ルーツに素直に向き合うこと──ポニーのヒサミツの2ndアルバムを1週間先行 & ハイレゾ独占配信
1stアルバム『休日のレコード』がタワレコメンに選出、7インチ・シングル『羊を盗め』が〈カクバリズム〉からリリースされ話題を呼んだ、前田卓朗によるカントリー・ポップ・ソロ・ユニット、“ポニーのヒサミツ”が4年ぶりとなる2ndアルバム『The Peanut Vendors』をリリース! 今作はライヴ・メンバーとして共に活動してきた大塚智之(シャムキャッツ)らに加え、中川理沙(ザ・なつやすみバンド)と谷口雄(1983、あだち麗三郎クワルテッット)がゲスト参加。彼が敬愛するカントリーやポップスの世界観が色濃く反映された1枚となっております。そんな今作をOTOTOYでは1週間先行にて配信すると共に、ハイレゾ版を独占配信。彼へのメール・インタヴューと共にお楽しみください。
ハイレゾ版の配信はOTOTOYのみ!!
ポニーのヒサミツ / THE PEANUT VENDORS
【配信形態】
ALAC、FLAC、WAV(24bit/48kHz) / AAC
【配信価格】
単曲 250円(税込) / アルバム 2,000円(税込)
【収録曲】
1. 遠吠え
2. 春を謳えば
3. 羊を盗め
4. 旅行鞄
5. Flying Donut
6. Walking Walking
7. そらまめのうた
8. 夜の飴玉
9. 健忘症
10. まちあわせ
11. (Theme Of)The Peanut Vendors
12. Happy Old Ending
※購入者にはブックレットのPDFファイルが付属いたします
INTERVIEW : ポニーのヒサミツ
1stアルバム『休日のレコード』(2013)から5年の時を経て、ポニーのヒサミツの2ndアルバム『The Peanut Vendors』が届いた。前作と比べ「70年代のアメリカン・ロック、カントリー、SP盤といった自らの好きな音楽がより前提となった」と自身で語る本作『The Peanut Vendors』はしかし、それらの音楽のオーセンティックな質感をしっかりとつかみながら、大文字のポップスとして凛と佇んでいる。
所謂「東京インディー」が渦巻き、「シティ・ポップ」が頭をもたげはじめていたのが、前作が生まれた2013年だった。ポニーのヒサミツが、そこから歩んだ期間を振り返ることから、このインタビューは始まる。自らの(文化的)ルーツに意識的に、素直になり、マイペースに仲間たちと音楽を鳴らすこと。リスナーとしてもプレイヤーとしても、決して簡単ではないように思われる、ポニーのヒサミツの音楽に向き合うそのような姿は、飄々としているようでありながら頼もしい。
インタヴュー&文 : 尾野泰幸
自分がやりたい音楽は、洗練されたものとは遠い位置にある
──今回のアルバムに際し、ご自身の音楽を「シティ・ポップ」でも「渋谷系」でもないと自己定義されていました。前作『休日のレコード』(2013)は、南池袋ミュージックオルグにて馬場知美さんによる録音・ミックスであり、バンド・メンバーは今作にも参加する面々でした。そのような制作背景と、2013年という時節を鑑みても「東京インディー」や「シティ・ポップ」というカテゴリーが若手バンドに付随して表出してくる時期の前作発売だったと思います。それらのような、いわゆる「シーン的なもの」を前田さんはどのように見つつ、感じつつ、本作に至ったのでしょうか。
これは自分のある種の劣等感なのかもしれませんが、そういうシーンの、少なくとも中心には、「自分は入れていないし、入っていけないだろうなあ」という気持ちで眺めていました。とはいえ、カクバリズムというシーンをリードしているレーベルから7インチを出していただいたりもしたので、傍から見たらガッツリ足を突っ込んでいるように見えるかもしれませんが・・・。なので、そういうシーンに興味がないとか、無視するとかそういうことでなく、時に関わったり、遠目に眺めたりしながらも、自分はマイペースに音楽を作っていくしかないのだな、ということに気づいた期間だったと思います。
──上記以外にも、前田さんにとって、EPやカバー作品への参加もあり、ライブ活動も継続して行ってきた本作までに至る4年、ないし5年間はどのようなものでしたでしょうか。
やはり、総じていうとマイペースに活動してきたのですが、ただ、その中でライブの誘いが少しずつ増えたり、地方でライブをさせてもらえたり、音源が出せたり、と人の輪も広がっていったので、人の縁に助けられた期間でした。 あと、前作の直後から基本的に今のバンド編成を固定してライブ等を行ってきたので、今のサポート・メンバーと歩んだ期間だったとも思います。
──数年来の日本のポピュラー音楽における、「シティ・ポップ」や「渋谷系」リバイバルといったシーン(のようなもの)に関して、ご自身は「そうではない」と、新作に結びつけて発信された意図と、もしその意図が本作に影響を与えていましたら、その具体例をお聞きしたいです。
完成したアルバムを聴いて「そうではないかな」と思った程度なので、特に深い意図があるわけではないですが、あまり自分がそういう音楽をそこまで熱心には聴いてこなかった(もちろんそれなりには聴いています)こともあります。加えて、自分がやりたいカントリーとかそういう音楽は、そういう洗練されたものとは遠い位置にあるのかな、とは思っています。なので、そういう意図をもって作成したというよりかは完成して思った感想です。
──さらに、今作に据えられた前田さんのセルフ・ライナーノーツを拝見すると、「ポップ(・ソング)」「ポップス」という表現がよく出てきています。加え、同文章中に楽曲形式にも話が及ぶように意識的に「ポップス」を構築しているように読めます。実際に、「羊を盗め」や「まちあわせ」、「Walking Walking」のような曲群からもそれを感じます。その「ポップ」への執着心(のようなもの)はどこからやってくるのでしょうか?
