彼らの10年間に迫ったマスターピースがここに——UNISON SQUARE GARDEN、結成10周年記念アルバムをリリース

透明感と力強さを兼ね備えた歌声、難解なユニゾンやテクニカルな演奏プレイをポップスに落としこむ卓越したセンス。今年で結成10周年を迎えたUNISON SQUARE GARDENが、これまでの軌跡を振り返る記念アルバムをリリースした。インディーズ時代の未発表曲から最新曲まで全16曲を収録。シングル表題曲を一切含まないという、勢いに満ちたバンドのいまを感じさせる選曲となっている。今作とともに、彼らのいままでとこれからにフォーカスをあてたレビューをお楽しみあれ。

UNISON SQUARE GARDEN / DUGOUT ACCIDENT
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV / AAC / mp3(16bit/44.1kHz)

【価格】
単曲 257円(税込) まとめ購入 2,469円(税込)

【Track List】
01. アンドロメダ / 02. フルカラープログラム(D.A style) / 03. 徹頭徹尾夜な夜なドライヴ / 04. ガリレオのショーケース(D.A style) / 05. 23:25(D.A mix) / 06. 夕凪、アンサンブル / 07. kid, I like quartet(D.A mix) / 08. 誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと(D.A mix) / 09. 天国と地獄 / 10. 未完成デイジー(D.A mix) / 11. シャンデリア・ワルツ / 12. 場違いハミングバード(D.A mix) / 13. 箱庭ロック・ショー(D.A style) / 14. クローバー(D.A mix) / 15. プログラムcontinued / 16. さわれない歌

下北沢ギターロックの末っ子がDTM世代を打ち抜いた

初めに正直に告白しておくと、僕はUNISON SQUARE GARDENを長い間追いかけてきたというわけではない。もちろん、メジャー・デビュー以前から名前は知っているし、ライヴも何度か見たことがある。個人的なことを書かせてもらえれば、僕がAFRICAEMOというバンドのメンバーだったときに、大阪で対バンしたこともある(2010年、会場は心斎橋JANUSだった)。当時から曲はいいし演奏は上手いしで「すげえなあ」とは思っていたものの、彼らがどんな背景のバンドなのかを調べるまでには至っていなかった。

むしろ、僕が彼らに強く興味を持つようになったのは、近年のチャート・アクションがきっかけで、そういった意味では一般のリスナーと何ら変わりがない。オリコンをチェックするのが好きなので、ここ数年「へー、ユニゾンって結構売れてるんだなあ」「ふーん、アニメとの接点が強いのか」なんて見ていたわけだが、それにしてもその勢いは際立っていた。まあ、実際には彼らは2008年のメジャー・デビュー以降、着実にセールスや動員を伸ばしてきたわけだが、毎年次々新しいバンドが台頭してくる現在の業界のスピード感からすればその歩みは遅々としたものであり、それが「再ブレイク」という一部の評価にもつながっているようだ。

ちなみに、今年の5月に発表された最新シングル『シュガーソングとビターステップ』はオリコン週間チャート初登場5位。こう書くと他にも同様のチャート・アクションを見せているバンドはたくさんいるのだが、[Alexandros]、KANA-BOON、ゲスの極み乙女。といったバンドが今年の上半期に発表したシングルの初週売り上げが軒並み1万台だったのに対し、『シュガーソングとビターステップ』は3.3万枚。これはいわゆる「ロキノン好き」と呼ばれるギターロック・ファンの規模感を大きく上回るものだと言っていいだろう。


UNISON SQUARE GARDEN - シュガーソングとビターステップ

では、なぜ彼らがここまでのポジションを獲得するに至ったのか。まずは当然田淵智也の作曲能力の高さを外すことはできない。クラムボンのミトらと同様に、バンド・シーンだけではなく、フラットな目線でアニソン作家のソングライティング能力の高さに一目置いてきた田淵による楽曲は、多彩なコード・プログレッションを一番の特徴に、徹底的にポップを追求したものばかり。なおかつ、2004年結成のバンドらしく、当時の流行だった海外のガレージ~ニューウェイヴ・リバイバルの空気と、日本においてポストロックを起点に複雑化した高度なアンサンブルを、やはり職人的に取り入れることによって、バンド・シーンにおける訴求力の高さも獲得していた。

とはいえ、これだけだと今の彼らの突出した存在感の理由としては、まだちょっと弱い気がする。そこでもう少し話を飛躍させてみると、彼らの高度なテクニックに裏打ちされた演奏が、DTMに慣れた若い世代の耳にバッチリはまったのではないかと思う。これも彼らのライヴを見たことがある人には言わずもがなだが、「何でこんなに動きながらキメを合わせられるの?」という感想を漏らさずにはいられない田淵のステージングに代表されるように、彼らはとにかく演奏が上手い。3ピースという最少編成ということもあって、無駄が削ぎ落とされ、「カッチリ」という形容詞がぴったり。曲によってはカオティックな混沌を生み出したりもするのだが、その混沌すらも彼らのコントロール下にある。つまり、この生身でありながらもグリッド上で合わせられたかのようなジャストな演奏が、ラップトップで完結される音楽を聴いて育った世代の快楽原則にハマったのではないかと思うのだ。


UNISON SQUARE GARDEN - 天国と地獄(LIVE MUSIC VIDEO)

こうした「カッチリ」とした演奏およびアレンジは、ある意味今の日本のギターロックにおける主流だと言っていいだろう。そしてこれは、今のフェスにおける画一的な盛り上がりとも関連してくる話で、「良くも悪くも」という側面もある。ただ、ユニゾンに関して他とちょっと違うのは、「あくまでライヴで叩き上げられた演奏能力の高さが、結果的に時代にフィットした」ということだ。彼らは2007年に初ワンマンを下北沢club QUEで行っているように、「下北沢ギターロック」の文脈で語られることが多い。しかし、2008年にハイライン・レコーズが閉店したように、この頃にはいわゆる「下北系」の概念は薄れ、実際ユニゾンもいろいろな場所でライヴを行ってはいたようだ。しかし、Shortcut miffy! の時代にしろ、BUMP OF CHICKENの時代にしろ、下北沢のギターロックとは結局のところ「いい楽曲といい演奏」に集約され、その意味では、ユニゾンは下北沢ギターロックの末っ子だと言っていいのではないかと思う。そして、ユニゾンはその「いい楽曲といい演奏」をひたすらに突き詰めた結果として、時代とリンクしたのではないだろうか。

彼らのブレイクが「再ブレイク」なのか、真っ当なブレイクなのかはよくわからないが、とにかくバンドの完成度は一朝一夕で築き上げられたものではなく、この10年間をサバイブしてきたからこそのものであることは間違いない。ものすごい勢いで進む時代を追いかけることも重要なことではあると思う。ただ、彼らのようなバンドのあり方が示唆するものは、とても大きいはずだ。

文 : 金子厚武

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PROFILE

UNISON SQUARE GARDEN

透明感に溢れながらも個性的なとげを持つ斉藤宏介のヴォーカルとエッジの効いたコンビネーション抜群のバンド・アンサンブルが共鳴共存するROCK / POPの新世界。キャッチーなメロディー・センスとアンバランスな3人の個性が織りなす鮮烈なライヴ・パフォーマンスでテレビ・アニメ『TIGER&BUNNY』オープニング・テーマ等、活動の場を広げている。

>>UNISON SQUARE GARDEN Official HP

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