2017/11/09 20:20

音楽と農業のあるライフスタイル──谷澤智文の農園、自宅兼スタジオに潜入! 最新作の独占ハイレゾ配信も!

谷澤智文

かつてはメジャー・レーベルに所属し、アニメの主題歌なども手がけていた音楽家・谷澤智文。東日本大震災を経たことで彼の価値観は大きく変わり、2012年に彼は今までの活動をなげうって世界放浪の旅に出た。帰国後は生活のサイクルを変え、現在は東京を離れて埼玉県加須市にて新たな生活をしながら音楽活動を続けている。昨年2016年にはアコースティック宇宙奏楽長編3部作「”ぼくらはみんな”シリーズ」と銘打った第1作目『ぼくらはみんなスペーシー(We Are All Spacy)』をリリース。そしてこの度、制作期間1年半の時を経て第2部となる『ぼくらはみんなエイリアン(We Are All Alien)』が遂に完成した。

自身の演奏に加え、これまでの活動や旅で出会った仲間たちのサポートによって産まれた今作は、壮大な世界観と細部までこだわり抜かれた彼の美学が込められた渾身の1作。アートワークは前作に引き続き、気鋭の漫画家・panpanyaが担当、アルバム特設サイトには詩人・谷川俊太郎からのコメントも寄せられているので、そちらもぜひチェックしてみてほしい。そんな今作をOTOYOYでは前作とともに独占ハイレゾ配信するとともに、彼の自宅兼制作スタジオ、そして農園へ向かいインタヴューを敢行。自然に囲まれた静かな街で、長編3部作はどのように構想されたのか話を訊いた。


「”ぼくらはみんな”シリーズ」第2部作遂に完成!


谷澤智文 / ぼくらはみんなエイリアン (We Are All Alien)

【配信形態】
FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
>>ファイル形式について
>>ハイレゾとは?

【配信価格】
まとめ購入のみ 2000円(税込)


【収録曲】
1. 想像してごらん (Imagine)
2. ループ、の先へ (Go Beyond The Loop)
3. 原始人に学べ (Learn From Homo Erectus)
4. 不純異星交遊 (Impure Alien Relationship)
5. 亡霊ダーリン (Ghost Darling)
6. 伽藍堂々巡り (Going Around In Nothing)
7. 137億光年狂想曲 (13,700,000,000 Lightyear Rhapsody)
8. CQxCQ=
9. きみの世界はきみのもの (Your World Is Yours)
10. 銀河系復活祭 (The Easter Of The Galactic System)
11. あそびましょ (Let's Hang Out)

※購入者にはブックレットのpdfファイルと、次作の弾き語りデモ曲のMP3ファイルが2曲付属いたします。

>>『ぼくらはみんなエイリアン』特設ページはこちら


第1部作のハイレゾ配信もスタート!!


谷澤智文 / ぼくらはみんなスペーシー(We Are All Spacy)

【配信形態】
FLAC、ALAC、WAV(24bit/48kHz)
>>ファイル形式について
>>ハイレゾとは?

【配信価格】
まとめ購入のみ 1800円(税込)


【収録曲】
1. 神様ぼくは (Dear God)
2. 明日天気になあれ (Let It Be A Fine Day Tomorrow)
3. 銀河鉄道の夜 (Night On The Galactic Railroad)
4. つづき夢のつづき (Continuation Of Continued Dream)
5. 真夏のオリオン (Midsummer Orion)
6. 珍しいキノコ発見! (Rare Mushroom Discovery! )
7. もしも屋 (Moshimo-Ya)
8. エフェクター☆エレクター (Effector☆Erecter)
9. 太陽系復活祭 (The Easter Of Solar System)
10. グッバイ星人 (Good-bye-an)

※購入者にはブックレットのpdfファイルが付属いたします。

谷澤智文 / 神様ぼくは (Dear God)
谷澤智文 / 神様ぼくは (Dear God)

