2010/09/01 00:00

UNDERWORLDの3年ぶりとなるオリジナル・アルバム配信スタート! 10月には来日公演も決定!!

UNDERWORLD / BARKING
前作『Oblivion With Bells』以来3年ぶりとなるオリジナル・ニュー・アルバム『Barking』が登場! リード・シングルに選ばれた「Always Loved A Film」はキャッチーでいてアップ・リフティング!! この夏、世界中のクラブを席巻すること間違いない。UNDERWORLDのファンのみならず、全音楽ファン待望、キラー・アンセム満載のスーパー・アルバムの誕生です!

ダンス・フロアに捧ぐ、全9曲の高揚感溢れるレクイエム

UNDERWORLDは、ダンス・フロアでの役目を終えてしまったのか? 2007年にリリースされた前作『Oblivion With Bells』はリスニング指向が強く、良くも悪くもシンプルな作品だったため、そう言われるのも無理はなかった。大型ダンス・アクトとして並び称されることの多い、ダフト・パンク、ケミカル・ブラザーズ、ベースメント・ジャックスといった連中が、世界各地のフェスティバルでオーディエンスをドッカンドッカン盛り上げている隙に、いつしかUNDERWORLDは日本のイベント以外でヘッド・ラインを任されることが少なくなり、「ビッグ・イン・ジャパン」と揶揄されることもしばしば。

ところが、約3年ぶりに届けられた『Barking』は、明らかに“現場”であるダンス・フロアを意識している。それは、先んじてオフィシャル・サイトで配信されたドラムン・ベース・トラックの「Scribble」一発で確信するのも決して早合点ではなかった。肉感的でエネルギッシュなシンセのリフ、カール・ハイドの伸びやかなヴォーカリゼーション、心地のよいBPMと疾走感…。すでに今年を代表するアンセムとして、あらゆる場所でこの曲がピーク・タイムに投下された。そんな絶好のタイミングでお目見えとなる『Barking』の注目すべきポイントは2つ。まずは、全9曲の収録ながら7曲もカールのヴォーカルがフィーチャーされた、純然たる「歌もの」作品に仕上がっていること。それも、以前の念仏のごとく抽象的なリフレインではなく、意味のあるリリックをきわめて明確に届けようとしている。

もうひとつは、再先鋭のエレクトロニック・アーティスト達との積極的な「共同作業」だ。全部で8曲も外部プロデューサーを招いているのだが、そのライン・ナップが凄い。盟友ダレン・プライスはもちろん、日本でも絶大な支持を受けるポール・ヴァン・ダイク(以下、PVD)、元ディープ・ディッシュのダブファイア、“ドラムン・ベース界の DJ シャドウ”ことハイ・コントラスト、さらにマーク・ナイト&D・ラミレス、さらにはアップルブリム、アル・トゥレットといったダブ・ステップ界の敏腕プロデューサーが、「アルバム」という小宇宙の中でバチバチと火花を散らしている。とりわけ、本国イギリスから勃興したダブ・ステップに関しては、カールとリック・スミスもしばらく静観していたのだろうが、本来ならば自分達がやるべきことだったのに! という歯痒さもあったのかもしれない。

正直なところ、「Scribble」を超えるキラー・チューンは収録されていないはずとタカをくくっていたが、2曲目の「Always Loved A Film」なんかは文句なしのベスト・トラック。ひたすら高みへと昇っていくド派手な高揚感は、早くもライヴでの狂騒が目に浮かぶようだ。インディーズのギター・ロック・バンドのごとく初々しいPVD参加の7曲目「Diamond Jigsaw」はとても楽しげだし、フーチャリスティックな「Moon In Water」における、女性のポエトリー・リーディングも印象的。しかし、唯一UNDERWORLDのみで作り上げたラストのピアノ・バラッド「Louisiana」は、すべてを達観したかのような悲壮感が、まるで引退宣言にも聞こえるのは気のせいだろうか…? TOMATOとしての活動だけでなく、カール単身によるアート・エキシビジョンの開催、怒涛のリリース・ラッシュとプロモーション、そして奇跡のライヴ・ハウス・ツアーなどファンには嬉しいトピックが満載の2010年だが、どこか生き急いでいるとしか思えぬほど精力的な彼らが、ほんの少し心配にもなってしまう。本作『Barking』が、最後の灯火となってしまわないことを願うばかりだ。

(text by 上野功平)

UNDERWORLD 来日公演決定!

