2010/11/04 00:00

山下剛史と岩原大輔による"アコースティック・グルーヴ・ユニット"MURPHYの最新作『Welwitschia』。アルバム・タイトルのwelwitschiaとはアフリカのアンゴラ、ナミブ砂漠に群生する植物の名前だ。園芸上は"奇想天外"という名前もつけられたこの植物は短い茎から、生涯2枚だけの葉を伸ばし続けるそうだ。その葉の先はささくれ、どんどん分解しながら成長を続けていく。葉を山下と岩原に例えれば、分解した葉先は彼らを取り巻く環境ということになる。セルフ・プロデュースで制作された彼らの2作目は、2005年のデビューからの6年の間にあった様々な人たちとの出会いを結実した作品だ。今回はその『Welwitschia』からの1曲「Flower」を1週間限定でフリー・ダウンロード。人との出会いが生んだグルーヴをぜひ味わって欲しい。

インタビュー&文 : みのしま こうじ

>>>「FLOWER」のフリー・ダウンロードはこちらから(期間 : 2010/11/04〜11/11まで)

最新アルバム『Welwitschia』とともにデビュー作『Down To Earth』も配信開始!

『Welwitschia』

【Track List】
01. ELEPHANT GARDEN / 02. FLOWER / 03. PUZZLE OF LIFE / 04. INDIGO / 05. MYSTIC HIGHWAY / 06. LAST SONG

アルバム購入特典として、デジタル・ブックレットをプレゼント!
『Down To Earth』

【Track List】
01. Down To Earth / 02. Children of the Sun / 03. Flow / 04. TOWA / 05. SOFA

アルバム購入特典として、デジタル・ブックレットをプレゼント!

INTERVIEW

——2人が出会ったきっかけを教えて下さい?

山下剛史(以下Y) : 親戚のデザイナーの人がいて、僕はファッション・ショーのモデルの手配や通訳や舞台監督っぽいことをしていたんです。そのショーの音楽を担当していたのが岩原だったんですが、どのタイミングでモデルを登場させるのかとか、そんなやり取りをしたのが最初の出会いでした。たしか彼がベルギーから帰ってきたばかりの頃だったんで、2001年頃ですかね。

ーーえ! ? 岩原さんはベルギーに住んでいらっしゃったんですか?

岩原大輔(以下I) : そうなんです。太鼓の勉強のために6年ぐらい住んでいました。僕の師匠であるママディ・ケイタが、当時はベルギーに住んでいたので「弟子にしてください! 」みたいな感じでお願いして... 気付いたら6年ぐらい住んでましたね(笑)。

ーーそこからMURPHYとして活動するようになったのは?

Y : 僕がインディーズでソロ作を出したんですが、ライヴをする時は1人だったのでリズムが欲しいと思っていたんです。そういえば「あの時のジャンベのあの人はどうしてるんだろう? 」と思って連絡したんです。僕が企画したイベントがあって、そのイベントで1回「一緒にやりませんか?」と誘ったのが最初ですね。
I : 3年か4年ぶりぐらいの連絡だった気がします。それまで全く連絡とっていなかったのですから。ファッション・ショーで出会った頃も最初はお互いミュージシャンとは知らなくて、打ち上げの席で初めて知ったぐらいでしたし。

ーーじゃあ最初はライヴのために活動をスタートしたと?

Y : そうですね。当時は僕が都内、岩原が横浜に住んでいたので、間をとって自由が丘のスタジオで会うことにしたんです(笑)。でもその時にジャンベだけかと思っていたら、ドゥンドゥンという楽器も持ってきて、それが僕にとっては魅力的だったというか、ただのジャンベ叩きじゃないなと思ったんです(笑)。最初に考えていたよりもグルーヴィーなことが出来るなと思って、色んな発想も沸いてきたんです。
I : その時のライヴでやった曲も何曲か1stの『Down To Earth』に入っているんです。タイトル曲の「Down To Earth」もそうですね。

ーー曲は2人で作っているんですか?

