2010/01/21 00:00

「エレクトロ」という言葉が、日本では海外への憧れとして語られていた時代から、軽いフット・ワークでシーンを切り開いてきたDJユニット、。能天気なギャルも気難しいオジサンも踊りだす風通しの良いプレイは、日本のエレクトロ・シーンのパイオニアとして多くのキッズを先導し続けてきた。そんな彼らの元に集まった気鋭のアーティストとともに、満を持して始動したレーベルROC TRAXが、アルバムを2タイトル同時にリリースした。

1枚はレーベルの名刺代わりともいえるコンピレーション・アルバム『LESSON.06 “ROC TRAX JAM”』。をはじめ、、やといったROC TRAXクルーや若手の、が参加している。もう1枚はROC TRAXイチの実力者、の1stフル・アルバム『MASK MASK MASK』。2008年にパリのレーベルInstitubesから日本人初のアーティストとしてEPを発表し高い評価を得た彼が、パンク、ロック、エレクトロやヒップホップの要素を融合したダンス・ミュージックを披露している。今回、のDJ MAAR、DJ DARUMA、そしてにROC TRAXの成り立ち、シーンに対する考え、そしてリリース作品と、3つのテーマについてじっくり語ってもらった。 

インタビュー & 文 : 榎山朝彦

DEXPISTOLS率いるROC TRAXからオトトイだけにフリー音源が到着!!
この音源を手掛けたのは、若干17才からDJを開始〜現在まだ20歳の。DEXPISTOLSの音源をマッシュ・アップし、完全なオリジナル楽曲に仕上がっています!! 過去に発表されたBAZZ自作のMIXCDは全国で16000人にダウンロードされるなど、話題沸騰中の若手アーティストの音源です!!!!
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HISTORY

——ROC TRAXを結成するまでのいきさつを教えてください。

MAAR : DARUMAくんとは、(ROC TRAX)先輩が繋げてくれて、とはそもそも中学の同級生。DARUMAくんと仲良くなってからパーティーを始めて、それが言わばROC TRAXの前身。そして、もっとDJや作曲をやろうってことで結成しました。

——当時から音源制作をしていたのでしょうか?

MAAR : 音源作ってブートCDを作ったりしていたんですけど、それを流通させるあてがなかったんです。レコード刷るだけでもかなりのお金がかかった時代で、コスト的に出来ない部分もありました。
DARUMA : 実はROC TRAXの前に「MIDNITE BLASTER」っていう前身クルーを組んでいて、そこでそれぞれ音源を持ち合って、プロモーションのためにCDを作ったことがあったんです。思えばそれが音源制作の始まりでした。

——自身の音楽に大きく影響を与えた音楽やカルチャーがあれば、教えてください。

DARUMA : 僕はヒップホップから大きな影響を受けています。もちろんロックにも、後々にはテクノやハウスにも影響を受けているんですけど、カルチャーとして食らったという意味では、ヒップホップが一番大きいです。
M.S.K. : 僕は70年代のパンク・ロックにすごく影響を受けていて、RAMONES、THE DAMNEDが好きでした。特に中学1年の時にTHE CLASHを初めて聴いて、こんなにカッコいい音楽があるんだと思いました。それがきっかけでパンク・バンドをずっとやってました。
MAAR : 俺はM.S.K.のパンク・バンドを観て暴れてました(笑)。当時はまだ、所謂クラブ・ミュージックに触れる前だったので、ヒップホップ、レゲエやロックを聴いていました。
M.S.K. : クラブ・ミュージックとの出会いは、高校の先輩にクラブへ初めて連れて行ってもらったのが最初です。そこで初めてハウス・ミュージックを聴いたんですけど、とにかく音の大きさにびっくりしました。それと、曲を繋ぐという発想が全くなかったので、ますますびっくりして(笑)。自分でもやってみたくなり、徐々にバンドからターン・テーブルに変わっていきました。
MAAR : 僕は自分に影響を与えた音楽を、ジャンルで限定するのは難しいですね。というのも、パンクもヒップホップも、ファッションを含めたカルチャーとしての興味が先行してたんです。クラブに足を向けたのも、音楽的な興味というよりは、クラブ・カルチャーに興味があったからなんです。

DEXPISTOLS live@WOMB ADVENTURE'09

SCENE

——ROC TRAXの活動のキーワードは、東京という言葉だと思います。東京から発信するということに関して、どのようなこだわりを持っていますか?

