2012/09/19 00:00

石川県金沢市生まれ、現在は東京近郊を中心に活動を展開している、シンガー・ソング・ライト・ブロガー、よしむらひらくが、ミニ・アルバム『はじめなかおわり』以来、約1年2ヶ月ぶりの新作となる『2012 EP』をリリース。自宅の部屋兼スタジオを拠点に、作詞、作曲、アレンジに加え、レコーディングからミックスまで自身で手掛けた、これまでの作品を越える大名作がここに誕生。

よしむらひらく / 2012 EP
【Track List】
1. tokyo2012
2. 真夏の嵐
3. 決壊
4. dancin'/Autumn fair

【販売形式】WAV / mp3

【販売価格】800円(WAV / mp3ともに)

強い普遍性をまとったポップ・ミュージック

夏が終わり、風の匂いが秋に移り変わっていく。こんな季節の変わり目には、時に生活がままならなくなるほどの感傷に襲われそうになる。過ぎてしまった歳月、会えなくなってしまった人、忘れてしまった何かがそこにあったこと。そんなふうに胸を詰まらせる感傷を、丁寧にすくい上げて、すんなりと耳に入り込むポップ・ミュージックに仕上げるのが、東京のシンガー・ソングライター、“よしむらひらく”である。

高校時代から曲を作り始め、25歳の現在までに、自主制作を含めて100曲以上を発表してきた、よしむらひらく。彼はいつでも「今、ここ」の自分を刻むように、ひとりで曲を作っては出し続けてきた。昨年リリースした初の全国流通盤『はじめなかおわり』も、集大成というよりもその時点での彼の収録した作品であったし、前作『2011』は震災直後の心情をそのまま詰め込んでリアルタイムで伝えようとする作品だった。

それに連なる今作『2012 EP』もまた、ドラム以外の演奏・録音・ミックスまでを一人で手掛け、ギター・ポップであったりフォークであったりダンス・ミュージック風であったりと、それぞれ異なるアプローチで表現された4曲を繋ぐことで、「今現在」のよしむらひらくの姿が浮かび上がってくる1枚になっている。中でもタイトル通り、2012年の東京に生きる心情をフランクな言葉で歌った「tokyo2012」と、これまでも彼が一貫して歌ってきた、季節が巡り、人が移り変わっていくことへの感傷を、緩やかなバラッドに仕上げた「決壊」が印象深い。〈答えはどこにもない〉だとか、〈わからないまま春が来る〉だとか、そういう彼の一見諦めたような、突き放すような態度の裏に、本当は諦めきれないから歌っているのだと、そんな血の巡りが透けて見える瞬間がある。どうしようもなくやってくる終わりを前にして、それでも歌いながら歩くことを選んだ、一人の若い男の姿が、4曲を通して浮かび上がってくるのだ。

きっと誰もが共有できるような事象や感情など、この世にはないのだろうと思う。どれほど大きな災害が起きたところで、人々の心がひとつになることはないと、私たちは知ってしまった。 けれども彼自身のパーソナルな感傷が、ポップ・ミュージックとしての強い普遍性をまとって我々の元に届く時、それは聴き手の感傷をも共に掬い上げてくれるような優しさを持つ。そんなポップ・ミュージックの力を、彼の歌からは感じることができる。社会に生きる私たちの、行き場のない感傷を、彼の音楽は引き受けていってくれるだろう。そして彼自身の姿がありありと反映されるその歌が、これからやってくる2013年、2014年と、どのように変わっていくのか―あるいはいつか、その歌が止む日が来るのか。その姿をこれからも追い続けたいと、そんな風に思わせられるのだ。(text by 柳川春香)

LIVE INFORMATION

GREAT HUNTING NIGHT VOL.36
2012年10月4日(木)@新宿MOTION
時間 : 開場18:00 / 開演18:30
出演 : よしむらひらく(バンド編成) / BAND A / ふぇのたす 他

よしむらひらく『2012 EP』発売記念 弾き語りミニライヴ&サイン会
2012年10月7日(日)@タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
時間 : 開演12:00
出演 : よしむらひらく(弾き語り)

あやっこ presents " Sound From The Street Vol.10 "
2012年10月31日(水)@新宿MOTION
時間 : 開場19:00 / 開演19:30
出演 : よしむらひらく(バンド編成) / Sorrys! / もらん / ヤーチャイカ

よしむらひらく「2012 EP」レコ発イベント
2012年11月22日(木)@渋谷O-NEST
出演 : よしむらひらく(バンド編成) 他

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PROFILE

よしむらひらく

シンガー・ソング・ライト・ブロガー。1987年6月9日、石川県金沢市生まれ。東京在住。B型。 それなりにまともな学歴をセオリー通りに20歳でドロップアウト、以降各方面でコアな音楽好きから評価を得ながらもうだつの上がらない音楽活動を続ける。 それまでに制作した膨大な量の自主制作音源を封印し、2011年6月に1stシングル『春』を、7月には王道ながら流行に逆行する意思すら感じさせる内容の1st.miniアルバム『はじめなかおわり』をリリース。12月に期間限定自主盤『2011』を発売(2012年3月販売終了)。 2012年3月、軽快な毒舌に定評のあったブログを割と丸くなった感じで再開。

よしむらひらく HP

[レヴュー] よしむらひらく

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