鼎談 : 松井省悟、森勇太(空中ループ)×馬杉雅喜

京都を拠点に活動する音響ギター・ポップ・バンド、空中ループが、馬杉雅喜監督率いる映像制作集団「シネマズギックス」とタッグを組み、ミュージック・シネマ「その光-for a long time-」を完成させた。この作品には役者が何を話しているのかを想起させる部分があるものの、セリフがないということが特徴だ。ゆえに、様々な観点から映画をとらえることが可能となっている。本インタビューでは核心部分に触れているため、まず「その光-for a long time-」を見てから、読んでいただきたい。

この「その光-for a long time-」を見て、筆者はこう思う。イギリスの、正確に言えば、ウェールズにManic Street Preachersというバンドがいるのは誰しもが知っているであろう。彼らは「If You Tolerate This Your Children Will Be Next」という曲を作っている。邦題は「輝ける世代のために」。まさに「その光-for a long time-」はこれと同じことを伝えているのではないかと思ったのだ。しかし、これはひとつの解でしかなく、前述したとおり、様々な答えが用意されている。もしかしたら解答は出ないかもしれない。その場合も答えが出た時も、このインタビューをきっかけにし、角度や視点を変えながらミュージック・シネマを見て欲しい。

自主レーベル"transloop"を構え、京都からひとつの形を提示しようとする空中ループ。彼らのターニング・ポイントとなる「その光-for a long time-」を見て、聞いて、想いを巡らせてもらえれば幸いだ。

インタビュー&文 : 山田 慎(sweet music)
photo by 松本 亮太

彼らが自主レーベルから打ち出す新作は、なんと25分に及ぶ長編曲と映画作品。鮮烈に心ふるわせるメロディーに乗る松井省悟の優しく真っ直ぐな歌声が、眩しい光に溢れる情景を感じさせます。

映像はこちら
映画 その光-for-a long time-(映像ファイル)
販売形式 : movファイル
価格 : 750円


音源はこちら
その光-for-a long time-(音源ファイル/「その光-for-a long time-」「夢の続きを」の2曲を収録)
販売形式 : mp3
販売価格 : 750円

「その光-for a long time-」の変化と共にバンドも変わっていく

――「その光-for a long time-」についてお尋ねします。この曲は7年前に瀬戸内洋上のフェリーの中で詞を書いたそうですね。

松井省悟(Vo&G) : 父の実家が九州のイチジク農家で、毎年収穫を手伝いに行っているんですけど、空中ループの前にやっていたバンドを解散した年くらいにフェリーの中で詞を書きました。海を見ていたら、日が暮れていくにつれて暗闇になっていって。日があったときはあんなに海や景色が見えていたのに、日が落ちたら何も見えなくなったんですよね。そこから歌詞を起こしていきました。

――今作は24分と長尺ですが、作った当初から長かったのでしょうか?

松井省悟

松井 : 最初からわりと長くて、7分くらい。当時あった曲の中では一番長い曲でした。ライブをやるにつれて、曲の後半を決めずにやるようになっていって、曲終わりのリフレインする部分はその時の気持ちで長さが変わりますね。
森勇太(Ba) : 最後はジャムっぽく自由にやっています。以前、ある人に「この曲は一番自由だね」って言われてから、自分たちも自由に演奏することを意識するようになって。そこから「他の曲ももっと自由にやっていいんじゃないか」とみんなが考えるようになっていきました。
松井 : 昔に比べると、今はフィジカル(身体)の部分を大事にしているんですよ。
森 : もともとは打ち込みで構築されているバンドだったんですけど、それを少しづつ外して肉体的になっていきました。この曲はバンドの進化に関わっていると言ってもいいでしょうね。
松井 : 昔は頭で考えて作っていくことが多かったんですけど、4人で過ごす時間が長くなって、4人の息を大事にするようになりました。あと、この曲ははじめに作った曲ということで、座標軸ゼロと捉えているんです。だから、この曲が変わっていくとバンドも変わっていくというか。