執着しているというよりかは、僕にはそういうものしか作れないのですね。例えば、細野さんもカバーしているカントリー「Pistol Packin’ Mama」という楽曲は2コードで進行していく曲なのですが、カントリーではそういう曲が許される。でも僕がそれをやっても退屈に聴こえてしまう怖さがあって、それでコードもたくさん使って進行をもっと複雑にしてしまう、その結果曲はポップスに近づいていくわけです。そうなると本格的なカントリー・ミュージックからは遠ざかっていくわけで、僕はそれを「なんちゃってカントリー」とか「カントリー・ポップス」と呼んでいます。
──その「ポップス」への意識には、影響を公言している細野晴臣やポール・マッカートニー、藤子・F・不二雄、さらにはカバーされたムーンライダーズから何らかの影響もあるのでしょうか。
もちろんあると思います。コード進行に関してはポールの影響が結構根深い気もします。ムーンライダーズは、どちらかというと自分のやっていることと遠いからこそ憧れているバンドですが、ムーンライダーズにもポップスの要素はありますし、そういうところからの影響はもちろんあると思います。
レーベル P-VINE RECORDS 発売日 2016/12/21
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12. 13. 14.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
──他方、本作に関して、「前作よりも、・・・・・・音楽的趣味・嗜好がはっきりした」ということですが、具体的にはそれはどのようなものであり、本作にどのように影響しているのでしょうかお聞かせいただきたいです。個人的には、前作と聴き比べると、本作では、アンサンブル、バンド・サウンドがより前面に押し出されているように聴こえました。
前作よりも、より自分が聴いてきた1970年代のアメリカン・ロックとかカントリーとか、SP盤とか、そういう自分の好きな音楽がより前提となって楽曲もアルバムも作られていると思います。
「なんちゃって」でもいいんだと割り切って生まれたアルバム
──加えて、本作では、多くの楽曲にオマージュや下敷きとなった音楽や映画があるようです。そのような(文化的な)歴史を踏襲しながら作品を作るという態度は、前田さんのどのような意図が込められているのでしょうか。思えば、細野晴臣も藤子・F・不二雄も(文化的な)歴史に特に意識的であり、それが作品にも活きている芸術家であると思いますが、そのような方からの態度的な影響もあるのでしょうか。
自分の聴いてきたもの、見てきたものの影響を基に作品を作る、というのは自然なことだと思いますし、むしろ影響を無視して作品は作ることはできないと思っています。僕は、僕の音楽を聴いた人が、僕が影響を受けた音楽とかを辿ってくれたらそれが一番うれしいと思っていますので、意識的に元ネタとか下敷きになった音楽について話すようにしています。細野さんは最近のカバー志向はもちろんそれこそはっぴいえんど時代から楽曲への影響を意識的に出していると思いますし、F先生も短編なんかには色濃いSF小説等からの影響をあとがき等で公言しています。そういう態度からの影響はもちろんあると思います。
──影響という面では、最近はSP盤にも強い興味をお持ちとのことですが、本作を制作する際に、念頭に置いたレコードや一番聴いていたレコードは何でしょうか?