INTERVIEW : 谷澤智文

音楽、漫画、小説、彫刻、絵画、映画などなど… 芸術作品は時と場所を越えて人々の創造を伝えることができる。谷澤智文は、その力を限りなく強く信じている人物である。一度はメジャーの音楽シーンで制作をし人気を博していたものの、自分自身のインプットを増やし作品のアイデアや強度をより増すため、全てを投げ捨て1年間にわたる世界一周の旅を行った。そして埼玉県加須市の家屋をDIYで改装、プライベート・スタジオを作り上げた。現在、大好きな漫画や世界の旅で手に入れたお気に入りの作品に囲まれ、田んぼや畑で自給自足の暮らしを行いながら楽曲制作に取り組んでいる。最近では双子の子供も生まれ、まさに暮らしを大切にしながらも壮大なアルバム『ぼくらはみんなエイリアン (We Are All Alien)』を完成させた。スティールパン、パンデイロ、ジャンベなど前作よりも多くの楽器音が増えた本作の完成までには、ミックス作業で半年以上、マスタリングは3度も行っているという。まるで、谷澤流の曼荼羅とでも言える本作はどのような環境のなか作り上げられたのか。実際に彼が暮らし、音楽を作っている場所で話を聞きたくなったOTOTOY取材班は、平日早朝の電車に揺られながら加須市の谷澤宅へと足を運んだ。

インタヴュー & 文 : 西澤裕郎
構成 : 高木理太
写真 : 大橋祐希

わからないことが大切

──谷澤さんはシンガーソングライターでありながら、「マンガ大賞」の選考員をされるほどの漫画好きです。実際にお部屋にはたくさんの漫画があって、まるで図書館みたいですね。

谷澤智文(以下、谷澤) : 田舎から東京に出て来て、いろんな人からおもしろい漫画を教えてもらってから、部屋に漫画がある暮らしが心地よくなってきて。毎月生活費ギリギリまでCD買ってお金もない中、古本屋さんに入り浸って安くて変な漫画を探す日々を過ごすうちに、気付いたら5000冊を超えてました(笑)。

谷澤さんが所有する漫画の数々。もちろんこれはコレクションの1部に過ぎない。

──ここまで漫画にのめり込むきっかけって、なんだったんでしょう。

谷澤 : 音楽を作るときに他の音楽を聴きながら作ると引きづられちゃうことがあるんですけど、漫画は小説とか映画とかに比べて気軽にインプットできるし、制作で偏った脳みそをリフレッシュさせてくれるんです。行き詰まったときに漫画を開いて作業に戻るとそのたったの2ページだけなのに音楽の続きがスッと出来ることもあったり、漫画にはそういう力もあるのかなと思います。

──インプットといえば、2012年には365日で35カ国94の街を巡る世界一周の旅をしていますよね。

谷澤 : 強烈な刺激でしたね。

──当時はメジャーのレコード会社から音源リリースをするなど、音楽環境は恵まれていたのかなと思うんですけど、大きな刺激を欲していたんでしょうか?

きみにとどけ - タニザワトモフミ
きみにとどけ - タニザワトモフミ

谷澤 : 変身願望とまではいかないですけど、どれだけ人間が変われるのかに興味があって。年上の先輩から「歳を経るに従って頑固になって、変わろうと思っても変われない」という話を聞いていたので、自分はそうなりたくない、できればしなやかに生きていきたいという思いが強かったのかなと思います。

──そういう想いを持つことはあっても、それを行動に起こすことは並大抵なことではないと思うんですよね。

谷澤 : 強烈に切羽詰まっていたんです。自分の作る作品がどういうふうに変化していくかを想像したときに、多少出涸らし感があったんですよ。メジャーというシーンの中、常に追われるような感覚でものづくりをしている状態で、このままを続けたら音楽を好きでいられるのかが怖かった。もう1回自分の中にとんでもない刺激が入ったときに、どんな音楽を作れるんだろうという期待と、追い詰められている危機感がなにより強かったんですよね。だからこそ、強烈な刺激が欲しかった。

元々あった納屋を自らの手で改装して作ったというスタジオ

ギターやアンプなどの機材はもちろん、世界を旅して手に入れた小物などが並ぶ室内

──僕は谷澤さんが作品を強く信じている人だと思っていて、まったく知らない遠くに住む人たちと作品を通して繋がることができると考えている人だと思うんです。だからこそ谷澤さんは作品の強度を求められているのかなって。

谷澤 : さっき変わりたいという話をしましたけど、作品は変わらないで残るものじゃないですか。だからこそ自分が10年後に聴いても発見があるものをどれだけ込められるかにこだわりたかったし、愛情を込めたかった。例えば、僕にとって漫画の『風の谷のナウシカ』は小学生のとき怖くて不思議っていう印象だったんですけど、歳を経るなかで感じることも気づくことも変わっていって。そういうものを作りたいし、作らないとダメだと思う。聴き手に強いるような作品が僕は好きなんですよ。正座してずっと聴いていられるような作品が好きだから、ずいぶん濃い作品になったのかもしれない(笑)。