――曲の進化と共にバンドが変わっていくのは面白いですね。では、「その光-for a long time-」をリアレンジしたのはいつ頃の話でしょうか。

松井 : 今年の春くらいに森がいきなり作ってきたんです(笑)。
森 : リミックスということではないんですが、別のバージョンを作っても面白いんじゃないかと思って。
松井 : 昔の曲をもう一度見直してみてもいいんじゃないかな、とね。自主レーベルに戻ったということもあって、原点を見つめ直すというか。
森 : 去年はホントに詰めたスケジュールで、きつかったんですね(苦笑)。今振り返ると、なんでリアレンジしたのかという理由はあまり覚えていないんですけど…。ふと思い立ってやってみたら、その日に20分くらいの尺になって、ほぼ今の原型ができていました。何かが「降りてきた」って感じかな。この曲はギターから始まるんですけど、そこ思いついたら全部できていたという感じです。

――森さんが作ってきて、みなさんの反応はどうでした?

松井 : 僕はすごくいいなと思いました。始めは20分くらいだったんですけど、前奏はインストで、これはこれで面白いなと。それからアレンジし直して、24分くらいのデモをみんなに送りました。
森 : その他のメンバーの反応は意外と薄かったですね…(一同笑)。
松井 : でも、段々この曲の面白さに気付いていって、ツアーの車の中で聞いてたときにギターの和田が「これはX(X JAPAN)みたいや」と言い出して、「とりあえずXの『Art of Life』を聞いてくれ」と言うから、爆音で流しました(笑)。
森 : 和田的にはXっぽかったみたいで(一同笑)。
松井 : それからすごく乗り気になりましたね(笑)。

――最初の薄い反応から急変してポジティブになったと(笑)。

松井 : そうですね(笑)。昔はライブで毎回演奏していたんですけど、長くなってからは一度も披露していないんです。演奏時間とかの関係もあるので。なので、基本的にスタジオの中で変化させていきました。
森 : ライブでは当然、4人で演奏するので音数は減りますけど、音源よりも自由度があるので、ぜひみなさんに見てもらいたいですね。

――それは楽しみですね。松井さんは、この曲にどんなイメージを持っているのでしょう?

松井 : 世の中の物って、全て光が当たっているから見えていると思うんです。どんなに大きな海でも、夜になれば暗くなってしまうから見えなくなりますよね。僕はその光の存在の大きさに感動して、詞を書き始めたんです。そして目に見える光が無くなっても消えない「光」のことを考えるようになって。それは人の心の中にさす光だとか、もしかしたら優しさや寂しさだとか、人の行為の中にあるもので、それを見つめているだけで安心する「光」なのかなって思うんですよね。そんな光をまとっている音楽。それが「その光-for a long time-」のイメージですね。

この曲自体が「光」になったら

――今作は自主レーベル「transloop」からのリリースですね。京都から自分たちの手で全てを発信していくのでしょうか。

森勇太

松井 : 生まれ育ったところなので、京都から発信することはしっくりきていて。ただ、東京にはフットワークを軽く、どんな些細な事でも、2、3時間でも行くようにしています。あとはインターネットを通してレーベル業務はできるので、自分たちでやっていくということは可能だと思っています。
森 : 東京に住んだことがないので何とも言えませんが、京都にいると制作時に安心感がありますね。今の生活があるから、今の音があるように思います。東京の人には「京都の音がしてますよね」と、よく言われるのですが、自分らは意識してないんですよね。そう言われたいから京都に住んでいるわけでもないのですが、ここで生活しているからそういう音が出ているのかもしれませんね。
松井 : 僕は単純に京都が好きなんですよ。歴史のある町じゃないですか。同時代の人たちだけじゃなくて、違う時代の人たちとも暮らしている感覚があるんですよ。例えばちょっと歩いていても「ここで龍馬が暗殺された」とか、神社等が当たり前のようにあるので、そういうところが好きなんですよね。

――あ、わかります。僕は京都の、自転車で市内を回ることができる距離感が好きなんですよ。これは東京にはありませんでした。

松井 : 東京にいると終電が気になったりとか、移動するのも電車で、自分の足だけではどうにもならない部分がありますけど、京都の場合はチャリンコで移動できちゃいますよね。

――京都でチャリンコは最高ですよね。東京には頻繁に行っていると思いますが、東京のバンドってどう思います?