Barking』をリリースしたばかりのUNDERWORLDの来日公演が決定! 既に多くのDJ 達がそのプレイのクライマックスにスピンし、2010年を代表するアンセムと早くも話題の「Scribble」やキラー・トラック「Always Loved A Film」を筆頭に、アップ・リフティングでホットなダンス・トラックを満載した本作を携え、なんとソールド・アウト必至のライヴ・ハウス・ツアーの開催が決定! これまで幕張メッセ、エレクトラ・グライドやフジ・ロックのヘッド・ライナー等、毎回巨大な会場でライヴを行って来た彼らだが、あえて今回は、ステージとオーディエンスの距離を出来るだけ詰め、より密度が高く一体感が味わえる特別なライヴを行いたいという意向で会場を選定。強力なビートと鮮烈なライティング&ビジュアルと、そして圧倒的なパフォーマンス。最強のライヴ・アクトが誘う歓喜溢れる瞬間へ!!

大阪
日時 : 2010/10/06(Wed.)
会場 : ZEPP 大阪
OPEN / START 19:00

東京
日時 : 2010/10/07(Thu.) & 08(Fri.)
会場 : ZEPP 東京
OPEN / START 19:00

UNDERWORLD PROFILE

嵐のような激動の30年を経て、すっかり風化してしまった音楽との関係性において、今なお輝きを放ち続けることはできるのだろうか? 気の滅入るような不遇の時代から一転、驚異的とも言えるほどの成功を成し遂げ、バンドの解散や再結成、アルコール依存症との闘い、大規模なギグ、莫大なレコード・セールス、オゾン層を激減させるほどの大量のヘア・スプレー、そして70年代後半からの断続的なパートナー・シップなど、最初から計算されていたかのようなキャリアを生きる中で、なおも創造の源を見つけ出すことなど、果たして可能なのだろうか? 80年代半ばから、UNDERWORLDとして共に活動するカール・ハイドとリック・スミスの場合、その解決法は、ホーム・グラウンドを遠く離れて演奏することにあった。

サウンドを開拓し、また歌詞の面でも探求を続けたUNDERWORLD。彼らは、90年代初めにラザロ(注1)のごとき劇的な復活を遂げ、以降、エレクトロ・ミュージック・シーンを躍進する(ロムフォードで近所に暮らしていた若きDJ、ダレン・エマーソンを迎えて)3人組となった初のアルバム『Dub No Bass With My Head Man』は、ロック・エリートの中でもとりわけアッパー・クラスの人々に絶賛で迎えられることに。数年をかけて復活し、焦点を再び定めた結果、この『Dub No Bass With My Head Man』は、これまで他のバンドがただ夢見るだけでしかなかった、奇跡の復活劇をUNDERWORLDにもたらしたのだ。ワゴン車の後部に積んだたった500枚のシングルを売るような、カルト的な存在だったUNDERWORLDは、その後15年以上にわたり、夏の間中、世界各地のフェスティバルを次々と巡り、トリを務める存在となる。地下のダンス・フロアで実験的な音を鳴らしていた彼らが、ダニー・ボイルや故アンソニー・ミンゲラといった監督たちの映画音楽を担当するまでになったのだ。

2010年秋、6枚目のスタジオ・アルバム『Barking』のリリースによって、UNDERWORLDは再び、創造性の復活という偉業をみせてくれるだろう。同アルバムもこれまで同様、外部からの援護射撃が、バンドのクリエイティヴィティの起爆剤となっている。オープニング・ナンバー「Bird 1」のイントロの、ゾクゾクするような機械的なビートからもわかる通り、このアルバムはバンドの再生がもたらした作品であることは明らかだ。

UNDERWORLDの歴史は、正確には1980年のカーディフで幕を開けた。それは市内のスプロット地区にある学生会館での、偶然の出会いだった。正装したリックが、自身の誕生日までの残り数時間を祝ううちに、ほぼ空になったシャンペンのボトルを手に、バスタブでグダグダになっているのを、カールが見つけたのだ。ジョン・ピールの番組でさえ扱わないようなコアな音楽がお互い好きだったこともあり、2人の音楽的な関係が開花する。最初は、カーディフを拠点としたバンド、ザ・ スクリーン・ジェムズとして。続いて、バンド名をミミズのような記号で表記し、さらに見た目も"やっかいな"と呼ぶのがふさわしいバンド、フルールとして。1983年にCBS と契約したフルールは、エレクトロな曲調とロックの楽器を融合させ、スタジオの伝説的存在であるコニー・プランク(クラフトワーク、ノイ!)や、デニス・ボーヴェル(スリッツ、オレンジジュース)らとタッグを組んだ。こうしたプロデューサーたちは、スミスやハイドが4/4拍子を作り出す電子機器(motorik electronics)や、ほら穴で響くような広がりのあるダブ・サウンドに異様なまでに執着する良いきっかけを与えたと言える。ところが、ヨーロッパで成功を収めたものの、流行の変化がフルールに終焉をもたらし、この結果、第1期UNDERWORLDの結成に至った。バンドはエレクトロ色の濃いロック・アルバム2枚をリリースし、世界的な人気を手にする。特に『アンダーニース・ザ・レイダー』は、オーストラリアでかなりの健闘をみせた。しかし1989年にバンドの活動が尻すぼみになると、スミスはイギリスに帰国してエセックスに移り住み、ハイドはデボラ・ハリーの雇われギタリストとなる。