MAAR : 僕ら3人とも生まれも育ちも東京なんで、地元愛があるのかも。海外から帰ってくると、実は東京ってすごく面白いところなんだと気づかされるんです。音楽に限らず全てが面白くて。でも意外と住んでいると気づかないんですよね。だから、「東京は面白いよ」っていうことをもっと発信していきたいです。

——海外のシーンを意識していますか?

DARUMA : 海外との関係性をフラットにしたいです。今のエレクトロニック・シーンって、世界的にフラットに繋がっているんです。僕らの同世代でも、例えばイギリスにはEROL ALKANがいたり、オーストラリアにはBANG GANGやMODULARのクルーがいたり、勿論パリにはED BANGERチームがいる。シーンの橋渡しをする存在がいて、世界が繋がっている。そういったフラットな繋がりの中に、日本を混ぜたいという思いがあります。さらに欲を言えば、このエレクトロ・ムーヴメントのような大きな流れを、東京から発信したいですね。
MAAR : そのためには日本のクラブ・シーン、音楽シーンが変わらなきゃいけないし、もちろん俺らが変わっていかなきゃならない部分も沢山あると思います。

——今の日本のクラブ・シーン、音楽シーンが変わらなきゃいけないポイントは具体的にどこでしょうか?

DEXPISTOLS

DARUMA : まずはアーティストの絶対数を増やすことじゃないかな?
MAAR : 日本にも潜在的に多くのいいアーティストがいると思うんです。でも、ちゃんとリリースできて、それに見合った対価を得られるような状況がないだけなんですよね。俺らがやってるような音楽が、大衆化って意味じゃなくて、定着してくれればいいと思います。ミニマル・シーンでも、海外のアーティストが来たらたくさんお客さんが入るけど、その人達以上にすごいことをやってる日本のアーティストが、あまり脚光を浴びてなかったりする。

——日本でも大きな盛り上がりを見せたエレクトロ・シーンは、現在一度落ち着きをみせ、かつてエレクトロに特化していたアーティストも、ミニマル・ハウス、ダブステップ、あるいは非西洋圏のダンス・ミュージックに裾を広げて行くといった新たな動きをみせています。そういった状況を現場で感じることはありますか?

MAAR : そんなに実感はないですけど、エレクトロが音楽の入り口だった子達がいろんなジャンルを聴くようになるのは、凄くいいことだと思いますね。あるシーンが盛り上がると、その後細分化されてしまうものだと思うんですよ。でも結局それって、また次の大きな波の予兆なのかなと思います。

——日本のエレクトロ・シーンを牽引している意識はありますか?

MAAR : エレクトロにこだわりは全くないです。俺らの音楽が所謂エレクトロなのか? っていったら、実はまったくそんなことないと思うんですよ。俺個人の意見なんですけど、結局エレクトロっていうのは、音楽的に自由を求めた人達がダンス・フロアに集まったものだと思っているんで。後々俺らがやってることがなんて呼ばれるかは分からないんですけど、それが新しい言葉で名前をつけられるぐらい大きなムーヴメントを生み出せれば、一番いいのかなと思ってますね。
DARUMA : ただ、どこまでいってもエレクトロのアーティストだって言われ続けると思うんですよね。それが一番わかりやすいと思うし。例えば新曲(※「NEW JACK HOUSE feat. JON-E」のこと)も、何のジャンル? って言われて、みんな説明のしようがないじゃないですか。じゃあDEXPISTOLSはエレクトロのアーティストってことでとりあえず括っておこう、っていうメディアの取り上げ方がある。でもそれを否定する気もない。これがエレクトロだと感じるんならそれでいいと思うんです。これってエレクトロじゃないよな? って気づくキッズもいるだろうし、実際ほとんどのキッズがそう感じていると思いますよ。

RELEASE

——『LESSON.06 “ROC TRAX JAM”』は多様な音楽性が顔を覗かせています。『MASK MASK MASK』にも、所謂エレクトロとはひと味違うハウス・トラック「K-JEE」が入っていたり、メディアが括ろうとするエレクトロの範疇からはみ出そうという野心を感じたんですが、そういう意識を感じるトラックは今回リリースされる2作品の中にありますか?

