して地味さを目指している感じ」というか。あのジャケットにしたって、これはちょっと狙ってるんだろうなって。

――「意識して地味さを目指している感じ」というのは?

曽我部 : なんていうか、すごく抑制されたサウンドじゃないですか。パッと聴きわかりやすくない感じというか。で、そういうのが今すごく必要なんじゃないかっていう意識を、僕はあのアルバムから感じたんですよね。ともすればあれ、保守的とも受け止められかねない作品だと思ったんですけど、そこがまたよかったな。

――派手なリフとかメロディもあんまりないんですよね。

曽我部 : うん。目新しさも特にないし。それにレッチリってもっと物事にコミットしていく印象があったんだけど、今の彼らはもっとリアリティをもって音楽を追求している感じがしたな。

――そのリアリティというのは?

曽我部 : なんていうか、「音楽で社会情勢を変えよう」みたいなものじゃなくて、どちらかというと、「その日の朝のムードをちょっと変えよう」みたいな、もっと些細な感じというか。しかもそれって、「音楽って本当はそういうことなのかも」ってことに気づいたひとだけがやれる音楽だと思ったんですよ。それこそレッチリって、元々はカウンター・カルチャーのヒーロー的な存在だったわけじゃないですか。で、実際にそれをやり続けたうえで、彼らはなにかに気づいたんじゃないかなって。俺にはそう聴こえたんだよね。

――そこに曽我部さんは共感したということ?

曽我部 : もちろん。たとえばディアンジェロやケンドリック・ラマーなんかもすごくいいと思うんですよ。でも、そこにイマイチ盛り上がりを感じられない自分っていうのが、ここ数年あって。やっぱり若者たちの音楽って、常にあたらしいじゃないですか。そこに初期衝動があるから。でも、今回のレッチリの新作はそういうものではないんですよね。あれにはすごく勇気をもらったな。

感動的だったり、意味のあるようなものが多かったから、それはぜんぶ削除しました

――では、曽我部さんがサニーデイ・サービスとして何かあたらしいものを作ろうとしている時、初期衝動以外のどんなエネルギーを求めていたんですか。

曽我部 : うーん…。その「自分が求めているものってなんだろう」みたいなことを考えながら、日々曲をつくるってことかな。自分が信じているものとか、確立したものを疑いながらやっていく。僕はそれが大事なんじゃないかなと思ってます。でも、そうなっていくと自分の精神状態にすごく振り回されるんですよね。「今はこれが最高だと思ってるけど、きっと明日になったらまたイマイチとか言い出すんだろうな…」って。そういう精神的な不安定さも、アルバムがなかなか完成しなかったことに表れてると思う。

――曲が出来なくなるってことはなかったんですか。

曽我部 : そこはもう、仕事ですからね。たとえば「明日までにコマーシャル用の曲をこういうパターンで書いてきてください」と言われたら、それはすぐにできるんですよ。でも、そんなことが出来ちゃってるからだめなんだよね、本当は。

――なるほど。では、実際にこの完成型にむかうまでの突破口となったのは、どの曲だったんでしょう。

曽我部 : 「桜 super love」です。今回のアルバムに入ってるのは、ほとんどその「桜 super love」以降のもので、それまでにつくった何十曲かはほとんどボツにしました。あとはもちろん、シングルで出した「苺畑でつかまえて」も突破口ではあったんですけど。


サニーデイ・サービス「苺畑でつかまえて」MV

――まさにあのシングルで、僕はあたらしいサニーデイが始まったように感じました。

曽我部 : うん。あれはキャリアがあるバンドのシングルって感じではなかったよね(笑)。で、「そうそう、こういう感じがやりたいんだよな」って。おじさんくさかったり、いやらしくないもの。要は美しいものってことなんだけど、そういう透明感みたいなものが、サニーデイにとっては大事なので。「感動させてやろう」みたいなものが、まったくない感じというか。

──作為的なものがないってこと?

曽我部 : そうそう。たとえば、小学校1年生くらいの男の子がスッと立っているときの眼差しって、すごく美しいじゃないですか。僕はとにかくそういう感じのものを作りたかった。音楽に対して、自分がなにも変な感情を持たずに接しているっていう、そういう作り方がいいなって。実際、「苺畑でつかまえて」はそういうふうにできた曲だし、そのあとに「桜 super love」ができたことによって、ここに入ってる曲はすべてそうなりましたね。

――その「少年性」というイメージと、「苺畑でつかまえて」というタイトルはすごくリンクしているようにも感じたのですが、いかがでしたか。具体的にいうと、このタイトルからは『ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー』(ビートルズ)と、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」というふたつのモチーフを想起させられたのですが。

曽我部 : このモチーフについては、ボツになった曲の歌詞だけを活かした結果としてこうなった感じなので、実際はそこまで意識してないけど、たしかにそういうところはあると思います。これをきっかけとして、純粋な空想とか夢を突き詰められたというか。でも、たとえばそういう夢とかを歌っていても、どこかに政治性というか、「こういうメタファーを入れよう」みたいな悪知恵が働くことってあるでしょ?