Y : 基本的にはそうですね。僕が元になるアイデア、デモを持ってきて、岩原にプレゼンするというような感じですね。歌ものなので、メロディと詞があることが基本になるので、その部分については僕がもっていくんですが、逆に岩原から「こういうリズム・パターンを作っているからこれを母体にどうしようか? 」みたいにアイデアをもらう場合もあります。
I : 「SOFA」とか「TOWA」とかはリズム先行というか、もともとあったリフと僕が考えていたリズム・パターンが自然にバッチリと合った曲です。2ndの「Flower」なんかは完全にリズム・パターンありきで作った曲ですね。
Y : 「Flower」では岩原がジャンベをバチで叩いてるんです。ジャンベをバチで叩いたりして怒られたりしないの? (笑)
I : それは大丈夫(笑)。ものすごい昔にはなかったことではないから。最近、あまりやる人はいないけど。

——山下さんが曲の元になるネタを思いつく時は、どんな時ですか?

Y : 僕は詩が先行するんですが、電車が動いている時であったり体が動いている時に浮かんでくるんです。それをiPhoneに残して、後からこういうメロディーがいいなぁって合わせるんですよ。詩が先にあると、どういうスタイルでそれを表現すればいいのかなっていうところを考えられるので、最近はほとんど詩が先行です。

——山下さんはソロでも活動していたということですが、ギターはいつ頃始めたんですか?

Y : 元々バンドをやってたんですけど、解散したりしているうちに「弾き語りのスタイル」しか続けていけないんだなって思って(笑)。音楽を続けるにあたって、バンドって時間がかかるし、出会いもないと出来ないじゃないですか? で、1997年ぐらいに弾き語りやるかって決意したんですよね。バンドは置いといてとりあえず1人でやってみようと思ったんです。それでアコギを1本買ったんです。それが今のギターなんですけど、そこからバンド・サウンドを離れてミニマムな自分自身が出来る形に変わっていったんです。バンドでは歌うだけで、ギターを持つのは曲を作る時だけでした。だから人前でアコギを持って歌うってことをした事がなかったので怖かったですね。

——スライドもガンガン入っている曲もあったので、元々ギターが好きでブルースとか好きなんだろうなって思っていました。

Y : 2人でやっているので曲を作る為のネタを持って来た時には、岩原にプレゼンするわけです。そういう時に「カラーが変わってないと」っていう思いがあるんですよね。だからちょっと格好つけて「スライドを入れてみるか!」とかそういう思いの表れですね(笑)。岩原に飽きさせない感じを自分なりに演出してたんですよね。
I : その結果がこの作品に結実しているというか。
Y : 今となっては6年やってますけど、駆け出しの頃なんてお互い良く分かってないので、プレゼンの連続ですよね。

——1st『Down To Earth』ではそういったやりとりがあってお互いの立ち位置が分かってきて、その後5年間ライヴをやり続けて今作が出来上がった... マーフィーとしては実質的な1作目というイメージなのでしょうか?

Y : そうですね。セルフ・プロデュースで1つ1つ決めてやったのは初めてですからね。1st『Down To Earth』を作った頃は事務所にも所属していたし、プロデューサーの力も借りて作り上げたんですが、2nd『Welwitschia』は、全て自分たちで決めて制作したのでリアルなファースト・アルバムかもしれないですね。

ーーその1stと2ndで雰囲気がかなり変化していますが、たとえば「Mystic Highway」ではエレクトロニックなエフェクトも入っていたのが印象的でした。

Y : そうですね。もともと僕らは自分たちのことを勝手に"AGR=アコースティック・グルーヴ・ロック"って呼んでいるんですが、アコースティックなダンス・ミュージックをやろうというコンセプトがあるんです。生なんだけどエレクトロニックな感じみたいのが欲しくて「Mystic Highway」なんかは特にそういう空気感が出たら良いなと思って作った曲です。完全にセッションで作った曲なので、詩のふり方もセッションでテープにとった時の譜割に詩をはめていったんですけど、これにはちょっと苦労しました。

ーー実は結構、1曲1曲が長いんですよね? でもグルーヴ感があるので全然それを感じませんでした。

I : それなら良かった(笑)。ただそれでもレコーディング用に端折っているんですけどね。油断したら10分以上の曲になってます(笑)
Y :しかも他の楽器がいるわけじゃないので、2人だけですからね。最近、ライヴではベーシストの西村直樹(上々颱風)くんが入ってトリオな感じでやることも多いですけど。
I : 彼は『Welwitschia』でも弾いてくれています。

——ベースを入れようと思ったのはなぜですか?

