ワンマン・ライヴをいよいよ来週12月7日(火)に控え、現在フリー・ダウンロード中の「パッチワーク」、「レースのむこう」と2週にわたって新曲を披露してきた青葉市子。3週連続で新曲をリリースする企画の締めくくりとなる新曲第3弾「日時計」が到着! これまで一切の媒体に登場することの無かった彼女のロング・インタビュー後編も同時に公開です。

新曲リリース第3弾「日時計」HQDとmp3で配信スタート

青葉市子 / 日時計

ラストを飾る第3弾「日時計」はこれまでの2曲とは、少し趣向が違う楽曲だ。自らのギター1本、ヴォーカルのみという弾き語りのスタイルは今回もそのままに、より自由で複雑な展開で物語は紡がれていく。その壮大なスケールはまるでオペラのようだ。

【特典】
青葉市子本人による書き下ろしの手書きイラスト入り歌詞画像付き


新曲リリース第2弾「レースのむこう」HQDとmp3で配信中

青葉市子 / レースのむこう

第1弾の「パッチワーク」同様、自らが奏でるギター1本だけで、まるでオーケストラのような壮大な世界を構築。どこか懐かしさも覚えるヴォーカルには不思議な安心感が宿っている。その歌声は大貫妙子、松任谷由実といった偉大なる先駆者たちの系譜に連なるものだ。

【特典】
青葉市子本人による書き下ろしの手書きイラスト入り歌詞画像付き

新曲第1弾「パッチワーク」のフリー・ダウンロードも引き続き実施中!


>>「パッチワーク(HQD ver.)」のフリー・ダウンロードはこちら
>>「パッチワーク」(mp3)のフリー・ダウンロードはこちら

>>青葉市子インタビュー前編はこちら


INTERVIEW〈後編〉by 渡辺裕也

——今のところ、青葉さんの楽曲はすべてガット・ギターのみで演奏されていますね。

青葉市子(以下青葉) : 歌いながら何かを弾きたかったので、まずそこでクラリネットはなくなりますよね。そうなると私の声と音色が合うのはガット・ギターかなと思って。ピアノで弾き語ろうとは思いませんでしたね。自然の流れに沿ってやっていたら今の形になったというだけです。

——青葉さんのプロフィールにある〈2007年1月 ギターに命を吹き込むマジナイに成功〉というところが気になりました。このマジナイについてもう少し詳しく教えてください。

青葉 : これは... どういうことなんでしょうかね。

——(笑)

青葉 : 多分ギターで1曲耳コピが出来たというだけのことだったと思います。

——『剃刀乙女』というタイトルは、どんなところから思いついたのでしょうか?

青葉 : ちょっと質問の答えとは違うかもしれませんけど、ここで使われている剃刀という言葉は、人を切ったり、相手を傷つけるものではなく、自分に向かってくるものとして使われているんです。

——自分を傷つけるもの?

青葉 : そうなることもあるかもしれませんが、自分を守るものにもなります。もしかしたら相手のことも守れるかもしれない。この『剃刀乙女』というアルバムに入っている曲達は、苦しみの中から生まれたものが多いのですが、その中でも「重たい睫毛」と「腸髪のサーカス」は特にそれが強いですね。

——どんな事から苦しみを感じたのでしょうか?

青葉 : 剃刀乙女』を作っていた時期は、人の抱く憎しみとか依存し合う感情についてすごく深く考えていたんです。そういうものを突き詰めて考えていく中で生まれてきた苦しみですね。

——なにか人の憎しみや依存し合う関係が気になってしまうような出来事があったのですか?

青葉 : それはまわりの人達を見ていれば気になることだし、もちろん自分にも当てはまることなんです。ちょうどいろんな出来事が重なって、いろんな人の感情を読み取ろうとしたら、憎しみばかりが見えてしまったんです。

——そこから曲作りに向かう時の心境ってどういうものなんでしょうか?

青葉 : 泣いている時に近いと思います。

——ムーミンのエンディングで流れていた曲「遠いあこがれ」をカバーしていますね。

青葉 : 去年の春か夏辺りにYouTubeでムーミンのアニメを見ていたら、この「遠いあこがれ」が流れてきて、自分で弾きたいと思ったんです。その曲の中に出てくる“あなた”を今の自分を支えてくれているものに置き換えてみたんです。それはつまりギターや音楽のことなんですけど、そうして歌っているうちにどんどんこの曲が好きになっていきました。自分の曲の「路標」に近い印象もあったので、作品の中に入れてみました。このアルバムは、ものすごく深い憎しみや苦しみから生まれたものと、そこから少しずつ光に向かっていくものをまとめたようなものなんです。「遠いあこがれ」はその光に近いものとして入れました。今お話したことはすべてあとから気がついたことですけど。

——『剃刀乙女』は、当時の青葉さんの心境に合わせて収録曲を選んだのですか?

青葉 : いいえ。すべてです。当時私が書いていた曲のすべてをあそこで出し切っています。

私の中でもう1人を大事にしまっているような感じ

——ステージで演奏している時の青葉さんからは今お話している青葉さんとは違う印象を受けました。

青葉 : 私自身は人前に出るのが正直あまり好きではないんですけど、どうやら中の人が入れ代わるみたいです。

——曲がそうさせるのでしょうか?

