2014/11/18 19:17

2008年に戦慄のニコ動デビューを果たし、アングラ・ボカロ・シーンの象徴とも言える強烈な存在感を放つ、ヒッキーPこと大高丈宙(おおたかともおき)が、デビュー・アルバムをリリース。一聴するとノイジーなサウンドと絶叫にも近いボカロが際立って聞こえるが、キャッチーで心をつかむJ-POPライクなメロディ・センスが随所に光っている。今回、大高丈宙のデビューを記念して、透明かつセンチメンタルな世界観で人気を博す正統派P、kousとの対談を決行。今のボカロ界隈に対する想いや曲作りに関して、敬意をもって会話を交わす2人の対談は見所満載。楽曲とともにその対談をご覧あれ。

戦慄のデビュー・アルバム

大高丈宙 / Eutopia
【配信形態】wav
【配信価格】単曲 200円 / アルバム 2,300円

1. 空襲の音 / 2. 最初から斜陽 / 3. ハイブリッド幼女(第二形態) / 4. 捨てられた幸福 / 5. 青黒い穴 / 6. りゃー / 7. 雑踏14 / 8. mandara berobero haichatta blues / 9. 六月病 / 10. くうきのぐんか / 11. フリータイムブランク / 12. センセーショナルの翌年 / 13. mtzv / 14. GINGA / 15. アリセにかけたい / 16. 発火 / 17. manuscript.org / 18. 投薬口 / 19. 死に体ヤワ / 20. 魔ゼルな規リン -recognized edit- / 21. レイジースリーピー / 22. からっぽの椿象 / 23. 屠殺ごっこの後で / 24. レインコート/憧憬/嫌悪/理解 / 25. 敗廊の音 / 26. neuter / 27. 日記、日記、日記、白紙

目が眩むような歪みと美の世界へようこそ

kous / 機械の花ラボラトリ
【配信形態】mp3
【配信価格】単曲 150円 / アルバム 1,800円

1. #FFFFFF / 2. 白と黒 / 3. 浮遊夢 / 4. スミレの絵本 / 5. ○+● / 6. いいこわるいこ / 7. 泣き虫と花束 / 8. サカナ / 9. 憂鬱な死神 / 10. 時計屋と夢 / 11. pipopa / 12. タメイキ / 13. 椿姫 / 14. ナイトメア / 15. ハロー彗星 / 16. #000000 / 17. 人影、重ねて feat. ef / 18. 嘘つき造花 feat. らさ / 19. いいこわるいこ (DECO*27 E-KO Remix) / 20. 椿姫 (sasakure.UK Falling Remix)

対談 : 大高丈宙(ヒッキーP)×kous

ボーカロイドが注目を集めて久しい。渋谷慶一郎が初音ミクを全面的にフィーチャーしたオペラを制作したり、ノイズ・バンド非常階段が初音ミクとのコラボ作品を発表したりと、今やニコニコ動画の文化圏を越えた場所からも、ボーカロイドは熱い視線を浴び始めている。だが、そんなボカロ文化の全体を俯瞰し、地図を描くように各シーンを整理する作業は未だに行われているとは言えない。おそらく多くの人は、ボカロ・シーンにもいわゆるアンダー・グラウンドな領域が存在していることすら認識していないのではないか。

今回、初の流通アルバムをリリースするヒッキーPこと大高丈宙は、そんなアングラ・ボカロ・シーンを代表する存在だ。細かく切り刻まれた音、時に悲鳴や絶叫にも近い鏡音リンの声、しかし瞬時にキャッチーなメロディへと展開する躁鬱病的な作品群は、私たちのボカロ曲に対する先入観を簡単に打ち壊してしまう。一方、彼が対談の相手として選んだkousは、透明かつセンチメンタルな世界観で人気を博す正統派P。この全く対照的な二人のクリエイターによる異色の対談は、予想通り随所でその違いが浮き彫りになるものとなった。まだまだ歴史の浅いボカロ・シーンだが、その豊かな多様性の片鱗だけでも感じてもらうことができれば幸いだ。

