2010/09/21 00:00

美しいL'Altraサウンドが日本先行発売&日本盤のみのボーナス・トラック付き!


シカゴ出身の男女デュオL'Altraの5年ぶりの4作目。
シカゴ音響派出身ならではの丁寧かつ繊細な音作りで、聴くものをL'Altraワールドへ誘い、ピアノやストリングスを用い、男女混声の透き通った音世界に感動さえ覚える。シカゴ音響派、スロウ・コア、サッド・コア近辺の音が好きな方にはおすすめの作品。

01. DARK CORNERS I / 02. NOTHING CAN TEAR IT APART / 03. BIG AIR KISS
04. BOYS / 05. WHEN THE SHIP SINKS / 06. BLACK WIND
07. EITHER WAS THE OTHER’S MINE / 08. WINTER LOVES SUMMER SUN
09. THIS BRUISE / 10. TELEPATHIC / 11. DARK CORNERS II
12. FAVORITE FLAVOR (bounus track) / 13. YOU DON'T KNOW(bounus track)

音の魔術、声の魔法

シカゴといえばトータス等をはじめとした音響派(解釈は色々だが)のローカル・シーンがある。ローカルとはいえ世界的なビッグ・ネームが連なるシカゴ音響派は、嫌な言い方をすればブランドにまでなっている。しかし当の本人達は、日々の生活の中でただ音楽を生みだしているだけで、結局その作品性の高さを世界が放っといてくれないわけである。

今回届いたL'Altraの新作『TELEPATHIC』も、彼等がシカゴ出身という点で頷ける要素が多く含まれている作品と言える。彼等は間違いなくシカゴ・シーンの系譜に名を連ねる存在であるが、異質なものが混入している。まぁ、元来音響派やポスト・ロック等はその最たるものなのだが。

L'Altraの五年ぶりとなる今作の特出すべき所は、シカゴ音響派出身ならではの全てを張りつめさせる美しいサウンド、旋律である。一曲目の「DARK CORNERS I」でアルバムのコンセプトは提示される。心を不安にさせ、同時に次の展開に心を誘われる。聴いていくうちに、歌が描く美しい情景に五感が刺激され、まるで静かな湖にボートを浮かべて、うたた寝している様な気持ちになる。最後の曲「YOU DON'T KNOW」を聞き終わると、止まっていた全ての物事が一斉に動き出すのである。まるでクラシックを聴いた時の様な一連の流れ。

前記した「異質なもの」というのは唄心。シカゴ音響派はその旋律の美しさから、初めから唄心を持っているように思える。しかしL'Altraの唄心というのは、とてもシンプルではあるが、「声」なのだ。まるで男女混声の声が他の旋律と同じようにきれいに混じり合い、歌を歌う悲しくも力強い「声」と、ただ旋律として存在する「声」を丁寧に楽曲に織り交ぜている。「声」を大事にする事で、いわゆる音響派はエレクロニクスなパフォーマンスに傾倒しがちだが、そんな楽器のパフォーマンスだけに傾倒しない、歌が浮き立つL'Altra独自のサウンドになっている。もちろんエレクロニクスなアプローチもあるが、根底に感じたアコースティックな感じは、おそらくこの「声」を大事にした結果なのであろう。

言わずもがなジョン・ゾーン等(もっと多くの未知なる人達)の前衛音楽から派生し、ワシントンではFUGAZIが衝撃を与え、また別の場所からも永遠のパンク・キッズから奇形したキンセラ・ファミリーのCap'n Jazz、Joan Of Arc、owen、アメフト、Boys LifeやAlgeria one等が現れた。比較的近年のシカゴでは、ジョン・マッケンタイアのトータスを含めた数々のプロジェクト、シー・アンド・ケイクが認知され、忘れてはいけないシカゴの重鎮、親日派のジム・オルーク等、パンク・キッズが定義した違う形の様々なパンクが今のポスト・ロックやサッド・コア、ローファイ等の形成に一役買っている事は間違いない。しかしL'Altraの楽曲はそれを飲み込みつつも、更にルーツ・ミュージックに立ち返るような、いわば土臭い匂いを少量散りばめる事により、音楽の持つ温かみさえも与えてくれる。

