2011/09/17 00:00

2007年、Cradle Orchestra名義で『The Good People/About You-Cradle Orchestra Remix-』をリリース。その後、立て続けにドロップした楽曲が話題を呼び、2009年1月にはまさに満を持して1stアルバム『Velvet Ballads』を発売。2010年11月には2ndアルバム『Transcended Elements』を発表したCradle Orchestra。彼らが1年も満たない間にリリースしたアルバムが『ReConstruction Series』だ。かつてThe RootsのBlack Thought、CL Smooth、OC、GURUにDe La Soulらのビッグ・ネームをフィーチャーし、弦と打ち込みを巧みにリンクさせた新しい音の世界を見せてくれた彼ら。そんなCradle Orchestraが、今、届けてくれた『ReConstruction Series』は、藤原ヒロシ、INO hidefumiら個性的なリミキサーの手により、新しい魅力をまとったリミックス・アルバムだ。

(Text by すぎもとまさひろ)

豪華リミキサーが参加している作品を、24bit/48kHzの高音質で配信開始

Cradle Orchestra / ReConstruction Series
【参加リミキサー】
Anan Ryoko、DSK Kojima、TRI4TH、Hiroshi Fujiwara、SR、INO hidefumi、m-taku、H ZETT M、DJ JIMIHENDRIXXX a.k.a. Keiichiro Shibuya、Ayumi Remix、Tomoki Seto、PE'Z、Raujika、Cradle

瀬戸智樹 INTERVIEW

瀬戸 : 「最初はセカンド・アルバムの『Transcended Elements』が出来た時に、藤原ヒロシさんに1曲リミックスをやってもらったんですよね。その時にミックス・アルバムを作ろうかなと言う気持ちが芽生え、今回の『ReConstruction Series』を作る流れになっていきました」

と、語るのは、Cradle Orchestraの核となるメンバーであり、音を総合的にプロデュースする、瀬戸智樹。『ReConstruction Series』のリミキサーのチョイスは、彼が行なった。渋谷慶一郎やPE'Z、DSK Kojimaとあらゆるジャンルのアーティストが手がける『ReConstruction Series』。そのジャンルの多様さには驚かされる。

瀬戸 : 「リミキサーは、ボクが全員を選びました。このアーティストにお願いしたいなという人に、ボクが直接コンタクトを取った方もいらっしゃいますし、知り合いを通して話をしてもらった方もいます。依頼の仕方はまちまちなんですけど、みなさんがとても好意的に引き受けてくれましたね。渋谷さんなんかはボクが直接に連絡して、“それは面白いね”ってことで、話がどんどん進んだりしました」

それぞれのリミキサーが手がける曲の選択は… 。

瀬戸 : 「どの人にどの曲をリミックスしてもらうのかは、人それぞれだったんですけど、藤原ヒロシさんにはGURUの曲でやってもらいたくて、「You Got To Luv It」を決め打ちでお願いしたんです。でも渋谷さんやINOさん、DSKさんは1st、2ndアルバムの中から選んでくださいって、それぞれに好きな曲を選んでもらったんですよね。曲のデータを渡したら、多くのアーティストの方には、ほとんどデータの受け渡しで作業を進めました。みなさんのスケジュールで、それぞれにやっていただいた形ですね。とにかく、お願いしている方達の音のクオリティは保証されているので、後はもう、お任せでお好きなようにってお願いしたんです。Cradle Orchestraの曲にはビッグ・ネームがフィーチャーされていますが、意外とその辺の事は気にしない方ばかりで、音を聴いてこれがよかったからこの曲を選びましたって感じでしたね。INOさんにはALOE BLACCの「Mountain Top」をリミックスしていただいたんですけど、音を聴いて自分にしっくり来るからこれいいなって選んだら、それがたまたまALOE の曲だったと言う感じですね」

高いクオリティを誇るアーティスト達が改めて手がける自分の楽曲。新たな彩りを見せる作品が届けられるのは、新鮮だったと瀬戸は語る。

瀬戸 : 「渋谷さんにはGIOVANCAをフィーチャーした「The Night Is Right」をリミックスしてもらったんですが、最初は“グランド・ピアノ一本でDSD(ダイレクトスクリーミングデジタル)で高音質な感じにしようかな”なんておっしゃってたんですけど、リミックスされた音は、ダブ・ステップみたいな感じで、驚きました。どうも、渋谷さん自身の最近のテンションが、そういう感じだったみたいなんですよね。また、TRI4THというジャズ・バンドには、DE LA SOULをフィーチャーした「Picnic」という曲をやってもらったんですけど、デモの段階から何度もこんな感じはどうですかって、逐一音源を送ってくれて、その経過をずっと見つめる事が出来ました。彼らはレコーディングに立ち会ったし、話しあって一緒に作っていったという感じですね。その作業も面白かった。ここを辞めようとか、ここをこうしようとか、彼らはレベルの高いジャズマンなので、その辺のアドリブは自由自在でしたね」

カラフルなものにしたかった

アコースティック・ギターで美しい音を奏でるギタリスト、DSKにもリミックスを依頼した瀬戸。

瀬戸 : 「DSKさんはアコギの美しさを表現した、"あの"感じが欲しかったです。前々から、とにかく『ReConstruction Series』のリミキサーには、ギタリストをひとり入れたかったし、彼はギターの音の重ね方がとてもきれいで、そんな思いをそのままやってくれたのでよかったなと思っています。ギターの和音の響きがとても美しくて、でも元の曲からはあまり展開せず、コードの響きの感じは見事に引っ張ってくれて、ちょっとクラブ・ミュージックを意識されたような音でした。DSKの個人名義で、オフィシャルにやるリミックスは初めてみたいだったんですけど、思っていた音を作ってくれました」

