2017/10/16 17:53

fulaから届いた、新しい旅の報せ──新体制後初のアルバム『ノート』をリリース&インタヴュー掲載!

雑多な音楽性をポップにまとめあげ、耳にする人の心と体を踊らせる4人組、fula。2016年にギター・石川、ベース・安本、ドラム・髙木が脱退し、それまでのメンバーと作りあげた「楽しい音楽」「踊れる演奏」「情熱」を受け継ぎ、新たにドラム・遠藤、ベース・馬場、ギター・ピギーが加入し。再出発を始めた彼らの新体制1発目となるアルバム『ノート』の発売を記念し、インタヴューを敢行。新譜とともにお楽しみ下さい。


新体制初となるアルバムをドロップ

fula / ノート
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(16bit / 44.1kHz) / AAC

【配信価格】
単曲 216円(税込) / アルバム 2160円(税込)

【収録曲】
01. Circle of Flame
02. スターショア
03. のあ
04. Catwalk
05. 航海日誌
06. グレイヴダンス
07. よあけ
08. クラップユアハンズ
09. 散歩道
10. 夕焼け
11. 恋のスーパーケイデンス


fula / Catwalk
fula / Catwalk

INTERVIEW : fula

突然メンバー3人の脱退、レーベルの移籍…… とにかく色々と大きな出来事が続いたfula。そんななかリリースされた『ノート』は1曲目の「Circle of Flame」で〈終わらない旅路を 走り続ける勇気を〉と歌われている通り、彼らの新しい旅を知らせる作品となった。字引が語る「いまやれることは、いまやらなくちゃ」と。まさに、いまのfulaにとって、これは出さなければいけないアルバムだったと思う。今回のインタヴューでは前作の1年半前から振り返って、現在はどのような状況なのか語ってもらった。

インタヴュー&文 : 真貝聡
写真 : 大橋祐希

僕がつくった曲をバンド・サウンドとしてやれたら、fulaは残り続ける

──前作から今作をリリースするまでの約1年半、fulaには大きな紆余曲折がありました。今日は、そこの話についても触れますね。

字引佑麿(以下、字引) : はい! 話しちゃマズイことはひとつもないので、どんどんツッコんでいただければと思います。

──まずは、前回OTOTOYでインタヴューしたとき、発売日にも関わらず店頭にCDが並ばない事件がありました。

字引 : レーベルの手違いでお店に並ぶことはおろか、商品の完成すら間に合ってない状態でした。その時、いまのレーベル(〈SYNC〉)の jun1さんに、「こういうことがあったんですよ」ってグチ程度だったんですけど、色々と相談に乗ってもらってて。『ONE Music Camp』のイベントでも、夜な夜な外が明るくなるまでお酒を飲みながらそんな話をして。その時からメンバーが全員抜けることも決まっていたので、「実はこんな感じで新しいメンバーも見つかってないんですけども、俺はfulaをやっていこうと思ってるんですよね」と話をしたら、jun1さんが「いつでも力になるよ」って言ってくれて。

左からピギー(Gt)、字引佑麿 (Vo&Gt)

──そんな流れがあって、〈SYNC〉からCDを出すことにしたんですね。

字引 : 東京のバンドが大阪のレーベルからCDを出すっていうのは、なかなかないですけど。今はネットも普及してるし、何とかなるでしょうと。むしろ、大阪のイベントにたくさん誘われるし。

ピギー : そうだね。

字引 : 逆に言えば、前作のトラブルがあったからこそ今に繋がっているのかなって感じはありますね。

──先ほども話に出ましたけど、前のメンバーが8月に脱退を発表しました。それで字引さんも「もう他の人とバンドはできないな」って気持ちにならなかったですか?

字引 : 他の人と組めないかもなって不安はなくて。抜けるって話が出たときに、僕の歌があって、僕がつくった曲をバンド・サウンドとしてやれたら、fulaは残り続けるって思ってましたね。それは、誰がやるにしても変わらず。

──なるほど。新たにピギーさん、馬場さん、遠藤さんがfulaに入りました。加入の経緯は?