青葉 : それは、ステージの青葉さんに聞いてみないとちょっとわかりませんね。

——(笑)まったく別人のような感覚なんですね。

青葉 : 私の中でもう1人を大事にしまっているような感じですね。作る人と演奏する人が必要に応じて入れ代わっているというか。

——今僕が話しているのは、あくまで作る方の青葉さんなんですね。

青葉 : そういうことになりますね(笑)。吸った空気を吐くようなものです。吸っているのが今の私で、吐いているのがステージにいる人。吸ったものは吐かないといけませんから。

——ステージで演奏するようになってから出会った中で、最も刺激を受けたミュージシャンはどなたですか?

青葉 : 大貫妙子さんです。自分がステージに立つようになってから、周囲の人によく「大貫さんは絶対に聴くといいよ」と言われていたんです。そこで実際に聴いてみたら、まるで隣にいるような感覚というか、自分が大貫さんの世界に溶けて染まっていくようだったんです。大好きになりました。それが一緒のステージに立てる機会まで頂けて、本当に嬉しかったですね。ずっと前にブログで「いつか大貫さんと同じステージに立てたらいいな」と書いた事もあったので、それがこんなに早く実現してしまうなんて、もう奇跡のようでしたね。毎日大貫さんの歌を歌っています。今日ここに来る前も聴いていましたね。

——他にこれまで青葉さんの出会った素晴らしいミュージシャンがいたら教えてください。

青葉 : そうですね。オランさんというアコーディオン弾きの方がいます。これまで何度も一緒に演奏している、母のような方です。オランさんの音楽を聴いているとまるで絵本を読んでいるようで。しかもその絵本は飛び出す絵本なんです。

——今後の青葉さんの楽曲にピアノや打楽器の音が加わってくる可能性はありますか?

青葉 : 特に何も考えていません。家の中で演奏しているのと同じように出来ればそれでいいんです。

今進んでいる時間をほどいてみる

——自分の知らないところで自分の作った音楽を聴いている人が少しずつ増えていくということに対して、どのように思われていますか?

青葉 : 不思議な感じですね。アルバムをリリースする以前にライヴ録音したものを配っていたことがあったんですけど、それも人に言われてみてやったことで、『剃刀乙女』も周囲の方から「作ろう」と言われてなかったら、作ることはなかったと思います。自分で作品を売り物として作ろうと思ったことは一度もなかったんです。レコーディングでしか出来ないようなことをやってみたいとか、考えたこともなかった。音質とかについてもそうですね。ただ、いつも通りの歌とギターを録音して、その内容がそのまま伝わればいいし、それがより聴き易くなるやり方があるのならば、それでもいいと思っていました。

——出来上がったものを聴いてみた時はどうでした?

青葉 : 録音した時の私がそのまま収められているなと思いました。

——『剃刀乙女』を作った時と現在の青葉さんで違いがあるとしたらなんでしょうか?

青葉 : 売り物を作ったわけですから、もちろんそこは変わりましたね。むしろそういう意識を持たない方が無理な事です。逆に言えば1stを作った時にはそういう意識がまったくなかったということですね。

——それは曲作りに影響を与えていますか?

青葉 : それも、もちろんあると思います。基準は変わっていませんが。

——では、現在の青葉さんのモードが端的に表れているような曲があれば教えてください。

青葉 : “世の中を繙く風”という歌い出しで始まる「繙く風」という曲があるんですが、それはおやすみ前、あるいは仕事から帰ってきて一息ついた時のような、1人だけで少し研ぎ澄まされていくような時間に、今いる場所から一歩下がってまわりを見た時のシーンにこだわって書いてみたものです。床に座ってボーっとしながらも、たくさんのことを考えている。そんな時に出来た曲です。今進んでいる時間をほどいてみる。ほどくという作業は、今いるところから一歩下がってみないと出来ないことですから。

——一度冷静になるってこと?

青葉 : ざっくりと言えば、そうですね。普段は見過ごしているひとつひとつをほどいてみる時間について歌っています。

——では、前作はその時に感じていた苦しみや、そこから光に向かっていくのが主な楽曲のテーマのようなものになっていましたが、その時とはまた別のものでしょうか?

青葉 : 基本的には変わっていませんが、今のほうが冷静だとは思います。感情に任せて出来たのが前作。

——今の方が心境は穏やか?

青葉 : そうですね。進む道がはっきりしてきたからかもしれません。まわりの方からいろんなことを言われているうちに一回り大きくなったというか。がむしゃらにかき分けていかないと前が見えないような状況ではなくなりました。今は靄がかかっているような状況ですね。道は見えている。その先がどこに行くのかはわかりません。

INFORMATION


2010/12/07(火)@青山EATS and MEETS Cay
青葉市子ワンマン・ライブ「空(から)より殻からの景色」
出演 : 青葉市子(Vo、G)
チケット料金 : 前売¥2,500(メール予約制)/ 当日¥3,000 ドリンク別・税込
席種:自由席 or 立見

2010/12/16(木)@下北沢mona records
『ふるんナイト vol.10』
出演 : harmonic hammock / 青葉市子 / ひつじ / raccoon dog.

PROFILE


青葉市子(あおばいちこ)
1990年生まれる。
2007年 クラシック・ギターを弾き始め翌年から創作開始。
2008年9月 初ライヴ。
2010年1月 1stアルバム『剃刀乙女』リリース。
同年7月 FUJI ROCK FESTIVAL '10に出演。
現在は東京都内を中心に精力的にライヴ活動中。

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筆者について
渡辺 裕也 (渡辺 裕也)

1983年生。福島県二本松市出身。フリーの音楽ライターです。twitter ID:@watanabe_yuya

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