松井 : オシャレ(一同笑)。僕らは田舎臭いといったら語弊があるかもしれませんが、オシャレ感がない(笑)。
森 : ハハハ。
松井 : 田舎のおばあちゃんに今作を24分聞かせたんですよ。そうしたら「あんたの曲は、歌は覚えづらいけど、聞いていて心地良くて優しい気持ちになれる」って言ってくれたんですよ。

――田舎つながりで(笑)。でもいい話ですね。

松井 : そうそう。ずっと聞いてくれていたのが嬉しかった。いろんな世代に届いて欲しいです。
森 : この曲自体が「光」になったらいいですね。
松井 : うん。あと「この曲自由だな、自由っていいなあ」って思ってもらえると嬉しいです。

僕らも、もう一回夢の続きを見ていこう

――2曲目は映画のエンディング・テーマ「夢の続きを」ですね。この曲についてお願いします。

松井 : 昨年の夏に、仲間と東北へボランティアに行きました。震災が起きたときはショックだったんですけど、時間が経つに連れて忘れていってしまう恐ろしさと、自分の心に引っかかっていたものがあって、現地に行くことにしたんです。実際に行ってみると、全然片付いてなかったり、いろんなことを感じて。言葉にするのは難しかったんですけど、みんなで東北で感じたことを言葉にして持ち寄りました。それをもとにして、自分でふくらませていって歌を作ったんです。いつもは自分の中だけで対話して作るんですけど、新しい歌の作り方でしたね。


2011年8月、40人の仲間と行なった東北でのボランティア活動の模様を収めた映像(「夢の続きを」が使われている)

――現地へ行ってみて感じたことを歌にしたと。

松井 : 震災は離れていると、どこか他人事というか。テレビの中で起こったことではなかったからこそ、みんなは関心を持ったと思いますが、やはり段々と時間が経つにつれて人ごとになっていってしまった。ボランティアに行って現地の人と会っていく中で、「あの町のあの人」というように意識が絞られていきました。それで他人事じゃなく「自分事」になっていった。きっと、この震災に向き合うことは、自分自身と向き合うことなんですよね。自分にとって、故郷のあたりまえの景色、家族、友人が、あたりまえに在ることの大切さに気付かせてもらえる。陸前高田の7万本の松原は1本のみを残して全部流されてしまいましたよね。現地の方が、この松原を、故郷の景色を復活させたいっていう夢をお話してくれたんです。それを聞いた仲間達の心に火が付いたんですよね。その夢を叶えるお手伝いをしたい。そしてこんな風に自分たちに灯った光を、色んな人に繋げていきたい。そんな気持ちを歌にしました。

――なぜこの曲は映画に入れようと思ったんですか?

松井 : 映画のエンディング・テーマがあったらいいねって話になったときに、この曲のサビの歌詞が映画にリンクするという話になったんです。

――松井さんが作ってきて、森さんはどう感じましたか?

森 : 単純にいい曲やな、と思いました。メロディーが良くて、普遍的にいい歌、いい歌詞。意外と長い曲なんですけど、長く感じませんでした。
松井 : この曲は、バンドの状況にも当てはまっていたんです。東北への歌なんですけど、僕らも「もう一回夢の続きを見ていこう」という響き方をしていました。
森 : 自主で新しく始めるときだったしね。

「その光」は感覚じみた音楽だなと思ったんですね。

――ありがとうございます。ここから映画の話です。どうやって馬杉監督と知り合ったんですか?

