月狼RECORDの特集にあたって
ある日、OTOTOY宛に1通のメールが送れらてきた。そこには『黄昏讃歌』というオムニバス・アルバムを多くの人たちに聴いてほしいという熱い気持ちが込められていた。そのメールの送り主こそ、月狼RECORDの柳沢さんだった。すぐに返事を返して打ち合わせの約束をした。すると彼は数枚に渡る企画書を用意して、一人でOTOTOYオフィスにやってきた。『黄昏讃歌』が売り切れてしまったけれどもっと多くの人に聴いてほしいということ、『黄昏讃歌3』発売前に東日本大震災が起こってしまったこと、被災地にいるバンド仲間たちの楽曲を音楽好きな人たちに届けたいということ。前のめりな彼の熱意に応えたいと思い、その場で今回の特集を決めた。
それから、メールで毎日のようにやりとりをし、今回のリリースまで一気に駆け抜けた。インタビューだけではなく、なぜ今回の特集をしたかったのか、柳沢さん本人に文章を書いてもらった。そして、彼と縁の深いライヴ・ハウスの店長たちにコメントをいただいた。インタビューアーの遠藤妙子さんとの写真も撮らせてもらった。これは月狼RECORDの特集ではなく、月狼RECORDにかかわる全ての人たちの特集だと思っている。この文に続く柳沢さんの文章、そして各ライヴ・ハウスの店長のコメントをじっくり読んでほしい。その想いは文章をはみ出して伝わってくるはずだから。(OTOTOY編集部 西澤)
東京から福島に愛を込めて! (Text by 柳沢英則)
福島県いわきソニック(club SONIC iwaki)というライヴ・ハウスの店長、三ケ田さんと出会ったのは、もう8年前になります。高円寺のライヴ・ハウスで私達がライヴをしている時に、彼はニヤニヤしながらフロアで飛び跳ねていました。それから交流をもつようになり、毎年、何回もいわきソニックにはライヴをしに行っています。その繋がりは沢山のバンドを巻き込んで強くなっていると思います。
今回、『黄昏賛歌3』のフリー・ダウンロードに、福島県いわきソニックで活動するBottom TurNの「空へ」と、三ケ田圭三&タカザットの「冬の女」を選ばせて頂きました。Bottom TurNとの出会いも、三ケ田さんが「凄い良いバンドがいるんですよ!」と目をキラキラしながら紹介してくれたのがきっかけでした。Bottom TurNのイベントに出演させて頂いた時にnotice itやLATE SHOWなど、いわきで活動している若いバンド達とも共演させてもらい沢山の出会いがありました。
他にもいわき市にはWILD FANCYSやTo overflow evidenceなど、ジャンルに関係なく素晴らしいバンドがいます(To overflow evidenceが主催で8月25、26日とONA FES2012という2日間の熱いフェスティバルも三崎公園野外音楽堂で開催するそうです。いわきのバンドからの熱い気持ちが込もった挑戦だと思いますので、音楽好きな人は足を運んでみて下さい)。
2011年3月、私は3年間製作してきた『黄昏賛歌3』を発売出来る環境にまで漕ぎ着け、発売を待っていました。仕事の合間に何度も打ち合わせを重ねました。自分が時間と労力をかけて30バンドを誘い、参加バンドと皆で描いた作品ですので、3月18日の発売日はとても楽しみでした。
しかし、3.11に東日本大震災がおこりました。
沢山の命が失われ、大切な家族を亡くしたいわきの仲間のバンドもいました。大怪我をしたバンド・マンもいました。押し寄せる津波に流され、丸太に必死に捕まり助かったことなど、東京の私には想像もつかない世界でした。三ケ田さんが私に連絡をくれました。「4月中旬にはいわきソニックの営業を復活させたい!」「いわきの街に元気がないから、バンドのライヴで、俺達の音楽で、いわきの皆に元気になって欲しい!」。三ケ田さんやいわきソニック・スタッフ達の熱さを感じ目頭が熱くなりました! 「WHITE LOSERが来てくれたらいわきのバンド達も元気になるし来て下さい!!」と言われ、私達も車を走らせました。
沢山の仲間達とライヴをしました。ただ一緒にロックをすることしか出来なかったけど、みんなとても楽しそうにライヴをしていました。オムニバス製作をしていて1番嬉しいことは、音楽が好きな方々と強い繋がりを持てることです。そこからアイデアが生まれたり挑戦しようとする意識が強くなっていると思います。いわきの街だけではなく、札幌や東京や日本全国のライヴ・ハウスには繋がりがあり、情熱があり、夢があります。いいバンドは、まだまだ沢山いるんです。ライヴ・ハウスでお客さんが感動出来る環境をなくしてはならないと私は思います。そういうバンド達の直向きな情熱やお客さんの熱量全てを、オムニバスという形でパッケージング出来るわけありませんが、伝えていきたいと思っています。メジャー、インディーズ、関係なくです。そういうことがこのシリーズでの夢です!