字引 : ドラムの遠藤達郎は大学の頃から知り合いで、ふたりして沖縄旅行に行くぐらい仲が良くて。ぜんぜんそういう関係じゃないんですけど。

──疑ってないですよ(笑)。

字引 : みんなが辞めるって決まって。前のメンバーが変わるなら、ドラムは遠藤に任せたいとずっと思っていて。相談したら快諾してくれました。

──ベースの馬場さんは?

字引 : 候補を何人か挙げていったんですけど、その中で馬場ちゃんがダントツに良いなと思って。断られる覚悟で声をかけてみたら「俺は誘いは断らないようにしてる」ってカッコイイことを言ってきたから、じゃあやってもらおうか、と。

──あはははは!

字引 : ギターに関してはなかなか決まらなくて。前の石川もそうなんですけど、ひと癖ある人が良かったんですよね。遠藤が「1人どうしても誘いたい奴がいて、ピギーっていうんですけど知ってます?」って。「え、本名は?」、「いや知らないんですよね。とりあえずピギーって名乗ってます」って言われて、絶対やべえ奴じゃん! と(笑)。

ピギー : そういう目で見られるんだね、ピギーって名前は(笑)。

字引 : 会ってみたら、やべえって思っていたほど……。

──実際は大丈夫な人でしたか。

字引 : それを超えてやべえ奴でした。

──どういうことですか(笑)。

字引 : スイミング・バッグにエフェクターを全部詰めて、ホワイトファルコンを背負ってきたよね。

ピギー : ああ、そうだね。

字引 : ちょっとセッションをしただけでこの人がやってくれるなら1番いいなって思えました。

──そもそもピギーさんはfulaを知ってました?

ピギー : fulaのことは全く知らなくて。声をかけてくれた遠藤くんも、5年ぐらい連絡をとってなかったんですけど。ある日、TwitterのDMで「いま、何してますか? 連絡先を教えてください」って(笑)。最初はなんのことだろうと思って。聞いたら、fulaってバンドがギターを探していると。呼ばれるがままにスタジオへ行きました。

「1曲目に入れて泣かせに行こう」

──新体制になって、初ライヴは11月ですよね。

字引 : そうですね。

──そのライヴのラストに『Summery Summary』に収録されていた「Circle of Flame」を演奏してましたけど、あの選曲は凄くメッセージ性が強いと思いました。

fula / Circle of Flame
fula / Circle of Flame

字引 : 「Circle of Flame」を最後に演奏するのは最初のうちから、みんなに伝えた記憶があります。あの時はアレンジも変えてたよね。

ピギー : 新しいヴァージョンにしましたね。

字引 : 実は歌詞も増やしてて。歌詞の通りですよね。あの曲を聴けば、これから俺が何をしたいのか伝わると思って。

──出だし〈終わらない旅路を 走り続ける勇気を〉って歌詞は、新生fulaにとってピッタリな言葉ですよね。

字引 : ありがとうございます。

──「Circle of Flame」は、今回のアルバムで新ヴァージョンとして1曲目に収録してます。

字引 : もともとは前作に収録していた曲だったから、5曲目くらいにしてたんですよ。そしたら、jun1さんに「1曲目に入れて泣かせに行こう」って言われて。

ピギー : 珍しく強いプッシュをされたよね。

字引 : jun1さんは「バンドがやりたいなら、俺が止める理由はないよ」っていう人なんだけど、その時は「Circle of Flame」で始まる以外にありえない」と言ってて。そこまで言うなら、そうだなって。

ピギー : 並べてみると、たしかに1番しっくりくる感じだよね。

字引 : 聴いた人は「これからfulaが何をしていくのかわかった」とか「新譜を聴くまでは不安な気持ちがあったけど、1曲目に「Circle of Flame」が入ってて、その不安はただの杞憂だった」と言ってくれる人がいて。僕らとしても安心しましたね。

