2016/09/21 15:29

“女々しい系ギター・ロック”を脱ぎ捨てて──再スタートを切るイロムク『四枚目はどうなるの』配信

2013年より活動するギターロック・バンド、イロムクが両A面シングル『四枚目はどうなるの』をタワーレコードとヴィレッジヴァンガード下北沢店の店舗限定でのリリースが決定し、配信はOTOTOYでスタートすることとなった。両A面となる今作には、"とあるメジャー・バンド"(こちらはインタヴュー内で触れている)の1枚目のアルバム発売から3枚目のアルバム発売までの期間における、ある男女2人の生活を歌にした「三枚目」と、SNS上であれやこれやと言う人たちに向けて作った攻撃的ながらユニークな「化け者」が収録。前作との間にメンバー・チェンジを経て、一皮向けたいまの4人に話を伺った。

イロムク / 四枚目はどうなるの
【Track List】
01. 三枚目
02. 化け者

【配信形態 / 価格】
16bit/44.1kHz(WAV / ALAC / FLAC) / AAC / MP3
単曲 270円(税込) / アルバム 540円(税込)
イロムク「三枚目」MV
イロムク「三枚目」MV

INTERVIEW : イロムク

2015年8月に桂野敬章(Ba&Cho)と河野智央(Dr)がメンバーに加わり、新体制で東名阪ツアーを開催。今年6月には初のワンマン・ライヴを大盛況に終えたイロムクが、1stシングル『四枚目はどうなるの』で再スタートを切る。

優等生すぎるロック・バンドが多い昨今において、きれいにまとまらない魅力を持ち、ライヴハウス界隈ではじわじわと話題を呼んでいるイロムク。とはいえ、まだメディア露出も少なく、謎が多いバンドなので、新作に辿り着くまでの話、そしてインパクト抜群の2曲について、この機会にじっくりと聞いてみた。まずは、イロムクの存在を知ってもらえたら嬉しい。

インタビュー&文 : 田山雄士
写真 : 大橋祐希

4人で“ドン!”と合わせたときの音が最高に気持ちよくて、希望が持てるものだった

──何度かのメンバーチェンジを経験してきて、今のイロムクの状況はどうですか?

藤沼健(Vo&Gt/以下、藤沼) : 1年前くらいにこの4人体制で動き出して、ようやく形になったなって感じです。彼(河野)なんて、加入するまでは10個以上バンドを掛け持ちしてたけど。

河野智央(Dr/以下、河野) : たくさんやってたサポートを全部やめて、イロムクに専念することにしました。

桂野敬章(Ba&Cho/以下、桂野) : 僕も5年くらいやってたバンドをやめて、ですね。

藤沼 : 始動して1年経って、人となりもだんだんわかってきて、やっとこれからってところでの1stシングルなんです。今まででいちばんバンドが楽しくて、演奏もバシッと決まる手ごたえがありますね。

──リズム隊2人が新たに加入して固定メンバーになるのは、相当な変化だと思います。

河野 : そうですね。みんなそれぞれに音楽をやってきたから、演奏しててすごく刺激的だし。

藤沼 : ドラマーが固まったのは初めてだから、特に大きいよ。サポートが4人いたときは、それぞれのグルーヴで毎回新鮮だったけど、そのぶん大変だったもん。イロムクはドラムがずっとサポートだったので、そういう状況でしかやれてなかったんですけど、固定になると全員がひとつのグルーヴに染まっていく感覚があって。バラバラになりかけてたバンドが息を吹き返した気がします。

辻秀和(Gt/以下、辻) : それはあるね。自然と演奏もうまくなっていったし、本当にやっとスタートラインに立てた感じで。

河野 : もともとリスナーとしてイロムクの音楽が大好きで、ライヴも観に行ってたんですよ。でも、実際に叩いてみると「ネイル」とか「恋煩い」とか、アッパーな曲のテンポ感が難しくて。この1年やってみて、ようやく掴めたと思ってます(笑)。

イロムク「ネイル」MV
イロムク「ネイル」MV

桂野 : 僕は昔、もっと音圧重視の激しいバンドをやってたので。イロムクに入ったときは、純粋に“歌ものってこういう感じなんだ!”みたいな新鮮さがあったんですよね。

藤沼 : とまどってたよね〜(笑)。

──叫びまくるのとかに慣れてて、勝手がわからないっていう?

