2016/11/15 13:56

【ハイレゾ配信】ムーンライダーズ内の伝説のユニットがARTPORT PROJECTとしてライヴ音源で復活!

左から白井良明(gt)、オータコージ(dr)、鈴木博文(Ba)

ギターの白井良明、ベースの鈴木博文、そしてドラムの故、かしぶち哲郎というムーンライダーズのメンバーによる、ライヴでのインスタレーションをコンセプトとしたプロジェクト、ARTPORT。1981年からの実験的な活動を経て、自然休止状態へ、そして2013年のかしぶちの死去とともに、再び、我々の目の前に姿を表すことはないかに見えた。が、ここにARTPORT PROJECTとして、そのコンセプトを引き継ぎ、2016年6月、ライヴにてまさかの復活を果たした。かしぶちに代わり、ドラマーにはL.E.D.や曽我部恵一BAND、その他、さまざまなプロジェクトにて客演するオータコージが抜擢された。その6月に行われたARTPORT PROJECTは、このたび、本ユニットの初の録音作品としてこのたび『ARTPORT PROJECT.1』としてリリースされるに至った。OTOTOYではこちらをハイレゾ配信、スリリングなライヴ音源の空気感をぜひともハイレゾでお楽しみください。

ARTPORT PROJECT / ARTPORT PROJECT.1(24bit/48kHz)
【Track List】
01. ロンドン・タウン
02. ワイルド・ジャングル
03. オー・マイ・チベット
04. Jam.1「橋」
05. Jam.2
06. Jam.3
07. Jam.4
08. ベニヤマン
09. ブロークン・デイズ
10. チロリアン・ロック
11. キッチン・パンカー
12. ロシアン・レゲエ

【配信形態 / 価格】
24bit/48kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
単曲 257円(税込) / アルバムまとめ購入 2,500円(税込)

INTERVIEW : ARTPORT PROJECT

ムーンライダーズのかしぶち哲郎、白井良明、鈴木博文がイギリスのポストパンクに触発され、81年に結成したアートポート。かしぶち哲郎亡き後、まさかこういう形で復活するとは、予想していなかった人も多いのではないだろうか。 アートポートからアートポート・プロジェクトへ。2016年6月12日の恵比寿CreAto、アートポートはゲスト・ドラマーにオータコージ(L.E.D / 曽我部恵一バンド)を迎え、アートポート・プロジェクトとして再起動を果たした。

このたび発売となる『ARTPORT PROJECT.1 LIVE AT CreAto 2016.6.12 TOKYO』は、その日のステージを収録したライヴ・アルバム。アートポートの原点ともいうべきインスタレーション・ライヴがどのようにアップデイトされたのか。時代の“ポスト”を開拓し続ける3人に話を聞いた。


インタヴュー&文 : 小暮秀夫

最初なにを目指していたかっていうと、ポリスなんですよ

白井良明(gt)

──アートポートがアートポート・プロジェクトとして再始動することになったのは、どのような経緯からなのでしょうか?

白井良明(以下白井) : 今年、僕がすごくいろいろな人とやりたい年なの。で、DJのimazekiNGっていう、恵比寿〈CreAto〉でブッキングもしている人が、自分が目をかけてるミュージシャンを呼んでかけあわせるアルティメット・セッションってのを主催していまして。それは初めて会った人たちが即興でセッションするっていう企画なんだけど、僕もいろいろな人とやってみたかったから、出たんですよ。

で、最初に参加したときに太鼓で参加してきたのがオータコージ君とtoeの柏倉隆史君。そこでオータ君のニュアンスを覚えていて、ふーちゃん(鈴木博文)と(6月に恵比寿〈CreAto〉でライヴを)やろうってなった時に(そのときのライヴを)アートポートのプロジェクト化して、本来のアートポートの姿をおっかけたらどうかなと思ったの。それでインスタレーションというのが頭に浮かんで、ふーちゃんに「こんなのどう?」みたいに提案したと思うんだよね。

鈴木博文(以下博文) : アートポートが最初なにを目指していたかっていうと、ポリスなんですよ、やっぱり(笑)。ああいうかっこいいやつを3ピースでやっていきたかった。だけど始めた途端にこの人(白井)はギターの上にミニカー走らせちゃったりして(笑)。

白井 : だからね、もともと3人で曲を作ってた時ってのは、インスタレーションに近いものだったんだよ。それぞれが音を適当に出して。

博文 : それで、知らないうちに曲ができるんだよね。

白井 : そうそう。それで段々まとまってくるっていう流れだから、その原風景をプロジェクトで再びやってもいいんじゃないか、みたいなさ。

──オータさんは良明さんと初めてやった時のことを覚えてますか?