その頃、イギリスの音楽界は、アシッド・ハウスが先の見えない展望を生み出すという黎明期に突入していた。そのことが、スミスに自分が作っていた音楽の価値を改めて考えさせるきっかけをもたらした。そして、彼よりも13歳年下で、すでにDJとしてカリスマ的な存在だったダレン・エマーソンとの出会いが、スタジオでの一時的なコラボレーションや、[Junior Boy's Own] というレーベルとの関係を築くことへとつながっていく。さらに、ハイドのバンド復帰にともない、"Big Mouth"や"Dirty"、"Mmmノ Skyscraper I Love You"、そして"Rez"といった、いっそうレベル・アップした12インチ・シングルの成功と相成る("Rez"は最近、ジョン・サヴェジによって「ダンス・レコードの中でも最高の部類に入る?? オーディエンスからインスピレーションを受け、その代わりに何かを還元することで取引を交わしている。興奮や一体感、超越といったものをね」と評されている)。楽曲にはいずれも遊び心があり、不思議な印象さえあった。ルー・リードのアルバム『ニューヨーク』や、サム・シェパードの著書『Motel Chronicles』に多大なる影響を受けた、ハイドの感情ほとばしる歌詞と、リスナーの周りを疾走しながらグルグルと回るようなエレクトロ・サウンド?? 彼らは当時、他の誰の活動とも少し距離を置いた、自分たちだけの空間に存在しているように見えた。

エマーソンを迎えて制作した最初のアルバム『Dub No Bass With My Head Man』は、1994年1月にリリースされた。『メロディー・メーカー』誌に「ザ・ストーン・ローゼズや(プライマル・スクリームの)『スクリーマデリカ』以来の、最も重要なアルバムだ。UNDERWORLDは、この先もきっと唯一無二の存在だろう」と言わしめたこの作品は、絶望的だったUKの音楽業界が、ダンス・ミュージックに好意を持って降伏する段階に来ていることを知らしめた。その後2〜3年で、UNDERWORLDは革命的なライヴ・アクトという自らの地位(「模倣を阻むような独特の音」/『ガーディアン』紙、「汚れのない、3次元のポップ・アート」/『タイムズ』紙)を封印し、ダンス・フロアから即座にフェスのメイン・ステージとなるダンス・テントへと活動の場を移した。『Dub No Bass With My Head Man』に続くリリース作品『弐番目のタフガキ』は、『NME』誌から「肌触りがスムーズで、足取りも軽く、リズムは簡単にはつかめない。グリーン・デイとは対極を成すこの3人組は、涼しい顔をしながらも、西欧のグルーヴによる支配を目指して、努力を続けている」と称賛された。部外者に近い存在から、ジャンルの垣根を超えるというUNDERWORLDの構想の転換は、完全に功を奏したのだ。

1996年のはじめ、若きイギリス人監督が、この『Dub No Bass With My Head Man』を使った低予算映画を制作した。アーヴィン・ウェルシュの傑作を、ダニー・ボイルが映画化した『トレインスポッティング』だ。この映画は、ブリット・ポップの高い完成度を象徴するサウンド・トラックと共に、世に放たれた。1995年のシングル"Born Slippy"のB 面"Born Slippy. NUXX"はチャートを席巻して同映画の代名詞となり、さらには翌1996年のサマー・アンセムとなった。同シングルはUKシングル・チャートで2位を記録し、イギリス国内だけで75万枚以上をセールス。ちなみに、"Born Slippy. NUXX"の歌詞は、過度のアルコール依存状態における無限の可能性を探るべく、ハイドがロンドンのウェストエンドに夜毎入り浸っていた頃の様子をつづったものだ。

