2012/06/07 00:00

前作『The Nothings of The North』が世界中の幅広いリスナーから大きな評価を獲得し、坂本龍一の2009年ベスト・ディスクに選ばれるなど、現在のシーンに揺るぎない独特の地位を築き上げたAmetsub。旅を連想させる様な浮遊感漂う旋律は、大自然を描くような強烈なサウンド・スケープとなり聴く者の心を奪う! 是非、聴き逃し無く。

大胆な音色の余韻と線密なビートで成り立つ、Ametsubの新境地

Ametsub / All is Silence
【Track List】
01. Utmost Point / 02. Rufouslow / 03. Blotted Out / 04. Precipice Drive / 05. Lucent / 06. Vestige For Wind Day / 07. Key / 08. Dimmur / 09. Sun Of Madrid / 10. Over 6633 / 11. Muffled Blue / 12. Cloudsfall

次なるフィールドへ確実に進化したAmetsubの無限の世界観が秘められた全12曲!

【WAV配信日】
2012年7月9日より、WAV音源を配信開始致します。

新しい雑音を発見し、音楽の歴史を発展させる

坂本龍一の「2009 年のベストディスク」にも選ばれ、SonarSound Tokyoを始めとする大型フェスにも出演を果たしているAmetsubの新作が3年ぶりに届いた。インダストリアル×生音×アンビエントというイメージがあった前作に比べ、今作からは「自然」そして「神」というイメージが浮かんでくる。まるで、自然や宗教的な世界を、いかに人工的に表現するかという難題に挑戦しているかのようである。特にすごいのは、自然から電子音が生み出されているように聴こえる点だ。2曲目の「Rufouslow」を聴いてもらいたい。あたかも川のせせらぎからノイズが生まれているような、つまり自然が電子音を生成しているように錯覚させられてしまうのである。ここで1つの疑問が浮かび上がる。

なぜ人工的に作られた「ノイズ」を聴いて、それを「自然」だと思ってしまうのだろう。それは、人工的に作られる「ノイズ」が、いつの間にか日常の中にとけ込んでおり、もはや不快な音とさえ感じなくなっているからではないだろうか。音楽の歴史(主に西洋音楽)は、「雑音」を音楽のシステム内に取り込んできた歴史でもある。例えば、今では美しいとされているドビュッシーの音楽は、当時のルールからははみ出した「雑音」を使ったものである。時代が進み、テクノロジーの発展とともに電子音が使われるようになった。シェフェールやシュトックハウゼンなど多くの作曲家がそれを発展させ、今や西洋音楽だけでなくポップス、ロックやヒップ・ホップなどあらゆるポピュラー音楽の中で「雑音」が使われている。

そうした歴史を踏まえて、Ametsubの今作を聴くと、ノイズとされていた電子音は、もはや相反する「自然」というイメージを創りだし、電子音は「ノイズ」という領域には留まらないことを認識させてくれる。言い換えれば、雑音の先を発見しなければ、音楽の歴史は発展しないところまで来ているとも言える。何を雑音として捉えるかは、作曲家であったりミュージシャン次第ではあるが、それを本当に雑音と認識してくれるか、そして雑音ではないと判断するのはリスナーである。作り手と受け手のバランスのことを考えると、正に音楽の歴史が次のステップに向かっていくべき重要な時期に来ているのではないだろうか。それに気づかせてくれたAmetsubの今作を聴いて、ますます音楽の未来が楽しみになった(text by 恵谷隆英)

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PROFILE

Ametsub
東京を拠点に活動する音楽家。2009年にリリースした最新アルバム『The Nothings of The North』は、世界中の幅広いリスナーから大きな評価を得て、現在のシーンに揺るぎない独特の地位を決定付けた。 坂本龍一「2009年のベストディスク」にも選ばれ、ドイツのMille Plateauxからライセンス・リリースが決定。SonarSound Tokyo、Sense Of Wonder、渚音楽祭、Summer Sonic 09などの大型フェスティバルにも出演を果たし、2009年夏にはアイスランドでYagyaやRuxpinと共にライヴを敢行。さらにClammbonの楽曲の唯一のリミキサーとしてミト氏より依頼される。DJとしての活動でも成果を伴いつつ、ライヴでは果てしない旅のような無類の音楽性を披露し、次第に多くの人々を惹きつけ、現在までにPlaid、Oval、Fennesz、Jel(Anticon)、Vladislav Delay、Floating Pointsなど国境を越えたアーティストと共演。 2011年春にはスペインのLEV Festivalに招聘され、Apparat、Johann Johannson、SBTRKT、Pantha Du Prince、Jon Hopkinsらと共演。湖の上でオーディエンスに囲まれる条件下であったが、後日L.E.V. Festivalのベスト・アクトと称され、同フェスティバルへ大きな衝撃を残す。その後、n5MDのCrisopaとスペイン・ツアーを成功に収める。孤独感の中にある確かな温かさと崇高美は大きな揺らめきを与え、突き抜けた個性、大自然を描くような強烈なサウンド・スケープは世界中にファンを広げている。2012年6月6日、待望の3rd Albumがリリース。

Ametsub official HP
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この記事の筆者

[レヴュー] Ametsub

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