オータコージ(以下オータ) : 僕はアルティメット・セッションに3回くらい参加させてもらってて、良明さんとはそのとき初めてだったんです。毎回知らない人が集まってやるから、すごいガッチリ合う日と、おもしろかったけどちょっと今日はどうなんだろうねっていう日とか色々あるんですけど、その日は楽屋の雰囲気もよかったですよね。

博文 : (アルティメット・セッションの)リハってなにやってるの?

オータ : まったくないですね。サウンドチェックはあるけど。それで、すごくいい感じで終わったっていうか、またやりたいねって。初めてやった同士なのに、バンドみたいになってて。

白井 : 仲良しになるんだよね。音出すとね。

オータ : 演奏中のアイ・コンタクトみたいなものも、すごいうまくいったっていうとアレなんですけど、波長があった回でしたね。良明さんは大先輩なので、やらせていただいたことがすごくうれしかった。で、ベースの守家巧君(RM jazz legacy / RUMBA ON THE CORNER)とか色々な人と、良明さんの音はやっぱり説得力があるみたいな話を楽屋でしていて。そうしたら、良明さんから突然メールをいただいたんで。

──メールにはどういうことが書かれていたんですか?

オータ : とにかく一緒にやりましょう、っていう。それ以外は詳しく書かれてなかったんですよね。アートポート・プロジェクトって名前もメールには書いてなかった。

博文 : ひょっとしたら、アートポートの曲をやるなんて言われてなかった?

オータ : とにかく一緒にやりましょう、が最初だったんです。

白井 : あんまり言ってもつまんないっていうのがあったのかもしれないね。

オータ : その後何日かして、良明さんから再びメールが送られてきて、「アートポートってグループがいます。ムーンライダーズのメンバーが結成したバンドです」って書かれていて。その時に「え~っ!! マジか!?」って思いましたけどね(笑)。

白井 : アルティメットの延長だと思ってたんだ(笑)。

オータ : わりと軽い感じで誘っていただいたんですけど、ムーンライダーズって、音楽史の重要なバンドじゃないですか。「やばい! 軽くOKなんて言っちゃった!」って。で、その後、良明さんから「かしぶちさんがいたときはこういうコンセプトでやっていた」とか聞いて、自分の中でなるほどって咀嚼していったというか。自分が誘われた意味を考えて、自分を出せばいいかっていう方向に。

白井 : 出されなかったら、困っちゃう。計算が狂っちゃう。

オータ : 入口はビックリしましたけど、昔のライヴ音源を聴かせていただいたら、僕的にむちゃくちゃズッパマリっていうか。むちゃくちゃかっこよくて、とんがっていて。

白井 : ズッパマリって言うんだ(笑)。

オータ : イギリスのポストパンクって僕はあんまり通ってきてないんですけど、内省的でモノクロっていうイメージが僕の中にあって。でもアートポートはポストパンクのかっこよさもありつつ、モノクロの中にちょっと色が刺さってるみたいな。カラフルな一面もあるっていうか。こういうバンドやりたかったんだよなあ、と思って。

白井 : ズッパマリだったんだ(笑)。

オータ : 「これはやばい! 」と思って聴きまくったっていうのが正直なところですね。普通にいちファンとして。

昭和のイメージをひきずったらいけない

鈴木博文(Ba)

──インスタレーション・ライヴをやることについて、博文さんはどう思いましたか?

博文 : 俺は怖かったよ。やったことないから。実際、俺のソロ(のライヴや作品)はずっと楽曲でしょ? AメロBメロがあってサビがあるみたいなさ。で、インスタレーションって言い出して「どうすればいいんだろうなぁ」と思った。

白井 : オータ君と音出すまでは悩んでたよね。

博文 : このまま、わかんないままいっちゃおうと。

白井 : インスタレーションは上手い下手の問題じゃないから、ふーちゃんだったら絶対できると思ってたの、俺は。インスタレーションっていう名前がどうかって話がそもそもあるけどさ、ジャムだね。

博文 : 独特だよね、あの雰囲気は。ちゃんと終わったのかなと思ったら、まだあるとか(笑)。

白井 : 我々の年代はフリー・ジャズっていうのをちょくちょく聴きかじったりするんだけど、その昭和のイメージをひきずったらいけないなという風には思うんだよね。ふーちゃんはそれが頭をかすめちゃうから、ハテナを持ってたんじゃない?

