長かった冬はようやく明けたみたいだ。もうコートを着込む必要がないような暖かい陽気。気分がいいので近所の公園まで散歩に出てみる。遊具で遊ぶ子供。煙草を吸いながら物思いに耽るサラリーマン。ここまでまったく違う人生を歩んできた者達が、それぞれの事情で、今この公園というひとつの場所に集っている。そしてお互いの存在を意識することなく、すれ違っていく。そんな光景を見渡しながら、なんとなく「有明けの梶尾さんだったら、このシチュエーションをどんな歌にするんだろう?」なんて事を考える。

「有明けで歌っている事はすべて実話が元になっているんだ」と、梶尾尚平さんは僕に話してくれた事がある。確かにそれはとてもドラマチックなようでいて、実は誰の身にも起こるような些細な事ばかりだ。そして、だからこそ彼の綴る言葉は聴き手を選ぶ事なく胸に響くのだと思う。彼は自分の身の回りで起こっている様々なロマンスを見逃さない。住み慣れた街で偶然見かけたカップル。行き交う人々の会話。そんな日常にある様々な事象を拾っては、彼独特のボキャブラリーとユーモアを駆使して、新たな物語に仕立て、メロディに乗せて歌う。そういえば、彼は自分のバンドに<愛の探偵>というキャッチ・コピーを付けて名乗っていた事があった。当時はいつもの彼らしいジョークだと思って笑っていたが、今になってみて、有明けの本質をここまで言い当てた言葉もないな、と思う。僕らの生活の中に潜んでいる、愛が溢れている瞬間を探し出しては、歌という形にして聴き手に伝える。その報告が届く度に、僕はいつも泣かされてばかりいる。

そんな<愛の探偵>有明けから、また新しい報告が届いた。ハピネス徳永(B)、土屋聡志(Dr)との三人体制になってからは初の音源となる、3曲入りマキシ・シングル『ライディングマン』。昨年リリースした『マダムと青春』『Souls Of Gypsies』の2作で、プログラミングとアコースティック・サウンドを掛け合わせた新機軸を打ち建てたばかりだというのに、彼らはまた新たなサウンドを開拓し始めたようだ。跳ねまくるリズム隊。それに呼応するように全編で鳴り響く管楽器。ひたすらダンサブルでファンキーな演奏に乗せて、梶尾尚平は声を嗄らすようにして、新たなドラマの誕生を僕らに伝える。このバンドはいつもこうやって、僕らの平凡な日常を祝福してくれるのだ。ポジティヴなメッセージは世の中にいくらでもある。でもそのポジティヴィティをここまで現実に裏付けて歌っているのは、梶尾尚平だけだと思う。もう何度目の事だろう。何年か前に梶尾尚平というストーリー・テラーと出会えた好運に、僕はまた胸を熱くしている。(text by 渡辺裕也)

「dreamers」のフリー・ダウンロードはこちらから(期間 : 2/26〜3/1)

有明け PROFILE

3ピース、クレイジー・フォーク・バンド。
圧倒的エンターテインメントなアンサンブルとステージング。無限に広がる人間力にあの声あの歌詞あのメロディー。2009年3月「マダムと青春」6月「SOULS OF GYPSIES」。このふたつのミニ・アルバムでまた新たな進化を遂げた。

LIVE SCHEDULE

  • 3/5(金)Fireloop presents『HANDCLAPS! vol.28 ~きーぽんそうるでスウィート・メドレー~』@天王寺Fireloop
open/start 17:00 / 17:30
adv/day ¥1,500 / 2,000 (D別)
w/ THE COKEHEADS(東京) / 吉田Q / 浅野毅 / The Apple Stung / HeLp / [DJ] nozzy
  • 3/6(土) 『MIDNIGHT CARNIVAL!』@心斎橋club jungle
open/start 18:00 / 18:30
adv/day ¥2,000 / 2,500 (D別)
w/ the Mozanbeaqs / 花mugri / Monochrotelex / 南努
  • 3/12(金) 有明けの『みんなできーぽんそうる』@下北沢440
open/start 18:00 / 18:30
adv/day ¥1,500/¥2,000 (2order \1000別)
w/ 荒井佑允 / ドブロク / 竹上久美子

染みる歌声

すばらしい日々/ いなかやろう
おとぎ話、前野健太らと交流も深い新たな「うたもの」バンドの旗手として、また、TOMOVSKY、知久寿焼(たま)、ワタナベイビー(ホフディラン)らから強く愛された「21世紀のユニコーン!」あるいは「日本海のサザンオールスターズ」と噂が噂を呼ぶ『いなかやろう』、待望の2NDアルバムが、 PANIC SMILE吉田肇のプロデュースで“21世紀のみんなの歌”を目指すハヤシライス・レコードから発売です。

対談 いなかやろう×有明け

パヌー / mmm
若き才女が織り成す未知なる世界"パヌー"! 麓健一「美化」(kiti-001)をリリースするkiti 第2弾として発売決定。 CD-R作品ですでにCRJ-Tokyoチャートでは初登場一位を獲得するなど話題を集めていた、その若さに不釣合いなほどに薫り高いうたを紡ぐ注目の女性シンガーmmm(ミーマイモー)。 HOSE、かえる目、などの活動で異彩を放つ音楽家、宇波拓全面プロデュースにより豪華録音メンバー(宇波拓、中尾勘二、江崎將史、河崎純、下田温泉、千葉広樹、上江州佑布子)を迎えた初の公式フル・アルバム。他の追随を許さない、一筋縄ではいかない、感傷と笑いを同時に誘う、とても不思議でバラエティに富んだ作品が完成した。

mmm インタビュー

initial work collection 1990〜1991 - world language / SAKANA
sakana1989〜1991年の間にリリースされた初期4枚のアルバムを纏めた作品集。「夏」と同時リリース。全1曲30分という実験的要素の強い異色作品。

SAKANA インタビュー

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JariBu Afrobeat Arkestra『AfroSoundSystem』text by 渡辺裕也
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by 渡辺 裕也
筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

音楽ライター。自炊ブロガー。好角家。福島県二本松市出身。右利き。O型。

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