──「夕焼け」がきて最後に「恋のスーパーケイデンス」で終わるのも、凄いコンセプチュアルな1枚だなって。

字引 : コンセプトはそんなにないつもりなんですけど、歌にフォーカスした作品になってると思います。特に「夕焼け」終わりに0秒で「恋のスーパーケイデンス」で始まるのは、余韻を残しちゃうとしっとりしちゃうから。あと、「恋のスーパーケイデンス」はふざけているので、ボーナス・トラック感が出ちゃうよねってことで間髪入れずにやりましょう、と。

短期集中型でやったから、来た球を打つみたいな

──ピギーさんはアルバム制作中にどんなことを意識してました?

ピギー : う〜んと、何も考えてないかもしれない(笑)。

字引 : 感覚派だもんね。

ピギー : つくるのも短期集中型でやったから、来た球を打つみたいな感じでした。たぶん、つくっているときは佑麿くん以外はみんな全体像がわかってない。そういう制作のペースでした。全体的には、佑磨くんの優しい声が活きるような感じに仕上がったかなと思います。

──ピギーさんの「全体像が分かってなかった」っていうのはわかる気がします。「Circle of Flame」があったり「グレイヴダンス」があったり「夕焼け」があったり、ひとつのバンドのアルバムにしてはいろんなアプローチが入ってますよね。

ピギー : そうですね。しかも、定期的に誰かがふざけたくなるから、悪ふざけが入ってるんだよね。

字引 : 「グレイヴダンス」のギター・ソロとか、最高だよね。

──え!? めちゃくちゃカッコイイですけど。

ピギー : あれは悪ふざけですね。ギター・ソロが欲しい、ということだったので1曲くらいはソロらしいソロを弾いてやろうかと。あと「恋のスーパーケイデンス」もふざけてるしね。たしかにバラバラなんだけど、1枚を通して聴くとなんとも言えないカラーが出ているなと思います。

──ちなみに、今回も自転車でCDのデリバリーを予定しているとか。

字引 : そうですね。タワレコさんだったり、HMVさんもPOPをつくってくれたので、まずはお店でそれを見てほしくて。で、配信でいろんな人に行き届いたあとに、チケットとCDを買ってくれた方にデリバリーをやりたいと思います。どこまでできるかはわからないんですけど、待っててくれる人がいるし、今回もやりたいなと。

──それはfula全員で?

ピギー : それは字引さんにお任せして……。

字引 : 馬場が原付で。

ピギー : 原付で出ちゃうと、おかしな方向になるでしょ。エモさないじゃん(笑)。

字引 : そうだね、ただのピザ配達みたいな。たとえば「福岡に来てください。CDとチケットを買います」って言うなら、1500kmだから…… ちょっとかかりますけど。

ピギー : 1週間はかかるね。

字引 : そうだね、1日200kmだから。

ピギー : それも相当凄いけどね。

字引 : そんな感じで行こうかなと思います。

ピギー : とにかく、自転車デリバリーの話しになった瞬間の食いつきが凄すぎるから(笑)。

──やるからにはドキュメンタリーとして、映像に残した方がいい気がしますね。

字引 : そうなんですよね! ただ……。

ピギー : 誰もついていけないっていう。「行ってらっしゃい」と「おかえりなさい」しか撮れない。

字引 : ハンドルにカメラを付けるっていうのもアリかも。ただ、自転車に乗ってる時は本当に汗とヨダレがダラダラだからね。

ピギー : ふふふ、良いんじゃないですか。それはそれで。

自分たちの人生を豊かに「結びつけていく」ことが大事

──自転車繋がりでお訊きしますけど、前に字引さんが「音楽も、スポーツと一緒で、引退する時期を考えないといかんな」ってツイートしてましたけど、今後のバンドマン人生はどのように考えてますか。