博文 : 幸いなことに、俺、あんまり聴いてないんだよ、フリー・ジャズ(笑)。

白井 : 俺もそんなに聴いてないけど、なんかあるじゃない。新宿っぽい匂い。ふーちゃんもアルティメット1回出たらいいよ。平成のジャムってのがどういうのかつかめると思う。

おふたりの懐も曲の懐も「でかっ!!」と

オータコージ(dr)

──オータさんは実際に音をあわせてみてどうでした?

オータ : 僕、普通のレコーディングやライヴのサポートに呼ばれたときって、試験勉強みたいなことをするんですね。譜面におこして、Aが何小節でサビが何小節でここに決めがあってって、構成を頭で考えて覚えてくタイプなんです。でもアートポート・プロジェクトに関しては「これは合わせてみてだな」という感覚になったっていうか。硬くきめこんでやらない感じの曲だなっていうのは、パッて聴いて体感したんで。

博文 : 作ったときがそうだもん。譜面でやってない。誰かが音を出すと、「こっちにいくか。じゃあ自分はこうしよう」みたいな。そうすると、全然譜面要らないんだよね。この年になると、譜面に書いておかないと忘れちゃうけどさ(笑)。

オータ :でもアートポートの楽曲にも構成とか、決めとか、簡単なのはあるじゃないですか。

博文 : 歌詞ができちゃうとね。

オータ : でもそこにあんまりとらわれないでいいっていうか。すぐにスッて入れたのが印象的だったんですよね。なんでだろう?と思って。とにかく懐が大きいというか、おふたりの懐も曲の懐も「でかっ!!」と思って。なんでも吸収してくれるというか。

博文 : それはなんでかっていうと、3人しかいないから。

白井 : どうにでもなる(笑)。トリオのすばらしさって、そこなんだよね。

博文 : 柔軟性ってやつ。

今後のアートポート・プロジェクト

──アートポート・プロジェクトとしては、今後どういったことを計画していますか?

博文 : やる前は怯えてたものがやってみたらけっこう面白かったんで、やっぱりライヴ・レコーディングっていうのが一番面白いんじゃないかな。もし何かやるんだったら、またライヴ・レコーディング。てことは、同じことは絶対できないよね。ま、同じことはしないと思うんだけど。

白井 : 俺ね、ライヴ・ビデオイングっていうの? 演奏や映像のインスタレーションありの、一石四鳥ぐらいのをビデオで撮影して、ジャケットもその時の空気感で統一すれば、その匂いがキュッて固まる気がする。

博文 :〈メトロトロン〉で25周年のライヴ盤っていうのを出したんだけど、1枚ライヴDVDがついていて、それがすごく重宝がられてるの。それはなぜかわかる? 「鈴木慶一がこんなギターの弾き方してたのか」とかさ。演者がどうやってこの音を出してるのか、みんなすごい興味があるわけよ。アートポート・プロジェクトでもそれを見せられればいいのかもしれないね。

LIVE SCHEDULE

『ARTPORT PROJECT.1』発売記念ライヴ

2017年1月20日(金)
@恵比寿CreAto~ 開場:18:30 開演:19:00
出演:ARTPORT PROJECT(白井良明×鈴木博文+オータコージ)
料金:前売 4,000円 当日 4,500円 (共に+1drink)

PROFILE

アートポート・プロジェクト

1981年、ムーンライダーズのかしぶち哲郎(dr.)、白井良明(gt.)、鈴木博文(Ba.)の3名で「ARTPORT」結成。ライヴ上でのインスタレーションアプローチを肝とし、この3名ならではの音楽によるさまざまな『実験』を試みるも、数回のライヴ・パフォーマンスを経て自然休止状態に。

かしぶち哲郎氏の亡き後もソロ活動を続ける白井・鈴木の中で「あの」インスタレーション・ライヴへの衝動は徐々に熱を帯び、2016年、ゲストにオータコージ氏を迎え「ARTPORT PROJECT」として活動再開。

>>アートポート・プロジェクト・アーティスト・ページ

この記事の筆者

[インタヴュー] ARTPORT PROJECT

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