DARUMA : 「K-JEE」なんてまさにはみ出しているでしょ。もともとあの曲はカヴァーで、元ネタがあるんです(※M.F.S.B.「K-JEE」のこと)。
M.S.K. : 昔のダンス・クラシックをサンプリングする文化が、また最近盛り上がってきてますよね。僕の感じだと、これが2回目なんですけど…。
DARUMA : 90年代の一時期、サンプリング・カルチャーがすごい流行ったじゃないですか。音楽にしてもファッションにしてもそういう時期があったんですけど、それが一回なくなって今度はまた90年代を見直すようになっていくと思うんですよ。あと数年後にそう いう時期が確実にやってきます。もう既に少し始まってるし…。

——DEXPISTOLSのお二人からみた『MASK MASK MASK』ついて教えてください。

MAAR : 『MASK MASK MASK』はROC TRAXを始めて、最初にリリースするフル・アルバムなんです。世界のどこに出しても恥ずかしくない内容だし、素晴らしいクオリティです。ROC TRAX初の1stアルバムだし、もちろんM.S.K.にとっての1stアルバムでもある。いろんな意味で記念すべきアルバムですね。

——特に印象に残っているトラックはありますか?

MAAR : 「CHANDELIER」って曲です。アルペジオをハモってるんですよね。一個一個がコードになってて。気の遠くなるような作業だと思いませんか? M.S.K.の音楽スキルが一番出てる曲だと思います。しかもそのアイディア・ソースがX JAPANの速弾きから来たっていう(笑)。
DARUMA : の曲はどれも、独特な間で曲が展開するんです。だから繋ぐのが結構大変で。あれ自分で気づいてる?
M.S.K. : 気づいてます(笑)。わざとやってるわけではないんですけど…。聴いていて一番気持ちいいように組むと、今の8小節で展開するようなフォーマットの曲とは違ってくる場合もあって。ロング・ミックスしたいキッズは、自分でエディットしてください(笑)。

M.S.K.

——最後にこれからROC TRAXの音源に触れる人へメッセージをお願いします。

DARUMA : 僕たちだけでシーンをつくっているわけじゃないんです。聴いてくれる人、フロアで踊ってくれる人がいて初めて成り立つものなんで、どんな形であれまずは音に触れてみてください。さらにその先には、プレイヤーとして参加する面白さがあるので、トラックをROC TRAXに送ってみようかなーって思ってくれるキッズがいたら嬉しいですね。
M.S.K. : 僕はずっとリリースするあてもなく曲を作っていて、そしたらいつの間にか13曲出来ていたんです(笑)。だからリリースにせき立てられて作った曲はなくて、全曲気の済むまでじっくり作りました。だからアルバムを通して全曲楽しんでほしいです。
MAAR : うちら(※ の2人)は、けっこう早咲きだったんだよね。もう20才くらいでリミックスとかやってて、レコードも出してたしGOLDとか大きいクラブでもDJしてた。でも、その後に1回挫折も食らってるんですけどね(笑)。だから、のようなタイプもいるし、若い子達は絶対に挑戦して行けば、面白いことがやれるようになると思うんです。俺らの動きがそういう子達と、もちろん俺達より上の世代にとっても何かの刺激になってくれたら、それは俺たちにとってうれしいことですね。

PROFILE

ROC TRAX
ストリート・カルチャー・シーンが生み出したDJ DARUMAとDJ MAARによる2ピースDJバンドDEXPISTOLSを中心に結成されたDJ集団。ファッションや音楽など様々なカルチャーをミックスする新しい感覚を持つ東京発ワールド・スタンダードなクリエイター集団。DAFTPUNKを皮切りに世界中に旋風を起こしている『エレクトロ』をキーワードにしたムーブメントのど真ん中で、仏のレーベルKITSUNEやED BANGERと直接交流を持つ。2008年12月リリースのROC TRAX所属メンバーによるオリジナル楽曲コンピレーション『ROC TRAX presents LESSON.05“SATURDAY”』が1万枚近い大ヒット。2010年1月20日にはROC TRAXをレーベルとして立ち上げインディーズにて『ROC TRAX presents LESSON.06“ROC TRAX JAM”』をリリース。また、CREWイチの楽曲制作スキルを誇るM.S.K.のアルバム『MASK MASK MASK』も同時発売。4月には、ROC TRAXメンバーの作品のリリースも予定している。