字引 : 去年か一昨年に急性喉頭炎にかかって、まったく声が出なくなったんですよ。喉って筋肉だし、衰えていくし、その時に消耗品っていうことを凄い感じて。そう考えた時にいつか自分がつくった曲を歌えなくなる日が来るな、と思って。あまり大御所をディスるってわけじゃないですけど、往年の曲をずっと歌ってて歌えてないじゃんって人が少なからずいるじゃないですか。僕はそうまでして歌い続けるっていうのは、頑張ってやってきたことを最後に汚してしまう気がして。だったら僕は「潔い選手だったな」って、「もっと長く続ければ良かったのに」って思ってもらえるくらいのところで……。体力の限界を感じたときは、そこできっぱり辞めるって言うのが自分の中での音楽に対する礼儀だと考えてますね。そこまでに自分達が設定した目標を達成しなくちゃいけないって意味でも、発破をかけるというか。じゃあ、引退までに何ができるんだろうってことを考えて、そういうビジョンを持っておかなくちゃいけないなって、自分の中では常にあります。

──寿命100年時代と言われてる時に、その刹那的な考え方は凄いですね。

字引 : いまやれることは、いまやらなくちゃっていうのは、僕の自転車競技人生においても、音楽家人生においても、いまが全盛期かもしれないから、いま出せるものは全て出さないと。「あの時に頑張れば良かったのに」って後悔しないようにしてます。

──Twitterでも「人生とおちんちんは短い」ってツイートしてましたよね。

字引 : ああ、結構チェックされてますね! おちんちん…… 僕はそんなに短くはないんですけど。

ピギー : いまはその話をする感じじゃないでしょ(笑)。

字引 : なんだろうな…… 男としてやれることというか、生まれてきたからにはやりたいよねっていう。〈フジロック〉に出たいとか、いろいろありますけど、そういう欲望を果たすためにどうしても期限があるし。そういう意味でも、逃しちゃいけないタイミングっていうのは少なくて。その積み重ねで人生があるから、やっぱり短いんだなっていう。そういうことを考えてのツイートだったことを覚えています。

──ましてや、人生に比べてプレイヤーでいられる期間は短いですからね。今作を聴いて、その言葉は繋がるなと思いました。飛び出さないと自分の景色は変わらないというか。

字引 : そうですね。年齢を関係なしに各々が自分たちの人生を豊かに「結びつけていく」ことが大事。どんなに近しい人だとしても誰かに「縛られる」ものではないよね。そんな気持ちを込めて作った曲も結構あります。

──まさにいまの話と繋がりますね。

字引 : 人生の短いタイミングを逃しちゃいけないって意味では、先ほどの話に戻りますが、「Circle of Flame」で歌っていること、旅っていうのは人生の話だし、今作はそこに尽きるのかもしれないです。

過去作もチェック!

森の王様

fula

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LIVE SCHEDULE

〈fula new album『ノート』 ONE MAN RELEASE PARTY〉
2017年11月4日(土)@渋谷O-nest
時間 : OPEN 18:00 / START 19:00

〈オオサカズ x fula Wリリースパーティー〉
2017年11月23日(日)@東心斎橋CONPASS
時間 : 未定

ライヴ情報詳細はこちらから

PROFILE

fula

fula(ふら)は遠藤達郎 (Dr) / 字引佑麿 (Vo&Gt) / ピギー (Gt) / 馬場雄輔 (Ba)から成る男性4人組のバンド。ジャムを基調にした野外で聴きたくなる開放感のある楽曲に、あたたかい歌声を乗せるプレー・スタイル。サーフ、ダンス、ジャズ、レゲエ、アフロビート、はたまたメタル、クラシック。それらをポップにまとめあげ、聴く人を躍らせ、踊らせる。〈RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO〉をはじめ、数々の野外フェスに出演。2017年9月13日、今までよりさらに「うた」にフォーカスした新体制初のアルバム『ノート』発売中。

アーティスト公式HPはこちら

[インタヴュー] fula

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