あの重厚な『capital of gravity』でさえも、今思えばここに至るまでの伏線だったということか。フル・アルバムとしては『Stylus Fantsticus』以来3年ぶりとなるsgt.の新作『BIRTHDAY』は、ひとつの物語が徹頭徹尾貫かれた壮大なコンセプト・アルバムとなった。従来のプログレッシブな展開も、クラシカルな旋律による抒情性も、エレクトリック・マイルスを思わせるスリリングなセッションも、uhnellysのkimを召喚した初のヴォーカル・トラックも、すべてはひとつのテーマの元で折り重なり、“星の少女が旅をする物語”の過程を演出していく。長い構想と演奏家集団としての熟成が生んだ、まさにバンドにとっての到達点を示す圧巻の大作だ。

インタビュー&文 : 渡辺裕也


sgt.の世界を深めた最高傑作! OTOTOYで24bit/48kHzのHQD配信!

sgt. / BIRTHDAY

特有のストーリー性はいつも以上に増し、全体を通してコンセプチュアルな内容となった。今作のゲストには、uhnellysのkim、中村圭作、MASの大谷能生、外間正巳が参加。更にそのサウンドと物語とを連動させたジャケット・アート・ワークを新進気鋭の絵描き、イラストレーターの末吉陽子が書下し! 圧倒的な演奏力とダイナミックな破壊力、緻密かつ完璧なアンサンブル、そしてどこまでも美しいバイオリンで、スリリングに魅了するsgt.の最高傑作が遂に完成!


【収録曲】
01. 古ぼけた絵本 / 02. cosgoda / 03. ライマンアルファの森 / 04. アラベスク / 05. 221B Baker / 06. breathless
07. Zweiter Weltkrieg / 08. あなたはわたし / 09. きみは夢をみている夢がきみをみている

購入者特典として、絵描き作家、末吉陽子による7編の書下しイメージ・イラストが付いてくる!

自分がいまそこにいる意味とかを改めて考えることになりましたね。

——これまで以上に重層的でコンセプチュアルな作品ですね。どのくらいの制作期間を設けたのでしょうか?

明石興司(以下、明石) : 作品の構想は昨年の秋口に生まれて、具体的にメンバーと話し合ったのは年内からかな。小ネタはその前からちょこちょこ作っていたけど。

——sgt.の制作はまずコンセプトを定めてそこに向かっていくのでしょうか。あるいは少しずつできていく素材からテーマを決めていくのですか。

大野均(以下、大野) : ネタ出しとか曲の骨組みを作る段階ではそこまで考えてないんですけど、アルバムのコンセプトが見えてきた時点で、リーダー(明石)からコンセプトに合わせて必要な曲を作っていくように指示が出ます。例えば最後の曲「君は夢を見ている夢は君を見ている」は、僕のジャンベと成井さんのバイオリンで、BPMを指定された上でジャムるように言われて作ったもので。ダークになりすぎないようにっていうオファーもあったな。

photo by 西槙 太一

——リーダーからかなり具体的な指示があるんですね。毎回そうなんですか?

大野 : いや、今の話は稀で、抽象的な会話の方が多いですよ。細かいところもあるんですけど、基本的にセッションはお任せ。
成井幹子(以下、成井) : BPMを指定されてセッションをしたのは初めての作り方でしたね。私がCのコードで弾くように指示されて、そのあとにリーダーがベース・ラインをDで重ねてきた時は、どうなるのかと(笑)。
明石 : どこから合っていくっていうことはあとでちゃんと知らせるんですよ。
成井 : そう。奇妙なことに成立していくんですよ(笑)。
明石 : 学術的な話ですね。

——例えば、誰かがデモを用意してバンドにもってくることはあるんでしょうか?

大野 : それはないです。
成井 : というか、なくなったんでしょ? 昔はあったよ(笑)。
大野 : ああ、成井さんがピアノで作ってきた時はあったね。
成井 : あれで心が折れたんですけど(笑)。ただ、最近はジャムをしている時も、その場で自分達の引き出しをまき散らすのではなく、演奏していく中で進むべき道筋が見えてきたような感じが、私の中ではあります。「ここでこういう音を入れたらいいな」っていうイメージの共有がすごくソリッドにできるようになってきた。

——それはいつ頃から?

