LIVE REPORT G/R/L/Z #3@六本木SUPER DELUXE
六本木SuperDeluxeにて、女性の表現をコンセプトにしたイベント「G/R/L/Z」が行われた。Limited Express (has gone?)とMiila and the Geeksがホストを務めるこのイベントは今回で3回目を迎え、Moon Duo(from USA)、Melt-Bananaを招いてのガチンコ勝負となった。 フロアは、ここは本当に日本だよな? と思ってしまうほど(日本人のお客さんの方が圧倒的に少ない!)たくさんの外国人で埋め尽くされ、今か今かとスタートを待つ熱気に満ちている。うーん、六本木、恐るべし。
そんな中先陣を切ったのはLimited Express (has gone?)。轟音が一気に空間を支配する。JJ(Vo、Guitar)のパンチの効いたシャウト、YUKARI(Vo、Bass)の空気を切り裂く高音ヴォイスがたたみかけるように交錯し、観ている側は全く息つく暇もない! 少しでも油断したら振り落とされてしまいそうだ! この日は久しぶりのライヴだったということもあるのだろうか、JJは水を得た魚のようにステージ上を所狭しと暴れ回っている。「I See I See I See」等の新曲を多く入れこんだ勝負のセット・リストは、「今年はやったるで!」という彼らの意気込みのようにも感じられた。怒涛の勢いで駆け抜けていくステージに、終始圧倒されまくりの30分間だった。現在制作中であるアルバムがとても楽しみだ。
フロアの熱量が高まった中、次に登場したのはMiila and the Geeks。超セクシーなファッションのmoe(Vo、Gt、Ba)、Tシャツにパンツ一丁のKaoru Ajima(Drums)、ド派手なTシャツのRyota Komori(Sax)の何ともクールな3人組だ。moeが紡ぎだすのは繰り返しのシンプルなリフだが、Ajimaのドラムがそれを支え、Komoriのサックスによって何ともカオティックな色が加えられていく。どんどん大きくなっていく波のようなサウンドに全身が引きずりこまれていくような感覚だ。異国のような客層に全くひるむことなく、さらりと実力を見せつけ、フロアをクールで熱いミーラ色に変えてしまった。
続いて登場したのはサンフランシスコから来日したMoon Duo。初来日である彼らを待ち望んでいた者は多く、これまで以上にステージに注目が集まった。そんな中、極めて自然体にたたずむRipley Johnson(Vo、Gt)とSanae Yamada(Key)の2人が織りなす最高のサイケデリック・ミュージック。反復されるシンセとファズの効いたギターは茫漠と広がり、軽快な打ち込みのリズムが身体を揺らす。そして深いリバーブのかかったヴォーカルが頭の中に染み込みこんでどろどろに溶けていく。更に彼らの身体の上にも降り注いだステージ一面に広がるビビットなビジュアル・アートが頭の中で絡みあい、ふっと途切れるように終わった最後の瞬間まで呑まれるようなステージだった。
トリを務めるはハードコア・ノイズ・バンド、Melt-Banana。轟音でかき鳴らされるAgata(Gt)のギターの上に、めちゃくちゃ格好良いのにキュートなYako(Vo)のヴォーカルが突き刺ささっていく。途中30秒前後しかない「We Love Choca-Pa」や「Zoo」、「His Name Is Mickey」といった短い楽曲を立て続けに演奏し、一曲一曲決めていくごとにフロアから歓声が上がった場面ではステージ上での貫禄を見せつけられた。これまでのフロアの熱気を更に高め、スピードを落とすことなく最後まで駆け抜けていく様はまさに圧巻であった。
この日はなんと当日券が60枚ほども出たそう。おそらく大半が外国人達だろう。六本木の外国人には、"ヤバイ空気"を感じ取る能力が備わっているのか!? 等と意味不明なことを考えてしまったが、洗練された六本木という街に住む彼らは、その敏感なアンテナで常に刺激を探しているのではないだろうか。そして今回のこの「G/R/L/S」がそのアンテナにビシッと反応したのだろう。このイベントの未来も明るい。 主催であるLimited Express (has gone?)のJJがブログで言っていた一言。
「オルタナは、未来を創る音楽なんだー」。
まさにその通りだなと思う。四者四様の自由で実験的な音楽たちから与えられた刺激は新しい感覚をきかせ、ここからまた何か生まれるんじゃないかという期待すら感じるのだ。今日ここに来れなかった人たちにも、この4バンドの音に是非触れてほしい。(text by 岩瀬知菜美 & 梶山春菜子)
写真 : 益子直人
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Miila and the Geeks / NEW AGE
LOVE AND HATESとしても活動するmoe率いる3ピース・バンドMiila and the Geeks。シンプルなようでひねりの利いたギターとドラムに、クレイジーなサックスが吹き荒れる。NYポスト・パンク/ノー・ウェーヴのクールさと90年代オルタナティヴのルーズさを受け継いだ、DIYを地でいくローファイなサウンドや空気感が詰まったファースト・アルバム。
PROFILE
Limited Express (has gone?)
2003年、US、ジョン・ゾーンのTZADIKから1st albumをリリースし、世界15カ国以上を飛び回る。その後、高橋健太郎主催のmemory labより、2nd album、best albumをリリース。WHY?、NUMBERS、そしてダムドの日本公演のサポートを行うなど、名実共に日本オルタナ・パンク・シーンを率先するバンドになるも、2006年突然の解散宣言。半年後、突然の復活宣言。なんとニュー・ドラマーには、日本が誇るPUNK BAND、JOYのドラマーTDKが正式加入!!! メンバーのJJは、ボロフェスタを主催。YUKARIは、ニーハオ!のリーダー等、各人の活動は多岐にわたる。最新作は、Less Than TVからリリースしたDODDODOとのsprit albumと3rd album。中国やオーストラリア等、引き続き海外活動も盛ん。
Miila and the Geeks
moe(vo, Gt, Ba)、Kaoru Ajima(drums)、Ryota Komori(sax)のスリー・ピースから成る、これぞNYポスト・パンク / ノー・ウェーヴのクールさ、90年代オルタナティヴのルーズさを受け継いだカジュアルな進行形サウンド! と称され、今、最高なライヴ・バンドのひとつであるMiila and the Geeks。音楽のみならず、ミュージック・ビデオ、アートワークやマーチャンダイズに至るまで、確固たるDIYスタイルを地でいきながら、現在のジャパニーズ・ライオット・ガールの筆頭株と最高評価されるフロント・ウーマンのmoeのその枠にとらわれない数々の活動は、TWEE GRRRLS CLUBにも所属し、そこから生まれたガールズ・ヒップホップ・ユニットのLOVE AND HATESの活動などでも注目を集めている。
Moon Duo
Wooden Shipsというバンドで、サンフランシスコで活動をしているRipley JohnsonとSanae Yamadaが2009年に始めたプロジェクト。今回のライヴで初来日を果たした。
Melt-Banana
Melt-Banana (メルトバナナ)は日本のノイズロック / ハードコアのバンド。1993年に東京で結成。現在のメンバーはボーカル Yako、ギター Agata。東京を拠点に活動するバンド。現在までに6枚のアルバムと2枚のライヴアルバムをリリース、ライヴ数は約1,200回。日本、アメリカ、ヨーロッパで主に活動。近年はMELT-BANANA Lite名義でのユニットも展開。