ルーディ、エレガント、そしてスウィング──エゴラッピン20年目のベスト&カヴァー・アルバム

圧倒的な歌声を持った中納良恵と唯一無二のソング・ライターであり、ギタリストでもある森雅樹によるユニット、エゴラッピン。1996年結成、1990年代後半には大阪から音楽シーンへと颯爽と現れ、今年は記念すべき、活動20年目の節目となる。そんな20周年を迎える今年は全国ツアー「EGO-WRAPPIN' live tour "ROUTE 20 HIT THE ROAD"」や、その集大成ともいえる11月27日(日)の日本武道館公演が決まっている。さて、そんな節目の年に、まずはここにCD3枚組分のベスト盤『ROUTE 20 HIT THE ROAD』がリリースされた。2枚分の内容はいわゆるベスト盤、そして残り1枚分には、デヴィッド・ボウイやカーティス・メイフィールドから、彼らの真骨頂とも言える昭和歌謡、そして“たま”のあの曲まで手がけた、色彩豊かなカヴァー集を併録している。こちらは彼らの音楽的ルーツを反映させたものだとか。彼らのそのセンスを存分に味わうことのできる作品となっている。

EGO-WRAPPIN’ / ROUTE 20 HIT THE ROAD

【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC (16bit/44.1kHz) / MP3
※ファイル形式について
※購入方法

【配信価格】
単曲価格 257円(税込) アルバム価格 3,149円(税込)

【Track List】
<太陽盤>
1. love scene / 2. くちばしにチェリー / 3. GO ACTION / 4. a love song / 5. 天国と白いピエロ / 6. 満ち汐のロマンス / 7. Dear mama / 8. human beat / 9. 10万年後の君へ / 10. サイコアナルシス / 11. BRAND NEW DAY / 12. サニーサイドメロディー
<月盤>
1. 水中の光 / 2. かつて..。 / 3. 色彩のブルース / 4. Neon Sign Stomp / 5. Nervous Breakdown / 6. アマイ カゲ / 7. 下弦の月 /8. admire / 9. Fall / 10. 雨のdubism / 11. BYRD / 12. inner bell
<星盤>
1. 異邦人 / 2. Move on up / 3. Inbetweenies / 4. 曇り空 / 5. Fever / 6. 謎の女B / 7. What's Wrong With Groovin' / 8. ZIGGY STARDUST / 9. By This River / 10. さよなら人類

多彩な音楽性を示すベスト盤のかたち

エゴラッピンを表現するのに、もはや「昭和歌謡の…」といった枕詞自体が、すでに20年近い月日を感じるというか、それほどまでに現在の彼らは、過去のそうした感覚も残しながら、すばらしい進化を遂げた唯一無二のサウンドを届け続けている。

『ROUTE 20 HIT THE ROAD』と題された本作は前述のようにCDでは3枚分、ベスト集とカヴァー集で構成されており、ベストは“太陽”盤と“月”盤と題された2枚分、そして今回録り下ろされたカヴァー集の“星”盤となっている。資料によれば“太陽”盤は、「野外で聴く」をテーマに、そして“星”盤は屋内をテーマに選曲されているのだという。

エゴラッピンのベスト盤といえば、すでに2008年に『BEST WRAPPIN' 1996-2008』がリリースされているが、こちらも「ヤルキ盤」と「セツナ盤」とセパレートされていた。ライヴでもキラーでグルーヴィーな楽曲を収録した前者と、ムーディな後者といった感覚で、同様の振り分けがなされていた。ルードにグルーヴするチューンから、エレガントなバラードまでさまざまなタイプの楽曲がある彼らならではの仕掛けと言えるだろう(ちなみに『BEST WRAPPIN' 1996-2008』は、ど定番の曲以外、意外とかぶりがないので本作とはまた別の楽しみがある)。

そのサウンドの変遷

ベスト盤では、当たり前だかこの20年の彼らのサウンドの変遷をコンパクトに聴き返すことができるのだが、通して聴くと、エゴラッピンのサウンドは現在の位置からすると大きく分けてふたつの感覚が混在しているように思えてくる。とはいえ、筋のとおった彼らのオリジナリティはまたブレてないこともわかる。

