ダイノジ大谷ノブ彦(漫才師)による『恋シチャイナRPG』レビュー

「サブカルチャー独特のコミニティー感を一点突破していくものが見たい」
高野政所a.k.a. DJ JET BARONを迎えファンコットを取り入れた2ndシングル
DPG / 恋シチャイナRPG
【配信形態】
mp3 / wav 単曲 200円 / まとめ 600円
【TRACK LIST】
1. 恋シチャイナRPG
2. バンキュッボン
3. 恋シチャイナRPG(FUNKOTER’S EDIT)
DPGセカンド・シングルはティッケー親方こと高野政所によるカンフーmeets FUNKOTナンバー。ブラックDPGデビュー曲は「涼宮ハルヒ」シリーズの楽曲を手がける田代智一による作曲。作詞はももいろクローバーZや「プリキュア」シリーズでおなじみの只野菜摘。
"退屈に飽きちゃった”
DPGの成田大致のロックンロールの原体験であるTHE HIGH-LOWSのアルバム『バームクーヘン』に収録されている「あの娘はパンク」はそんな歌いだしから始まる。それともこれは真島昌利の名盤「RAW LIFE」のコピー”退屈に殺られるより興奮に殺られたいんだ”なのか。もっと言うなら見立てや批評や解釈を込みで物語化していくその姿は同バンドの「14歳」における”リアルよりリアリティ”なのか?
トラックメイカーにhy4_4yhでおなじみの高野政所a.k.a. DJ JET BARON を迎えて制作された夏の魔物エンタメユニットDPGの2ndシングル『恋しちゃいなRPG』がやばい、いや、YAVAY。サウンドに迷いがなく痛快だ。ファンコットの多国籍感、音楽的情報量の豊かさ、更に高速のビートがいやがおうにも気分を高める。スピードを速めて活動形態を変化させていくDPGには退屈になりたくないという切実な思いの果てを感じる。カンフーがモチーフというが、正にブルース・リーの至言”考えるな、感じろ”ばりの勢いだ。
この感じ、成田君の前のパーマネント・バンドSILLYTHING時代の名曲「サマーロマンサー」を聴いたとき本人に全曲こういうのだけとかどうですか? って伝えた僕としてはなんだか感慨深い。
10回相方を変えてきたTHE MANZAI2013の覇者ウーマンラッシュアワー村本君のように成田君がここでもない、あそこでもない、こいつでもない、これでもない、そういう喪失の果てに獲得したエンターテイメント・ユニットがDPGだと思う。プロレス、ロック、コスプレ、アニメ(今作のイメージに高橋留美子漫画の影響も)… 自身が育ったカルチャーの全てを注いだこのユニットを最も大事にしてるだろうし、とにかく異常な熱量を注いでいることはメンバーから発せられる空気感でなんとなく分かる。
一年目の「夏の魔物」を終えたバンドマンは口々にその苦労を語ってた。トップに出たであろう主催者のバンドから押しまくり、終わったのは夜中の12時近くだったとか。五年目はTHE MIRRAZとのプロレス的な展開に相手がのってこず、空回り、現場だけでなくネットでも揶揄されていた。僕が面白そうだなぁっと思ったのはその辺りだ。お金があるからロックフェスできてんだろう? という陰口に開き直り、ならば本当に好きなものだけを注いで邁進したあたりからズッコケ感込みで面白くなってきた。そして僕は純粋にこの成田という人の居心地の悪さに興味がある。ここではないどこかへ。だから成田君と会って初めてお話ししたとき、どこか保険をかけたような達観性があって、知的だなぁっと思いつつ、もっとバカであって欲しいなと思ってた自分はがっかりしたのを覚えてる。
ところがだ、このDPGには仲間がいる。志が同じか、もしくは違ってもそれぞれが自分らの境遇から脱却し、ひたすら面白いことをやることで、まだ見ぬ風景を奪還しようとしている、そんな仲間がいる。足掻いてるその各々の姿がDPGの物語に転換していく。エンターテイメントの世界と契約した奴独特のいかがわしさはやがてどうしようもなく観客の人生とオーヴァーラップする。熱量はボケとして突破していくためのそのスピードに変化していく。最新曲の2曲はそんな生き様のためのサウンドトラックだ。両方とも作詞は只野菜摘先生。只野先生と言えばやはりももクロの傑作「BIONIC CHERRY」「Chai Maxx」を手掛けた方でその独特の節回しにアイドルの本質が見え隠れして胸熱だ、なんていう方も多いだろう。そんな方がDPGのために譜割りを考えてくれてる現実。一つのステージにたったものがどうにかしたいと思ってしまうかわいらしさが彼らにはあるのだ。もちろんカップリングを歌うブラックDPGにも。個人的にはこのカップリング扱いの「バンキュッボン」のほうが好きだったりして(笑)これは僕が甲賀忍者の血をひくひねくれもの家系に生まれたことが要因かもだけどね。プロレスのヒールが好き。その引き受け感がさ。そうそう甲賀忍者で思いだしたけど、僕は歴史上の人物で真田幸村が大好きなんだけど、彼の部下の真田十勇士ってのは、あまりにも難攻不落のため、徳川軍がおそらくこんなつわものがいるんでないかと妄想したことが始まりなんだとか。まったく人の想像力ってハンパない。見えないギターが見えるとかもそうだよ。どうかしてる。想像で創造するなんて。でもさ、それが一番面白いんだよ、まちがいなく。
DPGにはともすればサブカルチャー特有のアングラで分かりづらい構図があるかもしれないけど、個人的には彼らにはそういうのは期待してない。だってなんだか欠けているもん。ジャケットの写真感にあるアマチュア感。でも好きで好きでたまらないことだけをやっているんだっていう突き抜け感、そこに用があるんだ。あれはこうだ、それはあぁだ、そういうのより愚直さを笑われるような痛快な一点突破、そう、サブカルチャー独特のコミニティー感を一点突破していくものが見たいと個人的には思う。後は観ている人が想像すればいい。 まぁ成田君にはサブカル・コミニティーに入れない片思い感を強く感じるんだよね。かくゆう私もなんだけど(笑)。
だから… あがいて欲しい。もがいて欲しい。どこにもない新しいジャンルを築いて欲しい。自分の殻を破壊して発見してほしい。すなわちサーチ&デストロイって奴だ。
2013年を代表するドラマ『あまちゃん』の名台詞にこんなのがある。
”楽しいからに決まってるべ! ダサいけど楽しいから! ユイちゃんと一緒だから楽しいからやってたんだべ! ダサいくらいなんだよ我慢しろよ!”
主人公アキのこのシャウト、なんだかくやしいけどリアルタイムで観ながらDPGを思い出した。あのどこ欠けている、かっこいいとはまだ言えない、物足りないあの「リングの魔物」のジャケット。そういう片思いの連中のために熱狂と心中しようとしているんだと涙がでた。
心中するにはいい曲が揃った。
猛スピードで命を燃やせDPG。
やれ。でもやるんだよ。
冒頭の「彼女はパンク」の歌詞にはこうある。
”本当なんだよ 壊したいんじゃない
壊れてみたいだけ 粉々に”
頑張れよ。
そう、頑なに張れよ。
何を?
自分自身を、だ。
ダイノジ大谷ノブ彦(漫才師)
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