DEXPISTOLS
200X年、進化したテクノロジーにより東京ストリート・カルチャー・シーンが生み出した2ピースDJバンドDEXPISTOLS。4CDJs、1Mixer with 2DJs。SOUNDCLASH DJs。MAARとDARUMAの2人組。常に革新的なスタイルを実践し、斬新なアイディアを提議しつづけ、サウンド、そして様々なカルチャーを繋ぎ合わせコール&レスポンスを武器に日々"DEX HEADZ"を増殖させている。

M.S.K.
1994年よりDJ、音楽制作活動を開始。M.S.K.、MAGDARISE(+DJ MAAR)、KAMIKAZE-TOWN(+TURTLE YEAH!)などの名義で多数のプロデュース、リミックスを手掛ける。自身のルーツである、PUNK、ROCK、ELECTRO、HIP HOPの要素を加え展開するTUNEは要必聴!! DJ及びダンス・ミュージックのネクスト・ステージへの挑戦を続ける。2008年春、フランスはパリのニュー・スクールなレーベルInstitubesより日本人初としてEP『M.S.K. / LUNAR』をリリース!! ヨーロッパを中心に高い評価を受け、同収録曲「Side Story」は世界最大ダウンロード・サイトBeat Portエレクトロニカ部門で10位にチャート・インするなど世界的大ヒットを記録。

EVENT SCHEDULE

ROC TRAX NIGHT "DEXPISTOLS & ROCTRAX presents
『LESSON.06 "ROCTRAX JAM"』"AND M.S.K. "MASK MASK MASK"

DATE : 2010.01.23(Sat) OPEN : 23:00
VENUE : WOMB AREA : 渋谷
DOOR : \4000 WF : \3500 clubberia MEMBERS : 500円OFF
MORE PRICE INFO : WOMB MEMBER ¥3000

■ Line up
【MAIN FLOOR】
[SPECIAL GUEST] DIPLO (MAD DECENT)
[LINE UP] DEXPISTOLS、MASTERPIECE SOUND、GAINES、DJ KANGO、TAAR、BAZZ

【VIP LOUNGE】
M.S.K.、MYSS、GALBITCH、JOMMY、DJ YAN

これを聴いて朝まで踊り明かせ!

Kitsune Maison Compilation 8 / V.A.
オートクラッツやハーツ・レボリューションを送り出し、アーティスト・レーベルとしてもネクスト・レヴェルへとジャンプ・アップを続けるキツネによる看板シリーズ<メゾン>の最新弾! デルフィックの新曲、ガール・エレクトロ新星AMWEからMGMT陰の立役者フレンチ・ホーン・レベリオンまで、またもフレッシュな話題曲続出、明日のポップ・スターをいまテイストする極上の先取りコンピレーション!

Stay The Same Remixes / Autokratz
プロディジー・フェスでも最高のパフォーマンスでオーディエンスを圧倒したキツネの新鋭、オートクラッツ。その、デビュー・アルバムの冒頭を飾った「ステイ・ザ・セイム」の強力なリミックス集が登場! 鉄板の80kidzはもとより、ティガやブロディンスキーのリミックスも話題に。UKでもネクスト・ブレイク期待の新人フレンチ・アクトのNOOB、メゾン・コンピでもおなじみのGuns'N'Bombsの片割れによるブっ飛び新ユニットDeathfaceなど、どいつもこいつも勢いアリ過ぎ!

12 INCHES ALL DRESSED / Guillaume & the coutu dumonts
日本の『Timothy Really』レーベルより、カナダはモントリオール在住の“Guillaume and the Coutu Dumonts”による日本独自企画盤がリリース! このアルバムはこれまでリリースされてきた12インチの音源をまとめたもので、パーカッシヴなアフロ・ビート/ミニマル・テクノやファンキーなクリック /ミニマル・テクノなどオリジナリティー溢れるサウンドを披露しています!!

[インタヴュー] DEXPISTOLS, GALBITCH, M.S.K., MYSS, TAAR

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