いろいろな影響が詰まったアルバムなので、特にこれといった1枚があるわけではないのですが・・・、日本人がカントリーとかポップスとかアメリカ的な音楽をやるにあたって、アメリカ人じゃない人のアメリカへのあこがれみたいなものが現れているアルバムはよく聞いていました。その中の1枚はRab Noakesの「Red Pump Special」です。
──それらのレコードは本作にどのような影響を与えていますか?また、それ以外でも本作に大きく影響を与えたレコードがあれば、本作におけるその影響の具体例を含め教えていただきたいです。
日本人がカントリーとかアメリカ的な音楽にどうアプローチすればよいかというか、そういう部分の参考にはしていました。結局、マイペースにやるしかのだな、という結論に至りましたが(笑)。自分がこういう音楽にのめりこんでいったきっかけが細野さんの『Flying Saucer 1947』というアルバムだったので、細野さんの『Flying Saucer 1947』以降の作品はすべてに影響を受けていると思います。
──前田さんは以前のインタビューで、「日本人」が「カントリー・ミュージック」をすることへのジレンマをお話しされておりました。本作ではそのジレンマとどのように向き合われたのでしょうか。
繰り返しになるのですが、マイペースに自分にできるものを作ることしかしない、「なんちゃって」でもいいんだ、という割り切りがあったので、ある意味そんなに向き合わずに、割り切って作成したアルバムかもしれません。
──同じインタビューにて、「細野晴臣のトロピカル三部作のようなレコードを制作することを目指している」ともお話しされていました。そこへ続く道上で、本作はどこに位置づくのでしょうか。もしくは、以前とは別の目的地を設定し、もしくは目的地を設定などせずに本作は作成されているのでしょうか。
恐らくその発言は「そういうそのうち作品も作ってみたい」という趣旨だったと思います。そういうテイストの曲も結構できていますが、そうじゃないもの(もっとポップスよりのものも、カントリーっぽいものも)もあります。なので特に目的地があるわけではなく、マイペースにそのとき作りたいものを作っていく感じになると思います。
──最後の質問です。なぜ、ご自身を「ポニーのヒサミツ」と名付け活動を行っているのでしょうか。その意味や由来をお聞かせいただけましたら幸いです。
ほんと、最後に話すような大した話じゃないのですが・・・(笑)。もう10年以上前ですが、友達と旅行に行った際、ある牧場に立ち寄りまして、そこにポニーが放牧されていたんですね。それで、その中の1匹に適当に名前を付けて餌とかあげて可愛がっていたのですが、そのとき僕がつけた名前がなぜか「ヒサミツ」だったんです(経緯は忘れました)。その体験が印象に残っていて、そのあとソロを始めるときに本名はどうなのかな、という気持ちがあったので、ちょうどいいやと思いこの名前を付けました。すいません、しょうもない話で...(笑)。
レーベル なりすコンパクト・ディスク/ハヤブサランディングス 発売日 2018/01/17
01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11. 12.
※ 曲番をクリックすると試聴できます。
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2017年にリリースされた、シャムキャッツ4枚目となるフル・アルバム。“プレーン・ロック"を掲げた今作は、普遍的でありながら各プレイヤーの個性が際立った、彼らにしか鳴らせない11曲を収録。
アルバムにもゲスト参加している谷口雄が所属する1980年代生まれの東京発5人組シティ・ポップ楽団“1983”による2ndアルバム。代表曲「文化の日」をはじめとした、高純度のポップ・ミュージックがここに。
1960〜1970年代のウエストコースト・ロックを下敷きにGAROや、はちみつぱい等の日本語ロックの影響下にある男女混声バンド、秘密のミーニーズの1stアルバム。OTOTOY限定でデモ音源も収録!
LIVE SCHEDULE
(We Are)The Peanut Vendors!!
2018年3月10日(日)@渋谷7th FLOOR
出演 : ポニーのヒサミツ
バックバンド : サボテン楽団、大塚智之(シャムキャッツ)、芦田勇人(yumbo)、佐藤洋、唐沢隆太(ヤバイネーション)
ゲスト : スプーンフル・オブ・ラヴィン【谷口雄(1983)+渡瀬賢吾(roppen)+サボテン楽団+ポニーのヒサミツ】、中川理沙(ザ・なつやすみバンド)、DJ魔法(aka.長門芳郎)
時間 : 開場 11:30 / 開演 12:00
料金 : 予約 2000円 / 当日 2300円(+ドリンク代)
PROFILE
ポニーのヒサミツ
1986年生まれ。
細野晴臣、ポール・マッカートニー、藤子不二雄を愛し数多の古い音楽を尊敬しつつ 近年はもっぱらカントリー・ポップスを作り歌う。動物・美味しいもの・お酒・名古屋グランパスが好き。
2005年にバンド「student a」を結成、2009年まで活動する。
2008年頃からバンド活動と並行し、ポニーのヒサミツ名義で宅録を開始しマイペースにネットに公開し始める。
2009年に初ライブを行う、その後数年は年2,3回のライブペースでのんびりと活動する。
その後、シャムキャッツのボーカル夏目率いる「夏目知幸とポテトたち」に参加する。
2013年10月、1stアルバム『休日のレコード』を発売。全くの無名なのになぜかタワレコメンに選出され戸惑う。
2014年5月には、漫画家本秀康が主宰するレーベル雷音レコードより、「休日/あのこのゆくえ」の7インチシングルをリリースする。
2016年8月、盟友1983の2nd ALBUM『golden hour』に、曲提供と歌唱で参加し、10月にはにカクバリズムよりムーンライダーズ「スカーレットの誓い」のカバーも収録された3曲入り7インチシングル 「羊を盗め」をリリースする。
また同じ年の12月にはムーンライダーズのトリビュートアルバム『BRIGHT YOUNG MOONLIT KNIGHTS -We Can't Live Without a Rose- MOONRIDERS TRIBUTE ALBUM』に 「犬にインタビュー」で参加する。
Official HP : https://rockabyemybaby.wixsite.com/ponynohisamitsu
Twitter : https://twitter.com/hisamitsu_house