桂野 : まさにそんな感じです。ライヴでも“こんなにドンパチしなくていいの!?”って思ってた(笑)。

──人間性の面からしても、今のメンバーはしっくりきてそうですね。

藤沼 : はい。やっといろいろ言えるようになったというか。それまではずっと溜めてたよね?

辻 : うん(笑)。

藤沼 : 最近は素直になれてきたと思います。僕、わりとなんでも1人でやっちゃってたんですよ。たとえば、CDの入稿とかライヴのブッキングとか。そういうのを「もっとやって」って言える雰囲気に変わってきた。けーくん(桂野)は冷静に物事を考えてくれるし、智くん(河野)は人当たりがバカみたいにいいし(笑)。すごく楽しくやれてる。

──バンドを続ける難しさを、全員が経験してきたわけですもんね。そう変われてきてるなら“女々しい系ギター・ロック”っていうキャッチフレーズだって、個人的にはなくていいのかなと思ってます。イロムクは歌詞とメロディに普遍性があるし、言葉も聴き取れるし、リフもかっこいいし、わざわざカテゴライズされにいく必要もないというか。

藤沼 : ありがとうございます! もともと自分たちで付けたキャッチじゃないし、最近は取っ払っちゃったんですよ。もういらないよね?

河野 : うん、それがいいと思う。堂々と胸を張っていきたい。そのために、体力作りもしてますから。今年の6月に初ワンマンをやったとき、もっと体力つけなきゃと感じたんです。メジャーのミュージシャンの偉大さが身に沁みてわかったので。けんけん(藤沼)も走ってるんだよね?

藤沼 : 1日10キロ! 走ってます。いいライヴしたいから。走ったりしてると、高い声がやっぱり出しやすくというか、持ちこたえられるようになってくるんですよね。

河野 : あと、ちょっと話戻っちゃうかもしれないけど、イロムクに入ろうと思った決定的な理由があって。それはイントロが始まる瞬間とか、サビの頭とか、4人で“ドン!”と合わせたときの音が最高に気持ちよくて、希望が持てるものだったからなんです。その誇れるポイントをいかに高い精度で出せるか、を僕は意識してますね。伝えられれば、このバンドはもっと上に行けるんで。

聴いてくれる人が想像できる部分がないと、ただのBGMになっちゃうから

──では、再スタートとなる新作についても聞かせてください。「三枚目」は男女の関係をかなり独特に描いてますが、曲が生まれたきっかけというのは?

藤沼 : これ、僕がフラれたことが基になってまして。すごく具体的な話で、クリープハイプの(メジャー)1枚目のアルバムが出た頃から付き合ってた子がいて、3枚目までの期間という見方でもって、生活模様だったりやり切れない感情だったりを歌ってるんです。完全に自分とその人の曲。ジャケも近所のコンビニをモデルにしてて、思い入れが強すぎるくらいで。ただ、“四枚目はどうなるの?”って歌詞があるのに、もう出ちゃいますけどね(笑)。(※この取材後の9月7日に、クリープハイプは4thアルバム『世界観』をリリースした)

──クリープハイプが好きなんですか?

藤沼 : 前は純粋に好きだったんですよ。でも、いいかげん……言われ飽きたよね?

辻 : (笑)。似てるとかね。

藤沼 : おこがましいかもしれないですけど、今はもう勝手にライバル視してます。だから、クリープハイプを手がけたことのあるエンジニアさん(池田洋)に敢えてお願いさせてもらって。

──憧れだったのが、勝ちたい存在になったと。

藤沼 : たとえば、歌詞のアイデアなんかにしても、先に書いてみせたい。やっぱり、目の付け所がいいじゃないですか。めっちゃ悔しいんですよ、自分も思い描いてたようなことをやられちゃうのが。かと言って、僕のやりたいことを変えるつもりはさらさらないので。となると、同じ土俵で勝ちたい。そういう気持ちでやってます。

──辻さん、桂野さん、河野さんが初めて「三枚目」を聴いたときの印象は?