インタビュー&文 : 長島大輔

左から、kous、大高丈宙

何も知らない中学生とか高校生とかにショックを与えたくて作っている

——まずはお二人が出会ったきっかけから教えてください。

大高丈宙(以下、ヒッキー) : 初めて会ったのは「捻れたアヒル」っていう同人サークルですね。僕はそこの初期メンバーなんですけど、ボカロ曲を作っている人たちで集まって、一緒にコンピレーション・アルバムを作って即売会に出したりしてたんです。それからkousさんがボーカロイドを始めたのを知って、kousさんも誘ってみようっていう流れになったんですよね。僕は自分でボカロ曲を作るのはもちろんですけど、人のボカロ曲を探すのも好きなので、kousさんの曲は初期の頃から聞いてましたよ。
kous : 僕もサークルに入る前からヒッキーの曲は知ってたんですよ。
ヒッキー : それは初耳ですね(笑)。
kous : いやほんとに(笑)。ヒッキーがやってたボカロ初期の頃ってすごくいろんな曲があって、ジャンル分けなんてなかったし、ほんとに面白い時期だったんですよね。
ヒッキー : そうですよね。個性的な人ばっかりで、作られる曲に偏りがなかったし、変な人を探しやすかったですよね。
kous : その頃はまだボカロ人口自体が少なかったしね。
ヒッキー : そう。あとは作者同士が集まるコミュニティ・サイトのようなものがまだ機能していたので、有名な人と陰に隠れてる人とが入り乱れて遊んでた時期だったんですよね。

——ボカロ初期ってことは、2007年から2008年くらいのことですか?

ヒッキー : そうですね。「にゃっぽん」っていうボカロSNSがあるんですけど、そこを介して作者同士が互いに刺激し合ってましたよね。「こんなん作ったるぜ! 」って。
kous : 好きなことを好きなだけやる、みたいなね。まあその中でもヒッキーは常に尖がった感じの曲を作ってくるタイプでしたけどね。

——そうなんですか。

kous : 僕は初めて聴いたヒッキーの曲が「残虐ヒーリング」だったんですけど、「こんなことする人いるんだ! 」って思いましたよ(笑)。すごいなあと。
ヒッキー : ありがとうございます!

kous : ヒッキーの作る曲って面白くて、バックと歌詞はすごく前衛的なんだけど、メロディだけがポップなんですよね。
ヒッキー : まあ純粋にポップスが好きなんですよ。あとは、通なものが好きな人たちに受けたいというよりは、何も知らない中学生とか高校生とかにショックを与えたくて作っているので(笑)。自分の曲を自分が中学生の頃に聴いてたらやばかったと思います。
kous : ヒッキーは昔からほんと変わってないよね。今回の新しいアルバムを最近聴かせてもらったんですけど… まあ尖がってるなと(笑)。
ヒッキー : ありがとうございます(笑)。kousさんの作品で一番聴いてるのは『01』っていう初期曲を集めたアルバムなんですけど、あの当時の素朴なことを素朴に出している感じから、最近はどんどん音が綿密になってきてるのがすごく面白いなと思います。最近の曲はほとんどインスト中心の曲なんですけど、どんどんメロディとバックの音が同化してきてるという感じがしますね。
kous : そんなに分析して聴いてくれてるのは嬉しいです。

自分の好きな世界を築くためのバリアにもなり得ると思う

——次はボカロとの出会いについて聞きたいと思います。なぜボカロを使って音楽を作ろうと思ったんでしょう?

kous : 僕は元々インストの曲を遊びで作ってたんですけど、ある時たまたまニコニコ動画で初音ミクが歌ってる動画を見て、初めてボーカロイドの存在を知ったんですよ。当時は「初音ミクって何なの? 」っていう状態のまま聴いてたんですけど、wintermuteさんという初音ミクでシューゲイザーをやってる人の曲を聴いて、「あ、こんなのもアリなんだ」ってなったんですよね。なんか機械なんだけど人間っぽいし、人間っぽいんだけどやっぱり機械だしっていうのも魅力的だなと。

——初音ミクっていうキャラクター自体に惹かれるところもあるんですか?

kous : どうだろう…。最近、一周して好きになりましたけど(笑)。最初はあくまでツールとして見ていましたね。

——ヒッキーさんはどうですか?