松井 : 僕らの友達にMILKBARという京都のバンドがいて、「君に涙、僕に涙」というPVを馬杉監督が撮っていたんです。「これめちゃくちゃいいな」と思ったのがきっかけで、監督を知りました。
森 : そのPVには監督も出ていて、「この坊主の人が監督やで」って。
松井 : 撮影のために坊主にした人が監督で(笑)。
馬杉雅喜(以下、馬杉) : ハハハ。
松井 : それからコンタクトをとって、新風館でお話をして。そのときに「PVではなく映画でもない、その中間をいくような"ミュージックシネマ"ってどうやろか?」って話になって。
馬杉 : その発想は面白いなと思ったんですよ。その時に丁度作りたい映像があったんです。短編映画ですね。「その光」を聞かせてもらったら、作りたいものと合いそうだなと感じましたね。「ミュージックシネマ」という言葉もすごくいいなと思いました。
松井 : 今年の春から構想がスタートして、監督の迷走(笑)などもあって、かなり時間をかけましたね。撮影は8月の1週間で撮りました。

馬杉雅喜

――映像のシナリオは書いたんですか?

馬杉 : シナリオって言うシナリオはないんですよ。イメージとコンセプトはあったんですけど、文章に起こす違和感があって。
松井 : みんなと監督とで何時間も話しましたね。
馬杉 : スケッチブックにクレヨンで絵を描きましたね。その絵で撮影に望みました。イメージに合うロケ地と役者を選んで、撮影を進めました。

――現場に行って進めたんですか?

馬杉 : そうです。スケジュールは決めていたんですけどね。いいロケ地を見つけたら、もうひとつのロケ候補を捨てて撮影したり。感覚を大事にしたんです。

――そのような撮り方は今までにやったことがあったんですか?

馬杉 : いやあ、ないですね。なんでそうなったかというと「ミュージックシネマ」という言葉だからかな。ミュージックビデオはよく作るんです。ストーリーじみたものが好きだから、シナリオなりを作ってやるんです。でも、「その光」はもっと感覚じみた音楽だなと思ったんですね。

――僕は「ミュージックシネマ」という言葉を聞いたときに「サウンドオブミュージック」とか「メリー・ポピンズ」を思い出したんです。この「ミュージックシネマ」と「ミュージックビデオ」の違いって何でしょう?

松井 : そうですね、これはいわゆる「プロモーションビデオ」ではありません。実際、24分のプロモーションビデオなんて、どこのTVでも流せませんよね。だからそれ自体で作品です。しっかりとした脚本やシナリオがない状態で撮影に入っていますが、物語として見れるものです。セリフもないんですけど、見ている人が想像できるような作りになっています。だから、見ている人と共に完成する作品だと思います。
馬杉 : ミュージックシネマは作品として立つものだと思います。

――セリフがない(実際には喋っている仕草が伺えるものの聞こえない)のはこの作品の特徴ですね。でも曲の音量を下げて声の音量を上げるという手法をとらなかったのは何故でしょうか?

馬杉 : 作るに当たって絶対に意識するのは、日本に留まらないことです。特に「シネマ」という名前が付くのであれば、もっといろんな所で見れるものであるべきだと思いました。

――撮影場所が重要だなと思える話が続きますが、「聖地」(注釈有)が出てきますね。

馬杉 : 豊郷町立豊郷小学校が「聖地」っていうのは知っていたんですけど、カットが似ているのは、実は撮影するまで知らなくて。
松井 : 森くんはすぐに反応していたけどね。
森 : ずっと見ていたので(笑)。手すりを触っていくシーンとか。偶然でしたね。

――今回はうさぎのかぶりものをした男の子と女の子が主役ですよね。うさぎとカメの手すりはハマってましたよ。

馬杉 : あれはたまたまなんですよね。「うさぎおるやーん!」って(一同笑)。
森 : 今回は偶然が多かったですよね。
馬杉 : いくつか動物を登場させようと思っていた中で、主人公がうさぎというのは何となく思っていて。実は社会問題を映画の中で入れているところがあるんです。子供はモルモットにしようと思ったんですけど、モルモットは可愛すぎるから、うさぎにしたんです。
森 : で、たまたま撮影場所にうさぎがあるじゃないですか。気になってうさぎのことを調べたら、山の神様とか、山の神様の使いらしいんです。昔の人からしたら山って畏れる存在、異世界の象徴で、その山と人里を行き来するのがうさぎだったんです。そのうさぎが少年を別世界に連れて行くというのが、すごく合っているなと思いました。