──(笑)。それを悪知恵といえば、そうですね。

曽我部 : それがイヤだったんです。それよりも心をちゃんと描くことが大事だし、そこにメッセージなんてなくてもいいんだから。それこそジョン・レノンが〈ストロベリー・フィールズに連れていっておくれよ〉と歌ったときに、そこになんらかの政治的な意図が含まれているかっていうと、そんなことは全然なくて、あれは6歳のジョンが日記帳に書いたような文章なわけですからね。そういうことの重要さを、ソロになってからはずっと忘れてた。でも、それを「苺畑でつかまえて」でようやく取り戻せたんです。だから、何もないんですよ、ここには(笑)。「ひとにこういうことを伝えたい」だとか、「じつはこういう意味なんです」とかはぜんぜんなくて。ただ、僕の心のなかにある景色があるだけ。

――社会的な視点とかも特に含まれてないと。

曽我部 : まったくないですね。逆にいうと、それまでボツにした曲は、もうちょっと感動的だったり、意味のあるようなものが多かったから、それはぜんぶ削除しました。曲としては好きだったりするんですけどね、今回に関しては、そういうものはいらなかったので。

――それが作為的かどうかはともかく、曽我部さんのソロ作品には何かしらの怒りだったり、聴き手になにかを伝えようとするものが確実にあったと思うんです。実際、そういう作品をいくつも作ってきたと思うんですが。

曽我部 : 実際、ソロではそういうやり方を確立しようとしてきたからね。それこそ僕のソロは「ギター」という曲で始まったんですけど、あれはその日に感じた思いを音楽にしてみたものだったんです。そういうメッセージ性みたいなものを、どうにかしてイヤらしくなく音楽にできないかなって。で、それをここにきてすべて禁じ手にしようとしたわけ(笑)。今回のレコーディング中に、もう新聞をとるのもやめちゃったし。

――それは重要なポイントですね。以前、曽我部さんは毎朝新聞を読むのが習慣だとおっしゃってて、おそらくそれは重要なインプットでもあったと思うのですが。

曽我部 : ずっと2紙とってたんですけどね。ソロになってからは、朝にコーヒーを飲みながら新聞を読んで、「次はこんな曲つくろうかな」みたいにしてた時期がけっこう長いんですけど、今回はもう読む時間がなかったし、なんとなく手に取っても、それこそ「苺畑でつかまえて」みたいなことばかり考えてたから、なにも頭に入ってこないんですよ。頭の中が一面のお花畑。もう、病気ですよね(笑)。だから、今回のアルバムについては、なかなか曲のことを解説しづらい部分もあって。

サニーデイが自分にとって唯一のバンドであり、メンバーは家族の一員

――では、バンド内の関係性についてはいかがでしたか。それこそ今作は丸山さんが離れたことで、田中さんと一対一で向き合うことになったのかな、とも思ったんですが。

曽我部 : 今回は基本に僕ひとりで作業をして、必要なときに田中がベースを弾きに来てもらってたんです。ひとりで練習スタジオを借りて、パソコンを持ってドラムとかも録るっていう、今までなかったくらいにずっと一人きりのレコーディングだった。でも、同時に今回のレコーディングでは、このバンドの存在を今までよりもずっとつよく感じてたんですよね。自分でドラムを叩いていても、常にどこかで「きっと晴茂くんだったらこう叩くだろうな」と思いながら叩いてた。田中についてもそう。どこかで常に彼の存在を感じながら作業をして、曲ができたらスタジオに来てもらってベースを弾いてもらう。そこには特にコミュニケーションもなにもないんだけどね。まあ、そういう関係性なんですよ。クレジットを見ても、9割は俺がやってるわけで、本当にバンド感なんてゼロなんですけど(笑)。でも僕にとって、やっぱりこれはバンドなんだよね。

――サニーデイの初期作にも、そういう性格はありましたよね。

曽我部 : あったあった。だから、いま思えばずっと俺らはそうなんですよ。たとえば、ここにひとつの家族があるとする。朝には奥さんのつくった卵焼きと海苔と鮭と味噌汁とご飯がでてきて、それを食べた子供達が「行ってきます!」って学校に出ていく。休日にはお父さんが子供たちをどこかに連れていく。そんな毎日を続けている家族が、いわゆる家族でしょ?