──インスタントでわかりやすいものが好まれたり求められている中で、なかなか勇気のいる作品だなと思いました。

谷澤 : 数年前から「共感」ということがやたら言われるようになったじゃないですか。でも僕はわからないことが大切だと思っていて。旅が終わってから「SPACE LIKE CARNIVAL」というバンドを作って、「わからないことを楽しみませんか」っていう想いを込めた音楽を作ってきました。わからないけど楽しんでくれる人を発掘して、そういう人と出会いたい。なんだかわからなかったけど面白かった! って言ってくれる人と出会いたいし、そういう人のところに行ってライヴがしたいんですよね。

SPACE LIKE CARNIVAL 「アレ? これもミラクル? (Whoa? Is This Miracle Too?)」
SPACE LIKE CARNIVAL 「アレ? これもミラクル? (Whoa? Is This Miracle Too?)」

──世界を旅して日本に戻ってこられてから、音楽制作の環境はどうやって作りあげていったんですか?

谷澤 : 自分が心地よい空間を作ることが1番でした。旅で見つけたものが周りにあったら、旅で得たものを思い出せるじゃないですか。その膨大なインプットを呼び起こしてくれる部屋で作るものは自分の当時のインプットをもう一度経たものにもなるから、そういう場所を作りたいと思ってこのスペースも作りました。

──部屋の中に置いてあるものは旅のなかで得たものが多いんですか?

谷澤 : これはメキシコのオアハカっていう街の近くの村でハコボさんとマリアさんという人が作っている木彫りの置物でアレブリヘスって呼ばれるものなんですけど、1本の木から削り出して長い時間をかけて乾燥させて自然着色で仕上げられています。マヤ文明の前からいたと言われているサポテコ族が使っていた柄なんですよ。一目見て惚れちゃって。

谷澤さんが所有するアレブリヘス

──すごい綺麗ですね。そんなに昔からある柄なんですね。

谷澤 : それぞれに意味があると言われていて。ただ考古学ってイマジネーションの世界だから、これはこうだっただろうとしか言えないので、どんな意味が込められているか本当のところはわからないんですけど。

──このカエルは神聖なものなんですか?

谷澤 : よくわからないんです(笑)。単純にこのカエルにピンときてしまって。旅を始めて1ヶ月くらいにメキシコに入ったときに人づてに出会う機会があって、ハコボさんの工房に遊びに行かせてもらって、そこで歌を歌わせてもらったりもしたんです。サポテコの考え方で、僕の守護動物が鹿で、妻の守護動物がアルマジロだったので、1本の木から削り出してその動物の作品を作ってほしいと伝えてお願いしたんです。作るのには2年くらいかかって、旅から帰ってきてしばらくした頃に送られてきました。

左は南極大陸上陸の証明書、右はラオスで取得したという象使いの免許証

──これだけこだわりぬいた作品を見ると刺激されますね。

谷澤 : とことんやっているじゃないですか。自分はそこまでやっているか? って問いかけてしまうんですよね。

──ここでは語りつくせないくらい、旅の中での出会いは多かったんでしょうね。

谷澤 : 美しい景色を見ることも、見たことないものを見るのももちろんですが、人と出会うことがいちばんの刺激でインプットだなと思いました。きっと人生って1回だけじゃ足りないんですよね。ひとつのことをとにかくやって、それでも足りない世界だと思う。自分の役割は何なのか。本気で夢中になってできることを、とことんやるしかない。それは誰にとってもきっとそうだと思うんですよ。

組曲をポップ・ミュージックでやれるか

──現在は畑や田んぼでの農作業をされていますが、それはどういう理由からはじめたんでしょう?

谷澤 : 1番大きかったのは東日本大震災ですね。何が起きても生きていけるだけの力が欲しかった。何が安全かもわからないし、全てが情報の渦の中にあったじゃないですか。自分の食べるものひとつにしても安心できないのは嫌だったし、自分で畑をやったら、新鮮で美味しくて確実に安心な野菜が作れるし食べられるじゃないですか。運良く妻の実家が農業を元々やっていて、お義父さんの農業の知識が深かったのもラッキーでした。やってみてわかったんですけど、農業って音楽との相性がすごくいいんです。

──農業と音楽がですか?