1曲ごとに個性溢れるリミキサーが手がけるアルバム『ReConstruction Series』は、そのジャケットからも連想されるように、色んな音のカラフルさが、ちりばめられている。

瀬戸 : Cradle Orchestraでは、1st、2ndのオリジナル・アルバムの制作が長期プロジェクトだったので大変でしたね。1枚作るのに2年くらいかかりますから。でも、『ReConstruction Series』は、それぞれのリミキサーの方ありき。それぞれの方々がいいものを作ってもらえば、自分の作業は終わるんです。だから作業としては、比較的楽しかったですね。終盤に入ると、リミキサーの方の音がどんどん集まってきて、まるでパズルがどんどんでき上がる感じでした。ボクは、もうそのパーツをはめ込むだけ。すごく楽しかったです」

色とりどりな音を集め、さらにCradle Orchestraの音として組み上げて行く。瀬戸はアルバムの完成に向けて、いろいろと思考した。

瀬戸 : アーティストがいいと思ったようにやってもらうというのが、絶対条件だったので、個性的な曲が集まってくるのは致し方ないと思っていました。でも、何とかアルバムに流れを作りたくて、曲順選びには気を使いました。前後の曲の配置でバランスをとるような事もありましたね。でも、色んな音を聴く事が出来る、カラフルなアメリカのお菓子みたいな感じということは表現したかった。だから『ReConstruction Series』はジャケットもこれまでとは違う雰囲気で、コラージュいっぱいのカラフルなものにしたかったんですよね」

実は多彩なリミキサー選びにおいても、瀬戸にはこだわりがあった。

瀬戸 : 「リミックスと言う作業は元になる曲がありますけど、リミックスする人によって大きく違ってしまう。INOさんはフィーチャリングされているALOEのボーカルのサビの部分を全然使わなかったり、藤原ヒロシさんは、GURUのラップ部分を9割くらい抜いていたり、それぞれの人の曲の解釈の違いなんでしょうね。リミックスの概念が人によって違う、そういう部分を聴けるのも面白いんですよね。それにボクが『ReConstruction Series』でいいなと思うのは、すごくメジャーな人と、世の中にあまり名前が売れていないアーティストが混在している点ですね。m-takuやTHI4THとか、ボク自身がその才能の高さを感じている人をピック・アップしてるんですけど、彼らはすごくクオリティの高いものを作ってきましたし。どれもアルバムの中に封じ込めても、周りに引けを取らない。本当にいいものを作ってくれたんです。これがちょっと大きなメジャー・レーベルだと、同じネーム・バリューのある人しか入らないものになっちゃうような気がするんですよね。音よりもアーティストの名前先行になってしまうと、作品が金太郎飴みたいにどこを切っても同じようになってしまうんですよね。でも、ボクの場合、音がカッコよければ一緒にやってみようということになるんで、それが、ひとつの楽しみだったりします。ANAN RYOKOやm-taku、RAUJIKA、みんな才能があるんですよ。才能ある人達がごちゃまぜになっているのがいいですよね。それがCradle Orchestraのアルバムだと思うし、このリミックス・アルバムがCradle Orchestra3部作の完結編に相応しいものだと思います」

Cradle Orchestra参加のタイトルも配信中

Generativity

V.A.

¥ 1,572

PROFILE

Cradle Orchestra
Palette Sound主宰にしてDJ、TrackMaker、ProducerとしてCradleの核である瀬戸智樹、Inherit aka DJ Chika、望月明香(ヴァイオリニスト)、島本道太郎(ベーシスト)、石井あや(フルーティスト)のメンバーを中心とし、様々なアーティストやミュージシャンとのコラボレーション・プロジェクトがCradle Orchestraである。2007年後半、Cradle Orchestra名義の第1弾「The Good People / About You-Cradle Orchestra Remix-」、続いて「Saint / Can’t Relate-Cradle Orchestra Remix-」、さらに2008年には「The Antidotes / Got Rhymes-Cradle orchestra Remix-」「Nieve & Cook / Another Day Comes-Cradle Orchestra Remix-」を手掛け、加えてピアニストをフィーチャーしたCradleプロデュース「Chronic Intoxication-Ryoko Anan Natsu no Yuki Remix」(韓国の配信では総合チャート1位を獲得)など、次々にヒット作品を制作。その楽曲はGOON TRAXのレーベル・コンピレーション『In Ya Mellow Tone』に収録され、このコンピレーションを"モンスター・コンピ"を言わしめる筆頭作品となった。このシリーズはこれをきっかけにのちに累計10万枚をたたき出すこととなる。
2009年1月、満を持して発売となったCradle Orchestra名義の1stアルバム『Velvet Ballads』では、The RootsのBlack Thought、CL Smooth、Talib Kweli、OC等のアーティストと競演を果たした。さらにiTunesでは1ヶ月に渡りチャートを独占、CDは累計3万枚を突破しマーケットを席巻した。ヒップ・ホップというジャンルながら、その洗練されたメロディー・ラインと、ヒップ・ホップを生演奏と打ち込みで高次元に見事に融合させ、新たなジャンルを作り上げることに成功した。Cradle Orchestraを中心に、世界中のトップ・アーティストが参加した歴史に残る2ndアルバムもリリース。

Cradle Orchestra website

[インタヴュー] Cradle Orchestra

TOP