――うさぎでそんな偶然が。興味深いですね。

森 : 滋賀県で撮影していたんですけど、北の方の高島市あたりにうさぎの信仰があるみたいです。狛犬のかわりに狛兎がいる神社があるんですよ。
松井 : 映画の中で、神社でかくれんぼしてうさぎのマスクを見つけて異世界にワープするじゃないですか。神社って、ある種の異界とこっちの世界をつなぐ境界として捉えられていると思うんです。白うさぎっていうのは信仰の対象になっているし、お面を拾って行っちゃうのもすごくマッチしていると感じたんです。全部たまたまなんですけど(一同笑)。

――映画の中では走っているシーンがすごく多いですね。

馬杉 : 音楽が走っているイメージだったのでそういうシーンが多くなったと思います。
松井 : 子供たちはすごくがんばってたんですよ。
馬杉 : 夏のお盆過ぎに、炎天下の中でうさぎのお面をかぶらせて、ひたすら走らせるんですよ。ほんま根性ありますよ。
松井 : 朝方から撮影で。もちろん休憩しつつですけどね。でも楽しいって言ってくれて。
馬杉 : 和やかに進んだのは彼らのおかげですよ。「イヤや、イヤや」ってなってもおかしくなかったですから。雰囲気はすごくよかったです。空中ループも毎日来てくれて、いいスタッフといい役者に恵まれて撮影できたと思います。

日本の田舎ってめちゃめちゃきれいなんですよ。

――走っているシーンは田んぼが多いですね。映画自体も静かなところで撮影しています。なぜ都会は映さなかったんですか?

馬杉 : 元々の話をした方がいいですね?
松井 : そうしましょう。それをせずには語れないと思うので。
馬杉 : 脱原発というものを考えて、やはりそれに沿ったものを作りたいという話がありまして。実際に僕自身も福島に行って感じたこともあったので、そうしましょうと。しかし、それを直接的な言葉で言うのではなく、アーティストとしての感覚で作りたいと。映画の中で言いたかったことは、日本の田舎ってめちゃめちゃきれいなんですよ。空気が本当に澄んでいて透き通っているから、都心に住んでいる人にとっては憧れる場所でもあって。だけど、福島第一原発の周辺は深呼吸ができない場所なんですね。マスクが必要な場所なんですよ。不条理な場所ということを言いたくて、きれいなところを見せたかった。

――10歳前後の子どもたちを主役にした理由もありそうですね。

馬杉 : 一番罪のない子どもたちが、大人とかの罪を背負うということで主役にしました。男の子自身は「希望」なんです。彼はすごい長いようだけど一瞬のような時間の体験をしているんですね。そして自分の町に戻ったときに、町がきれいなことに気付いて、一個階段を登るというか。成長したんですよ。
松井 : 監督と話したのは「脱原発」もそうなんですけど、滋賀県の嘉田知事が「卒原発」ということを話していて。その言葉がしっくりきたんですよ。自分自身で学びながら、ちゃんと知って、思考し続けた上で卒業していきたいって。

――なるほど。

松井 : この作品を受け取る人のことに意識を広げてみた時に、もちろん福島で今も暮らす人達も含まれてきます。いろんなリスクを天秤にかけて故郷に残ることを選択した人達だっているはずで、現にそこにある放射性物質とどう向き合って生きていくのかという段階の人達に、単にYESかNOかの二元論、というようなメッセージを込めても仕方ないかもしれない。じゃあ何を伝えたらいいんだろうっていうのはかなり悩みましたね。敢えて言葉にするなら「愛」なのかなって。それが何なのか、正直自分でもよくわかりません。でもわからないからこそ、表現しようとするんですよね。

きれいなところを見せたいなと思って。

――映画には美しい場所がたくさん出てきますが、その中でも琵琶湖は本当に美しいですよね。

馬杉 : まず、きれいなところを見せたいなと思って。ロケ地を選ぶためにたくさんまわりました。
松井 : 滋賀県はきれいな場所がたくさんあることに気付いて。撮影以来、ひとりでドライブに行くようになりましたからね(笑)。
馬杉 : 滋賀県に住みたいなって。もうちょっと田舎でもいいかなって思いました。