谷澤 : 音楽を制作して煮詰まって田んぼに裸足で入っていって草取りとかしているうちに、漫画とは違うサイクルが回るんです。農業はインプットでもあるし、アウトプットでもあるんですよね。毒が土に抜けて自分が刷新されるような感触があるんです。

谷澤さんの所有する畑では、季節ごとに様々な野菜を育てている。

──てっきり農業を始めたことによって、音楽をやる時間がなかなか取れないみたいなことになるんじゃないかと思っていました。

谷澤 : もちろん時期によって草取りや収穫で忙しくて時間も取られるんですけど、むしろそんな時間のおかげで、すごく豊かになった実感があります。ひたすら音楽だけという生き方もかっこいいと思うけど、僕はそういうタイプの人間ではないと自覚してます。いろんなインプットや刺激があって、おかげで音楽が気持ちよく回っていく。曲を作らないと精神が病んでいったりもするので、インプットとアウトプットのバランスを取った上で自分の精神のバランスを取るためにも、音楽と農業はとっても相性がいいんですよ。

──ちなみに、農業では何を作られているんですか?

谷澤 : 最近は無農薬・無化成肥料のお米が出来上がりました。あとはさつまいもが収穫期ですし、新生姜もとれたてはすごく美味しいです。大根も今太くなってきていますよ。

──それじゃあ自分で作ったものを食べて生活しているんですね。

谷澤 : 肉だけは買っています(笑)。畜産のほうには進出できていないんですけど、いずれニワトリくらいは飼いたいですね。ただ、録音したいときにニワトリがうるさいというのは避けたいですけど、それもありですね。

谷澤さんの所有する田んぼ。我々が伺う1週間前に稲刈りは終えていた。

──(笑)。そして完成したアルバム『ぼくらはみんなエイリアン』ですが、「ぼくらはみんな」シリーズの2部作目となります。次作を含めた3部作というのを公言されていますけど、当初から思い描いていたんでしょうか?

谷澤 : 1作目の『ぼくらはみんなスペーシー』を作り始めたときは、3部作にしようとは思っていなかったんです。作っていくうちに、これは3部作じゃないとダメだと思うようになりました。3枚のアルバムを繰り返し聴いていられような作品を作りたいという想いがあって。繋がっているものに憧れがある。今回も全曲を繋げているんですけど、クラシックでいうところの組曲をポップ・ミュージックでやれるかどうかなんですよね。

──すでに次作の設計図はなんとなく考えているということですか?

谷澤 : そこは作っているうちにどんどん変わっていくと思うんですけど、イメージはあります。『ぼくらはみんなスペーシー』を作っているときから、『ぼくらはみんなエイリアン』のタイトルも決まっていたし、実は3作目のタイトルもすでに決めているんです。

──『ぼくらはみんなエイリアン』にはたくさんの楽器の音が入っていますけど、どういうふうにアレンジや楽曲構築をしていったんでしょう?

谷澤 : 基本はギターを触りながら曲作りが始まって曲順に作っていくんですけど、その中でのダイナミクスや全体を取り巻く物語に、楽器との必然性があるかないかで決めていっています。この楽器を入れたいなと思ったとしても、全体を見てそこに必然性がないと思ったらやめるという考え方で決めています。

スタジオの外と中のこのコントラストは、まるで子供の頃描いた理想の秘密基地を思わせる

──とりあえず録ってみるというよりは、そこにその音が必要かどうかが重要なんですね。

谷澤 : 「ぼくらはみんな」シリーズは基本アコースティックでやるということや、全曲が繋がっているということも含め、あえて制限を設けてつくっているんですけど、そうなると使う楽器も制限されてくるんですよね。まあ、制限って一言で言うと違うところもあるんですけど(笑)。「ぼくらはみんな」シリーズでドラムをほとんど使っていないのもそういう理由で、ドラムって支配率が強すぎるから、全体のダイナミクスを踏まえて1、2曲だけにしているんです。旅のなかでいろんな打楽器と出会って、民族楽器をやっている知り合いがすごく増えたので、その人たちを呼んだり楽器を借りて自分でやったりもしています。

──曲によっては谷澤さんご自身で楽器を演奏されているんですね。

谷澤 : 本当に苦労していますけど、かなり演奏していますね(笑)。というのも、僕の住んでいる加須市はそれなりに遠くてミュージシャンを気軽に呼べないので、必然的に自分でやれるだけやろうってなるんですよ。とはいえ、スティールパン、パンデイロ、ジャンベ、チェロ、バイオリン、ピアノとか、自分ではまだひっくり返ってもできない楽器があったらご足労いただいています。

──他にはどんな場所で録音されたんですか?