ヒッキー : 僕はボーカロイドとかニコ動とかを始める前は、普通にギターを弾いて、自分で歌ったりしてたんですけど、女性シンガーが歌うような繊細なメロディの曲もやりたいなと思ってたんです。で、ちょうどその時、MEIKO(※音声合成エンジン「VOCALOID」を初めて採用した日本語ソフト。2004年発売)のデモ動画を初めて見て、「何だこれは! 」って思って。

——当時はまだボカロのキャラクター性とかは注目されてなくて、単に新しいツールって感じでしたよね。

ヒッキー : そうですね。でも僕はボカロが機械っぽいとは感じなかったんですよね。初音ミクの声を聞いても機械だとは思えなくて。で、その次に鏡音リン・レンっていうのが発売になったんですけど、そのリンの声を聞いたときに、何て言うか、単純にこの声に自分の曲を歌ってほしいって思ったんですよね。だから自分の中ではキャラでもツールでもなくて、普通にボーカリストなんですよ。「良い人がいた! 」みたいな。

——なるほど。一人のシンガーと出会ったってことですね。

ヒッキー : はい。あとは、大学時代の知り合いで60年代のロックとかに詳しい人がいたんですけど、その人にharuna808さんというボカロPを勧められたんですよね。で、聴いてみたら有名なボカロ曲とは全く違うし、なんかその人のルーツが全然見えてこないんですよ。しかもそれが1000回も2000回も再生されてるってことが衝撃的で。純粋に自分の好きなことだけをやって、それがすぐに100人とか200人に聴いてもらえる土壌があるっていうのはすごいなって思ったんですよね。

——ニコニコ動画って、実績はないけど面白いみたいなクリエイターを発見するのに絶好の環境でしたもんね。

ヒッキー : でも、最近はそういうのが見つけにくくなってるんですよ。ボカロ公式ページができて以来、あそこのトップに出てくる流行りの動画が優先的に再生されちゃうので、偶然ランキングに上がってきた曲を聴いてみたらすごい面白かったってことが起きなくなってるんです。だから、「こんなのやったらウケるかな」的な軽さのある曲が見つけにくくなってますよね。僕みたいに新着のボカロ動画をランダムにクリックしまくるとかなら話は別ですけど、それはなかなかできないじゃないですか(笑)。何年か前までは、そういう曲の情報を交換できる場があったんですけど、それも今では難しくなりましたしね。

——なるほど。お話を伺って改めて感じたんですが、ヒッキーさんはオルタナティブなものへの意識が強いのかなと思いました。例えばアングラ的なことをやってやろうみたいな意識があったりするんですか?

ヒッキー : アングラなものをやりたいという意識はないですね。曲を作り始めた頃は紛れもなく普通のJ-POPを作っているつもりだったんですけど、聴く側がそう受け取ってくれなかったというだけで。

——なるほど。言い方は良くないですが、場合によってはイロモノとして見られてしまうこともありませんか?

ヒッキー : ボカロ自体がイロモノとして見られてしまうと思いますし、だからこそ好き勝手なことができるのかなとも思っています。イロモノとして見られることは障害かもしれないけど、自分の好きな世界を築くためのバリアにもなり得ると思うんですよね。自分の衝動に基づいたことを萎縮せずにできる強みというか。自分はいわゆるイロモノとして見られてしまうジャンルが好きなんですけど、ボカロにもそういう面があって、それがボカロに惹かれる一因なのかなとも思います。
kous : まあイロモノとして見られるのはしょうがないですよね。流行りものでもありますし。でも、僕は逆に、そこに惹かれているわけではないんですよね。ボカロの何が良いって、あまり歌う側の気持ちにならなくていいことなんですよ(笑)。誰かが歌うことを考えて、気を使いながら歌詞を作らなくてよくて。もちろん自分で歌っているわけではないんですけど、やっぱり自分なんですよね。
ヒッキー : それは大きいですね。

——じゃあ、お二人とも自分の代わりにボーカロイドが歌っているという感覚なんですか?