――最後の湖に立つ一本の木の映像が特に美しかったです。

馬杉 : 実は最初に見に行ったときはよくなかったんです。波も全くなくて、平べったい感じだったんですよ。その日は観覧車のシーンと最後のシーンを撮影する予定で、移動していたときに、風がすごく強かったから「もしかしたら木が湖の中に埋まってんのかな」と思ったんです。撮影できないかもしれないという不安もありながら行ってみると、すごくいい景色だったんです。めっちゃ波がたってるのに、木は大丈夫で。夕日もすごくて。奇跡的な絵でしたね。

――メンバーは完成したミュージックシネマを見たときにどう感じましたか?

松井 : ドラムの佐藤が最初に見たんですけど、大興奮して「今すぐ見せたい。今日中に見て欲しい」とメールしてきました(笑)。実際に見てみて、これが正しい見方ですっていう正解がないような映画だと思ったんです。「今の何やろ」とか「この仕草って何?」みたいな問いが、見ている人の中から湧きでてくる。その答えも見ている人が見つける。しかも答えはひとつではなく、たくさんあるような映画だと思ったんですよ。人によっては映画をキャッチし辛いかもしれません。でも感覚を研ぎ澄ますこと、自分自身と対話することと似ているような気がするなと見ていて思いました。
馬杉 : 伝えたかったことは伝わってる(笑)。でも、わからん人にはわからんと思います。頭を使って見るのではなく、感覚で見るようなものです。
松井 : ある意味、試されているような。
馬杉 : 翻訳はしてないですからね。
森 : 音楽なのか、映画なのかというカテゴリーをとっぱらって作ったので、考えないで見てもらえたらいいかな。最初は意味合いとか考えず、単純に見て、気づいたら色々と想像して欲しいですね。僕は絵本のような感覚がしたんですよ。それは監督がスケッチブックに書いていったからかもしれません。
松井 : 見る人の感性でガラっと変わってしまう。セリフがないから見ている人たちは想像して欲しいですね。子供たちは演じているときに、自分たちの中でセリフを作っていたんです。役者の方もがっちりしたものがない中で、自分たちなりの言葉を考えて、解釈して演じているのは面白いなあって。あとは、うさぎです。うさぎの気持ちに意識が広がってくれたらいいですね。うさぎが持つ優しさ、もの哀しさ、寂しさだとか。そういうことに意識が広がって「ああ、そういうことなんだな」って思ってもらえたら。誰かの気持ちになること。東北に行ってみても思ったことですしね。そして飛んでいった異世界は、未来なのか、過去なのか。パラレルワールドなのか。もちろん、僕らと監督の中では設定があるんですけど、いろいろな解釈をして欲しいですね。

空中ループ Archives

LIVE SCHEDULE

「その光-for a long time-」 発売記念公演行脚2012

2012年10月6日(土)@名古屋ロックンロール
2012年11月25日(日)@渋谷LUSH
ツアー・ファイナル 近日発表!

PROFILE

京都発信、音響ギター・ポップ・バンド「空中ループ」。のびやかで心地よいメロディー、独自の浮遊感と躍動するリズム、小さくも確かに心を灯す詞。それらが絶妙に合わさる音世界は唯一無二。これまでのリリースCDは、タワレコ新宿店、京都店、梅田マルビル店で発売日インディーズ・チャート1位を獲得。また全国のタワーレコードがプッシュするアイテム「タワレコメン」に選出される等々、好セールスを記録。2011年10月、プロデューサーに大谷友介(SPENCER,Polaris,ohana)、レコーディング・エンジニア&MIXに益子樹(ROVO)を迎え、1st full albumをリリース。『この国(日本)を変える、音楽の一端を担う』というおおきな目的に向かって、ちいさな日常を邁進している。

>>映画「その光-for a long time-」製作日記
>>空中ループ official web

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インタヴュー

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