谷澤 : 「伽藍堂々巡り」という曲は地元の圓城寺というお寺で録りました。去年の11月に祖父が逝きまして、お葬式のときにお寺に行ったらいろんな楽器が置いてあったので、後日、住職の方に録音させてもらえないかお願いしたんです。この曲ではそのお寺の楽器ばかり使わせてもらってます。和尚さんに無理を言ってマントラを唱えてもらったりもしました。

──実際の和尚さんのマントラだったんですね! 録音機器も持ち込まれて?

谷澤 : 当時はいろんなところで音を録ろうと思って、常に車に録音機器を入れていて。タイに行ったときも小さいものを持って行ったんですけど、そこで友達にホーミーをやってもらったり、フルートを吹いてもらったりして、その音も入っています。だから、この部屋だけで録ってる気になってましたけど、お寺でも海外でも、まあ色んなところで録っていますね。

──お寺での録音は本当に偶然性が重なってのことだったんですね。

谷澤 : 完全に偶然ですね。ギターでの曲はできていて、それにインドのタブラとオーストラリアのディジュリドゥを入れようというイメージがあったんですけど、寺の楽器オンリーで構成しようという気になったのは祖父の葬儀のおかげです(笑)。

何があっても自分が責任を持てる作品を作るべき

──他にも面白い録音はありましたか?

谷澤 : 1番最後の「あそびましょ」という曲は、100人分の声を録っています。

──えぇ!? 100人!!

谷澤 : 僕の友達、家族、親戚たちの声です。誰かの家に遊びに行ったときは、仲のいい人たちを集めてマイク立てて録音する、みたいなことばかりしていました(笑)。クレジットでは流石に全員分の名前は載せられないので「The Aliens」というグループ名をつけてます。

──コーラスには、SPACE LIKE CARNIVALのメンバーでもあるSara Saturnさんも参加されています。

谷澤 : SPACE LIKE CARNIVALでも、その前からも僕のコーラスには彼女の声がとっても相性がよくて。とはいえ難儀なのが、今回もエンジニアさんから言われたんですけど「声が似すぎてる」っていう(笑)。「CQ×CQ=」は、SF的な物語のデュエット曲なんですけど、メインボーカルとコーラスを交互で歌っていたら、交互にしていることがわからなくなっちゃって。自分の歌をオクターブ下げて差をつくりました。とはいえやっぱり彼女には3作目でも参加してもらおうと思っています。

──話を聞いている限り、音素材がたくさんあるのでミックス作業が強烈に大変だったんじゃないですか。

谷澤 : 今回は、永田健太郎くんというノイズの作品とかを作っているギタリストでもある人にミックスをお願いしました。やっぱり作品が作品だけに時間がかかりましたね。長い時間かけて作ると、それだけ頭の中で鳴る音も具体化していくから、「これだ!」みたいなこだわりが強くなってくるんですよ。とはいえ「これじゃなかった」っていうことも多々あって。ミックスは何度もやり直しました。永田くん的にこの音は大きすぎると思っても、僕は大きすぎなきゃダメなんだと思っていたり。そういうお互いを知るためのコミュニケーションを深めていきながら、じっくり詰めていきました。

──ミックスはどこで行なったんですか?

谷澤 : ここでやっています。永田くんがある程度家でまとめてくれたものをデータで送ってもらって、「ここはこうがいい」「こうはできる?」みたいなやりとりを文章や電話でしながら、微調整はこの部屋でやる、っていうことを繰り返しました。少なくとも半年間はやっていたかな。

アートワークを手がけた漫画家・panpanyaの作品。作品ごとに装丁の細部まで徹底したこだわりを感じる。

──それだけ何度も聴いていると、どれが正解なのか判断できなくなってくるんじゃないかとも思うんですけど。

谷澤 : 実は、より見えてくるんですよ。いろんな環境で聴けるし、逆に聴かない時間もとれるので。意外と、車の中が1番バランスがわかりやすかった。家で根詰めて聴いていると見えないものが、運転のついでに聴いていると見えたりするんです。どんどん自分のイメージが具体化していって、目指す必然性を持つ形に近づいていきました。

