2012/11/14 00:00

2012/11/14~11/21の注目作品をレビュー!!

2012年も残り50日を切りましたが、音源のリリースは止まりません! ただ、数が多い! 興味はあるけど、全部は聴いていられない! そんなあなたのために、このコーナーでは、OTOTOY編集部がオススメする今週の推薦盤を2~3枚ピックアップし、ライターによるレビューと共にご紹介いたします。音源を試聴しながらレビューを読んで、ゆったりとした時間をお楽しみください。あなたと素敵な音楽の出会いがありますよう。

空間現代『空間現代2』

切り刻む音の快楽現象
空間現代 / 空間現代2

【配信形式】
HQD(24bit/48kHzのWAV音源)
mp3

【価格】
HQD : アルバム 1,500円(まとめ購入のみ)
mp3 : アルバム 1,200円(まとめ購入のみ)

きわめて複雑に音を構築していくライヴ・パフォーマンスに定評のあるバンド空間現代の、3年振りとなる2ndアルバム『空間現代2』。本作では、それぞれの楽器音を一音ずつ録音した後、それらを組み立て曲にするという手法が取られている。ギター、ベース、ドラム、それぞれの楽器音が、暴力的なまでにひたすら切り刻まれている。本来あるべき残響は切り落とされ、粘膜を突くような0コンマ何秒の打撃音の反復による快楽が我々を襲う。ベース古谷野慶輔によるエディティングのグルーヴ感に、終始ドーパミン出まくりだ。かつてミュージシャンがサンプラーを取り入れ始めた当初、最大録音時間1.2秒は制約であった。そしてその制約のなか、1.2秒の音作りに徹底的にこだわり配置することで、楽曲の可能性を押し拡げたことを思い出す。制約から解き放たれた現在敢えて0コンマ何秒の音に解体し、それらによって楽曲を組み立てる行為に、機械を駆使し尽くしてやろうといった暴力性を感じる。そのうえで打ち込みとも生演奏とも違う、空間現代独自のグルーヴを出すことに見事成功しているのだから、これにはもう舌を巻くのみである。(text by 小川ワタル)

GREGORY AND THE HAWK『Come, Now』

小鳥のさえずりのような魔法の歌声、再び
GREGORY AND THE HAWK / Come, Now

【配信形式】
mp3

【価格】
mp3 : 単曲 200円 / アルバム 1,500円

どこか懐かしいフォーキーな夢物語、そこから聴こえるキュートなウィスパー・ヴォイス…。目を瞑って… 頭をからっぽにして… 夢の続きを…。

2008年デビューのニューヨーク出身の女性シンガー・ソングライター、メレディス・ゴドルー=Gregory And The Hawk(グレゴリー・アンド・ザ・ホーク)の2年ぶり4枚目のニュー・アルバムが届いた。2曲目「Sleeping States」を除いて全てメレディス自身の演奏からなる今作は、ヴォーカリストとして円熟期と言っていい、洗練された歌を聴くことができる。前作『Leche』は「多くの不安、恐れ、現実に直面した作品」と彼女は語っているが、今作はその「不安」や「恐れ」を跳ね除けた、あまりにも優しくて涙が溢れるような暖かい作品になっている。彼女の柔らかく包み込むような雰囲気はそのままに、星屑のようなポップなメロディーがあちらこちらに散りばめてある。シンプルな彼女自身の演奏だからキュートなヴォーカルが際立つし、メロディーもじんわり心に染み入る。「ずっとこのメロディーに浸っていたい」と思える作品になっていると自信を持って紹介する。休日の晴れた日の朝や、就寝前の静かな夜に12曲目「Mayday」を聴いてうっとりしてみてはいかがだろうか。Predawn、及川リン、One Little PlaneやJoanna Newsomの歌が好きな人はぜひ、このアルバムのほっとする温もりを感じてほしい。(text by 加瀬成)

この記事の筆者

[レヴュー] GREGORY AND THE HAWK, 空間現代

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