ヒッキー : はい。そうかもしれないです。

——ボカロ曲の中には、逆に初音ミクや鏡音リンのキャラクター性をかなり意識して作られた曲も多いですよね。

kous : そうですね。でも僕はあまり無いかもしれないですね。結果的に、その曲に合う声のボーカロイドを自然と選んでいたという場合が多いです。
ヒッキー : でもまあ、「こういうことを歌う鏡音リンがいてもいいだろ」的な気持ちはありますよ。僕が使うことで鏡音リンの新しい像とかキャラ性が立ち上がるとしたら、それは面白い現象だなって思いますね。だから、僕自身は意識しないけど、聴いてくれる第三者が、「ヒッキーPの鏡音リン」っていうキャラ性を意識してくれたら嬉しいです。

「好きなものだからやってるんだ! 」みたいな流れを作りたい

——ベタな質問ですけど、お二人はどうやって曲を作るんですか?

kous : 降ってきますね。完全に降り待ちです。メロディだけ出てくる場合とか歌詞だけ出てくる場合とか、いろいろあるんですけど、その時出てきたものから順に作っていきます。あと、僕は曲を作っていて煮詰まると一回全部消すんですよ。
ヒッキー : もったいない! リミックスの素材として出してくれれば何かいじるのに。
kous : そういう時に作ったものって全部同じになっちゃうんですよね。今日の自分が作ったら同じものしか出てこないから、明日の自分に作らせようみたいな。
ヒッキー : すごいですね。僕は僕の曲の一番のファンなので、ファンとして今一番聴きたいなってのを作ります。基本的にリズムから作るんですけど、リズムは実際に身体を動かしながら作りますね。ダダダダっみたいな。
kous : すごいな~(笑)。すごいロックですよね。ほんとに。

——身体使って作曲するって珍しいですよね。

ヒッキー : ガガガーっていうリズムが欲しいときは、とりあえずガガガーって言えばいいんですよ。そしたら何か見えてくるんです。
kous : 昔、僕のパソコンを渡してヒッキーに曲を作ってもらったことがあるんですよ。そしたらまず入ってる音源を全部切り刻むところから始めましたからね(笑)。
ヒッキー : なんか自分の心に刺さる音にしようって思って。まあ文字通り刺さる音なんですけど(笑)。

——ヒッキーさんの話を聞いていると、ぜひライヴでのパフォーマンスも見てみたいなと思います。

ヒッキー : 僕はライヴをやったことはないんですよね。kousさんはされてましたよね?
kous : 僕は女性ヴォーカリストのefと一緒に"ウサギトネコ"というユニットを組んでいて、ライヴ・イベントだったりDJイベントに出させてもらってます。実はそのユニットでもトラックに初音ミクを使っていて、声をサンプリングして切り貼りしてるんですけど、ほぼ四つ打ちで躍らせることを考えてます。
ヒッキー : 僕の曲は躍らせるのとは対極にあるものが多いんですよね(笑)。なので、突然叫ぶとか、この人何やってんだくらいの感じでやりたいですね。
kous : あとは映像ですよね。音と映像が完全に同期してたら面白いと思う。

——最後になりますが、今回のヒッキーさんのデビューに向けて一言ずつお願いします。

kous : 僕も3年前くらいから、自分の好きなものしか作らないって決めてるんですけど、ヒッキーみたいに本気で遊んでる感じはすごく良いなって思います。一回聴いたら耳から離れないあの感じはヒッキーならではですよね。僕は一人の作者を追いかけて聴くことは少なくて、わりと曲単位でいろいろ雑多に聴くんですけど、ヒッキーはどれを聴いてもヒッキーです。なんで俺こんなに褒めてるんだろう(笑)。でも、久しぶりに会えて楽しかったです。
ヒッキー : 今まではある程度ランキングとかに入ってる人じゃないとCDなどの音源を出すのは難しかったので、そことは全然違う場所にいる僕みたいな人の作品が流通するっていうのは、たぶん今回が初めてなんですよね。今のボカロ界隈は昔と違って、やりたいことを純粋にやるというよりは、中高生をターゲットにした曲を書いたりするのが主流になってると思うんです。なので、もう一回「好きなものだからやってるんだ! 」みたいな流れを作りたくて。そういう流れの呼び水になりたいというのが、この作品を出した主な理由です。気に入る気に入らないは別として、僕の作品を聴いて刺激を受けた人が集まって、新しいシーンを作ってほしいと思っています。音源を流通させることで、少しでもそういう人たちに届きやすくなればいいですね。

