制作期間一年間を要し、膨大なセッションから生まれたKip Hanrahan待望のオリジナル・ニュー・アルバム『At Home In Anger』が、OTOTOYで1ヶ月先行配信開始! 海外レーベルを巻き込み、危うく幻の音源になりそうだった本作。様々な壁を乗り越え制作された音源だけに、期待の声も多く、また、同時期に録音された前作のヴォー カル作品『Beautiful Scars』のもう一つの側面と言える作品である。

Kip Hanrahanの新作がOTOTOYで1ヶ月先行配信!!

Kip Hanrahan / At Home In Anger
【TRACK LIST】
01. Vida Sin Miel / 02. Gift / 03. Another Autumn Forms / 04. Como en Vietnam / 05. No Baby (1) / 06. The Savage Dawn in Her Glance / 07. Suenos da Vida Colonial / 08. Kuduro of Assassins and Laughter / 09. Obviously Spring / 10. You Play with the Night with Your Fingertips / 11. Unfinished Dawn / 12. At Home in the Night / 13. War News from Inside the City / 14. Shadow of the Unfinished Dawn / 15. Unfinished Dusk / 16. Clean Charm Amongst Evil / 17. Need / 18. No Baby (2)

異端児が表現した「聴いて楽しい音楽」と「踊って楽しい音楽」

90年代以降、ここ日本でもジャズを中心にプレイするDJや、オール・スタンディングのクラブ・イベントで演奏するジャズ・ミュージシャンは着実に数を増やし、「ジャスで踊る」という文化が定着しつつある。「ダンス・ミュージックとしてのジャズ」という視点は、既に多くの人に親しまれている作品はもちろん、これまであまり評価されてこなかった作品にもスポット・ライトを当て、ジャズ・ファンや音楽ファンの裾野を広げた。だが、その一方で「踊るジャズ」と「聴くジャズ」という考えが、両者の間に徐々に壁を作ってしまったのも事実だ。そして、この壁を打ち破ったのが今回の主役Kip Hanrahanだ。

Kip Hanrahanは、ニューヨークのブルックリン出身のアイルランド系ユダヤ人。「人種のるつぼ」と呼ばれるニューヨークの中でも、特に移民の多い地域で生まれ育った彼は、ヒスパニック系の人々が楽しむマンボやルンバ、サルサといった音楽に自然と親しんできた。その後、成長した彼はモダン・ジャズやフリー・ジャズといった音楽に取り組み、1979年のデビュー以降、ラテン音楽のエッセンスを取り込んだ前衛的ジャズという、唯一無二の独創的な作品を発表し続けている。

Kip Hanrahan(キップ ハンラハン)

彼の新作『At Home In Anger』は2009年に発表された『Beautiful Scars』と同時期に制作が開始されたアルバム。「怒り」をはじめとしたさまざまな感情の表現方法を模索していた彼は、幾度となくセッションを繰り返していた。そして、その中で生まれた曲は最初、ヴォーカル作品とインストゥメンタル作品に分けて発表される予定だったが、諸般の事情によりプロジェクトは頓挫、ヴォーカルものに焦点を絞った作品が『Beautiful Scars』として発表された。しかし彼は諦めずプロジェクトのために作られたインストゥメンタル楽曲にヴォーカルや詩の朗読を加え、新たに制作したトラックもひとまとめにした本作を生み出した。

アルバムのオープニングを飾るのは、サルサ風のビートの上で、ダニー・ハザウェイを髣髴させる優雅な男性ヴォーカルが踊る「Vida Sin Miel」。ヴォーカルと呼応するようなチェロの演奏が印象的なダンス・ナンバーだ。その後も、ブラジル音楽の影響を感じさせる清涼感が心地よい「Gift」「Another Autumn Forms」、マンボを取り入れた妖艶な雰囲気の「Como en Vietnam」「You Play with the Night with Your Fingertips」など、ラテン音楽の要素を取り入れた、優雅なダンス・サウンドが数多く収められている。だが、これらの楽曲はラテン音楽の影響を受けつつも、その演奏には即興的なフレーズがところどころに盛り込まれており、ジャズの持つ奔放さと洗練された雰囲気はしっかりと受け継いでいる。