辻 : 弾き語りで聴かせてもらった時点で、濃い曲だなって。と同時に、すごくシンパシーを感じる内容でしたね。2人(桂野、河野)が入る前にはもうあったんだよね?

桂野 : そうそう! この曲はイロムクに加入するなんて話がまだない頃、対バンしたときのライヴで聴いてるんですよ(笑)。

藤沼 : 智くんもそうだよね?

河野 : うん。インパクトあるな〜って。

桂野 : 一発でサビ覚えたもん。

──サビの歌い方、すごく耳に残りますね。不思議な揺らぎがあって、ごまかしがきかない唱法で。

藤沼 : あれ、演歌のしゃくりのイメージなんですよ。今回、たまたま曲に合ったので入れてみました。僕、石川さゆりさんや八代亜紀さんが大好きで。おばあちゃんの影響が大きいんだと思います。実家では演歌だけの番組がよく流れてたし、カラオケの機械があるんですけど、それでおばあちゃんが真っ昼間から爆音で歌ってたりして(笑)。

河野 : あの独特の歌い方が活きるように、なおかつ歌に合わせて身体を動かせるように、叩けたらいいなと思いました。サビはハーフのリズムですね。昔の曲だからもともとのドラムがあったけど、それをアレンジしていって。緩急も緊張感もうまく出てるんじゃないかな。

桂野 : イロムクの曲って、歌メロがすごく覚えやすいし、ギターのリフやソロがかっこいいので、そこを活かすのをいちばんに考えてます。その上で、智くんが今言ったリズム隊が意識すべきノリを作ったり、歌とギターの隙間を逃さないように顔を出して曲を装飾したりが、僕の役割ですね。シンプルすぎてもつまらないから。

──歌詞はどうですか? 具体的なモデルがありつつも、詰め込みすぎずにまとまってる気がします。

藤沼 : “これこれこうですよ”って言い切って終わりじゃなくて、やっぱり考えてもらいたいんですよね。はっきりしたモチーフはあるけど、いろんな人に当てはまるように。聴いてくれる人が想像できる部分がないと、ただのBGMになっちゃうから、そこは大切にしたいと思ってます。

今までのイロムクの王道が「三枚目」で、それと対比するような曲が「化け者」

──そして、2曲目の「化け者」はまたガラッと異なるタイプのナンバーで。ひたすら怒りがテーマの歌詞です。

藤沼 : はい(笑)。さっきも出ましたけど、直接言えないくせに、Twitterとかであのバンドに似てるだなんだ言ってる人に対して作った曲です。その1人1人にいちいち突っかかっていくのもめんどくさいんで、もう曲にしちゃおうと思って。

──画面の中であれこれ言う人なんて、自分たちからすれば確かに“化け者”ですよね。イロムクには、この“ばーか!”を何百人、何千人のファンと叫べる状況を作ってもらえたら。

藤沼 : 最高ですね。ギャフンと言わせたい。今はまだ、この攻撃的な感じにお客さんがけっこう引いてるけど(笑)。しかも、笑顔で演奏してるんで。味方が増えたら、きっと一気に楽しく振り切れる曲なんじゃないかな。

──“ばーか!”もコミカルに受け取れるし、演奏はすごく楽しいですしね。

藤沼 : これは今の4人になってから作った曲だし、楽しさもわかりやすく出てるのかもね。メンバーを信頼してるゆえに、各パートのソロ回しがあるので。将来デカいステージでやるときは、それぞれのソロにスポットライトを当ててほしい!