まずは初期、もしかしたら一般的にはこうしたサウンドが彼らのイメージかもしれない。1990年代末にクラブ・ミュージック / レア・グルーヴ以降のセンス。そんなセンスでいわゆる戦後のスウィング・ジャズやラテン・ポップ、昭和歌謡などを海外のジャズやソウルなども並列に参照する。このことによって独自の美学を作り出した初期の作品たちがそれだ。具体的な作品でいえばエゴラッピンの初期サウンドを確立した1999年の『SWING FOR JOY』と『色彩のブルース』(2001年)あたりからはじまり、テレビ・ドラマの主題歌となり大ヒットとなった「くちばしにチェリー」を収録した『Night Food』(2002年)あたりの時期のもの(他の収録楽曲でいえば「BYRD」「アマイ カゲ」「かつて..。」「サイコアナルシス」「満ち汐のロマンス」「くちばしにチェリー」)。


「くちばしにチェリー」LIVE

この時期のサウンドといえば、いわゆる「スウィング・ジャズ」や「昭和歌謡」といったものがキーワードとして語られることが多いが、彼ららしいバラードはもちろん、いまはなき関西が誇る伝説のオーセンティック・スカ・バンド、デタミネーションズとの珠玉のクラシック中のクラシック・ラヴァーズ・ロック・レゲエ「a love song」もある(ちなみに『色彩のブルース』ではデタミの「Wherever You May Be」をカヴァーしている)。このあたり、当時のシーンの感覚というか、1990年代末のオーセンティックなスカやヴィンテージ・レゲエとポップ・ミュージックとのすばらしい邂逅を思い起こさせる。


Cso Movie 3

自らの過去、そして多様な音楽を飲み込む鉄壁のグルーヴ

そしてもうひとつは、現在のサウンドへとつながる部分ともいえる、2000年代末以降の流れだ。そのひとつのターニング・ポイントは『EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX』前後といったところではないだろうか。アルバム・タイトル、そしてそのバンド名として“THE GOSSIP OF JAXX”という名前を冠すことで稀代のライヴ・バンドとしてある種の成熟を表明した感もある。表現的にも初期の「昭和歌謡の…」というある種のレッテルからも脱却し、ニューウェイヴやカンタベリー系のロック、エキゾチックなエスノ・ファンクなどさまざまな要素を自らの音楽に導き入れた。スケールの大きな表現が爆発する。しかも「Go Action」のように初期のスウィング・サウンドの感覚もミックスすることで、まさに現在のエゴラッピンの唯一無二の表現が確立された感覚もある。実際、『EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX』からは最も多い4曲の楽曲が収録されている(「Dear mama」「GO ACTION」「下弦の月」「雨のdubism」)。

直前の2006年の『ON THE ROCKS!』(「inner bell」「天国と白いピエロ」)、さらに、『EGO-WRAPPIN' AND THE GOSSIP OF JAXX』に続く2010年の『ないものねだりのデッドヒート』(「BRAND NEW DAY」「love scene」)、若干内省的な音造りの2013年の『steal a person's heart FALL』(「水中の光」「10万年後の君へ」。目下の最新作となる2014年のシングル「BRIGHT TIME」の「Neon Sign Stomp」「サニーサイドメロディ」。このあたりはベスト盤のなかで現状のバンドの楽曲につながってくるところといったところだろうか。


Neon Sign Stomp

おそらく初期の“昭和歌謡”“スウィング・ジャズ”というイメージからの脱却を図ったと思われる2004年『merry merry』からの楽曲はなぜか本ベストには収録されていない。ちなみにこちらのアルバムは、いわゆるジャズ色を後退させ、ニューウェイヴやジャズ・ロック的なアプローチを大きく示した作品となっている。

それぞれ“太陽”盤と“月”盤には、ミュータント・ファンクな「human beat」とサイケデリック・フォーク「admire」と2曲の撮り下ろし楽曲が収録されていることも忘れてはならない魅力だろう。

“たま”からデヴィッド・ボウイ、カーティス・メイフィールド

さて最後に、今回録りおろされたカヴァー楽曲のオリジナルを駆け足で紹介して本稿を終わろう。1979年の大ヒット曲、いま聴くとかなりエスノなファンク、久保田早紀の「異邦人」。カーティス・メイフィールドの1970年「Move on up」。1979年、イアン・デューリーのレゲエなディスコ「Inbetweenies」。このあたりはかなり原曲に忠実なアレンジを行っている。1973年の荒井由実「曇り空」はよりアンビエントな雰囲気に、そして1950年代のR&B歌手、リトル・ウィリー・ジョンがオリジナルで、後にペギー・リー、そしてレゲエ・ファンにはリー・ペリー・ネタでおなじみの「Fever」をねっとりとサイケデリックにこぶしを回す。キノコホテルもカヴァーした、夜の街の情事をコミカルに描く1969年の昭和歌謡「謎の女B」。レア・グルーヴの老舗〈ジャズマン〉からもリイシューされた、1967年のメロウなヴィンテージ・ソウル「「What's Wrong With Groovin'」。先日急逝したデヴィッド・ボウイの1972年「ZIGGY STARDUST」、新作を発表するブライアン・イーノ、1977年作の『Before and After Science』から「By This River」をピアノで(コーラスというか森とのデュエット?)。最後にはピアノとドンカマをバックに歌う、どこか示唆的な、たま「さよなら人類」(1990年)。