その一方で、クラリネットで現代音楽のような即興演奏を聴かせる「No Baby (1)」や、攻撃的なフレーズを積極的に盛り込んで、畳み掛けるような演奏を楽しませてくれる「At Home in the Night」、ピアノと歌だけで演奏された「Unfinished Dusk」や、複数の楽器に音響処理をかけて、ダブやプログレッシブ・ロックのような幻想的な雰囲気を持たせた「Need」など、ダンス・ミュージックの枠にとどまらない曲も随所に盛り込まれており、フリー・ジャズ、前衛音楽のスタイルを丁寧に踏襲した「聴いて楽しいジャズ」も味わえる。

Kip Hanrahanはラテン音楽と前衛音楽の遺伝子を受け継ぎ、「聴いて楽しい音楽」と「踊って楽しい音楽」を、一貫性を失わせずに共存させた。「踊れるジャズ」に慣れ親しんだ人はもちろん、「聴いて楽しむジャズ」が好きな人や、「前衛的な音楽」が好きな人にもオススメしたい良質なジャズ作品だ。(text by 高野裕介)

INFORMATION

日程 : 2011年12月7日(水)〜12月9日(金)
会場 : Blue Note TOKYO
菊地成孔 presents「SYNDICATE NKKH -DCPRG & AMERICAN CLAVE」
キップ・ハンラハン “ビューティフル・スカーズ”
with special guest 菊地成孔&マイア・バルー

<member>
キップ・ハンラハン(musical director)、オラシオ "エルネグロ"ヘルナンデス(trap drums)、ロビー・アミーン(trap drums)、ユニオール・テリー(b)、フェルナンド・ソーンダース (electric b,voice)、ブランドン・ロス(g,voice)、リッチー・フローレス(conga)、ジョン・ビーズリー(P)、ヨスヴァニー・テリー(sax)、アルフレード・トリフ(vln)
スペシャルゲスト : 菊地成孔(sax、voice)、マイア・バルー(vo、flu)

<1st stage> Open 17:30 / Start 19:00
<2nd stage> Open 20:45 / Start 21:30

ーKip Hanrahan来日記念ライブー

〜ヨスヴァニー・テリー公演〜
日程 : 2011年12月10日(土)
会場 : ミューズ音楽院本館1Fホール(代々木)
時間 : Open 17:30 Start 18:00
チケット : 前売 3,500円(12月9日(金)までの予約) / 当日 4,000円 / 学生 2,500円(要学生証提示)
 出演 :
『東京ザヴィヌルバッハ』 with Yosvany Terry(坪口昌恭 : Keybords、M on Macintosh / Yosvany Terry Cabrera : Sax, Shekele)
横田寛之トリオ“ETHNIC MINORITY”(横田寛之 : Sax、SE / サトウヒロ : Bass / 島野和樹 : Cajon、Drums)

※ヨスヴァニー・テリー : 来日するKip Hanrahanのバンド・メンバー

予約・お問合せ : (株)イーストワークスエンターテイメント
tel : 03-5413-7415
mail : info@ewe.co.jp|info@ewe.co.jp

お問合せ : (株)ミューズエンタープライズ
tel : 03-5379-2761
mail : mepinfo@muse-enterprise.com

〜ブランドン・ロス公演〜
日程 : 2011年12月12日(月)
会場 : PIT INN (新宿)
出演 : ブランドン・ロス(g,voice)、ツトム・タケイシ(b)、芳垣安洋(ds)

日程 : 2011年12月13日(火)
会場 : ARISTO HALL(南青山)
"Toru Takemitsu Project"
ブランドン・ロス(g,voice)、鈴木大介(g)、ツトム・タケイシ(b)

日程 : 2011年12月14日(水)
会場 : 月見ル君想フ(青山)
出演 : ブランドン・ロス(g,voice)、ツトム・タケイシ(b)、special guest 外山明 (ds)

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Kip Hanrahan PROFILE

1954年生まれ。N.Y.ラテンのメッカ、ブロンクス出身であるキップ・ハンラハン。ヒスパニック・コミュニティのど真ん中で育ち、幼少時からパーカッションに慣れ親しんでいたという。やがて、インド/バリ/ガーナなど世界中を巡って各地のリズムを吸収し、それらをジャズに融合する前衛プロデューサーとして開花した。80年にレコード会社<アメリカン・クラヴェ>を設立。86年には“タンゴ界の革命児”アストル・ピアソラの大傑作『タンゴ・ゼロ・アワー』をプロデュースし、一躍脚光を浴びた。以後、N.Y.の先鋭的ジャズ・アーティストを率先して起用し、パーカッションを全面に押し出しながら蒼く妖しい色彩感を放つ作品を数多く手掛け、独自の世界観に基づくニューヨーク・アンダーグラウンド・サウンドを追及する。

この記事の筆者
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