その後、UNDERWORLDは3人体制で3rdアルバム『Beaucoup Fish』(「注目すべき3rdアルバム。概ね時代にはそ ぐわないテクノのビートに合わせて、異常なテンションで目をギラつかせた男が、年甲斐もなく猛烈にまくし立てている」/『NME』誌)をリリースし、さらにバンド史上最大規模のツアー日程(この模様は画期的なライヴ・アルバム/ DVD『エヴリシング、エヴリシング』に収められている)をこなした。そして、エマーソンがソロ活動に専念するため、脱退する。一方、『エヴリシング、エヴリシング』で、バンドは初めてネットに進出し、自身のウェブ・サイト< underworldlive.com >を誕生させた。同サイトは、ハイドのブログの前身でもある(10年間、毎日更新されている)日記のほか、スタジオでのジャム・セッションや世界各国でのギグなど、即席かつ無料のライヴ放送、さらにはRadio1でジョン・ピールの代役を務めた自らの経験を基に、ウェブ・ラジオ番組も生み出した。

2人体制になって初となる、2002年の4thアルバム『ア・ハンドレッド・デイズ・オフ』(「彼らは一貫して輝かしいサウンドを作るという自らの使命に潔く身を落ち着けたようだ」/『Mojo』誌)のリリースに先駆け、ハイドはアルコール依存症患者として、自身の内なる悪に向き合うことを決意した。こうして浄化を経験したことにより、キラキラと輝く超ポジティヴなリード・シングル"Two Months Off"が誕生。この年のサマー・アンセムとなった同曲は、6年前の"Born Slippy. NUXX"と同じように人々の心をとらえ、中毒的ともいえる影響を世にもたらした。

なおも新たなテクノロジーの可能性を活かしたいと考えたUNDERWORLDは、次なる動きとして、ザ・リバーラン・プロジェクトを立ち上げ、ネット限定のバンドの作品をファンに直接届けることに。これが実施されたのは、レディオヘッドが『イン・レインボウズ』の直接販売を試みた2年も前のことだった。リバーランを通して発表された3曲のダウンロード・ナンバーは、まったく異なるトラックながら、それぞれが絡み合い、25分の長さの作品となった。このプロジェクトから発表されたうち数曲は、ダニー・ボイルの映画『サンシャイン2057』(2007年)にも使われている。このサウンド・トラックや、映画『こわれゆく世界の中で』(アンソニー・ミンゲラ監督の遺作)への参加は、アルバム『オブリヴィオン・ウィズ・ベルズ』(「典型的な魅力を持った作品」/『オブザーバー』紙)へとつながり、同作品でバンドはこれまで以上に気負うことなく、映画音楽のクオリティをいっそう高めた。あえて言うのなら、四半世紀にわたり活動を共にしてきて、UNDERWORLDはようやく歳と共に成熟し始めたということだろうか?

2009年末、また違ったタイプのUNDERWORLDの作品が、ほとんど不意打ちのように登場した。90年代初頭に彼らが作った500枚限定の12インチ・シングル同様、"Downpipe"はダンスフロア仕様に作られたナンバーだった。UNDERWORLDはもちろん、テクノ・プロデューサーのマーク・ナイトやD・ラミレスも制作陣に名を連ねたこの"Downpipe"は、前のアルバム同様、形にとらわれない、それでいて簡潔な仕上がりに。このトラックがクラブでかかるやいなや、UNDERWORLDがいつまたスタジオに入るのか、同志たちに協力を募ってUNDERWORLDのアルバムを作ったらどうかといった声が聞かれるようになった。

実際、新作『Barking』には、ナイトやラミレス("Always Loved A Film""Between Stars")のみならず、現代のダンス・ミュージック・シーンの中でも才能があり、気心の知れたプロデューサーたちが協力している。ウェールズ出身のドラマー兼ベーシストのハイ・コントラスト("Scri bbl e""Moon I n Wat er ")や、4度のグラミー賞に輝いたダブファイア("Bird 1""Grace")、ブリストルを拠点としたダブ・ステップのプロデューサー、アップルブリムとアル・トゥレット("Hamburg Hotel")、そしてUNDERWORLDの長年の仲間、ダレン・プライス("Between Stars")といった面々だ。

9曲ともエセックスにあるバンドのスタジオ(ザ・ピッグシェッド)で曲作りおよびレコーディングが行なわれたが、コラボレーションは各曲ともに異なる手法がとられた。編集はこっちで、追加のプログラミングはあっちで、といった具合に。全体の手直しも同様だった。その後、バンドの手元に戻され、最終的なミキシングが施された。普段は徒党を組まないユニットとして認識されている彼らだが、ハイドがブライアン・イーノの完全なる即興ジャム・バンド、ピュア・シーニアス・プロジェクトに参加し、シドニーのオペラ・ハウスでトリを務めるといった体験を経たこともあり、『Barking』の冒険的とも言える構想が練られたのだ。

