誰も盗めないヤツらのルーツ、BESとISSUGIが見せる東京のリアル──超実力派タッグによるジョイント・アルバム

BES & ISSUGI

90年代後半からSCARS、SWANKY SWIPEといったクルーに所属し、二度の逮捕による活動休止期間を経ながらも、現在まで日本のヒップホップ・シーン随一の天才として活躍し続けているラッパーBESと、ラッパーとしてはもちろん、ビートメイカー名義の16FLIPとしても、現在の東京アンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンではもはや不動の地位を獲得していると言っていいであろうISSUGI。昨年BESの3rdアルバム『THE KISS OF LIFE』のリミックス盤としてBES VS 16FLIP名義でリリースされた『Definition of This Word』も記憶に新しいこのふたりが、今回新たにジョイント・アルバム『VIRIDIAN SHOOT』をリリースした。客演にはMONJUよりMr.PUGと仙人掌、BESの3rdアルバムにも参加したMICHINOが登場、プロデューサー陣はGWOP SULLIVAN、BUDAMUNK、GRADIS NICE、SCRATCH NICE、そしてもちろん16FLIPという顔ぶれ。挙がる名前を見るだけでもヘッズ垂涎の、「間違いない」一枚を、レビューと共にお届けします。

強力タッグによるジョイント・アルバム

BES & ISSUGI / VIRIDIAN SHOOT

【配信形態】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC

【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 1,851円(税込)

【収録曲】
1. ALBUM INTRO
2. SPECIAL DELIVERY
3. NO PAIN MO GAIN
4. GOING OUT 4 CASH
5. NEW SCHOOL KILLAH
6. 247
7. RULES
8. BIL pt3 feat. MICHINO
9. EYES LOW
10. HIGHEST feat. MR.PUG, 仙人掌
11. VIRIDIAN SHOOT
12. SHEEPS
13. BOOM BAP
14. WE SHINE

<BONUS TRACKS>

15. GOING OUT 4 CASH REMIX
16. SPECIAL DELIVERY REMIX feat. MR.PUG


BES & ISSUGI 『VIRIDIAN SHOOT』 Teaser

REVIEW : BES & ISSUGI『VIRIDIAN SHOOT』

「ルーツに忠実」。このふたりを形容するにはあまりにも手垢のついた表現かもしれないが、しかしやはりそういうことなのだろうと思った。アルバムのリリースに先駆けてYouTubeで公開されたティザーでも聴くことができるM7「RULES」でも歌われているように、彼らからルーツが失われることはないだろう。今までも、これからも、きっとそうだ。

アルバムの、とりわけ前半部分で淡々としたトーンを醸し出しているのは、本作で最も多くのビートを手がけるNYのプロデューサー、GWOP SULLIVANだ。サンプリング、ドラム、ベース、それから時折聴こえてくる声ネタのスクラッチと、ヒップホップの伝統に則って編まれたミニマルなビート。その上でBESとISSUGIが描くのは、リアルな東京での日常と、これもまたヒップホップの伝統に忠実だ。腹が減ったらモノを食うこと。曲を書き、マイクに向かい、カネを作ること。ストリートを歩いてゆくこと。どれも彼らがこれまで続けてきたことだが、それは彼らのたゆまぬ努力によって続けられてきたものであり、そこに惰性はないということが、GWOPの乾いたビートと共に、もはやヒリヒリとした感覚さえ伴うようにして伝わってくる。

日々の描写に鏡写しになるようにして、彼らの内面が垣間見える瞬間も見逃せない。GWOPプロデュースのトラックが続くアルバム前半部で16FLIPのトラックがスパイスになるM5.「NEW SCHOOL KILLAH」でBESは、かつて自身がいた拘置所での出来事も引き合いに出しながらかなり攻撃的な姿勢を見せる一方、続くBUDAMUNKプロデュースのM6「247」では『人の不幸が蜜の味という Shut the fuck up 俺は言う 皆に幸あれ』と周りの人々に対するリスペクトも忘れない。M7「RULES」でのISSUGIも「街中じゃマインドは少数派 クラブの中いればSickなラッパー」とラップしており、そういった中で「必ず下よりは上見る」と自らの立ち位置に誇りを持っている様子がわかる。

とにかく彼らのスタイルが全面に出たアルバムのハイライトになるのがM13「BOOM BAP」だろう。流行り廃りの激しいヒップホップシーンの中で、曲名通りブーンバップ・スタイルを貫く姿勢を改めて表明したこの曲は、ほとんどどこを聴いてもパンチラインだ。そうしていつまでも変わらない輝きを持ち続けるふたりは、M14で「WE SHINE」と叫んでアルバムに幕を下ろす。

なんと誇り高いことだろうか。自らの信じたものをどこまでも曲げず、覚悟を決めて変わらぬスタイルに磨きをかけ続けることで、彼らはシーンをサヴァイヴしてきた。今までもそうであったように、彼らは明日もオーバーサイズのシャツを着て、腹が減ったらモノを食い、曲を書き、赤い目揺らしてストリートを歩くだろう。街中じゃ少数派かもしれないが、いつまでもフレッシュで、輝いている。(text by 井上裕樹)

【配信形態】
16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
【配信価格】
単曲 257円(税込) / アルバム 1,851円(税込)
【ご購入・視聴はこちらから】
https://ototoy.jp/_/default/p/96542