成井 : capital of gravity』はギターの田岡が入ったばかりの作品というのもあって、いろんな試行錯誤があったんですけど、今回は彼の引き出しを踏まえた上でこれからの自分達らしさを明確に出せたと思ってます。

——今回の作品は、特に後半に新機軸が見えてきます。個人的には、エレクトリック・マイルスを思わせるフリー・ジャズ的なセッションが従来のsgt.サウンドの中で構築されていくような印象を持ちました。

大野 : 僕らもそれなりに歳を食って演奏が楽しめるようになってくると、それこそジャズ的なセッションに興味が沸くようには自然になっていきましたね。やっぱり突き詰めて演奏していると行き着くところなんだと思います。少なくとも僕の興味はそういう方向にありましたね。ルーズなんだけど、流れと構築があって。
明石 : ただ、制作は主旨があってやっていることなので、特にテイストをジャズに定めたりはせず、流れを見ていくうちにそうなった感じですね。
大野 : 僕もリーダーもそういう音楽自体は好きだから、出してみたい空気感ではありましたね。例えば僕が4ビートを刻んで、ベースがランニングしていて、その上をいろんな楽器が和音で遊んだりっていう。やってみたいことが出来るようになったっていうシンプルな話です。
成井 : 個人的なことを言わせて頂くと、即興も楽しくなってはきたんですけど、そういう色も見せつつ、3曲目「ライマンアルファの森」ではクラシックな気分に戻ってみようというチャレンジがありました。だからいろんな振れ幅、いろんなシーンがアルバムの中には入っているんじゃないかな。それに、私はあまりリズムのことは詳しくないので(笑)。彼らのグルーヴがスリリングに進んでいくのなら、それに寄り添うように私も進んでいくだけです。
大野 : 変な拍子が多いから、大変だよね。
成井 : 大変ですけど、そういうチャレンジを私も望んでいるので。前回とは違ったチャレンジが出来たと思う。ある程度のラインで技術面はクリアできたから、その基盤が出来たというか。経験というべきなのでしょうか。
明石 : 付き合いが長くなってくると、セッションをしていてもお互いの癖がわかってきますし。そんな中で僕から作品への構想を伝えていきながら、みんながやりたいことをどんどん出していってもらうんです。そこはもう暗黙の了解で決まるんです。数や尺、展開なんかはわざわざ言葉にして指示しなくても合ってくるものなので。長年の積み重ねから出来たような曲も今回はたくさんありますね。

——sgt.はインストゥルメンタルを主体にしたバンドでありながら、映像、あるいは言葉を率先して表現に取り込んでいきますね。ここにバンドのスタンスが表れているような気がするんです。というのは、映像喚起能力が強い音楽をやっているバンドだと、音楽に視覚的なイメージや言葉で物語を加えるのを避ける人もけっこう多いと思うからなんですが。

大野 : 説明が難しいですけど、いい出会いがあったっていうのがまずひとつかな。前作のツアー・ファイナルでVJをつけて、それでハマったっていうのは大きいですよね。演奏しながら綺麗なものを見れるんだから、そっちの方がいいじゃないですか。
明石 : 表現の過程で手段を減らす必要はないと思っています。同時に僕らはインストで出来ることを追求したいので、主軸はそのままで、なお且つその世界観をしっかりと伝えたい。例えば僕らが表現した黒色が白と受け取られた時に、これは黒なんだと手招きをする必要がある時もあるんです。そこでジャケットや文章で思いを伝えようと。かといってあまりに直接的過ぎるとこちら側の思いが強くなり過ぎるので、あくまでも最後には聴き手に委ねるんですけど、僕らの場合はその委ねる素材が多いやり方を選んでいるんです。

Illustration 末吉陽子

——今回は曲毎のイメージに合わせたイラストをブックレットに掲載していますね。

明石 : 今回はどうしてもやりたいことがあって。制作にあたってまず物語を書いて、それをメンバーに口頭で伝えて、そのテーマやコンセプトに沿って曲を作っていったんです。つまり物語があっての曲作りということですね。
成井 : リーダーの中にストーリーがあって、それを共有するんです。そうすると作りたいもののイメージや色、使う音が見えてくるので、そういう意味ではイメージの共有って大事なんだなと思いました。そうすると迷いがなくなるし。
明石 : その共有するスピードが速くなったっていうのもありますね。
大野 : 不安もありましたよ。曲作りの期間がすごく少なかったから。本当は3月半ばにレコーディングを予定していたんですけど、震災が起こってしまったので、延期にしてだいたい1ヶ月遅れで作業が始まったんです。あと、今までのアルバムに収録した曲はレコーディング前にライヴで披露したことのあるものがほとんどだったんですけど、今回に関してはそれが1曲もないんです。ライヴを通してアレンジを固めて最終的な着地点に辿り着くっていう工程がなかったので、そこは不安でしたね。でも、震災があってそれぞれの意識が変わったというのもあって、レコーディングはかなり集中して臨めました。

——どのような意識の変化があったのでしょう?