辻 : よりロックな仕上がりですよね。ギターソロも、自分としてはすごく新鮮。今まではメロディ重視というか、歌ってる感じのフレーズが多かったけど、「化け者」に関しては男らしいアプローチでガンガン弾けました。ソロ終わりでギターを重ねたところも不思議な響きにできたんで。

藤沼 : 2番のAメロ、面白いよね。

辻 : ギターを意識してみてください。

藤沼 : そういえば、当初はもっとゆっくりした曲だったんですよ。バラードのつもりで持っていったくらいで(笑)。で、何かのタイミングで僕が速く歌ってみたら、けーくんが「めっちゃかっこいいじゃん!」って興奮してくれたのが大きかったし、嬉しかった。ベースとドラムで「ジャズっぽくしてほしい」とか言ったんだっけ?

桂野 : うん。ちょいちょいそういうテイストも入れたね。とにかく最初の感じとは、かなり変わった。サビのメロディだって、ぜんぜん違うでしょ?

藤沼 : そうだそうだ! 歌を速くしたらテンション上がっちゃって、サビのメロディも超高くなったんだった。

──やっぱり、歌は1年前の『アパートメント』の頃と違いますよね。よりタフになったというか。

藤沼 : そうですね。今回の2曲はほぼ一発録りなんですよ。「化け者」に関しては、2回くらいしか歌ってないし。エンジニアの池田さんに「(尾崎)世界観はあのアルバム、一発で録ってるよ」とか聞かされて悔しくなったのもあって、気合入りました!

河野 : スパッと録れて、すごくいい雰囲気のレコーディングだったよね。そういうところも伝わると嬉しいです。

辻 : 2曲とも、めっちゃキャッチーなサビだしね。これはイロムクのいちばんの魅力だと思う。

桂野 : 耳に残るのって、まずは歌メロとギターじゃないですか。イロムクはそこがかっこいいから、難しく考えずに聴いてもらえる自信があります。

藤沼 : 今までのイロムクの王道が「三枚目」で、それと対比するような曲が「化け者」。どっちも聴いてほしい、大事なシングルですね。聴いてくれた人にとって、良くも悪くもひとつのきっかけには絶対になれる2曲だと思ってるんで。あと、シングルのタイトル「四枚目はどうなるの?」には、“ここからは自分たち次第”っていう決意も込めてます。

LIVE INFORMATION

PONDLOW 企画 vol.1
2016年9月24日(土)@下北沢CAVE-BE
時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
出演 : イロムク / PONDLOW / See you at She you / あいくれ

tayutafu "APOLLO BASE x Calmine pre
2016年9月26日(月)@名古屋アポロベース
時間 : OPEN 18:00 / START 18:30
出演 : イロムク / Calmine / muuka / ペンギンラッシュ

251 presents SALVAGE! SUCKA!
2016年10月3日(月)@下北沢CLUB251
時間 : OPEN 18:30 / START 19:00
出演 : イロムク / ポニーテールスクライム / ARIZONA / and more

ひみつきち vol.2
2016年10月29日(土)@新宿Motion
時間 : OPEN 17:30 / START 18:00
出演 : イロムク / asayake no ato / LINE wanna be Anchors / 水上カルビ / antigraph

PROFILE

イロムク

2013年5月イロムク結成
2013年9月初の自主企画「25時25祭」を下北沢ERAにて開催
2014年1月イロムク初のデモ『恋煩いe.p』をライヴ会場、iTunes限定発売
2014年8月RO69JACK 2014にて入賞
2014年9月渋谷乙にて自主企画開催、100名以上の動員を記録
2014年10月イロムク2枚目『ネイルe.p』をライヴハウス限定で発売
2015年6月下北沢MOSAiCにて自主企画「ハイツイチロクロクキュウ」を開催
2015年8月イロムク初の流通盤1stミニ・アルバム『アパートメント』をタワーレコード渋谷、新宿、梅田NU茶屋町店にて限定発売
2015年8月東名阪ツアー開催
2016年6月9日に下北沢MOSAiCにて、ワンマンライヴ「大人の本気の悪ふざけ」を開催
2016年9月タワーレコード限定で9月21日にワンコイン・シングル発売『四枚目はどうなるの』を発売

>>イロムク オフィシャル・サイト

[インタヴュー] イロムク

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