RECOMMEND

16FLIP vs BES / The Definition of This Word

BESの3rdアルバム『THE KISS OF LIFE』を全曲ISSUGIのビートメイカーである16FLIPがリミックスし、ダブルネームでリリースしたヴァージョン。BESのフロウを丁寧に解釈し、ビートに落とし込んだ16FLIPの職人仕事を堪能できます。


ISSUGI & GRADIS NICE / DAY & NITE

本作にも参加しているGRADIS NICEとISSUGIがタッグを組んでリリースした2016年作のアルバム。客演には5lackやMONJUの面々、Kid Fresinoらに加え、BESも参加しています。リミックス盤もぜひ。


BES / THE KISS OF LIFE

BESの復帰後第一作としてリリースされた3rdアルバム『THE KISS OF LIFE』。盟友i-Deaのサポートを受け、重厚な一枚になっています。『VIRIDIAN SHOOT』にも参加しているMICHINOは3曲でフィーチャリング。16FLIPとのリミックス・アルバムと聴き比べてみても面白いかもしれません。

PROFILE

BES

SWANKY SWIPE としての活動や SCARS での活動。その独特のスタイルにより 一躍、あこがれの的となった天才ラッパーBES。簡単に言うと誰もが認める日本 一ドープなラッパー。2006 年 SCARS「THE ALBUM」に参加。同年 11 月 HIPHOP ユニット SWANKY SWIPE としてアルバム「Bunks Marmalade」をリリー ス。2007 年 ULTIMATE MC BATTLE 本戦にて準優勝。2008 年 1ST ソロア ルバム「REBUILD」をリリースし人気・知名度・評価を不動のものとする。その 後客演等を精力的にこなすが、諸事情により活動休止を余儀なくされる。が 2016 年 2nd アルバム「UNTITLED」や DJ GEORGE との MIX CD「BES ILL LOUNGE:THE MIX VOL.2」をリリース。ここにきて完全復活!そして 2017 年 待望の 3RD アルバムがリリース。BES のラップによって J-HIP HOP 界に与えた 影響は大きいが、誰にも真似る事の出来ない独特のリズム感とフロウで唯一 無二の存在となっている。

ISSUGI

MONJU / SICKTEAM / DOWN NORTH CAMP のメンバー。仙人掌、Mr.PUG と共に MONJU として『CONCRETE GREEN』を始めとする数々の CD への参加で注目を集め、2006 年にファースト EP『103LAB.EP』、2008 年にはセカンド EP『Blackde.ep』をリリース。2009 年にはソロとしてのファースト・アルバム『Thursday』をリリース。16FLIP と共に作られた音楽性は ISSUGI のスタイルや空気を一枚で浮かび上がらせ、音源を通して各地に届くようになる。 以降は東京内外でライブする中、繋がっていった BEATMAKER 達と 2010 年にセカンド・アルバム『The Joint LP』をリリース。BUDAMUNK、MASS-HOLE、PUNPEE、Malik、Gradis Nice をプロデュースに迎えた『The Joint LP』 は自身の内面をより深く投影した作品で着実に強度を増した音楽性を示した。2011 年には JAZZYSPORT から BUDAMUNK、S.L.A.C.K.(5lack)とのユニット、SICK TEAM としてのアルバムや現在NY に渡っている DJ SCRATCH NICE とのミックステープ『WHERE OWN WONDER』をドロップ。SICK TEAM のアルバム『SICKTEAM』では BUDAMUNK、S.L.A.C.K.、ISSUGI、この 3 人での化学反応や feat に EVIDENCE、ILLA J、ROC MARCIANO を起用するなど話題を集め、海外の HipHop サイトなどでも紹介される事となっ た。その後 2013 年 2 月にリリースしたサード・アルバム『EARR』は再び全曲 16FLIP と共に作り上げ、ALBUM としての世界観や中 毒性のある BEAT 達が高く評価され、Complex UK のサイトでは「The Best Of Japanese Hip-Hop: 25 Artists You Need To Know」の記事に ALBUM とともに記載され、同作は「驚異的な作品(Phenomenal)」とも評された。同年 11 月には以前から数々 の JOINT を生み出してきた盟友 BUDAMUNK とのタッグ、ISSUGI & BUDAMUNK 名義(II BARRET)でフルアルバム『II BARRET』 をリリース。2014 年には SICK TEAM 名義で『SICK TEAM 2』をリリースするなどマイペースながらも精力的に活動。2015 年 4 月 には ISSUGI & DJ SCRATCH NICE 名義で待望の 4th ALBUM『UrabanBowl Mixcity』をリリース。2016 年、2 月には ISSUGI×JJJ 名義の FREEMIXTAPE"LINK UP 2 EXPERIMENT"を Dogearrecords の homepage で公開している。その後 11 月には ISSUGI & GRADIS NICE 名義でのニューアルバム『DAY and NITE』をリリース。そして昨年から自身の番組、 "7INCTREE"https://freshlive.tv/7inctree(毎月 7inch をリリースするプロジェクト)を開始し、2017 年 2 月までに計 12 枚の 7inch をリリースした。(3 月に CD 版として発売)。Hypebeast で 10 Japanese Rappers You Need to Know in 2017 に選ばれるなど海 外からも高い評価を得る存在である。

この記事の筆者
TOP