大野 : 個人的な話ですけど、奥さんが釜石市出身なんです。そこで義理の父が被災して、1週間くらい安否がわからない時期があって。奥さんも落ち込んでいたし、自分としても出来ることが限られていたので、せめてその限られたことを集中して一生懸命やらなきゃ意味がないなと思ったことが大きかったな。
成井 : 私も実家が福島で。家族が被災した中、自分はやっぱりいい作品を形にしていかなきゃって。これからも続く問題だし。
明石 : ふたりがそういう状況というのもあって、時期をずらしたんですけど、だからやることに何か変化があったかというと、そういうことはなくて。ただ、確かに意識の変化はあったと思う。

——作品性に関してはまったく影響はなかった?

成井 : なかったし、むしろ色濃くなったんじゃないでしょうか。
明石 : そうですね。元々「大切なものって何だろう」ということを伝えたい作品だったので。最初からのコンセプトは変わらず、むしろ早く届けたいという気持ちになりました。
成井 : 自分にやるべきことがあるのなら、それで喜んでくれる人がいるなら、真剣に作っていくべきだと思いました。だから、震災前はまだ気楽な気持ちだったのかもしれない。自分がいまそこにいる意味とかを改めて考えることになりましたね。

最終形ではないです。

——今回はゲストにuhnellysのkimさんを迎えた、sgt.では初めてのヴォーカル・トラックがありますね。

成井 : 憧れはずっとあったんだけどね(笑)。
大野 : あ、そうそう。今回のラスト、実は成井さんに歌ってもらおうと思ってたんですよ。ラヴ・ソングをね。でもそれが流れちゃってね。

——え、なぜ?

成井 : お聞きの通り、アニメ声ですから(笑)。
明石 : だから、声を入れること自体は元々なしではなかったんだけど、コンセプトに合う人がなかなかいなかったというか。あと、歌が入るとどうしても歌が強くなるじゃないですか。
成井 : 歌い手の世界観になっちゃうもんね。
明石 : 今回は主軸のコンセプトがあった上でのお願いだったので。
成井 : 去年uhnellys含めた4バンドでカナダツアーに行ったんですが、彼らにはリスペクトを感じていました。あと、あの曲は戦争がテーマなんです。そこで彼の抱えている怒りや表現したいことと私達の提示したいことが合致するんじゃないかなと思って。すんなり決まりましたね。

——明石さんは音楽以外のアプローチで表現しようと考えた時はなかったんですか?

明石 : 映画とかが作れたら最高ですけど、そんな時間と金と技術はないから(笑)。それに、そこを追求しすぎるとsgt.ではなくて僕個人のプロジェクトになってしまうので。コンセプトは僕が決めていますけど、あくまでもバンドというスタイルでやっているし、そこが大切だと思っていますので。

——みなさんはsgt.以外にもそれぞれアウト・プットをもっていらっしゃいますが、sgt.とそれ以外のプロジェクトでは取り組み方にも違いがあるのでしょうか?

成井 : 私の場合は、他で得た経験や刺激がsgt.に還元されていく感じですね。
大野 : ドラムって一番性格がでやすい楽器だと思うんですよ。その中でもこのバンドでやっている時は一番素の部分が出ているんじゃないかな。このバンドの曲って、ホント演奏が大変で(笑)。だからこそ自分のパーソナリティが出ちゃうような気がする。
成井 : 確かにsgt.は大変ですね(笑)。

——スタジオでの雰囲気とかもピリピリした感じなんですか?

明石 : 和やかなもんですよ(笑)。
大野 : 最近はね(笑)。リーダーも昔は若かったってことですよ。
明石 : いやいや(笑)。アット・ホームですよ。
成井 : (明石に向かって)やっぱりドラムには厳しくなるんだよね。
大野 : そう? 俺は言われてる印象はないけど。むしろ(もめるのは)曲の波の付け方とかでしょ?
成井 : そこのやりとりもこの二人が多いと思うよ?
明石 : (笑)。まあ、それぞれのパートに思うことはあるので、そこははっきりと伝えているつもりだけどね。個々の音に執着はしていないと思う。

——リーダーは完全にバンドのコンダクターなんですね。

明石 : そうですね。最終的には誰かにベースを持たせて指揮をやろうかなって(笑)。
大野 : 絶対に止めてほしいですね(笑)。

photo by 西槙 太一

——何度も聞かれていることだと思うんですけど、このバイオリンに主旋律を任せるスタイルというのはどこから生まれたのですか?