文字にするだけでもとにかく多種多様の音楽がまじっているが、どこか“らしい”音楽との筋が見えるそんなカヴァー集となっている。

いわゆるロック・バンドでも、当時出てきたようなクラブ・ジャズ系のバンドでもない20年間、まさに前人未到の音楽センスで駆け抜けた20年間、ぜひとも本作で堪能すべしでしょう。(text by 河村祐介)

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安藤裕子と親交のあるアーティスト達が書きおろした楽曲で綴られる、バラエティに富んだ宝箱のようなアルバム。

LIVE INFORMATION

J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S SEIJI KAMEDA EDITION
2016年5月4日(水)@六本木ヒルズアリーナ

CIRCLE ‘16
2016年5月15日(日)@ 福岡県海の中道海浜公園野外劇場

EGO-WRAPPIN' live tour "ROUTE 20 HIT THE ROAD"

2016年5月11日(水)@浜松窓枠
2016年5月13日(金)@横浜Bay Hall
2016年5月17日(火)@鹿児島県 CAPARVO HALL
2016年5月20日(金)@長野CLUB JUNK BOX
2016年5月21日(土)@金沢EIGHT HALL
2016年5月25日(水)@札幌PENNY LANE 24
2016年5月27日(金)@青森Quarter
2016年5月28日(土)@仙台Rensa
2016年5月30日(月)@盛岡Club Change WAVE
2016年6月4日(土)@熊本 B.9 V1
2016年6月5日(日)@高松 MONSTER
2016年6月9日(木)@広島 クラブクアトロ
2016年6月10日(金)@名古屋 DIAMOND HALL
2016年6月12日(日)@周南 RISING HALL
2016年6月13日(月)@出雲 APOLLO
2016年6月17日(金)@沖縄 NAMURA HALL

PROFILE

EGO-WRAPPIN’

1996年 大阪で結成されたユニット。 メンバーは中納良恵(Vo、作詞作曲)と森雅樹(G、作曲)。大阪出身の2人で結成時から関西を中心に活動を続け、 現在は拠点を東京においている。

2000年に発表された「色彩のブルース」は、 戦前のジャズから自然に行き着いたキャバレー音楽や 昭和歌謡を消化し、 エゴ独自の世界観を築きあげた名曲として異例のロングヒットとなり、 その名を全国区で知られるようになる。 以後作品ごとに魅せられる斬新な音楽性において、 日本の音楽シーンにおいて常に注目を集めている希なアーティストだと言える。

EGO-WRAPPIN’ HP

 
 

レヴュー

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・2018年04月16日・【REVIEW】ロックンロール覚醒──春ねむり、目覚めのシャウトを打ち鳴らす初のフル・アルバムをリリース 横浜出身のポエトリー・ラッパー、春ねむり。2016年10月に1stミニ・アルバム『さよなら、ユースフォビア』でデビュー、昨年6月に2ndミニ・アルバム『アトム・ハート・マザー』をリリースした。そして3作品目となる、初のフル・アルバム『春と修羅』が完成した。諸刃の剣のように近付けば危うく、力強さすら感じさせる彼女の言葉達は、ラップのリズムに隙間なく詰め込まれ、彼女独特のエモーショナルなサウンドへと変わっていく。さらに今作には客演として突然少年、NERO IMAI、リミックスとして長谷川白紙が参加している。音楽の新しい可能性を追求する彼らとの楽曲は、春ねむりの新たなバック・グラウンドを知るきっかけとなるだろう。そんな本作をより深く楽しんでいただくため、OTOTOYではレヴューを掲載することにした。 自身初のフル・アルバム!!春ねむり / 春と修羅'【配信形態】ALAC、FLAC、WAV(16bit/44.1kHz) / AAC【配信価格】単曲 250円(税込) / アルバム 1800円(税込)【収録曲】''