2013/06/28 00:00

2013/6/26~7/2の注目2作品をレビュー!!

今週もたくさんの新譜が入荷しました! 全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューとともにご紹介いたします。 音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をおたのしみください。あなたとすてきな音楽の出会いがありますよう。

泉まくら『candle』


泉まくら / candle
【配信形式】
mp3、wav

【価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム 600円
wav 単曲 200円 / アルバム 600円

泉まくらが新曲を出すというニュースが出たのが6月20日。そこから配信が始まるまで、早く聴きたいという一心であった。私がこんな気持ちになったのも前作『卒業と、それまでのうとうと』があまりに衝撃的な作品で、あの1作でファンになってしまったからだ。この体験をした人は多いのではないか。

泉まくらはデビューをしてから今作『candle』を発表するまでの間に、くるりが京都で主催をしたイベント「WHOLE LOVE KYOTO」に出演をするということで大きく話題を集めた。またパスピエとコラボ・シングルをリリースしたことでも話題となった。なんとこちらは完売が続出し、追加プレスが決まるほどであった。

「candle」は前作に収録されている「balloon」で高い評価を得た"nagaco"がサポートをした。この曲を初めて聴いたとき、前作とはトラックの雰囲気ががらっと変わり、爽やかな印象を感じた。泉まくらの話しかけるようなラップがこれまで以上にすっと入り込んでくる。次第に、繰り返されるサビを口ずさんでいた。泉まくらの曲を聴いていると自然と口ずさんでいることがよくあるのだ。彼女が書く詞には人を惹き付ける何かがあるのかもしれない。 今作には「candle」を含む全4曲が収録されており、注目のビートメイカー"PARKGOLF"による前作に収録されている「reunion」のリミックス、また「candle」のトラックとアカペラが別々で収録されている。泉まくらは2013年に1stアルバムをリリース予定らしく、今後の活動も目が離せない。(text by 益子直人)

DJ BAKU『JapOneEra』


DJ BAKU / JapOneEra
【配信形式】
mp3、wav

【価格】
mp3 単曲 200円 / アルバム 2,100円
wav 単曲 220円 / アルバム 2,300円

"DJ”や“ヒップホップ”という言葉を見て「これは自分にはあわない音楽」だと思い込み、聴くことを避けてはいないだろうか。そのような音楽にマイナスなイメージも、実際に聴けばそんなイメージも払拭できるものも少なくない。音の要素としてロックやその他のダンス・ミュージック、エレクトロニカなどを取り入れているものも多数存在し、様々なジャンルの共演を楽しむことができる。そして、DJ BAKUがその先駆者であるといっても過言ではないだろう。

DJ BAKUは前作『DHARMA DANCE』以来、5年ぶりとなるサード・ソロ・アルバム『JapOneEra』を発表した。まずは収録曲を見て、ロック・ファンならば誰しも"feat. N'夙川BOYS"という文字に驚いたはずだ。DJ BAKUと彼らの共演…どんな仕上がりになっているのか是非聴いてみてほしい。また今回のアルバムでは他に、シンガー・ソングライターのCaroline、ラッパーのshing02、あらゆる楽器を演奏するマルチ・プレイヤーのmabanuaがゲストとして参加している。

今作は生音と打ち込みを中心に構成されている。そのなかには1、2曲目のようにBPMが速いものもあれば、6曲目のようにロービートで心地よくなれるものもある。また表題曲である「JAPONEIRA feat. mabanua (Ovall)」はダブステップのビートが良く、ノリノリになるだろう。

『JapOneEra』というタイトルには2つの意味が込められているらしく、ひとつはポルトガル語で「ジャポネイラ」とは日本原産の「椿」を意味する。そしてもうひとつは“JAP” と“ONE” と“ERA”という3つの単語を組み合わせた造語で、「日本がひとつになった時代」を表している。このダブル・ミーニングには、日本の混迷の時代を逞しく、美しく生きようとするDJ BAKUなりの願いがあるそうだ。今作を通して様々なジャンルの音楽を聴いてほしい。(text by 益子直人)

abisyeikah『observation about air』


abisyeikah / observation about air
【配信形式】
mp3、wav

【価格】
mp3 アルバム購入のみ 1,000円
wav アルバム購入のみ 1,000円

たとえばカエルが目の前をピョコピョコと飛び跳ね着地する。だが、その着地点なんてだれも予想できないもので、そんなことを考えることは、ナンセンスなのかもしれない。このabisyeikahの4枚目のアルバム『observation about air』にも、同じことが言えるだろう。そのぐらい、予測不能なのだ。道の角からいきなり人が現れるように、突如発せられ、もう戻ることの無い音で構成された彼らの楽曲に、明確な”理由”や”意味”を考える必要はないだろう。

2004年結成し、群馬~行田~高円寺~六本木~渋谷に潜伏し、コンスタントにライヴとリリースを重ねるabisyeikah。本作はオリジナル・アルバム4枚目にして、初の正規流通作品である。デビュー当初から「ゴアグラインド」「ノイズグラインド」を標榜し、そのキーワードを独自に拡大解釈し、エクストリーム・ミュージック~ノイズ~パフォーマンス・アート化したような創作活動を繰り返す彼ら。さまざまな場所に呼ばれ、土地土地のリアル・アンダーグラウンドなイベントに出演を重ねる。これまでにフリクションのツネマツマサトシ、非常階段の美川俊治と「GAUZE」の超絶ドラマーHIKOのユニット、スイス伝説の80sのノイズ・グラインド・グループ、FEAR OF GODのベーシストでもあったDave Phillips、サウンドアーティストFrancisco Meirinoなどなど……多くのノイズ/電子音響勢、さらにあらゆるアーティストと、ボーダーレスに共演している。なにものにもとらわれないフットワークの軽さと、彼らの発する音の奔放さに、私は無邪気なものを感じた。金属が強くふれあう音、ガラスをちりばめたような音、つぶやく声、テープが激しくまき戻る音、生き物の鳴き声。微笑みかけられたとおもったらひっぱたかれる、嫌な顔をしたかと思えば、積極的に話しかけてくる、そんな正反対のことがひっきりなしに起こっているかのような展開が畳み掛けてくる。ぐるんぐるんとかき混ぜられ、決して解け合うことのない心の中のあらゆる感情をそのまま音にしたら、こんな感じなのだろうか。まるで、だれかの心の中に迷い込んでしまったかのようだ。難しく考えることはやめて、ただそこに身を委ね耳を傾け、彼らの音の一粒一粒の佇まいと、息づかいに翻弄されることを楽しんでみてはいかがだろうか。(text by 釘田沙來)

[レヴュー] 泉まくら

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