──ミックスに時間がかかるのはわかるんですけど、マスタリングが3回というのはあまり聞いたことがないですよね(笑)。

谷澤 : まず3部作という括りを作ってしまっていたので、1作目から繋げて聴いたときに、意図的なものは除いて、質感が違っていたらダメなんですね。ミックスのときに音の質感とアルバム全体のつながりにはこだわっていたんですが、前作から繋げてしっかりと聴くことができなかった。なので、3部作の2作目という風に聴かなければ、とてもいい感じなんだけど、1作目とつなげて聞くと少しズレていることに気づいて。マスタリング最中に何度も聴いていると、やっぱりだんだん正解の質が上がっていって、そのマスタリングに合わせてミックスをその場で微調整したりもして、結局マスタリングは3回になってしまいました。

──まるで百科辞典を編纂しているような印象さえ受けますね。

谷澤 : 最初に話した、残すことへの責任ですね。何があっても自分が責任を持てる作品を作るべきだと考えていて。死んでも残っていってくれたらいいなと思うからには、この作品を自分が生きた証として曇りないものにしなきゃならない。まあそれはただの僕の欲なんですけど、そういうのがあるんです。双子の娘たちが最近生まれて、僕が死んでから今の自分よりも年上になった娘たちが自分の作品を聴く日が来るとして。そのときに「ああこういう人だった」と思い出せるようなものであれば、よりいいなと思います。

──そこまで追求してやるためには、こういう環境は絶対的に必要ですね。

谷澤 : これがないと無理ですね。スタジオに入って録音することが僕はどうも苦手で。時間制限もあるしお金もかかっちゃうし、自分の家で自分が心地いい音が録れるならそれで十分なので。とはいえ次作では今作の反省も活かしながら、3部作の統一感は持たせつつ、録音環境としてのクオリティは上げたいと思っています。

──少し気は早いですが3作目はどのような作品になりそうでしょう?

谷澤 : タイトルは『ぼくらはみんなトラベラー』です。今までの2作よりも、文字通り「旅のあの感じ」が足されたものになると思います。

──3作を続けて聴くことでより見えてくるものがあると。

谷澤 : 何しろ、僕にとっては続けて聞くための3部作なので(笑)。3作目を聴いて、リピートして1作目に戻ったときにどうなるかも含めて、いわゆる「タニザワールド」を作りたいなと思っています。

レーベル Tanizaworld Records  発売日 2017/11/11

01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10. 11.

※ 曲番をクリックすると試聴できます。

レーベル Tanizaworld Records  発売日 2017/11/11

01. 02. 03. 04. 05. 06. 07. 08. 09. 10.

※ 曲番をクリックすると試聴できます。

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PROFILE

谷澤智文

SSW。音楽家。農家。
2012年、地球一周の旅へ出発。
2013年、帰国。
2014年、奇妙奇天烈摩訶不思議奇想天外バンド・プロジェクト「SPACE LIKE CARNIVAL」結成。作詞作曲・歌・ギター・ノイズを担当。
2015年10月2日、SPACE LIKE CARNIVAL解散。
その後、ソロ活動活発化。
アコースティック宇宙奏楽3部作「ぼくらはみんなシリーズ」構想を発表。
アートワークは3部作通して新進気鋭漫画家のpanpanyaが担当。
2016年3月9日、「ぼくらはみんなシリーズ」第1部 「ぼくらはみんなスペーシー」リリース。
2016年6月11日、弾き語りライブ・アルバム「Tanizaworld LIVE 1」、一発録りノイズ・アルバム「Tanizaworld NOISE 1」を同時配信リリース。
2017年10月8日、Moo-Tala’sのドラマーRobert Arthur Mackeenと共に「DMT」(Deep Magical Trip) 結成。ギター・ノイズ・ボイス担当。
2017年11月11日、「ぼくらはみんなシリーズ」第2部「ぼくらはみんなエイリアン」リリース。
空間支配力の強いスペーシーなライブにも注目が集まっている。
谷澤農園園長。ライブの物販で自身が育てた安心安全おいしい採れたて野菜、お米を販売している。
「マンガ大賞」選考員でもある。

>>谷澤智文 公式サイト

[インタヴュー] 谷澤智文

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