明石 : まあ、出会いがあったっていう単純な理由ですね。
成井 : 18歳のなにもわからない少女にいきなり声をかけてね(笑)。「スタジオ入ろうよ! 」と言われて、後先を考えずにバンドに加わってしまったんです。
明石 : (初期は)鍵盤とギターがいたんですけど、そこからメンバー・チェンジが何回かあって。2003年頃からはいまのスタイルになったんです。

——このスタイルの参考になった音楽があれば教えてください。

明石 : ゴッドスピード・ユー! (ブラック・エンペラー)ですね。あとはスマパンの曲。なんて曲だっけ?

——「tonight,tonight」?

明石 : そうそう。あれを学生の時に聴いたのも大きいな。
成井 : 私はその辺は知らなかったので、意味がまったくわからなかったですけどね(笑)。高校生の頃からいわゆるインディーのバンドとかのライヴにはよく行っていたんですけど、自分がロック・サウンドの中で演奏するようになるとは思ってなかった。

——新作を聴くと、リーダーの考えるsgt.サウンドがいよいよ完成形に近づきつつあるように思えたのですが。

明石 : そうですね。個々のプレイヤーのキャラが濃いので、その中で抜き差しが必要な部分は多いんですけど。それが過去最高にうまくいった感じはあります。
大野 : 新しい僕らの『BIRTHDAY』って感じですかね。

——お、うまいこと言いましたね(笑)。じゃあ今の大野さんの発言でこのインタビューは締めますか。

大野 : いいですよ(笑)。でも成井さんにも一言もらってからで。
成井 : (笑)。常に自分達も前を見てやっているので、最終形ではないです。あくまで最新ですね。
大野 : 成井さんさすがです。これで締めましょう(笑)。

Penguinmarket Records Archive

Penguinmarket Records

sgt. LIVE INFORMATION

2011年09月18日(日)@大阪SUNSUI
2011年09月23日(金・祝)@金沢social
2011年09月24日(土)@京都VOX hall
2011年09月25日(日)@名古屋VIO
2011年10月08日(土)@山形Sandinista
2011年10月09日(日)@仙台BIRDLAND
2011年10月10日(月・祝)@福島(いわき)club SONIC iwaki
2011年10月15日(土)@広島MUGEN5610

『BIRTHDAY』 RELEASE TOUR FINAL!! ワンマンライブ
2011年10月22日(土)@東京O-nest

PROFILE

sgt.

明石 興司 : Bass、Acoustic Guitar
成井 幹子 : Violin、Piano
大野 均 : Drum、Djembe
田岡 浩典 : Guitar

1999年結成。2003年より現在のメンバー編成にて活動開始。映画音楽的な手法にロック、ジャズ、ノイズ、エモ、即興といったサウンドが融合したマルチ・インストゥルメンタル・バンド。国内外のアーティストのツアー・サポートや各地のフェスに出演、また、自主企画「生命」の開催などライブを中心に音楽活動しており、ゲスト・プレイヤーやVJの参加などライブの演出に力を入れている。昨年には初の海外ツアーにカナダへ行くなど海外への活動範囲を広げている。2005年に1st Mini Album「perception of causality」でデビュー(mastering engineer : minotakaaki / toe)。2008年には1st Full Album「Stylus Fantasticus」を発売。作品の全てのアート・ワークを新進気鋭のクリエイター迫田悠が手掛け楽曲とリンクしたコンセプチアルな内容となり国内に留まらず海外でも高い評価を受ける。2009年には2nd Mini Album「capital of gravity」を発売し特殊ブック・レットとして短編小説封入するなど、新しい試みにも挑戦。メンバーの成井幹子は、大友良英率いるONJOのライブに出演や、木村カエラ、ILL(ex.SUPERCAR)、ジム・オルークのバック・バンドへの参加、現在は神聖かまってちゃんのライブ・サポートとしても活動中。また勝井祐二(ROVO)とのデュオ・バンド「PHASE」を始動させたばかり。若手女性バイオリニストとして高い注目を浴びている。

sgt. Official Web

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インタヴュー

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筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

音楽ライター。自炊ブロガー。好角家。福島県二本松市出身。右利き。O型。

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