しかし問題は、これほど豪華なゲスト陣を迎えて、肝心のサウンドは実際どう仕上がっているのかという点だろう。まずは、海底から響くようなベース音が、うねるビートを紡いでいく。そして第一声は、耳にささやきかけるようなソフトなヴォーカル。そしてテンポに合わせて滑り込むハイハットなど、そのサウンドは間違いなく、UNDERWORLDのものだ。いともたやすく楽曲を包みこむエレクトロ・サウンドや、忘れがたいイメージを作り出す自覚的な歌詞の流れ、非の打ちどころのないくらいにバランスの取れたメロディとリズムの融合がここにある。UNDERWORLDの6枚目のスタジオ・アルバムは、劇的なカム・バックと言える作品だ。とはいっても、バンドのかじ取りがこれまで一定の水準を下回ったことはないというのが、正しい見方ではあるが。映画『サンシャイン2057』での、宇宙船イカロス2号に積まれた爆弾のように、この新たな制作過程は、バンド内のクリエイティヴィティを再燃させたというよりも、無数に存在する新たな未完成作品への探求心に火をつけたと言えよう。こうした過程を経て、新作は光り輝く、唯一無二の、まさにUNDERWORLDの音となっているのだ。

果たして、始動から30年が経過した今、選び抜かれた共謀者たちと制作を共にすることで、キャリア史上、最高のアルバムが作れるのか? それは大きな賭けだった。だが、2010年現在のUNDERWORLDは、この賭け自体をきっと面白がっていたに違いない。

次はいったい誰とねんごろな関係になるのか、その疑問には触れないでおこう。ただ次の7thアルバムへと歩みを進めるのみだ。

注1 : キリストによって復活を遂げたユダヤ人
注2 : ブライアン・イーノ、カール・ハイド(UNDERWORLD)、オーストラリアの即興トリオであるザ・ネックス、レオ・エイブラハムス、ジョン・ホプキンスからなるプロジェクト。「ピュア・シーニアス・プロジェクト」の活動としては、2009年6月にシドニーのオペラ・ハウスで行われたルミナス・フェスティバルや、2010年5月にイギリスで開催されたブライトン・フェスティバルでも、シドニーと同じ顔ぶれでパフォーマンスを披露している。

UNDERWORLD Official Web

ダンス・フロアが揺れ動く


Jeff MILLS / Sleeper Wakes

2010年1月1日00時00分01秒。ここ日本へと帰還する事を予告し、宇宙へと旅立ったジェフ・ミルズ。2006年秋から約3年の月日が流れた、来る2009年11月11日。宇宙での体験をもとに創作された壮大なスペース・シンフォニー作品が届けられる。それは、彼からのメッセージであり、彼が私たちの前に再び姿を現す日が間近に迫った証である。


Grasscut / Muppet

広がるメロディーに壮大な構造、雨に、崩壊に、突然異様な姿を表すサイケデリックな田園風景、美しさ、それにビートが漂っている。イギリスの先見論の大胆さに影響され、引き継いでいるこの音楽は、長い間姿を消していたリンジー・アンダーソンやパウエル、それかプレス・バーガーによる映画の現代版サウンド・トラックであるとも言えるだろう。Grasscutは、Andrew PhillipsとMarcus O'Dairの二人によるユニットである。Phillipsは、テレビや映画部門で賞を得た作曲家であり、100本以上のスクリーン上でそのクレジットを見る事ができるほどの大物。そんな彼が故郷のブライトンで出会ったO'Dairは、ダブル・ベーシスト且つキーボード・プレーヤー、そしてアマチュアのノイゼニックでもある。共にスーツを纏い、メガネを掛けた二人は、まるでエレクトロニック・ミュージック界のギルバートとジョージのようである


AOKI Takamasa / simply funk

極めて“シンプル”で揺るぎのない「純度」と「強度」を抽出すること、つまり、そのプロセスこそが“ファンク”。力強い二文字に集約された青木孝允、傑作の5thアルバム!

「今、青木君の音がフィットするのは僕だけじゃないよね、きっと。音楽はますます歌詞やストーリーやメッセージが重視されてるけど、それって文字に近いと思うんだ。でも音楽ってアイコンのようにもなれるわけで、そういう音が脳みそをカキーンとさせてくれる。落ち着いていると同時にカキーンとしてて、心の在処が中心にきてるよ。そのまま、持続でお願いします。」(細野晴臣)

この記事の筆者
上野 功平 (ekatokyo)

音楽と服と猫とお菓子とロングヘアーにオブセッションを抱く、Negative Creepなライターです。レーシック手術後、カワイコちゃんスカウターの精度がアップしました。

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