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PROFILE

大高丈宙(ヒッキーP)
2008年に戦慄のニコ動デビューを果たすとともに、アングラ・ボカロ・シーンにおいて異様なまでに唯一無二、否、象徴と言うまでに存在しているアーティフィカルな音楽家。すべての事象に対する原体験を最も直接的に尊重しつつも、破壊的かつ救済的である。一聴するとノイジーなサウンドと絶叫にも近いボカロが際立って捉えられるが、特筆すべきはある瞬間心奪われてしまうJ-POPライクなメロディ・センスである。大高丈宙が鬼才と称される所以はそのアヴァンギャルドな姿勢はもちろんのこと、そのキャッチーなメロディを曲中に大量に散りばめつつも同じメロディを多用しないところにある。すべての音楽ファンへ! 2,000年代における新たな音楽は確実にここに存在する!

>>大高丈宙『Eutopia』特設ページ

kous(コウス)
11月28日生まれ。神奈川・藤沢を拠点に活動する男性アーティスト。

幼稚園児の頃、通っていたピアノ教室で先生から、なぜかカスタネットの上達ぶりばかり褒められる。幼心にその褒め言葉がずっと引っかかったまま、中学に入学した直後に吹奏楽部でパーカッションを担当しようとするも、打楽器の枠が無く入部を断念。それでもめげず、5月からドラム教室に通い出し、父親の趣味で自宅のスタジオに設置してあったエレクトロニック・ドラムを叩く日々を過ごす。中学2年の頃に、引っ越すこととなり新しい中学に転入。そこで再度、吹奏楽部に挑戦するや、あっという間にコンマスとなり県大会へ進出。スピッツ、クラムボン、Cymbals、椎名林檎らの音楽に影響を受けつつ、自ら作曲をするため高校の頃からベースとギターを独学で習得。バンド活動と並行しながら、MTRを使って作曲する日々を過ごす。20歳になり、結婚を機に就職。PCの購入を切掛にDTMでの作曲を始める。偶然、ニコニコ動画で発表されている「初音ミク」を使用した作品を見つけ、最先端のクリエイティブが入り乱れるシーンであることに衝撃を受け、自身もVOCALOIDを使用した楽曲の発表を志すようになる。

2008年6月20日に、処女作「籠の中」を発表した後、自ら様々な楽器を演奏することが出来ることを活用し、生演奏の要素とVOCALOIDを含めた電子楽器打ち込みならではの持ち味を融合させることをコンセプトにして、音像を意識した作品として今までに50曲以上をニコニコ動画で発表。その過程、デザイナーの”hie(ヒー)”や、イラストレーターの”山荘(サンソウ)”らのサポートを受け、ビジュアル面での表現力を強化するほか、新たに”ef(エフ)”や”らさ”といった女性ヴォーカリストとのコラボレーションをネットを通じてスタートし、これまでに自主制作のアルバムを3年で8枚というハイペースでリリースしている。また、彼の楽曲の高い作品性が認められ、「初音ミク」の販売元であるクリプトン・フューチャー・メディア社より、新製品のデモソングの制作を依頼されるほか、DECO*27のアルバム『相愛性理論』と『愛迷エレジー』にリミキサーとしても参加している。

ユニバーサル・ミュージック社よりリリースされたコンピレーション『ボーカロイド ラボラトリー』(2011年7月27日)に、唯一の新曲として「カテゴライザー feat. ef」を提供。また、スクウェア・エニックス社の公式Remixアルバム「Cafe SQ」(2011年11月23日)では、名作ゲーム「クロノ・トリガー」の楽曲を担当するなど、精力的に活動を続けている。

>>kous HP

[インタヴュー] 大高丈宙

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