Y : アルバムを作ろうとなった時に、お互いにセッションしながら音を重ねていって、どんどん音数は増えて行くんですけど、「やっぱり軸が必要じゃないか」って話になったんですよね。装飾はどんどん増えるけど芯がなかったというか。それで「ツヨシ君? 誰かいいベーシスト知ってる? 」って聞いたら、ちょっと1人あてがあるよって言うので参加してくれる事になったんですよ。
I : ベースってメロディーとリズムがあるから両方の役割が担えるじゃないですか? ベースが入ることで曲自体も聞きやすくもなるっていうことに、6年目にして気づきました(笑)。
Y : ベースが入った方が歌も届きやすくなるんですよね。流れが分かるというか。曲自体はなにも変わってないのに、ベースが入るだけでライヴで「今日は歌がすごい届いてきた! 」とかよく言われました。そういう意味で最高のガイドなんだと思います。リズムと歌の間で手を取ってくれるというか、ベースとはよく言ったもんだなって思いますね。あとは岩原との相性もバッチリだったのですごい良かったと思ってます。

——『Welwitschia』はゴールデン街でレコーディングとありますが?

Y : そうなんですよ。僕はゴールデン街でお店やっているんですよね。夜お店が始まる前に持ち込んで録音してっていう(笑)。エンジニアの方には本当に感謝しています。いつもそこで僕たちがリハーサルしているんですよね。なのでここが使えたらいいなと思って、エンジニアの方に聞いたら「全然いけますよ。面白いじゃないですか! やりましょうよ! 」て言ってくれたんです。
I : 参加してくれているミュージシャンもみんな知り合いですし、録音する場所もレコーディング・スタジオじゃなくて、自分たちの慣れ親しんだお店ですし、そういう部分て録音の雰囲気にも影響すると思うんです。そういう空気感も音にでていると思います。やっぱり演奏する側としても圧倒的にやりやすかったですからね。
Y : 1回トイレで録音したこともありましたね。
I : 楽器はいいんですけど、ヴォーカル録りが一番繊細じゃないですか。でもお店なので基本的にノイズが鳴ってるんですよ。例えば急に冷蔵庫のモーターが鳴り出したり、酒屋さんが2階に駆け上がって行く階段の音だったり。結局、個室になるのはトイレしかないってなって(笑)。結局、日数で言うと15、16日ぐらいだったと思うんですが、連続じゃなかったので延べ2ヶ月ぐらいはかかって録音しました。 

——最後に今後のマーフィーをこうして行きたいっていうイメージはありますか?

Y : 『Welwitschia』は色々な人に参加してもらって作ったわけなんですけど、みんないい仲間達なんですね。そういう仲間と出会えってゴージャスな感じになっていったらいいなと思ってます。結局は出会いなわけで、一緒にプレイしたいとか思わせてくれる人との出会いが、曲を豊かにしてくれると思うんですよね。メロディーを作って、詩を書いているということは、自分の曲の可能性を見てみたいなと思うんです。その可能性を広げくれる仲間が増えていけば、嬉しいなって思うんですよね。これは2人だけでは出来ませんし、ベースが入って3人でも出来ないものですからね。

INFORMATION

  • 2010/11/08〈鹿児島〉Bar MOJO
  • 2010/11/09〈鹿児島〉鹿屋BENCH
  • 2010/11/10〈熊本〉Private Lodge cafe&diner
  • 2010/11/12〈福岡〉Pleiades
  • 2010/11/13〈山口〉自由創作いとう(30名限定)
  • 2010/11/14〈岡山〉Padang padang

PROFILE

山下剛史(ヴォーカル、アコースティック・ギター)、岩原大輔(ジャンベ、パーカッション)の2人によるユニット。自然の力強さ、暖かさを彷彿させるアコースティックな音にプリミティブな躍動感を融合。自らの音楽を"AGR(アコースティック・グルーヴ・ロック)"と名付け2004年に活動をスタート。2005年9月にデビュー・マキシ・シングル『Down to Earth』をリリース。2010年7月にはセカンド・アルバム『Welwitschia』をセルフ・プロデュースによりリリース。

ー主な出演イベントー
ファッション・ブランド『ANOTHER EDITON』春夏プレビュー、万博愛地球博 大地の広場、日本フィリピン国交50年キネにベント『NAKID SONGS Vol.1』、Apple Store渋谷 インストアLIVE、虹の岬祭り、ポカマニア etc...

この記事の筆者

[インタヴュー] MURPHY

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