「シカゴ音響派」という言葉によって、リスナーに音楽性を分かりやすく提示できる反面、ある種その「枠」がオリジナリティーの障壁になっている事も事実だろう。しかしシカゴ音響派出身と言われるL'Altraが、その「枠」に留まらない、土臭い温かみを放っているからこそ、シカゴ系と言われるシーン全体の懐の深さは実証される。そして、そんな高い作品性をこの『TELEPATHIC』は持っている。(text by 内田武瑠)

自らの「音」「声」「道」。

lemniscate(HQD ver.) / JESUS FEVER

『lemnicate』は、少年ナイフDMBQ等のバンドにも所属した凄腕ドラマー故チャイナのオリジナル・バンド、Jesus Feverの未収録アルバム。今作は30分弱の超大作「unseen」と「transit state』の2曲を加えた74分の完成版! マスタリング・エンジニアの高橋健太郎に「こんなバンドの音源が、まだ世の中に眠っていたなんて! 」と言わしめた程の驚愕の作品集!

震える牙、震える水 /長谷川健一

正に魔都京都から届けられた最後の歌とでも言おうか。二階堂和美七尾旅人トクマルシューゴなど良質なアーティストをご紹介しているPヴァインがお届けする最後のシンガー。歌が純粋に歌として響くことの素晴らしさを思い起こしてくれるシンガー・ソング・ライター長谷川健一。繊細で冷たい穏やかな光が暖かく震えながら降り注ぐ誰にも真似できないハセケンの世界。その官能的で優しくも切ない叫びは聞くものを別世界へと誘う。

All kinds of People ~love Burt Bacharach~ / Jim O'Rourke

天才Burt Bacharachが創造した音楽宇宙を、アヴァン・ポップスの異端児Jim O'Rourkeが東京/USのミュージシャン達と解き明かす。Jim O'Rourkeと11人のヴォーカリストとの巨大なジグソー・プロジェクト。20世紀アメリカを代表する作曲家、Burt Bacharachをめぐるエクスペリメンタル・ポップ・アルバム。2つの類いまれな才能が生み出すサウンドとは? 今、まさに歴史的瞬間が訪れようとしている。

PROFILE

L'ALTRA
Joseph Desler Costa: Vocals & Guitars
Lindsay Anderson: Vocals & Keyboards

1999年より活動するシカゴ出身のデュオ(結成当時は4人組)。バンド名はイタリア語で「the feminine other」の意。99年、地元のレーベルAestheticsよりEP『Until Sun』でデビュー。00年、1stアルバム『Music of a Sinking Occasion』(日本盤はTHOKから)、02年、2nd『In The Afternoon』(日本盤はP-VINEから)リリース。シカゴという「音響派」出身ならではの繊細な音作り、ピアノやストリングスの叙情的な響き、そして何より悲しくも美しい二人の唄心が感動的で、スロウ・コア、サッド・コアの新たなる旗手として脚光を浴びる。2nd以後、2名が脱退し、今のデュオ形式となる。2005年には同じくシカゴのHeftyに移籍。同レーベルの看板アーティストでもあるTelefon Tel AvivのJoshua Eustisのプロデュースによる3rd『Different Days』をリリース。日本ではビクターからリリースされ、音楽的のみならずセールス的にも大きな飛躍を果たす。しかし、その後バンドは活動休止状態に入り、07 年にはリンゼイはMintyFreshからソロ・アルバム『If』をリリース、ジョセフはソロ・ユニットCosta Musicとして来日、翌年にはアルバム『Lighter Subjects』をリリースするなど、ソロ活動に入る。バンドの存続が危ぶまれたが、08年にバンドとして初の来日ツアーを敢行し、復活を果たす。09年に、ジョセフがブルックリンに引っ越したことで、またしてもバンドの存続が危惧されたが、それぞれで曲作りは継続、昨冬シカゴにてレコーディングを行い、実に5 年ぶりとなる4th アルバムである本作を完成させる。前作に続いてJoshua Eustisをはじめ、Charles Rumback(Colorlist、Via Tania)、Josh Abrams(Bonnie Prince Billy)、Marc Hellner(Pulseprogramming)、Darren Garvey(Cameron McGill)、Elisa Graci(Costa Music)といった豪華な盟友たちが参加。2人の強靭な唄を軸に、様々なコラボレーションを通して生まれた芳醇なトラックが花を添えるという前作からのスタイルが完全に実を結び、5年の不在を埋めてあまりある傑作が誕生した。

[レヴュー] L'Altra

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