今回は、OTOTOYの西澤君と2人で真面目に何度も打ち合わせをしました。デジタル配信サイトですが、それを生み出し伝えていくプロの現場には、やはり凄い情熱がありました。素晴らしい経験をさせて頂きましてOTOTOYには、感謝しかありません! OTOTOYをご覧の音楽が大好きなリスナーの皆様へ! とにかく黄昏賛歌シリーズを聞いて下さい。本当にどこにもないようなライヴ・ハウス・シーンの現場に基づいた良いコンピレーションだと思っています。これからも皆で気持ちを形にしていきましょう! ありがとうございました。
月狼RECORD主催
柳沢英則
月狼RECORDに愛を込めて!
club SONIC iwaki店長 三ヶ田圭三
月狼RECORD! WHITE LOSERが主催するレーベル。私が生まれて初めて接したインディーズ・レーベルです。目的は大好きな音楽を世に広げること。これが全く揺るがないのです。『黄昏賛歌』はレーベルからの規制も全くなく、月狼が用意する鍋のなかでアーティストは自由に、かつ実に美味そうに並んでいます。WHITE LOSER、月狼RECORDはいつも気持ちを大切にしています。当たり前な話ですが、ほかと比べる気にもなれないくらい、ものすごく気持ちを大切にしてます。この気持ちの信頼度は世界一かもしれません。順位はつけられない事なのに、世界一だと感じさせるとは。すごい。
『黄昏賛歌3』が震災後にSONICに届きました。売上を義援金にして欲しい、との事でした。 すぐに全部なくなりました。きっと気持ちがみんなに届いたんだと思います。本当にありがとう!
club SONIC iwakiとは(TEXT by 柳沢英則)
暖かい空気と楽屋の居心地と音も抜群に良いです。地元のロック青年達は打ち上げでいわきソニックを語ります。それだけバンド・マンに愛される場所です。都内のバンド・マンもCDをリリースしたらロックしに行ってみて下さい! 大推薦なライヴ・ハウスです!
http://www.sonic-project.com/~sonic-iwaki/
東高円寺二万電圧店長、石田 貴洋
旧20000V時代から延々とマイペースに日の当たるか当たらないかの絶妙な位置で同じコード進行、同じメロディー、ノー・ギミック、ストレート、ロックンロール、パンク・ロック、ブルース、アルコール、アルコール、アルコール…というものを消化したり消化出来ず垂れ流したりしながら活動をしてきたWHITE LOSER。変わらないんじゃなく、ロックンロールに射抜かれて変われない男達。震災で列島が揺れた、WHITE LOSERの心も揺れた。それで黙っているような男達じゃない。そこからまた新たな力を産み出し、外に広がり、相も変わらないピュア&ストレートな姿勢で常にライヴに臨む。9月22日には二万電圧にて激アツ・メンツの自主企画も控えています。
レーベルはまるで真夜中のオモチャ箱のように、遊び道具で溢れている。そう、『V/A 黄昏賛歌』とは、夢と情熱と優しさ、そして愛を持った、音楽の遊び道具なのだ。それを使って何をしていくのか、どんな遊び方を思いついて行くのか。これからも非常に楽しみにしています。あっ、初めて楽器を持って弾いた時の感覚を思い出したいなら、WHITE LOSERのライヴを見た方がいいと思いますよ。吐き気がするほどロマンチックに、初期衝動で突っ走ってます。誰かブレーキつけてあげて! 極東より愛を込めて。
東高円寺二万電圧とは (TEXT by 柳沢英則)
東高円寺二万電圧となってカムバックしたライヴ・ハウス! 世界のロック・シーンとリンクする爆音が今日も鳴り響いている!
東高円寺二万電圧はダブル店長の石田貴洋さんはFIREBIRDGASS、ダブル店長の望月拓さんはGROUNDCOVER.と、それぞれのシーンで第一線で活躍中。その2人の冴え渡る音楽センスを織り交ぜながら、開催されている東高円寺二万電圧店企画のCHAIN REACTIONなどは日本のオルタナティブ・シーンやパンク・シーンの先頭を走るような良質なイベントで本当に面白い! 出演してもお客さんとして行っても本当に楽しめます。東高円寺二万電圧を拠点に活動している新しいバンド達も、どんどん育っていてこの歴史は続いていくのだろう。
東高円寺二万電圧 HP
http://den-atsu.com/
新宿LOFT店長、大塚智昭
WHITE LOSERというダサいバンドが居る。メンバーが月狼RECORDというこれまたダサい名前のインディー・レーベルを運営している。今時のインディー・レーベルはそこらのメジャーよりも洗練され、世の中に評価されている所が多いと思う。ただ月狼RECORDは洗練されてないし、評価も、まだまだされていない。でも私は好きなバンドです。そして彼等が運営している月狼RECORD『黄昏賛歌』は珍しく好きなオムニバス・アルバムです。ただ距離感が近いバンド達を集めた企画盤や、ジャンルに括るオムニバス、J-POPのカヴァー集等、安直で愛を感じないオムニバスが多く有る中、こんなにまず愛を感じて自己満足した上で、熱を帯びた作品はかの名盤『極東最前線』以来だと思う。今音楽に足りないのは肌で感じる事が出来るこんな愛と熱のあるバンドと作品だ。
新宿LOFTとは (TEXT by 柳沢英則)
ロフトの歴史はロックの歴史!! 1976年設立! 35周年という歳月を日本のライヴ・ハウス・シーンだけではなく日本の音楽シーンも巻き込み常にリードし続けている老舗のライヴ・ハウス! バンドを組んだなら必ず一度は新宿LOFTのステージに立つことを夢みるもの。どんなに時代が変化しようともそれだけは変わらない!その理由は新宿LOFTがつねに新しいことに挑戦し続けている姿勢とバンド・マンから愛され続けているからである。超メジャー・バンドからインディーズ・バンドまで良いものは良いということを貫き通す姿勢はまさしく日本のロックの原風景ではないだろうか?
新宿LOFT HP
http://www.loft-prj.co.jp/