――まあ、そうですね。

曽我部 : でも、かたやお父さんがどっかで不倫してたり、お母さんが実はアル中だったり、子供が学校でいじめられてたりする家族がいる。俺は、そこにだって家族としてのリアリティは変わらずあると思うし、もしそこでお母さんが家を出て行ったとして、それをもう家族と呼べないかっていうと、俺はそうじゃないと思うから。そういう意味で、いわゆるバンド・ストーリーのど真ん中にあるような人たちだけがバンドだとは思わないし、俺たちもすごくバンドらしいと思ってる。それにしても、あんまりこういうバンドはいないだろうけど(笑)。

――いないですね。しかもサニーデイの場合は、一度そのバンドを終わらせているわけですから。

曽我部 : いわゆる復縁ですよね(笑)。だから、バンドの大事さとか、20代の頃から一緒にやってきたメンバーのかけがえのなさは、ものすごくわかっているつもり。でも実際は、こうして丸山くんが来なくなったわけで。これをプロデューサー的な見方で判断したら、とりあえず別のドラムを入れるか、まったく別のやり方で次のサニーデイを見せようとするんでしょうね。でも、そこで「晴茂くんの具合がよくなるまで待ってよう」みたいな選択肢をとったわけで、いくらなんでも、それはゆるすぎるだろうと(笑)。でも、俺にはそれしか出来ないんですよ。そういう意味で、これからあたらしくバンドを組むことはないと思う。これだけが唯一のバンド。ここで晴茂くんをクビにして別のドラムを入れるなんて、やっぱり僕には無理だから。それこそ家族の一員だからね。「桜 super love」には〈君がいないことは君がいることだな〉っていう歌詞があるんだけど、つまりあれは、そういう曲なんですよ。なんていうか、しょうがねえなって。

――しょうがないけど、これはラヴなんだと。

曽我部 : うん。スーパー・ラヴですね。

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サニーデイ・サービス 『東京(20周年記念リマスター)』2016年

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サニーデイ・サービス『Sunny』2014年

2014年にリリースされた、バンド再結成後2枚目(通算9枚目)のアルバム。シングル・カットされた「アビーロードごっこ」など、珠玉のポップスが11作詰まっている。曽我部恵一による全曲解説付、未発表ポートレート付き。

LIVE INFORMATION

〈風とロック芋煮会 2016 KAZETOROCK IMONY WORLD〉
2016年9月16日(金) @福島 白河市 しらさかの森スポーツ公園
出演 : サニーデイ・サービス、谷村新司、レキシ、高橋 優、RHYMESTER、Silent Siren、立川談春 and more

〈ボロフェスタ2016〉
2016年10月29日(土)@京都KBSホール
出演 : クラムボン、ゆーきゃん、tofubeats、never young beach、岡崎体育 and more

PROFILE

曽我部恵一(vo,g)、田中貴(b)、丸山晴茂(dr)からなるロックバンド。

1995年『若者たち』でアルバムデビュー。以来、「街」という地平を舞台に、そこに佇む恋人たちや若者たちの物語を透明なメロディで鮮やかに描きだしてきた。その唯一無二の存在感で多くのリスナーを魅了し、90年代を代表するバンドの1つとして、今なお、リスナーのみならず多くのミュージシャンにも影響を与えている。7枚のアルバムと14枚のシングルを世に送り出し、2000年に惜しまれつつも解散。

2008年7月、奇跡の再結成を遂げ、以来、RISING SUN ROCK FESTIVAL、FUJI ROCK FESTIVALに出演するなど、ライブを中心に活動を再開。そして2008年に再結成を果たして以降、アルバム『本日は晴天なり』『Sunny』をリリース。かつてのようにマイペースながらも精力的な活動を展開している。

2016年8月3日に通算10枚目のアルバム『DANCE TO YOU』を発売。秋からは<サニーデイ・サービス TOUR 2016>でひさしぶりのライブハウスツアーを行う。

>>サニーデイ・サービス オフィシャルサイト

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インタヴュー

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by 河村 祐介
KUNIYUKI TAKAHASHI──インダストリアルの新たな響き
・2017年07月26日・KUNIYUKI TAKAHASHIのルーツにして、新たな側面をプレゼンする冒険的な新作──ハイレゾ独占配信 海外のハウス〜テクノ・シーンでも高い評価を受けるレーベル〈mule musiq〉。そのアーティスト・ラインナップは、現在でこそ海外シーンともシームレスなメンツが並ぶが、そのその設立当初から本レーベルを象徴するこの国のアーティストといえばこの人だろう。札幌のマエストロ、KUNIYUKI TAKAHASHI、その人だ。ジャズやソウルが豊かに溶け込んだディープ・ハウスを中心にしたこれまでの作品は、国内外で高い評価を受け続けている。そんな彼が、今回新作を発表するわけだが、そのサウンドはこれまでと趣向の違う質感を宿したものとなった。彼のルーツのひとつであるニューウェイヴやエレクトロニック・ボディ・ミュージック、インダストリアルといったサウンドを前面に出したプロジェクトとなっている。その名も「NEWWAVE PROJECT」。OTOTOYではこちらのハイレゾ独占配信をスタートする。サウンド・エンジニアとしての側面も持つ彼のそのサウンドの冒険をぜひともハイレゾで楽しんでいただきたい。 ハイレゾ独占配信KUNIYU
by 河村 祐介
筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

音楽ライター。自炊ブロガー。好角家。福島県二本松市出身。右利き。O型。

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